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忘れられた聖女と、最果ての花園  作者: 東雲みどり
「忘れられた聖女と、最果ての花園」

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第7話 魔王が遺した、恥ずかしい呪い

宝物庫の最奥で、二人はついに秘宝が入った小箱を見つける。しかし、そこにはかつて魔王時代のノアが施した、物理破壊不可能な「最強の封印」がかかっていた。

その解除条件は、あろうことか「心から愛し合う二人の誓いの口づけ」。過去の自分が作った悪趣味な仕掛け(黒歴史)に、ノアは赤面して悶絶する。

しかし、フローラは恥じらいながらも「あなたとなら後悔しない」と真っ直ぐな瞳で告げる。

覚悟を決めた二人が震えながら唇を重ねると、箱は甘い音と共に開き、虹色に輝く**《堕天の果実》**が姿を現した。それは、物理的な鍵が開いただけでなく、二人の恋心が確かな「愛」へと変わった瞬間でもあった。

ヴォルグに案内された宝物庫の最奥に、その箱は鎮座していた。

 禍々しい黒い装飾に、不釣り合いなほど可愛らしいハート型の宝石が埋め込まれた小箱だ。

「……思い出した」

 ノアは片手で顔を覆い、深く呻いた。

「俺は、こいつに『最強の封印』を施したんだった……」

「はい、さようでございます」

 ヴォルグは涼しい顔で頷いた。

「アビス様は仰いました。『この世で最も尊く、かつ侵入者が最も持ち合わせていない力こそが鍵となる』と。すなわち――」

「言うな! 頼むから言うな!」

 ノアの静止も虚しく、老竜は朗々と告げた。

「解錠条件は、『愛し合う二人の誓いの口づけ』。……それ以外では、例え神のいかずちを持ってしても傷一つ付きません」

 沈黙が、冷たい宝物庫に降りた。

 ノアは耳まで赤くしてうずくまっている。

 かつての自分は、どれだけ愛に飢えていたのか。あるいは「勇者パーティごときには、こんな真似できまい」という嫌がらせだったのか。

 どちらにせよ、過去の黒歴史が、今のノアに特大のブーメランとして突き刺さっていた。

「……ノア」

 沈黙を破ったのは、フローラだった。

 彼女はドレスの裾をギュッと握りしめ、少し潤んだ瞳でノアを見下ろしている。

「開かないのよね? それをしないと」

「……ああ。俺の魔術は完璧だ。物理的な破壊も不可能だ」

「なら……しましょう」

 フローラの声が震えていた。恥ずかしくないわけがない。

 けれど、彼女は逃げなかった。

「私、人間になりたいの。あなたと一緒に生きていくために、ここに来たの。……だから、これは必要な儀式よ」

 彼女の決意に、ノアも覚悟を決めた。

 立ち上がり、目の前の少女と向き合う。

 10年前、剣を向け合った距離。今は、互いの吐息がかかるほどの距離。

「……後悔しないか」

「あなたが相手なら、しないわ」

 フローラがそっと目を閉じる。

 震える長い睫毛。少し上向いた顎。

 ノアは意を決して、彼女の細い肩を引き寄せ――そして、唇を重ねた。

 カチリ。

 触れ合った瞬間、甘い音と共に小箱の宝石が輝いた。

 だが、二人はすぐには離れなかった。

 鍵が開く音よりも大きく、互いの心臓の音が響き合っていたからだ。

 長いような、一瞬のような口づけが終わり、二人はゆっくりと離れた。

 箱の蓋がひとりでに開き、中には虹色に輝く果実――**《堕天の果実》**が収められていた。

「……開いたな」

「……ええ」

 二人とも、顔が熟れた林檎のように赤い。

 ヴォルグだけが、「ヒュー!」と言いたげに満足そうに髭を撫でていた。

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