STAGE4:忠誠
――――――アガルタ共和国 北村
「きゃあああああ」
「あ、熱いよぉぉ」
北村を襲う真っ赤な翼に漆黒の身体。鋭い爪。口から吐く赤と黒のドス黒い炎はこの前のアガルタ軍進軍で無傷だった北村を焼き払って行く。
「そうだ。もっともっと焼き払え!!これがアガルタ管理局の実力。召喚石使いのアルテミスの実力」
アルテミスと呼ばれるアガルタ管理局の女性は右手に光る宝石を手にしている。
召喚石
――――成分的には魔粒石と変わらずMETで出来ている。魔粒石が記憶しているモンスターを所有者の魔力により召喚する事が出来る石の事を指す。
そしていまここに君臨しているドラゴンは召喚石に記憶されたドラゴンと言うことだ。
そのドラゴンによりこの村は崩壊寸前に陥っている。
「こ、これがドラゴン」
「はじめて見た・・・」
ユーマとフィオナは二人揃って声を上げた。
(こいつらはまだドラゴンを見たことがないのか・・・)
アスガは唇を舐めにやりと笑うと二人に声をかけた。
「いい経験値稼ぎだ。俺達三人でこのでか物を倒すぞ」
「ちょっと、アスガ様・・・さすがにこれは・・・」
「何を言っている。この国を守るのが王様であり、兵士だろうが。甘えたこと言ってんな」
そう言うとアスガはSW(Sub Weapon)である閃光弾を投げ飛ばす。
「伏せろ!!」
その言葉と同時に二人は伏せた。
まばゆい光が空を包み、ドラゴンはその光に耐えきれず目を一定時間使用不可となる。
「あいつが怯んでいるのがチャンスだ。攻撃するぞ」
アスガはそう言うと跳躍をし閃光弾の所為で墜落したドラゴンに飛び乗る。
このでか物に剣技等無用。攻撃力と、筋力だけが有効だ。時間があるだけ、ドラゴンの皮膚に突き刺し、目を二度と使えぬよう眼球に差し込む。
「キシャアアアアアア」
目をつぶした瞬間ドラゴンの断末魔が耳に響き渡る。それと同時にやみくもに火を吐き散らすドラゴン。
「フィオナ殿!!」
ユーマが叫ぶ。その声に反応するフィオナ。だが、もう遅い。フィオナの目の前には悪あがきをして火を吐くドラゴン。暗黒の炎が迫っていたのだ。
「!!」
目を強く瞑り覚悟をした。それと同時に聞こえる声。
「フィオナアァァァァ!!」
これが走馬灯と言う物か?はじめて感じる感覚にどう対応すればいいのかフィオナは解らない。
恐る恐る目を開けると走馬灯でも何でもない。アスガの声だった。
「ア、アスガ・・・・・・」
「俺の部下になる奴が目の前で死なれちゃ胸糞悪いんでね」
焼かれてもおかしくないその炎に無傷で話すアスガ。
彼は何者だ?
「何で無傷なんだって顔してるな?これは自動魔法“無敵の盾”だ。よほどの事がない限り装備しないんだが・・・良かった。間にあって」
ドラゴンの炎がアスガに当たる前に拡散して広がり自分達には被害が出ていない。
こ、こんな魔法があるというのか?
「さて、俺の部下に傷つけようとした奴には懲罰が必要だな」
ドラゴンをたしなめ、独特の構えをする。
「アシュケロン!!」
装備を突如として変え、その場に現れた剣はごつごつしたどでかい大剣だった。
パッと見で、剣のステータスを図ったわけではないが、地面に落した時の溝の深さでその重さがどれだけの重さか解る。
「アシュケロン?」
「聖人ゲオルギウスがドラゴン退治に使ったとされる伝説の剣。ドラゴン退治にはちょうどいいかと思ってね。ソニックウェーブ!!」
あれだけの重さの剣を持つには相当な筋力値が必要だ。あの大剣を持つだけでもそれなりの筋力値が必要だというのに、その剣でソニックウェーブをするなど、無茶苦茶にもほどがある。フィオナはその光景を茫然と見ていた。
一振りで振った方向めがけて突き進む衝撃波はドラゴンを真っ二つに切り落とした。
それで勝負は終わり。戦ったのは3人で経験値が大量に入ってくる。
アスガはレベルが全く上がらない。ユーマはレベルが30も上がり81に。フィオナはレベルが3上がった。
「成程。フィオナのレベルは144か。確かにそれだけのレベルがあれば、まず負けないだろうな」
「あ、あなたのレベルは・・・」
「俺か?俺は211だ」
「2・・・1・・1・・・レベルが200に到達している人がいるなんて・・・」
「意外だろ?」
「先程の戦いは手を抜いていたのか?」
「ああ。フィオナの実力をはかるためにな」
「私は浮かれていた。自分の実力に心酔していた。だが、私はドラゴンに手も足も出なかった・・・たった一撃でドラゴンを葬るとは・・・・」
関心を超えて、現実味がないフィオナ。
「さすがに俺もあせったよ。女の子に傷が付きそうだったから」
「お、女の子?」
「ああ。どうした?固まって・・・顔が赤いぞ?」
「このゲームに入ってはじめて言われました・・・どのプレイヤーも・・・私よりレベルが低く弱くて・・・」
「そうか・・・なら俺はお前を始めて女だと認めたプレイヤーだな」
「はい。ならあなたは私が初めて男と認めるプレイヤーです」
「その前に認める物があるだろう?」
「そうでしたね。あなた様は私が仕える者です。そしてあなたをアガルタ共和国の王様と認めます」
「よし。ならば王様直々の命令だ。フィオナをアガルタ共和国軍隊長からアガルタ共和国軍最高指揮官とする。全力を持ってこの国に奉公せよ」
「はっ!!」
フィオナはアスガに忠誠を誓った。