プロローグ
「ふっ!!」
シュンと風を切る音。ブシャッと身体に飛び散る返り血。
目の前に口を開けてだらしなく血を吐いている男の腹は俺の腕が貫通している。
そしてドサッと倒れる目の前の男。もう既にそれは死体扱いだ。本来プレイヤーに現れている生アイコンから死アイコンへと変わる。
「あ、ありがとうございます」
ひざ丈まである黒いロングコートに腕には赤色の防具、首からは何かの紋章が描かれたタグを身につけている少年の隣にはドレスを着た金髪碧眼の少女が立ちつくす。
「ん?護衛の仕事を頼んだのはそっちだろう?俺はそれに答えているだけだ。お礼を言われる筋合いはない。その辺の対応は既に金で済まされているからな」
「でも・・・・」
「さあ、さっさと行きましょう。あなたの帰りを待っている人たちがいるのでしょう?」
そう言うと俺は前へと進む。
「は、はい!!」
俺がMPと呼ばれる機械と世界を覆う魔法粒子によって作られた世界に来て2年と3カ月がたつ。
現実世界がどうなっているのかは分からない。
だが、俺は帰れる見込みのない世界には用は無い。もうここで生きることを決めた。
この、何でもありなゲームの世界に―――――