不完全な攻略本
※注意:本作はAIを使って製作しています。プロットには壁打ち・アイデア出し程度にしか使っていませんが、仕上がりの文章表現や描写はほとんどAIに作ってもらったものをベースにしています。
「お前もこれさえあれば、我が公爵家の次期当主として成功間違いなしだ!
見ろ、この輝かしい記述を!
かのウーロン・マスクやビール・ゲイツのような、名だたる成功者たちの歴史的成功ログも網羅されているのだぞ!」
仰々しく差し出されたその本――『異世界完全攻略本・下巻』を、リーネは恭しく受け取った。
表紙には金色の箔押しがなされ、いかにも「これを持てば人生の勝者です」と言わんばかりのオーラを放っている。
「まあ……! そのような素晴らしい家宝が、わが家に伝わっていたなんて……!」
リーネは感動に震える声を上げた。深紅と蒼金、異なる色の瞳が希望の光をたたえて輝いていた。
実際のところ、彼女は「周囲からの期待」という名の重圧に日々押し潰されそうな少女である。
高飛車な態度で自分を飾り立ててはいるが、その裏では血の滲むような努力を重ね、完璧な令嬢を演じていた。
そんな彼女にとって、読むだけで成功が約束されるという「攻略本」は、喉から手が出るほど欲しかった救いの糸だった。
リーネはそっと表紙を開いた。 金文字で綴られた最初の一行が、目に飛び込んでくる。
『【大成功】英雄ゴールドニオス――吸血鬼王城の正門を単騎で突破。 歴史上最も華麗な勝利として後世に語り継がれる』
「……すごい。本当に、成功の記録ばかり」
リーネは夢中でページをめくった。
そこには、輝かしい偉業の数々が、誇らしげな筆致で記されていた。
失敗の記述など、一行もない。 まるで、この世界には「成功」しか存在しないかのように。
(これさえあれば、わたしも……)
リーネは期待に胸を膨らませ、ふと疑問を口にする。
「……お父様。下巻があるということは、やはり『上巻』も存在するのですか?」
「む? ああ、伝説によれば対になる一冊があったはずだが……。まあ、成功の記録はこの下巻にすべて記されている。
失敗の記録ばかりが載っているという上巻など、探す価値もないゴミのようなものだろうな! ハッハッハ!」
――ところ変わって。
どんよりとした曇り空の下、安宿の片隅で一人、その「ゴミ」を眺めている男がいた。
錆びついたような灰色の目が、ぼんやりと表紙を映している。
「……下巻があるってことは、上巻もあるよなぁ……?」
ぼそりと呟いたのは、冒険者のカイルだ。
周囲からは「どんな窮地でも表情を変えない鉄の理性の持ち主」と評価されている彼だが、今の無表情は単なる絶望の産物であった。
手元にあるのは、古びた、というよりはもはやボロボロの『異世界完全攻略本・上巻』。
伝説の勇者の遺産だと露天商に吹き込まれ、全財産を叩いて購入した一品である。
だが、いざページをめくってみれば、勇者のステータスや攻略法が載っていたであろう箇所は古すぎて文字が消えてしまっている。
読めるのは、過去の人間たちがやらかした無様な『失敗ログ』ばかりだった。
カイルが溜息をつきながら本を見つめていると、真っ白だったはずの余白に、じわじわと新しい文字が浮かび上がってくる。
『【買い物失敗】冒険者カイル――伝説という言葉に踊らされ、ゴミ同然の異世界完全攻略本(上巻)を法外な値段で買わされ、全財産を失う。現在、夕食のパン代にも事欠く有様』
「……うるせぇよ」
カイルは静かに本を閉じた。
なるほど、理解した。
この本は、持ち主の身に起こった「失敗」をリアルタイムで記録し、持ち主に教えるという、嫌がらせ特化型の魔導書なのだ。
「成功ルートは分からねぇが、これを持っていれば『地雷』の場所だけは嫌でも分かるってわけか……」
カイルは懐が軽くなった寂しさを噛み締めながら、ガラクタ同然の「攻略本」を乱暴に懐へ放り込んだ。
勇者が魔王を倒し、世界を救ってから1000年。
世界は再び魔王との戦いの予感に震えていた。
――そんな時代の片隅で、夕食のパン代すら持たない男が、失敗ばかり記録する本を抱えている。
これが、後に世界を救うことになる冒険の始まりだと、この時のカイルはまだ知らない。




