STAGE5:カルタゴ
「なかなか調子がいいじゃないか」
アガルタ軍に蹂躙された台地はアガルタ軍基地から強奪した魔導機関により耕されていく。
そして雇ったNPCを使い田畑はみるみる再生されていく。プログラム上の都合か、耕されていくスピードが以上に速い。これなら、田植えも早く済みそうだな。
「こ、これだけのNPCを・・・・どうやって?」
俺と共にアガルタ共和国内の見周りに来たフィオナは共和国内のプレイヤーたちとほぼ同じ数のNPCを見て驚いている。
「このゲームではシステム的に国王になれるんだったな。国王になったら国家の運営のための金は全部ステータスに出る。俺のステータスを見るといい」
「う、うむ」
フィオナは俺には見えないがメニュー画面を開き俺のステータスを見る。
メニュー画面は本人以外見ることはできないのだ。
「国庫財産・・・・1682Au!?ど、どこにこんな額が・・・・・きょ、共和国の国家予算は・・・1Auじゃなったのか?」
「これでもNPC雇ってそいつらの家も建てたから相当な金使ったんだけどな。ほとんどは俺の金だ。1000Auは俺の所持金。残りの額は古くなった兵士の装備の売却価格と、帝国軍兵士の死体から奪った金、兵士から奪った換金アイテムの額、アガルタ軍基地から奪った軍事予算と言ったところだ」
「な、成程。ア、アスガ殿はこれからどうなさるおつもりで?」
「ん?まずはこの国の底上げ。農業生産を拡大させ、領土を拡大させ、軍事力を強化させる。まずはこの3つが重点だな」
「まずは?最終的にはこの国をどこへ持っていくつもりで?」
そこまで俺を見きったか・・・・さすがはフィオナと言ったところだ。
数日間しか一緒にいないが、それだけでわかる。他の連中とは見る観点が違う。
こいつがこの国にいてくれたから、保てていたのだろう。
「そこまで俺の考えを見越していたとは・・・俺がなぜここまでレベルを上げていたか解るか?」
「・・・・生き残るためですか?」
「まあ、それもあながち間違っちゃいない。だが、それが本質ではない」
「ではなぜ?」
「アガルタ管理局・・・蔑称人狩りを駆逐するためだ」
「く、駆逐ですか・・・」
呆れてものが言えなかった。
彼らが従える軍のうち10万人は正規プレイヤーでレベルは50以上ある高レベルプレイヤーだ。そのうち3万人はレベルが80越えと聞く。レベル100を超える者は12人。この12人こそがアガルタ管理局のトップ。アガルタ管理局中央議会。
正直この12人のうち6人は私の手でも勝てる。だが、このうち残りの6人が以上に強いのだ。一番低くてもレベル150はある。
彼らを全員駆逐すると・・・
「ああ。あいつらには借りがある。俺はあいつらに復讐すると決めた。だからこの国を強国へと作り変え、そして・・・」
「アガルタ管理局を倒す・・・とでも?」
「勿論だ。だから俺はやつらを倒すために毎日レベル上げに励んだ。そのためにした事はPHをする連中を殺す。彼らには絶対的な自身となるレベルがある。俺はレベルに比べるとステータスが高い。レベル1の時のステータスは現実世界のステータスと比例するからな。本当なら俺のステータスならレベル+40ぐらいってところだ」
「PHを狩る・・・・その考えはなかった」
「奴らは人を殺している。ならば殺されても文句はいえんだろ?・・・そうだ。こんど一緒にPH狩り行くか?」
「ひ、人殺しは遠慮しておきます」
「何言ってんだ。国を守るためには人殺ししないといけねえだろ?慣れるために着いてこい」
アスガはフィオナを北にあるカルタゴへ連れて行こうとする。
カルタゴはただいまアガルタ管理局との戦争中なので人狩り狩りをするのにちょうどいいのだろう。
「ア、アスガ殿。無差別な殺生はいけません!!」
「ちぇっ・・・連れねえ奴だな。まあいい。次は南部へ行こう」
「は、はい」
別の方向へ行こうとするアスガを見て胸をなでおろすフィオナ。
南部では新しく移民しにきたプレイヤーと雇ったNPC達による開拓が始まっていた。
山脈から鉱物資源を運ぶための主要な道路をつくるため森林伐採が始まっている。
伐採された木々は木材としてアガルタ城に運ばれ、そこから必要に応じてあらゆる地方へと運ばれる。
「まだ、山脈までの開拓は進んでいないな」
「始まって間もないですから・・・」
「しかし、ここから大量の鉱物資源が取れるようになれば、国境線を防壁で固めることができ、敵の侵略から怯える必要はなくなる。武器・弾薬の生産にも欠かせないものだ。安価な武器を生産し各国に売りつけることで、資金を得ることもできる。此処にいる人々は戦闘レベルこそ低いが、職人系の高レベル者が多いと見た。それこそこの国の売りになるだろう」
「ふむ」
この国の現状を見て、何が適しているのかを見極め、国家を改革していく。
更にこの短期間だ。
イリヤ皇女殿下の判断。間違ってはいなかったようだ。あの人自身はこれと言って特に芽出る才能は無いが、人を見る能力。これだけは長けている。
皇女殿下がこの国に必要とされている存在は彼女の能力ではない。
彼女の純粋な穢れない心だ。
「此処はまだしばらくかかりそうだ。西へ向かおう」
「はっ」
言われるがままに彼に着いていった。
西の方は問題もなく開拓が終わっていた。海まで道を開拓し、海には漁港が猛スピードで作られていた。
漁業を始めている人も多く、これなら内陸部に海産物が行きわたるだろう。
「後は・・・」
「問題の北だな」
前回ドラゴンの襲撃があった北村だが、被害はアガルタ軍よりは少なく、復興にもさほど時間はかからないと見られていた。
そう、復興は。
やるべきことが一番多い北村。川の手前に砦。川に橋をかけ、そこに新たに橋頭保を設ける。完成しているのは橋だけである。ただ、たった数日で幅200mの川に橋をかけたことは素晴らしいことだ。耐久性は保証しかねないと言われたが・・・まあ、耐久工事は暇な時にやればよい。
「さすがに厳しいな・・・」
「そうですね・・・」
資源自体が足りないというのもあるが、何せ人手が足りない。
誰でもいい。人数が足りない。
そんな事を考えている時だった。
「ア、アスガ様!!」
「どうした?」
共和国軍の兵士たちは主に北と東に守りを置いている。そして攻めてくるとなれば、北から攻めてくる可能性が高い。だからアスガは北に守りの重点を置いているのだ。
そして北村を守る守備隊の兵力は3000。NPCや、他プレイヤー等も入隊して5000人に増えたが、その半分以上を北においている。
そしてその隊長を任せているのはユーマだ。ソーマは副隊長。
東村はアガルタ城からさほど距離がないため、アガルタ城守備隊と東村守備隊は統一されている。
「川の向こう・・・カルタゴから大量の軍勢が!!」
「アガルタ軍か!?」
「い、いえ・・・それが、カルタゴの国旗を掲げています」
「なぜカルタゴが攻めてくるのだ?」
「わ、わかりません」
「仕方ない。行くぞフィオナ、ユーマ」
「「はっ!!」」
3人は橋を渡り、作り途中の砦を護衛する兵士に合流するつもりだ。
(間にあってくれ)