くそ、勇者です
二代目勇者。
勇者として召喚されたが、どうしても認めたくない。
白い床に立っていた。たぶん召喚された。
「勇者様!」
「違います!」
「では勇者様ですね!」
「くそ……」
それから、たぶん何日か。
逃げた。
とにかく逃げた。
「勇者様こちらです!」
「行かない!」
「ではこちらですね!」
「だから行かないって!」
走る。曲がる。誰かが増える。
「勇者様!」
「違う!」
「はい勇者様!」
「くそ!」
もう嫌だ。
適当に歩いて、適当に隠れて、適当にやり過ごして。
気づいたら、人の少ない場所に出ていた。
「……はー……」
やっと、静かだ。
「落ち着いたかい」
声がした。
振り向くと、老人が立っていた。
普通の人間だ。
たぶん。
「……はい」
通じた。
「ここは、どこですか」
「村の外れだよ」
通じてる。
「俺、帰りたいんですけど」
「そうか」
会話が、成立している。
思わず座り込む。
「やっと、話が通じる人に会えた……」
老人は静かに頷いた。
「それは良かった」
涙が出そうになる。
しばらくして、老人が何かを取り出した。
古びた装飾のついた、小さな印。
「最後の頼みだ。これを受け取ってくれ」
「……何ですか、それ」
「勇者の証しだ」
固まる。
「……は?」
遠くから声がする。
「勇者様ー!」
「違うって言ってるだろ!!」
老人は微笑む。
「では、よろしく頼むよ」
「頼まれてない!」
声が近づく。
人影が増える。
「勇者様!」
「だから違うって!」
誰かが叫ぶ。
「勇者様が見つかったぞ!」
「くそ、勇者です」
気づけば、手の中にそれがあった。
読んでくれてありがとうございます。




