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目には目を、歯には歯を、能力には、能力を  作者: 妄想お面
冒険の始まり

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8/12

失敗

第8話です!

毎日投稿継続中


 私は試験が終了してから不滅ノ翼の監視のもとほぼほぼ監禁状態だった。しかしそこにアイクが来て「もう出ていいよ」と解放されて久しぶりにシャバに出た。


 都会は怖いです。


 と、冗談は置いておいて。


 試験の最中、私は確かに「ダーク」を暴走させてしまった。


 その結果、相手は全員……。


 あの時の血飛沫や、砕ける骨の音が頭から離れない。


「……っ」


 胸の奥がぎゅっと締め付けられる。


 私の意思とは無関係に、あんな殺し方をしてしまう存在。

(今は体力に余裕があるから押さえつけられる。けどこれから本格的にヒュベルに挑戦し始めるなら体力がなくなるだろう。またダークを暴走させてしまうのだろうか?)


 背筋に冷たいものが走る。


 周囲の人々の笑い声や呼び込みの声、屋台の匂いすら、どこか遠く感じられた。

 

 「ミノリ!久しぶりだな。」


 振り返ればそこにはルシアンがいた。


 「大変だったな。話には聞いていたが想像以上だった。」


 「ね〜、びっくりしたよ〜。」


 ルシアンの後ろから声がしたので見れば、そこにはユキちゃんがいた。


 これはお邪魔をしてしまったのではないか?


 「おい、待て、ミノリ。お前変に誤解してないか?」


 「え?今、念願のデート中じゃないの?」


 「いや違う!こいつが勝手について来るだけだ!というかあの牢で言っていたことは忘れろ。いや忘れてください!」

 

 強く否定している。確か恋愛関連の小説で強く否定するのは男性特有の照れ隠しというやつではないだろうか?


 やっぱり!


 「違うからな。今心の中で俺が強く否定したことに対して照れ隠しと解釈しただろ。」


 何故それを!


 「そりゃ、腐っても1ヶ月くらい付き合っているんだ。あまり言葉に出さないミノリでも表情や雰囲気でなんとなく何を考えてられるかは察せられる。」


 え?何それ?今もしかして告られてる?


 「ごめんなさい。」


 「おい、はやとちりで降るなよ。違くても少し心が傷つくだろ。」


 「いゃ〜。完全にボクの存在、お邪魔になっているね〜。お二人もしかしてできてます?」


 「「できてない!」」


 ハモってしまった。ここは話題を変えていかなければ。


 「そういえば2人は何してたの?」


 「ん?ボクはルシアンが王都をふらついてたから面白そうなことがあるかなってつけてたよ〜。」


 「俺は昼食のために店を探していたのだが行く先々で売り切れ、臨時休業、満席による1時間待ちなどにあって彷徨うことになった。」


 これも斧幸の効果によるものなのだろうか?


 「ミノリ、ここにいたのか。なんだルシアンも一緒だったか。」


 声をかけてきてくれたのは修羅丸さんだった。


 「お前はたしかユキだったなちょうどいい。アイク隊長からの伝言を伝えにきたのだが今の時間ちょうど昼か、腹も空いただろう? 一緒に来い。不滅ノ翼、御用達の店がある。」


 修羅丸さんは私たちを導くように歩き出した。


「……御用達?」ユキちゃんが首を傾げる。


「そうだ。外部にはあまり知られていないが、隊員たちがよく利用している酒場だ。」


「おぉ、それは楽しみだな!」ルシアンが声を上げる。


「ふふ〜、秘密の店かぁ。絶対美味しいに決まってるよね〜。」ユキちゃんは目を輝かせていた。

 

 一方の私は――。


(御用達の酒場って……そういう場所で本当にいいのかな。私なんかが行って……場違いじゃないだろうか?てか、私未成年だし。)


 胃のあたりが少し重くなる。それでも修羅丸さんの歩みは止まらない。


 やがて路地を抜けると、通りの喧騒から離れた一角に出た。


 目立たない木造の建物、入口の扉には「赤鷲の羽根」の刻印が彫り込まれている。


「ここだ。」修羅丸さんが扉を押し開けた。


 中に入ると、木の香りと香ばしい肉の匂いが鼻をくすぐる。


「いらっしゃい!おっ!修羅丸副隊長!あんたがここに来るのは珍しいな!」


 奥から豪快な声が響き、筋骨隆々の店主らしき男が大きな手を振ってきた。


「今回は連れがいるからな。選択肢が多い店の方がいいと思ってな。」


 「なるほど!確かにうちは品数では王都1番だと自信を持っていえるな!」


 「今の声!修羅丸ちゃん!こっちに来るなんて珍しい!こっちにきなさいよ!一緒に飲みましょう!」


 「アリアさん!前にも言いましたけど副隊長をちゃん呼びはまずいですって。」


 「いいじゃない!一応同期なんだし!再会を記念して一曲いかが?」


 といい、アリアと呼ばれた黒髪の人はトランペットを吹き始める。


 「演奏はやめろ。」


 修羅丸さんがめんどくさそうに静止を促す。


 「あら?トランペットでは物足りない?なるほど私の美声が聞きたいということね!いいわよなら歌いましょう!」


 「そういう問題ではない。そもそも会話にする相手が演奏していては成立しないではないか。」


 「確かにそれもそうね!なら我慢しましょう!それとあなたの後ろにいる子はルシアンちゃんとユキちゃんじゃない!久しぶり!それと、もう1人はダンジョンを破壊した派手な子!会いたかったわ!私はアリア!こっちの子はストッカちゃん!それと今はいないけど…」


カランカラン


 「遅れて申し訳ない。…?この人達は?」

 

 「来た!バレットちゃん!」


 アリアさんが嬉しそうに声を上げる。


 バレットと呼ばれた人は、冷ややかに私たちへ視線を向けた。


「皆さん、お初にお目にかかります、バレットです。」


 短く、しかし礼儀正しい挨拶。


 思わず私は立ち上がり、軽く頭を下げる。


「は、初めまして。私はミノリ・テンドウといいます。不滅ノ翼の入団試験を……受けていた者です。」


 その言葉に、バレットさんの瞳がかすかに細められる。


「……試験で、あぁ、ダンジョンの壁を破壊した人ですね。」


 その声音は冷ややかだが、責めるような色はなかった。むしろ観察するような眼差し。


「えぇ、その……ご迷惑をかけました。」


 胸の奥が痛む。あの惨状を思い出して、喉が詰

まる。


 「ストッカちゃん今聞いた!バレットちゃんが私達以外の出来事を覚えていたわよ!」


 アリアさんはそういいながらストッカさんを揺らす。


 「アリアさん!落ち着いてください!確かに成長を感じられて嬉しいと思いますが少しこの貴重な出来事を保存したいのでカメラを出させてください。」


 2人ともやけに大袈裟な気がするがそんなに珍しいのだろうか?


 バレットさんも若干恥ずかしそうな気がする。


 「バレット、さっき皆さんと言ったが、前に会ったことあるよな?覚えてるか?」


「……失礼だが、あまり印象に残っていない。」


「やっぱりか!」


 ルシアンが苦笑いを浮かべる。

 ユキちゃんも「僕は覚えてるよ〜。けど、やっぱり向こうはそうでもないんだね〜」と冗談めかして笑った。


 そして話をそこそこに食事となった。


 「食事中で申し訳ないがミノリ、ルシアン、ユキそれとバレットお前達には明日不滅ノ翼ギルド前に来てくれだそうだ。アイク隊長曰く今の力量を確認したいようだ。」


 なるほど、確かに今回は人工遺物だったから所持している遺物の実力も把握したいのだろう。


 「待たせたな!」


 マスターによって料理が次々と運ばれてきて、テーブルの上はあっという間に色鮮やかに埋め尽くされた。


 ジューッと音を立てる鉄板の肉、香草の香りが漂うスープ、そして宝石のように輝くカクテル。


「おぉ……これはすごいな。」


 ルシアンが思わず唸る。


「ねぇ〜!このカクテル、めっちゃ美味しいよ!」


 ユキちゃんが嬉しそうにグラスを傾ける。


「うんうん!昼から飲むお酒って最高よね!」


 アリアさんはすでにご機嫌で笑っている。


「おい、お前ら……昼間から飲むな。」


 修羅丸さんが呆れ顔で突っ込む。


「へへっ、でも美味しいものはしょうがないじゃない〜。」


 ユキちゃんは舌を出して笑い、アリアさんは「同感!」とグラスを掲げた。


 私はジュースのブレンドを一口、冷たさと甘さが舌に広がり、思わず目を見開いた。


「……すごい。飲みやすいのに、深い味がする。」


「だろう?うちの料理と酒は美味いって胸を張って言える。」


 マスターが豪快に笑った。


「美味い理由の秘密を教えてやろう!うちが特別美味いのはな遺物を使って調理してるからなんだ!」


 その一言に、全員の視線が一斉にマスターへ向かう。


「ほら、見てな。」


 マスターは手にはめていた手袋を掲げた。

 

 手袋の甲には、不思議な刻印が浮かんでいる。


 彼がグラスに材料を注ぎ、軽く手で握ると中の液体が自然に渦を巻き、美しく混ざり合っていく。


 音もなく、ただ液体が勝手に踊るように融合していく。


「俺の遺物は《シェイカー》って言うんだ。能力は単純でな、“手で持てるサイズのものを混ぜるだけ”。しょぼいだろ?」


 そう言いながらも、どこか誇らしげに笑う。


「だが、料理やカクテルに使うとよく混ざったことによって旨味が引き立つんだとよ。お客さんに旨いって言ってもらえるから、俺にとっちゃ何よりの宝だ。」


 彼は得意げに手袋を見せびらかす。


「戦うための遺物じゃなくても、こうして人を笑顔にできるんだ。悪くねぇだろ?」


 その言葉が妙に胸に残った。


 「あと、アイク隊長が修羅丸副隊長に追加して聞かせとくことがあるってさっき電話来たぞ。」


 マスターは豪快に笑いながら伝えてくる。


 「ミノリ・テンドウ、ルシアン、神凪・ユキ、バレット・ニールの4名がこれから1番隊に入ることになったってよ。」


 それを聞いて全員固まる。



 翌日


 不滅ノ翼ギルド前


 私達4人は昨日言われた通りここに集合している。


 バレットさんは


 「ラヴェインと同じところではない?何故?どうして?」


 と、自分が希望している隊ではなかったようで昨日からこんな感じでぶつぶつ言っている。


 「4人ともよく来たね。」


 振り向けばそこにはアイクとリリ副隊長がいた。


 「今日は七番隊のところで遺物を使った模擬戦をさせてくれることになったからお邪魔させてもらうよ。」


 アイクがそう言うと、リリ副隊長は顎を軽く引いて答えた。


「了解しました。アイク隊長、どうぞこちらへ。七番隊の訓練所までご案内いたします。」


 その声音は硬質で、無駄がない。

 

 王都の奥へと歩みを進める。


 石畳を踏む足音とバレットの10番隊が良かったという声が響く。


「……やっぱり、まだ言ってるんだな。」


 ルシアンが苦笑する。


 「当然だ。なぜ10番隊ではなく1番隊なのか。理解できない。」


 バレットさんはぼそりと呟き、視線を伏せたままだ。


「まぁまぁ〜。ボクはどこでも楽しめればいいかなぁ。」


 ユキちゃんは楽しそうに肩を回す。


 私はというと、胸の奥で鼓動が早まっていた。


 石造りの重厚な門を抜けると、整然とした広い訓練施設が目に飛び込んできた。


 中ではすでに多くの隊員たちが模擬戦を行っており、金属がぶつかり合う音や掛け声が響き渡っている。


 その熱気に、思わず息を呑んだ。


(これが七番隊……!)


 正面に立っていたのは、背筋の通った長身の女性。金色の長髪をまとめ上げ、瞳は鋭いが柔和さも宿している。


「ようこそ、アイク隊長。七番隊へ。」

 

 落ち着いた声が響く。


 アイク隊長は微笑みを浮かべ、歩み寄った。


「ヤッホー、クルス君、おっと間違えた。ご無沙汰してます、クルス隊長。今日は場所を貸していただき感謝します。」


「構わないさ。若い者が力を伸ばす場を与えるのも、隊を率いる者の務めだ。」


 クルス隊長は柔らかく口元を緩める。


 立場からかアイクもかしこまった口調になっている。


 クルス隊長の後ろから、一歩前に出たのは淡い薄桃色の長髪がさらりと揺れ、穏やかな笑みを浮かべている女性だった。


 軽装のローブ姿、腰には薬品の小瓶がいくつも吊るされている。


「あんさんらが新人さんやね。

うちはメノウいうて、一番隊で回復を任されてるんよ。」


 やわらかな声が響く。


「今回はな、あんたらの訓練に一緒させてもろてるんよ。もし怪我しても、うちがちゃんと癒やすさかい、どうぞ心配せんといてな。それと、これからは先輩として見守らせてもらうし、よろしゅう頼むわ。」


 私は思わず姿勢を正す。


「よ、よろしくお願いします!」


 メノウさんは軽く笑ってうなずいた。


 「いい返事や。遠慮しなくていいから、全力で挑んできなさいな。」


 「模擬戦は一対一を基本とする。これはお互いの新人の力量を試すことも兼ねているため七番隊の新入りを相手にしてもらおう。」


 リリ副隊長の鋭い声が響き渡る。



 最初はルシアン君

 

 斧を肩に担ぎ、笑いながら前に出る。


「行くぞ!」


 相手が剣を構えているところにルシアンが攻め込もうとしたときルシアン君の足元に何故か大きめの石があり、派手につまずいてしまった。

「うわっ!」


 場にどよめきが走る。相手は好機とばかりに切り込んでくるが、


 転びながら振り下ろした斧が、異常な重さを帯びて相手の盾ごと吹き飛ばした。


 地面に叩きつけられた相手は、そのまま立ち上がれない。


 訓練場は一瞬静まり返りやがて驚きの声が漏れた。


(……やっぱり不運を糧に力を増す特異な遺物。斧幸。使いこなせば恐るべき破壊力だけど、扱いを誤れば命取りにもなるね。)


 続いて、ユキ君。


 白の髪を揺らしながら軽やかに進み出す。


「少しだけ、ね。」


 相手が槍を突き出すと、ユキの周囲に冷気が広がった。


 床一面が白く凍り、瞬く間に氷柱が伸びて槍を絡め取る。


 相手は腰まで凍りつき、目を見開いたまま動けなくなった。


 観客席からは息を呑む声。


 ユキ君は微笑みながら手を振り、氷を解いた。


(冷気を生み出し、氷を自在に操る……。制御の正確さも群を抜いているね。力そのものより、扱いに慣れていることが強さの秘訣かな。)


 三人目はバレット君。


 あれは確か人工遺物のゲシュッツ。遺物を持っていないのだろうか?


 バレット君は無駄のない動作で手を掲げた。


 掌からエネルギー弾が放たれ、壁に当たって跳ね返る。


 さらに柱、天井、床を経由し相手の背後から直撃した。


「ぐっ……!」


 相手は声を上げて倒れ込む。


「命中確認。」


 観衆は呆然とその正確さを見つめていた。


(ゲシュッツに跳弾能力はない。おそらく自前の遺物の能力で跳弾させたのだろう。あの感じ跳ね返すほど威力が増すのかな?)

 

 最後はミノリ君の番だった。


「お願いします。」


 相手が勢いよく踏み込んでくる。

 

 ミノリ君は一歩、踏み込み刀でその刃を逸らす。


 流れるように踏み込み返し、相手の首元に切っ先を止めた。


 それだけで、相手は崩れるように膝をつく。


 ……そのとき。



 ミノリ君が手にした刀が、淡い光を放ちながら形を変え始めた。


 弓、槍、盾、目まぐるしく姿を変え、再び剣に戻る。


「……えっ?」

 

 ミノリ君が思わず声を漏らす。観衆もざわめく。


(……やはり潜在能力は未知数か。この前の暴走で少しだけど無意識に武器を変形できるようになったか。)


 訓練場に静かな余韻が残る。


 七番隊の新人たちは、呆然とした顔で四人を見つめていた。


 そこへ、控えていたメノウ君が歩み寄ってきた。


 長い髪を後ろで束ね、穏やかな微笑みを浮かべている。


「……アイク隊長。今年はえらい豊作やな。」


(豊作、か。確かにそうだね。僕自信ここまでとは思っていなかった。)


 僕はゆっくりと頷いた。


「そうだね、メノウ君。粒ぞろいだ。どの子も一癖あるけれど、だからこそ伸びる。君も、彼らの成長をしっかり見届けてやってほしい。」


 メノウ君は小さく微笑み、前に立つ四人へと視線を向けた。


「えぇ。これから先輩として、一緒に戦えるのを楽しみやわぁ〜。」


 四人はまだ余韻の中にあった。


 メノウの言葉を受けて少し安堵の表情を浮かべたものの、訓練場の空気が再び張り詰めていくのを肌で感じ取る。


 ――足音。


 隊列を揃えた七番隊の隊員たちが、規律正しく前へ進み出てきた。


 その動きに一切の乱れはなく、先ほどまで敗北した新人たちと同じ隊とは思えないほどだった。


「お前たちは強い。一般隊員では相手にならない。しかし!七番隊は“個”ではなく“群れ”だ。」


 声の主は、七番隊隊長クルス君。


 低く澄んだ声が、訓練場全体に響き渡る。


 隣に立つのは副隊長のリリ君。


 きびきびとした軍人らしい所作で頷くと、続けざまに言った。


「新人にしては確かに優秀。だが個の力に頼る戦いは、いずれ“壁”に阻まれることになるわ。群れを前にして、お前達がどこまで通用するか確かめさせてもらう。安心しろ。私とリリは手を出さない。」


 そして重々しい足音が響いた。


 隊列の中から、一際大柄な男が進み出る。


 筋肉の塊のような体躯に、無骨な表情。名はまだ呼ばれていないが、明らかに只者ではない。


「7番隊No.3のミノス君まで出てくるか。」


「安心しろ。ミノスが直接戦うわけではない。ミノスはあくまで隊員への指示だしと援護だけだ。良いなミノス。」


 「イェッス!マム!」


 僕は心の中で苦笑した。


 ミノス君が片手を挙げると、整列した七番隊全員が一斉に武器を構えた。


 その統制された動きに、訓練場の空気が震える。


「アイク隊長。次は本番です。……この子たちに、私たちの“群れ”を見せましょう。」


 リリ君の言葉に、クルス君も頷いた。


「前衛部隊、前へ!」


 ミノス君の重い号令とともに、数十名の足音が地を揺らす。

 四人を飲み込むように、集団戦闘の幕が切って落とされた。


 前衛部隊が一斉に突撃してきた。


 統一された斬撃を放つ人工遺物〈ブレッシャー〉。


 振るう勢いが強ければ強いほど切れ味が増すという代物。十数人が一斉に振りかぶる光景は、まるで迫りくる鉄槌のようだった。


「来るぞ!」


 ルシアン君が斧を構えた瞬間、背後から鋭い掛け声が飛ぶ。


「後衛、バフ展開!」


 すぐさま別の部隊が印を組むように遺物を掲げる。


 青い光が走り、突撃部隊の足取りが一層軽くなる。筋肉の動きが滑らかになり、疲労を押し流すような感覚。……バフ系の遺物だ。


「うおおおっ!」


 強化された前衛の動きは速い。斧を振るルシアン君の一撃に合わせ、三人同時に横から切り込んできた。


(連携が取れている……! 一人の攻撃に対して三人が必ず別角度を突く。さすが七番隊の“群れ”の戦い方がうまいな。)


 そこに飛び込んだのはユキ君だった。


 白い冷気が広がり、床を滑るように氷が走る。


 十人以上が一度にバランスを崩し、倒れ込む。


 だが倒れた瞬間、後衛の回復部隊が緑の光を送る。


「立て! まだ終わっていない!」


 倒れた者がすぐに立ち上がる。


 負傷しても次々と交代要員が戦列に加わっていき。


 回復して次に負傷したものと交代。


「しぶとい。」


 バレット君が小さく呟く。


 手を掲げ、ゲシュッツを放つ。


 エネルギー弾が床に跳ね、壁に弾かれ、天井をかすめ、複数の敵を背後から撃ち抜いた。


「ぐっ……!?」


 呻き声があがるが、そこでもまた回復部隊の光が飛ぶ。


 致命傷は与えられない。


 その間にも、防御部隊が前線に透明の壁を展開する。


 複数人によって同時発動された人工遺物〈シルト〉は、まるで大盾のような壁が目の前に現れた。


 ルシアン君が斧で叩きつけるが、分厚い壁はびくともしない。


「ちっ……!」


 ルシアン君が舌打ちした瞬間、壁の端から三人が同時に突撃してくる。


「ルシアン!」


 ミノリ君がすかさず前に飛び出す。


 剣で突きを逸らし、槍へと変形させて突き返す。


 透明な壁の隙間を貫いた一撃に、七番隊の一人がよろめき倒れた。


「な、今のは……武器が……?」


 ざわめきが広がる。


 だがミノス君の怒号が即座にそれをかき消した。


「動揺するな! 交換要員、前へ!」


 即座に新たな兵が前線に加わり、戦列は崩れない。


(……これが七番隊の強さ。個々の能力は並でも、数と統制でいくらでも穴を埋められる。倒しても倒しても次が出てくる。だから群れは止まらない。)


 僕は静かに息を吐いた。


 戦場は混沌を極めていた。


 七番隊の波が押し寄せ、四人はそれを必死に押し返す。


 四人は奮闘を重ねた。

 ルシアン君の斧は不運と共に凶悪さを増し、ユキ君の氷は戦場を次々と制圧する。


 バレット君の跳弾は狙い違わず敵陣の裏へ食い込み、ミノリ君は変幻自在の武器で仲間を支え続けた。


 だが。


「前衛、押し上げ!」


「回復部隊、交代完了!」


「防御部隊、展開を維持しろ!」


 次々と飛ぶ号令に合わせ、七番隊の隊列は乱れない。


 一人が倒れれば、即座に交代要員が穴を埋め、回復の光が重ねられる。


 統制の取れた波は、四人の鮮やかな力を飲み込むように広がっていった。


 ルシアン君の斧が壁を砕く寸前に、新たな壁が展開される。


 ユキ君の氷に凍りついた者も、すぐに仲間が引きはがし回復させる。


 バレット君の弾丸が一列をなぎ倒すも、その背後から新たな列が前進してくる。


 ミノリ君の刃は隙間を突いて敵を倒すが、その度に隊形が修正され、群れは崩れない。


 そして、ついに押し切られた。


 気がつけば、四人は囲まれていた。

 

 疲労と消耗で体が思うように動かない。


「ここまでだ。」

 

 クルス君の号令で攻撃が止む。


 訓練場に、張りつめた空気だけが残った。


(……敗北、だね。)


 僕は胸の内で呟いた。


 四人はそれぞれに強い。


 ルシアン君の斧は暴威。ユキ君の氷は絶対の制圧。バレット君の跳弾は緻密さを極め、ミノリ君の剣術は変幻自在。


 個の力なら、七番隊を遥かに凌駕していた。


 だが、群れの連携を前にしては、その力も一つに結びつくことなく削り取られていった。


(……これが答えだ。君たちが勝つために必要なのは、更なる遺物の習熟だけじゃない。互いの呼吸を合わせ、力を繋げること。その連携こそが、群れを相手に立ち向かう唯一の道になる。)


 四人が悔しそうに立ち上がった


(いい経験になったはずだよ。敗北こそ、成長の糧になる。ヒュベルでの敗北はそのまま死に繋がる今のうちに体験させられたのは行幸。)


 隊長格にやられてもそりゃ格上だからと納得してしまう。


 けど今回、自分と同等いや下の実力のものに集団とはいえ敗北したのはより悔しいはずだ。


 これは更なる成長を期待できるだろう。


 それから地上時間で3ヶ月4人は訓練を続けた。


 そして今日、ついに4人はヒュベル第一階層ボスに挑戦する。


最後まで読んでいただきありがとうございました!


次回の更新も明日です!

是非楽しみにしてください!

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