表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

遭遇

山岳地帯の細い谷道を進むナナイとライラ。昼下がりの光が岩肌を照らす中、森のざわめきが二人の耳に届いた。


「……あれは山賊か?」ナナイの声に、ライラは軽くうなずき、戦斧せんぷつかを握り直した。背筋が自然と伸びる。


 ――この場所は……まさか。


 茂みを抜けると、ゆるい隊列を組んだ数名の山賊が現れた。

「よぉ、よぉ、可愛いお姉さんと、小さいお兄さん。死にたくなけりゃあ、地竜ちりゅうと荷物を置いていきな」


「馬鹿なことを、お前らこそ死にたくなけりゃさっさと消えろ!」ライラの声が谷間に低く響いた。


 その時、反対側の谷道の奥から現れたのは、見覚えのある三人組だった。アマミ村で悪童と呼ばれたマスタル、取り巻きのフーデスとローデスだ。下卑げひた笑みを浮かべ、ライラの美貌びぼうに釘付けになっている。


「おい、大人しく、こっちについて来い。」マスタルの声は、陽炎かげろうのように揺れた。


「マスタル……堕ちたな!」ナナイが鋭くにらむ。

 ナナイの姿を認めるや、マスタルはヒィッと情けない声をあげ、後ろに跳び下がる。


「情けねー声をあげるんじゃねえ!」先輩格の山賊が罵倒ばとうする。

「違うんです!あいつは……やべえ奴なんです!気をつけてくだせえ!」マスタルは必死に弁解した。


「先を急ぐ。さっさと道をあけろ。死にたくなければな」ライラの低く冷たい声が、風に乗って谷を抜ける。


 山賊たちは品のない笑い声を上げ、挑発をやめる気配はない。

「丁度いい、昨日入った新人に腕試しをさせちゃおうぜ」一人の山賊が指を鳴らすと、前に立ったのは銀色の髪を持つ獣人ジュウジンの青年。ナナイと同年代ほどに見えるが、狼の耳を髪の間に覗かせる以外は、人間と変わらぬ姿だった。その瞳には警戒と冷静さが混ざる。


「まずは、あっちの綺麗なお嬢さんを羽交締はがいじめにしてでも連れて来い!あんまり傷はつけんなよ!お楽しみが減るからな!」山賊たちの下品な声が谷間に響く。

「ひょー!お頭が来る前にやっちまうかあ?」


 ライラはむちを握りしめ、怒りを抑えきれず力を込めた。


――その瞬間。


「ザクッ」


 一瞬で獣人青年の爪が伸び、山賊の一人の首を斬り落とす。声を上げる暇もなく、血飛沫ちしぶきが谷道に飛んだ。


 残る山賊たちの目が見開かれる。ナナイもライラも、予期せぬ一撃に息を飲む。銀髪の青年は静かに立ち、威圧や恐怖を微塵みじんも感じさせない。りんとした存在感だけが谷間に漂った。


 谷道に立ちすくむ山賊たち。首をはねられた仲間の血飛沫ちしぶきに、しばし沈黙が訪れる。


 残る山賊たちは後ずさりし、混乱する。ナナイは腰の短剣を握り直し、ライラも鞭と戦斧せんぷの構えを整えた。


 マスタルは恐怖で顔を歪め、取り巻きのフーデスとローデスも狼狽する。だが、他の山賊たちは怒りで顔を赤くし、声を張り上げる。

「ふざけやがって! さあ、かかれ!」


 谷道はたちまち戦場となった。


 ナナイの剣先が鋭く光り、ライラの戦斧が振り下ろされる。獣人青年はその間を縫うように動き、斬撃を交わすと同時に反撃を加える。動きはまるで影のように速く、山賊たちは混乱に陥る。


 マスタルは必死に突進するも、ナナイの鋭い突きで剣を受け止められ、フーデスとローデスはライラの鞭に腕や脚を絡め取られる。痛みに叫ぶ二人の声が谷に響いた。


 獣人青年が低く唸り、爪を一閃。残る山賊の一人が飛び上がりながらも、彼の爪の一撃で倒れる。


「――ゴミどもめ、お前ら全員、罪を悔いても地獄行きだ。」ライラの声が戦場に冷たく響き、鞭が空中で鋭く振られ、再びフーデスとローデスを翻弄する。


 そしてナナイの剣が、悪童マスタルの胸元を貫いた。マスタルの目が驚きに見開かれ、口からは下卑た笑みすら出ず、谷間に静かに崩れ落ちる。


 谷に、しばしの静寂が戻った。


 戦いを終えた三人――ナナイ、ライラ、獣人の青年――は、互いに息を整えながら、谷の先へ視線を向けた。影と牙が交錯した遭遇は、旅の中で新たな絆と力を示す、試練の一幕となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ