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目には目を、歯には歯を、能力には、能力を  作者: 妄想お面
冒険の始まり

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7/13

新キャラが大量に出ると大概名前覚えきれない。

第7話です!

楽しんでください!

毎日投稿継続中!

 不滅ノ翼、“決議の間”。


 厚く重い装甲扉を抜けた先にあるのは、鋼鉄と黒曜石を基調とした広大な会議室。


 空間は広く、だが無駄がなく、あまりに静かだ。壁面は黒鉄で構成され、光沢をほとんど持たない。


 無反射の空間は、会話と気配すら飲み込んでしまうかのような沈黙を湛えていた。


 「これより“不滅ノ翼”隊長会議を開始する。本日の進行を務めさせていただくのは、第七番隊副隊長、リリであります。微力ながら任を全うさせていただく所存です。本会議には、第八番隊隊長・シオン殿の就任以降、初の顔合わせとなる方々もおられるため、失礼ながら、順にお名前をお呼びさせていただきます。」


 凛とした声が“決議の間”に響いた。


 司会進行を任された第7番隊副隊長、リリの宣言によって、重く閉ざされた会議の扉が正式に開かれた。


「一番隊隊長、アイク殿。

 二番隊隊長、リィナ殿。

 三番隊隊長、アレイン殿。

 四番隊隊長、カイゼル殿。

 五番隊隊長、神凪・ミレーナ殿。

 六番隊隊長、オルバス・クレイド殿。

 七番隊隊長、クルス・リヴェット殿。

 八番隊隊長、シオン殿。

 九番隊隊長、ヴェロニカ・フィンブリア殿。

 十番隊隊長、ラヴェイン殿――

なお、ラヴェイン殿は本日の会議進行に支障をきたす恐れありとの判断により、欠席となっております。

そして最後に、我ら“不滅ノ翼”を束ねる最高指揮官、団長レオン・フレイム殿。以上をもちまして、参加者の紹介を終了いたします。」


 リリは立ち上がったまま、手元の端末に目を落とし、定刻通りに全員(十番隊隊長を除く)が到着していることを再確認する。


 彼女の指先がかすかに震えていたが、言葉に濁りはない。


 背筋を正し、視線を円卓の全体へと向け直す。


 「本会議の議題は三件。第一、入団試験のボーナス点及び合否の決定。第二に、水天同化について。そして第三……“ミノリ・テンドウ”が起こした問題の処罰についてです。順に討議を進行いたします。ご不明の点がありましたら何なりとお申し付けください。」


 「……ひとつ、よろしいでしょうか」


 会議が静かに動き出したそのとき、穏やかな声が響いた。


 発言したのは、八番隊隊長・シオン。今期から新たに就任したばかりの、会議初参加の若き隊長だった。


 彼は、決して威圧的ではない。それでいて、不思議と目を引く。


 というか僕は円卓の自席に着いたまま、軽く姿勢を正し、進行を務めるリリさんへと視線を向ける。


 問いの内容は、率直な疑問にすぎなかった。


 「十番隊隊長・ラヴェイン殿が欠席とのことですが……その、進行に支障が出る恐れとは、具体的にどういう意味なのでしょうか」


 声を荒げるでもなく、詮索する意図もない。ただ、まだ場の事情をすべて把握しきれていない新任としての素朴な問い――


 その静かな問いかけが、会議室の一角にわずかな緊張と注目を呼び起こす。


 シオンの静かな問いに、司会席に立つリリがわずかに息を呑んだ。


 彼女はすぐに端末を確認し、口を開こうとする。


 「それは……十番隊隊長・ラヴェイン殿に関して、規則上――」


 だがその続きを、別の声が軽やかに奪った。


 「おっと、リリ君。そこは僕たちから話した方が早いかもね。」


 にやりと笑ったのは、一番隊隊長・アイクさん。


 今日は白髪を後ろで束ねた長身の男で、冗談めかした調子ではあるが、発言の内容にはしっかりと重みがあった。


 「……まあ、シオン隊長が知らんのも無理はないか。昔、ラヴェイン隊長のやらかしでな」


 低く響く声とともに言葉を継いだのは、四番隊隊長・カイゼルさんだった。


 短く刈り込まれた赤髪が照明の下でわずかに光を反射し、精悍な顔つきには笑みとも警戒ともつかない表情が浮かんでいる。


 彼の上半身は露わだった。


 筋肉隆々の肉体は、まるで戦場そのものを背負ってきたかのように無駄のない造形をしている。


 左肩から胸元、そして腹部へと流れるように走る赤い線の入れ墨は、まるで獣の爪痕のようでもあり、戦士としての誇りと覚悟を刻み込んだ証のようでもあった。


 てか何故上裸?


「そうそう。何年か前の話なんだけど。とある新人の採点会議でね。ラヴェイン君が推薦してた候補者がいたんだけど……その評価がまあ、とんでもなく甘かった」


 アイクさんは笑いながら両手を広げる。


 「“点数の上限突破”。書類の字が綺麗ってだけで加点した時にはお腹捩れたね。」


 「まあ、それだけならギリギリ見逃されてたさ」


 見逃しちゃダメだろ!


 僕の訴えは無視してカイゼルさんが話を続ける。


「問題は、その候補に他の隊長が“マイナス点”をつけた時だ」


 その場の空気が一瞬ひやりとする。

 

「ラヴェイン君、次の瞬間には殺気を放っててね。場の空気が一変したよ。あのまま誰かが動いたら、たぶん会議室はぶっ壊れてたね」


 「乱闘寸前だったな」


「そうだねー、あの時、団長が止めなきゃマジで乱闘になってたよ。」


 アイクさんとカイゼルさんが愉快そうに笑う。


 「けどね、この話でタチが悪いのは……その“字の綺麗な推薦者”が、結局、実戦に出た瞬間からバケモンじみた働きを見せて、今じゃうちの戦力の中核に入ってるってことなんだよ」


 アイクさんの口調には呆れと同時に、素直な評価が混じっていた。


 「ラヴェイン隊長が選ぶヤツは、なぜか全員優秀だ。即戦力、それも頭ひとつ抜けてるのばっかりだ。だから誰も完全には文句を言えねぇ。……だからこその“例外扱い”ってわけさ」


 カイゼルさんが肩をすくめる。


 そして締めくくるように一言。


 「今回の“不滅ノ翼”入団試験にも、ラヴェイン隊長の推薦者がいる。だから、今日の会議はお休みってわけだ」


 場にはしばし沈黙が流れる。


 その静けさの中に、ラヴェインさんという人物の“面倒くささ”と“確かな実力”が、皮肉めいた形で浮かび上がっていた。


  話を聞き、僕は内心で小さく息をついた。


 ……思った以上に、濃い人たちばかりだ


 その“ラヴェイン”さんという隊長の姿はまだ見たことがない。


 だが、彼の欠席ひとつがここまで語られるという事実だけでも、その存在の重さを十分に感じさせる。


 そして、彼が推した者は間違いなく優秀、それを知っただけでも、この会議に参加した意味はあったとシオンは思った。


 自分も、結果で示さないと……この中では、まだ何者でもない


 決意とも言える感情が、静かに胸の内に浮かぶ。


 そんな僕の沈黙を見計らったかのように、司会席のリリさんが再び姿勢を正した。


 軽く咳払いし、場の空気を締め直す。


 「アイク隊長、カイゼル隊長、ご協力感謝いたします。では、議題に戻ります」


 リリさんの声は凛としていたが、若干早口になっていた。


 どうやら、会議の流れが脱線したことを内心で気にしているようだった。


 申し訳ないと思いつつ会議に意識を向ける


 話題をスムーズに本題へと戻すその手際は見事で、各隊長も自然と端末や資料へと目を戻していく。


 「第一の議題、入団試験のボーナス点及び合否の決定より、討議を開始いたします」

 

 再び、会議の空気が引き締まる。


 ざわつきの余韻は、完全に消えていた。


 「まずは、こちらをご覧ください。映像は、私の遺物により記録されたものです。クリア失敗および戦死者に関する記録は、上申前に除外処理を済ませております。」


 隊長達は各々点数をつけていく。


 この広い部屋に流れるのは映像の音と筆記音だけである。


 数時間後


「これより、採点結果のご報告に入ります。採点基準につきましては、以下の点を重視して評価するという認識で相違ございませんか。」


 遺物の使いこなし(15点)

→ 人工遺物の性能を正確に理解し、的確に使っていたか?

状況判断と対応力(15点)

→ 不測の事態に冷静かつ柔軟に対応できているか?

人工遺物の応用性(20点)

→ 基本性能以上の工夫や応用を見せていたか?


 「こちらが各受験者への配点となります。」


 画面にクリア者の点数が表示される。


 「こう見ますとルシアン,ユキ,バレットの3名は抜きでてますね。」


 「それに今年は実技試験を受けたものが多いな!その分死者も多いが。」


 「試験監督を務めた第七番隊としての見解だが、本日の議題にも挙がっているミノリ、それに先ほど名の出たルシアンとユキ。この三名の存在が、周囲の慎重な判断を鈍らせた印象を受けた。」


 「あとはリリ君がルシアン君の遺物である“斧幸(ふこう)”を触ったってのも今回の死亡者が多くなった原因だろうね。」


 「斧幸(ふこう)?その遺物はなんなのじゃ? 記憶にないのじゃ!」


 白と黒の髪を高い位置で二つに結い、黒いリボンを揺らす少女がいた。


 水色の瞳が静かに本を見つめている。手にしているのは、深い青の表紙をした一冊。


 白いフリル襟のブラウスに、黒いサスペンダーと太いベルト。ふわりと広がる白いスカートが、その装いに静かな輪郭を与えていた。


 彼女が、先程紹介されていた2番隊隊長のリィナさんだろう。


 「おや?リィナさんが知らないとは珍しい。簡単に斧幸の説明をするのなら触れたものが今その場で最も起こって欲しくない不運を起こす。更にこの斧幸は人工遺物と同じように誰でも高い適合率が出るため全員触れた瞬間発動っていうクソ使用だね。あんな優しいルールにしたリリ君だ。きっと死者の数が減るように願っていただろう」


 「結果として、それが“斧幸”によって、かえって多数の死者を出す状況を招いたてしまったのですね。申し訳ありません。」


 「いやいや、リリ君が謝ることじゃないよ。そもそも斧幸の不運をある程度制御できるのはルシアン君だけ。そのルシアン君を推薦した僕にも一応責任が出てくる。」


 「斧幸は置いておいて、このルシアンという奴は、なかなかに美しい動きだな⭐︎」


 長い金髪をそのまま流したまま、高い位置で左右に結んだ黒いリボンだけが揺れていた。艶のある髪は背まで届き、動くたびに光を弾くようにきらめく。


 前髪はきっちりと揃えられ、その下から覗く紫の瞳は大きく、見る者の意識を否応なく惹きつける。まとう雰囲気は凛として整っておりつい目でおってしまう。


 頭には、白いフリル付きのカチューシャと黒いレースのヘッドドレス。白いブラウスに黒のコルセット風トップス、そして、裾にリボンとフリルがあしらわれた黒いロングスカート。すべてが緻密に計算されたようなゴシックロリータの装いだった。


 隙のない所作。そしてなにより、女性にしか見えないその人物の美しさは、男も女も区別なく見惚れるほどのものだった。


 本人はそれをよく理解しているようで、どこか自信に満ちた笑みを口元に浮かべていた。


 声を聞くまで男であることに気が付かなかった。


 え?てか本当に男?なんでゴスロリ?


 「アレイン様、その女装姿を初めてご覧になる八番隊隊長様、たいそう混乱していらっしゃいますわ。」


 僕の思っていたことを代弁してくれた彼女はピンクの長髪を二つに結い、黒いリボンと房飾りが揺れている。光沢のある髪は室内の明かりを受け、柔らかく輝いていた。


 瞳は鋭く、切れ長の目元が印象的な顔立ちに華やかさを添えている。


 白いファーを肩にかけ、黒と青を基調とした装いが身体のラインを引き立てる。透けた布地と編み上げのブーツが、その姿に艶やかさと力強さを与えていた。


 てか、言葉づかいに対して柄悪いな!


 「いつもいっているだろ、ヴェロニカ⭐︎。机に足を乗せるな⭐︎!美しくないぞ⭐︎!それとシオン覚えておけ⭐︎。俺は女装をしているのではない⭐︎!ただ俺の美しさを最も引き出す服がこれだっただけだ⭐︎!いわばこれは女装ではなく俺の引き立て役⭐︎!俺の引き立て役の服、俺が着ればそれは俺ものになる⭐︎!つまり俺装だ⭐︎!」


 何をいっているかは全くわからなかった。


 「相変わらず、アレイン様のおっしゃっていることは少々理解いたしかねますわ。

けれども、自信をお持ちでいらっしゃるのは素敵なことですわね。」


 「そうだぞ⭐︎!ヴェロニカも私ほどではないが良い美しさだ⭐︎!それはシオンにも言える⭐︎!2人とも自信を持って隊長業務に励みたまえ⭐︎!」


 なんか激励をもらった。言動は変だけど結構いい人なんだな。


 「それでは、会議に戻らせていただきます。今回の結果を踏まえ、規定点数に達しなかった者、および皆様の採点に大きな差異が見られなかった者については、いったん議題から除外いたします。これより、点数に開きがあった者に絞って検討を進めてまいります。」


 画面には今日の議題にも上がっていたミノリ・テンドウが写し出される。


 「本受験者に対して高得点を付与されたのは、以下の通りです。

 一番隊隊長、アイク殿。

 三番隊隊長、アレイン殿。

 四番隊隊長、カイゼル殿。

 六番隊隊長、オルバス・クレイド殿。

 七番隊隊長、クルス・リヴェット殿。

 九番隊隊長、ヴェロニカ・フィンブリア殿。

一方、低評価を下されたのは、

 二番隊隊長、リィナ殿。

 五番隊隊長、神凪・ミレーナ殿。

 八番隊隊長、シオン殿。

そして、中間点に相当する評価をされたのは、

団長、レオン・フレイム殿です。

確認したところレオン団長とリィナ隊長は状況判断の項目が0点、人工遺物を使いこなせていたかで点数が分かれております。

なお、本件における最高得点はアイク殿による満点、

最低得点はミレーナ殿による0点であります。」


 レオン団長とリィナ隊長は遺物を暴走させたというところで使いこなせていない、冷静さがないと判断したのかな?


 それにしても、あれほどのことをやった子なのに高得点をつけている人が多い。


 推薦したアイクさんが高得点なのはなんとなくわかっていたけど他の人も高得点をつけるなんて


 「おいおい、ミレーナ君、0点はないでしょ0点は?」


 ミレーナと呼ばれた彼女を確認する。


 彼女は透き通る白髪が背に流れ、光を受けて氷の結晶のようにきらめいていた。静かに揺れる長髪が、整った輪郭をやわらかく縁取る。


 青く澄んだ瞳は鋭さを宿し、引き結ばれた口元には静かな決意がにじむ。


 身に纏うのは純白の着物と袴。襟元からのぞく淡い水色の裏地が、清らかな装いに涼やかな彩りを添えている。黒い帯には紅白の紐が巻かれ、端についた房飾りがわずかに揺れていた。

 

 「私としては彼女が0点ではない方がおかしいと言わざるおえません。彼女はダンジョン内で遺物を使用しました。それだけでも試験違反なのに更にあのようなことをしでかしたのです。いくら自分が贔屓していた方とはいえ満点は看過できないです。それではラヴェイン隊長と変わりません。」


 「残念だけど、僕はラヴェイン君のように極端に甘々ではなくちゃんと正式な評価をしているよ。」


 あぁ、多分ラヴェイン隊長が殺気を向けた相手ってのはミレーナ隊長なんだろうな〜。


 「皆様の中には、本件の詳細をご存じない方もおられるかと存じます。よって、議題一は一時中断、議題二は後回しとし、先に議題三へと移行いたします。こちらが、ミノリ・テンドウによって引き起こされた事件の記録映像であります。」 


 

 ヒュベル第一階層、入り口から3番目のダンジョン。


 私は宝箱を開けた。


 そこにはブーツが入っていた。


 おそらくあのボスの遺物だろう。


 一応カバンに入れておこう。


 『テンドウ・ミノリのクリアを確認、速やかに目の前に出現した扉に入れ。』


 目の前の扉?これかな?


 私は扉に手をかけたそのとき


 「嬢ちゃん、いい遺物を手に入れたな。悪いかそいつは俺がいただくぜ。」


 声と同時にエネルギー弾が飛んできた。


 大きく飛んで回避し、声の方を向けば壁から顔だけ出している変な人がいた。


 「あれを倒すくらいだ。これを避けるのは簡単か。けど数がいたらどうだ?」


 そういうと男は壁から5人ほど人をだす。 


 5人の顔はなんとなく見覚えがある。


 確か入団試験を受けていた人達。


 「こいつらはよ、あのボスを攻略できなくてこのままでは不滅ノ翼に入れないどころか死ぬ。ってなってたところを俺の頼みを聞いてくれるっていう条件で助けてやったんだよ。扉の前の連中は突然監視用のものが壊れたのだから死んだと思っているだろうな。」


 「その頼みってのがここを攻略した人が出た時にその遺物を奪うのに協力しろってところ?」


 「正解!こいつらに水天同化のポストもやると言ったら2つ返事で了承したぞ。てことで嬢ちゃん、悪いけど死んでくれ。」


 水天同化っていえば確かトールの所属していたところって今はそんなことを考えている暇はない!


 私は先程の戦闘によるダメージが抜けていない。


 対してあっちは体力万全、装備品の質は同じ。


 いや、遺物を持っていることから向こうの方が質があると判断。


 人数差はもちろん向こうの方が多い。


 積んでない?これ?


 私の冒険もここまでか〜、試験で終了とは悲しい。けど最後にヒュベルに入れてよかった。


 「ゲシュッツがあるものは一斉放射開始!」


 男の掛け声でエネルギー弾が一斉に襲ってくる。


 『邪魔だ。』


 その声と同時にエネルギー弾は目の前から消えていた。


 何かを握っている感触がある。


 握っているものを見るとそこには預けてあったダークが握られていた。


 『思った以上に我と小娘の結びが強いようでな、少し離れていると強制的にお前の手元に戻されるようだ。なんとも忌々しい。しかし小娘、面白い状況になっておるな!ここは我が変わってやる。』


 有無を言わさず私の意識は無くなっていく。


 「雰囲気が変わったな。それにその刀は遺物か?そして先程の声。なるほど、それがトールの姐さんが言っていた意思を持った遺物か!面白い!それもいただいていくとしよう!」


 「時間がないのでなサクサクいくとしよう。しかしいつもと同じでは味気ない。ちょうど小娘が面白いものを持っているのだからこれも使っていくとしよう。小娘の記憶で確かこれを通して槍の小僧いや、アイクが見るのだったな。アイク、よくみておけ、これが貴様が知りたがっていた我の力の一端だ。」


 一人がゲシュッツを放とうと手を構えた瞬間、



 その手首が、“何か”に斬り飛ばされていた。


 「っ!? ……あ?」

 

 ダークが刀を振り終えた姿勢でいるということは今のはブレッシャーだったのだろう。


 見えなかった。


 刀が。動きが。


 次の瞬間、刀が形を変え、"大鎌"に姿を変えてそれで首を刈る。


 頭部が滑り落ちる前に、ダークは残りの敵へと目を向けていた。


 「次♪」


 別のものが前方にシルトを展開する。


 その背後からもう一人が、ブレッシャーを放つために構えて言う。

 

 「これで終わりだ!」

 

 が、その瞬間。


 土煙が上がる。


 「小娘は前にこれを刀で斬っていたな今回はこれでやってみた。」


 土煙の中から出てきたものは

 

 壊されたシルトとそのシルトを張っていたものの無惨な死体だった。


 ダークの武器は"スレッジハンマー"に変わっており、そこには内蔵が少し付着していた。


 更に形を変え、“ランス”となりもう1人の腹を突き刺す。

 「……なっ」

 

 「なんだったか、そうだ"ゲシュッツ"だ。」

 

 その声に呼応してランスから無数のエネルギー弾が発射される。


 男は内臓と共に、背骨の破片が砕けて飛び散る。


 残った二人は揃って後ずさる。

 目に浮かぶのは、恐怖そのものだ。


 “我”は歩を進める。


 踏みしめるたび、血の飛沫が靴裏で潰れる音が響いた。


 「逃げぬのか?それは良いがその場合、生きたければかかってこい。」


 一人が悲鳴のようにゲシュッツを撃つ。


 至近距離。だが、こちらには関係ない。


 瞬時に刃を盾へと変え、弾を受け止める。


 爆風とともに距離を詰め、武器を“杭打ち機”のような重厚な構造に変化。


 ドガン


 杭がモブの胸を貫き、背骨を砕いて壁へ縫いとめた。


 もう一人は、何もできずその場に崩れ落ちた。


 ナイフは手から滑り落ち、口は震えながら何かを唱えている。


 「命乞いをしてみるか?」


 我は残った1人に声をかける


 「た、たすけ――」


 ズシャッ


 “鞭”に変え振りおろす。


 振り下ろすたびに、皮膚が裂け、筋肉が浮き、骨が見えた。


 三振り目で声帯が潰れ、四振り目で喉がなくなった。


 「本当に命乞いをするやつがあるか?このたわけ。にしても脆いな。骨が、肉が、何もかもが。殺し甲斐がない。」


 五振り目。鞭の軌道が横一文字に走り、胴体が真横に裂けて沈黙した。


 その時、気配が遠のいていく。


 すり抜けか。


 障害物を無視して逃げる、それなりに厄介だ。


 「……面倒だ」


 壁が邪魔だ。なら、壊すだけだ。


 我は武器を“戦鎚”に変え、放つ


 "ゲシュッツ"


 一直線に壁を破壊して進む。


 隣にあるダンジョンに繋がるなどあったが無視して進んでいく。


 一撃ごとに砕ける壁。石片と砂煙が吹き上がる。


 壁の向こうで、奴の足音が焦るように続く。


 我は無言で、精密に、ただ破壊を重ねる。


 壁を三枚抜いたところで、すり抜けた先に奴の背中が見えた。


 こちらを見るなり、顔を歪めて叫ぶ。


 「なんで追ってこられるんだ……!?」


 「通路を使う意味がないからだ。お前が避けているだけの物を、我は壊すだけ」


 奴が再び壁に逃げ込む。


 我は、武器を“鎖状の連結刃”に変形。即座に放つ。


 鎖が壁を穿ち、背中を貫通する。


 臓腑が引き裂かれ、壁の裏からぶちまけられる。


 奴がそのまま、這いつくばるように倒れる。


 逃げる意思はもうない。


 奴は背をつけ、片腕だけを震わせていた。

 

 「やめろ……やめてくれ……!」


 我は足を止めない。


 奴の頭の横に立ち、無言で武器を構える。


 「あの雷娘と同じ所属と言っておったから期待したが期待外れにもほどがある。我の貴重な3分間をどうしてくれる?」


 刃は“無数の先端を持つ粉砕輪”となる。


 それを振り下ろすと、頭蓋は跡形もなく、床へ吸い込まれるように消えた。


 「キシャー!」


 「鬱陶し!我は今、機嫌が悪い!」


 我は刀に戻して声の方を斬りつける。


 どうやら斬った対象は最初にいたダンジョンとは別のところのボスだったようだ。


 宝箱と扉が出現していた。


 ちょうど戻るのが面倒だったのでこのままこの扉を使って帰ることにしよう。


 我はその扉を開けてミノリに身体を返す。



 不滅ノ翼本部"決議の間"


 「以上がミノリ・テンドウが引き起こした問題です。」


 場は静寂に包まれた。


 「追加の報告ですがその後ミノリ・テンドウは階層ボスから1番目の扉から出てきました。」


 リリさんの言葉と同時に、会議室に再び静寂が満ちた。


 全隊長の視線が、前方に映された記録映像の停止画に注がれる。そこには、血に濡れた足で扉をくぐる少女、ミノリの姿。


 しばしの沈黙の後、アイクさんが軽く口元を歪めて、口火を切った。


 「いやはや……派手にやったね。僕の推薦者とはいえ、ここまでの騒ぎになるとは思ってなかった。正直、予想以上だよ。」


 「予想以上で済ませるな。」

 それを遮るように、クルスさんの声が響いた。


 「受験者の暴走、明確な他者への殺害行為、さらに他ダンジョンへの干渉。これは試験中の逸脱と片付けるのにはデカすぎるよ。規律違反として扱うべきです。」


 そう声をあげたのはミレーナさんだった。白い髪が静かに揺れ、青い瞳が迷いなく言葉を紡ぐ。


 「これは“事故”では済まされません。彼女が使用した遺物、意志を持つ黒の刀“ダーク”。その存在と、制御不可能な暴走が確認された今、危険因子として隔離措置を講じるべきです。」


 「うーん、でもねぇ。」


 アイクさんが肩をすくめ、肘を机に置きながら答える。


「試験に関してはリリ君がクリアって言ってなかった?」


 「はい、私は扉を潜るのにはラグが発生するのでボスを倒し、宝箱を出現させるまでの時間でタイムを測っていました。」


 「ほら、試験外での出来事だから遺物の使用で失格はない。それに彼女が倒したのは、不正に協力し、逃げ延びていた元受験者たち。そして、階層内の敵。制裁の方法はアレだったけど、結果的には正しいターゲットに対してのみ攻撃している。」


 「庇おうと必死になっているようにしか聞こえないのですが。」


 2人の視線が交差した瞬間、緊張感が会議室を走る。


 その緊張をヴェロニカさんの一言が加速させる。


 「まぁ、お二方のおっしゃることも理解できますわ。ですが問題は、あの方が今後も制御不能になってしまわれるのかどうか、そこではございませんこと?」


 「……」

 

 その言葉に、誰もが口をつぐんだ。


 「俺としてはこの力を使わないのは勿体無い⭐︎!制御できないから処分⭐︎?それは美しくない⭐︎!できないならできるようにするまでやればいい⭐︎!」


 「確かにアレインの言う通りだ。それに試験で不正をしてないんだろ?何か問題あるか?」


 「ああ、それについては第七番隊隊長として、この名に懸けて保証する。」


 「なら、どう誤魔化すかってところか?」


 「それなら…あのすり抜ける奴は…指名手配に…なっていた。アレを…捕まえるため…ということで、いいだろう。」


 男のチャコールグレーの長い髪が、静かな空気の中でゆるやかに流れていた。


 整えられた前髪が片目を隠し、見える方の瞳は淡い紅を湛えていた。


 その男から一言が放たれた瞬間、会議室の空気が一変した。


 場にいた数名が、思わず顔を上げる。



 まるで、雷の音が届く前に稲妻が落ちたかのように。


 数秒の間を置いて、アイクさんが小さく吹き出した。


 「……いや、驚いたよ。オルバス君が自分から喋るなんて、何年ぶりかな?」


 「静かだからって、喋れないとは言ってねぇだろ」


 カイゼルさんが口の端を吊り上げながら笑う。


 「では、今の発言は一種の奇跡ということで、議事録に赤線でも引いておくか⭐︎!」


 アレインさんが冗談めかして手元の端末をいじる。


 その様子に、僕はほんのわずかに眉を寄せた。



 ……何か、今の発言は“特別”だったのか?


 確かに、妙な“重み”があった気がする。


 「水天同化も、指名手配犯を匿っておったとなれば、さすがに大事にはできぬかの。

まぁ、他の派閥と揉めずに済むのなら、わらわから異論はないのじゃ。」


 第二番隊隊長、リィナさんの冷静な声が静寂を切り裂くように落ちる。


 彼女の言葉には感情が希薄で、打算と現実のみが垣間見えた。

 その瞬間、数名の隊長たちがわずかに肩の力を抜いた。


 リィナさんが処罰から一歩引いた、それは、議論が一つの方向へと流れ始めた兆しだった。

 だが。

 「……私は、反対です。」

 場の空気が再び静まる。

 座ったまま、ミレーナさんは視線を逸らさずに言葉を続けた。

 「他の派閥にどう見られるかではなく、不滅ノ翼としての“基準”が問われているのです。あの力は制御できていなかった。それは事実。そして、それを理由にまだ公正の余地があった命を奪った。試験での目的を見失い、遺物に身を委ねた者に、正式な資格を与えるべきではないと私は思います。」

 その瞳には微塵の迷いもなかった。

 「今はただの一件に見えるかもしれません。ですが、今後、この判断が先例となるのです。どれだけの力があろうと、不安定な存在を見逃せば、我々の規律が歪みます。それこそが、最も危険な“ほころび”となる。」

 誰も返さない。

 彼女の語調は変わらぬまま、しかしそのひとつひとつの言葉が、場に杭を打つように響いていた。

 「……例え今回、他勢力に弱みを見せない道があるとしても、だからこそ“自分たちで処す”べきです。私は、今ここで、その判断を下すべきだと考えます。」

 ぴたりと、誰も動かない。

 息すら整えるような沈黙の中で、ミレーナさんは椅子の背に身を預けた。

 その姿はまるで、氷のように冷たく、そして揺るぎなかった。

 「ミレーナ君、君は勘違いしているよ。」


 「勘違い?私が何を勘違いしてるというのですか?アイク隊長。」


 「そもそも今は試験の点数を決めている段階だから入団させるどうかはそのあとだね。そして僕たちは今回、ある程度実力があればどんな奴でも採用するということで一定以上の点数を取ったら合格って話だったじゃん?なら問題ないでしょ。

 それとここからは僕の考えになるんだけどこの不滅ノ翼が大きくなりすぎた弊害なんだけどこの組織は秩序維持や権力争い、そんなものを優先事項としてあえてつけるなら3番目以降じゃないかな?この不滅ノ翼の優先事項はヒュベルの攻略、これ一つ。

 そんな中、規格外の力を持った遺物を所持している少女が来た。その子は入団する気がある。なら取り込まないと。秩序を守って入ればヒュベルは攻略できる?それとも他者を慈しむ心があれば攻略できる?そんなもので攻略できるのなら3年前に僕の部隊は攻略できてるよ。ヒュベル攻略に必要なのは強さと狂気だ。狂ってなきゃヒュベル攻略なんてできはしない。その点ミノリ君は満点だ!」


 アイクさんの言葉が終わると、会議室には一瞬、奇妙な静けさが広がった。



 その沈黙を破ったのは、ゆっくりと背もたれから身を起こす、一人の人物だった。


 「なるほどな……どちらの言い分にも一理ある。だが、結論を急ぐには早すぎるだろう。」


 レオン・フレイム団長。



 不滅ノ翼の団長であり、十人の隊長たちを束ねる存在。


 彼が立ち上がるだけで、場の空気が自然と正されていくのを僕は感じた。


 艶やかなオレンジゴールドの髪が、肩のあたりで波打っている。



 光を受ければ夕陽のように燃え、影に沈めば琥珀のように鈍く沈む、不思議な深みを持つ色だ。



 長めの前髪が額の右側を流れ、端整な輪郭と鋭くも落ち着いた目元が、彼の冷静さと胆力を物語っている。


 着ているのは、黒を基調とした長衣。



 金の刺繍が一筋、胸元から裾まで走り、中央には不滅ノ翼の徽章が光る。



 その背筋はぴたりと伸びていて、戦場の荒波を幾度も超えてきたことを自然と想起させる存在感だった。


 レオン団長は視線を一度、ミレーナさんへと向けた。



 「ミレーナの言うとおり、秩序は組織の土台だ。例外を重ねすぎれば、やがて瓦解する。……それは事実だ。」

 

 次に、アイクさんへと。



 「同時に、アイクの言うことも理解できる。ヒュベルは、常識の通じない異常の集積だ。理性だけで挑み続けるには、あまりに過酷すぎる。」


 その視線が、隊長全員へと広がる。



 「だからこそ、この場にいる全員が点数をつけ、判断を下すことに意味がある。」


 彼は懐から一枚のデータシートを取り出し、テーブルに投げるようにして置いた。


 「本件において、テンドウ・ミノリの筆記試験と実技試験における最終評価――

 各隊長および私による採点の平均点を算出したところ、152点。これは合格ラインをギリギリ超えている。」


 その数字を聞いた瞬間、隊長たちの間に再びざわめきが生じた。


 レオン団長は続ける。


 「正直に言おう。私自身、暴走の危険性は否定できないと考えていた。だが、今の段階で“排除”を選ぶのは早計だ。何より、ミノリ・テンドウは試験中に“明確な試験違反”を行ったわけではない。遺物の異常出力はあったが、それを導いたのは“襲撃”であり、あくまで外部要因だ。」


 レオン団長は再び視線を鋭くした。



 「仮に、この力が制御不能なものなら 、彼女は今後ヒュベルに向かわせることはない。だが、管理と指導の余地があるのなら、それを我々が育て、統率する。……それが不滅ノ翼という組織であり、“攻略部隊”であることの証明だ。」


 最後に、彼は再び全員を見渡した。



 その目には、ただ一つの強い光が宿っていた。


 「ヒュベルを攻略する。それが我々の最優先事項だ。そのために必要な力があるのなら、それを選ばねばならない。そうだろう?」


 沈黙の中で、誰も異を唱えなかった。


 「……承知しました。」


 長い沈黙の後、ミレーナさんが静かに口を開いた。



 その声音にはまだしこりが残っていたが、団長の言葉に抗う色はなかった。


 「団長がそうおっしゃるのであれば、これ以上の異議は申しません。ただ、私の立場として……あの者の観察と監視は、必ず必要であると申し添えておきます。」


 凛とした声。


 納得はしてないようだが、団長の決定には従った。


 レオン団長は頷きだけでそれを受け取ると、椅子に再び腰を落とした。



 「……ありがとう、ミレーナ。」


 そして司会を務めていたリリが、ようやく口を開く。


 「それでは議題三――『テンドウ・ミノリの試験に関する処遇』については、入団を許可し、引き続き経過観察を行う方針で、可決といたします。」


 その瞬間、重々しい議論の空気がふっと和らいだ。



 だが、会議室の空気はまだ完全には緩んではいない。



 それぞれが抱える思惑や不安が、無言のまま場に残されていた。


 僕はふと、テーブル越しにミレーナさんの横顔を見やった。



 彼女の瞳は、まだどこか遠くを見ていた。

 

 その視線の先にあるのは、正義か、それとも危機感か。


 ……ただの入団試験で、ここまで話が大きくなるなんて。あの子、いったい何者なんだ?


 会議は、議題1へと戻って行った。


 議題1の残りは受かった子をどの隊が取るかという話になる。


 「はいはーい、僕はミノリ君、ルシアン君、ユキ君の3人が欲しい!」


 欲しい子の探り合いをするのかと思えばアイクさんがいきなり要望を出した。


 「お前が欲しがるなんて珍しいな。だが、それは欲張りすぎではないか?」


 「バレットも欲しいと騒ぎそうなものじゃが……

どうしてやめてしもうたのじゃ?」


 「だって、バレット君ってラヴェイン君が推薦してる子でしょう?ラヴェイン君とは揉めたくないもん。」


 「本当か⭐︎!俺には負けるが彼女の戦闘は美しかったから是非うちにと思ったが、ラヴェインの推薦者ならやめとくか⭐︎!それよりミレーナは神凪・ユキを取らんのか⭐︎?同じ神凪一族なら何か思うところはあるだろ⭐︎?」


 「同じ一族だからといって贔屓はありません。確かに戦闘センスはありそうですが自由人すぎます。これでは私の隊の規律を崩しそうです。」


 「第七番隊の判断として、残留者は全員こちらで引き受ける。我が隊には、いかなる者であれ戦力に変える特訓制度がある。“ブートキャンプ”と呼ばれている、地獄のな。」


 「クルス様は相変わらずお怖い方ですわ。

九番隊といたしましては、参謀になれそうな方がいらっしゃいましたら、ぜひともお迎えしたいところですの。

 わたくしどもの隊は、副隊長を除きますと皆さま少々猪突猛進でいらっしゃいますので、作戦をきちんとお立てになれるお方が必要ですわ。」


 「二番隊は、今回は遠慮しておくのじゃ。

これから大きな任務を控えておるゆえ、新入りを育てる暇がないのじゃ。」


 「6番隊にはいつも通り寡黙そうな子を当てる感じで大丈夫?」


 オルバスさんは静かに頷く


 「8番隊は僕のスピードについてこれる人がいたら欲しいです。」


 全員が黙る。


 「シオン君、君のスピードについて来れるって相当上積みだよ。それを求めるって鬼だね、君。」


 「だがいいぞ⭐︎!シオン⭐︎!自分の要求を素直に出せるのは美しさの基本だ⭐︎!」


  「……で、アイク。その3人を全部持っていくつもりか?」


 カイゼルが半眼で問う。声には呆れと興味が半々に混ざっている。


 「もちろん。僕のとこにピッタリだと思ってるんだ。」


 アイクは悪びれもなく、にっこりと微笑んだ。

 

「お前、修羅丸がいる上でそれか。あれだけの副隊長がいて、さらに有望株3人も持ってくとか……欲張りにも程があるだろ。」


 「いやいや、これには理由があるんだよ。まず、ミノリ君は監視の必要があるってさっき決まったじゃん?

 それなら僕が適任でしょう?

 なにしろミノリ君が王都に到着するまでの期間一緒に旅していたのは僕だ。ダークへの対応はこの中では1番できてると思うよ。

 それとルシアン君の遺物である斧幸、これも一応監視対象にした方がいいんじゃないかな?誰かに触れさせるだけで不運を起こすとか普通の舞台ならまず扱えない。けどうちならそんなことを気にせず自由にできる。

 それに2人とも僕が推薦したから責任をとって監視は僕がするよ。」


 「確かにミノリの方にインパクトを持っていかれていたがルシアンの遺物も相当やばかったな。」


 「触れただけで不運を起こす。本人はその不運も計算しながらの戦闘。確かにこれだと私の部隊の規律を崩す恐れがありますね。」


 「てっ、まて、その言い分だとユキもとる理由にならない。」


 「そんなの決まってるじゃん。僕だってなんの監視も必要なく素晴らしい人材が欲しい!」


 「そのような理由でお許しになるなんて、少々不公平ではございませんこと?

わたくしも、ユキ様はたいそう聡明でいらっしゃいそうですし、ぜひともお迎えしたいですわ!」


 「ここで1つよろしいでしょうか?」


 ミレーナさんがここで話を遮る。


 「これは私の一族の話になるのですが私の一族は代々長の家計に受け継がれる遺物が複数あります。これを秘宝と呼んでいます。通常、秘宝を受け継いだら里をでない掟になっています。」


 「なるほどのう……その口ぶりから察するに、あやつが持っておった遺物は、それと酷似しておるということかの?」


 「その通りです。違かったらそれまでなのですが、もし、万が一、秘宝だった場合、神凪・ユキは神凪の長の使命を受けてきている。もしくは盗んで来た。ということが考えられます。どちらにしても大問題です。」


 「なるほど、確かに問題じゃ。」


 「今日の会議でこのことをどうするかを聞く予定でしたがそこにいるアイク隊長が秩序などが二の次でいい。責任はとる。などどほざいていたので、言葉の責任をとってもらい、この問題をアイク隊長に一任するのはどうでしょうか?」


 「待ってください、それは丸投げなのでは?」


 「気にするな、シオン、アイクはヒュベルを攻略するためにもしもの時は神凪一族との矢面に立ってくれるそうだ。」


 「そうだぞシオン⭐︎!アイクはそのこともわかっていて爆弾をすべて受け取ってくれたんだ⭐︎!」


 「感心したのじゃ、アイク。わらわはそなたを少し侮っておったようじゃな。まさか、万一問題が起きたとき、不滅ノ翼に火の粉がかからぬよう、そなたが自ら責任を負うつもりでおったとはのう。」


 カイゼルさん、アレインさん、リィナさんが口々にアイクさんに明らかに個人にやらせてはいけない問題を押し付けていっている。


 「この流れになったか〜。この際!爆弾が一個、2個増えても変わらない!僕に任せな!」


 「そうか…アイク、爆弾はもう一つ増えても大丈夫なのだな。」


 団長が口を開いた。


 団長は会議のときは隊長同士の揉めているとき以外では口を開かないと言われている。


 その団長が特に揉めているわけではないこの状況で口を開いた。

 

 「……ラヴェイン隊長の推薦を受け、少し調べさせてもらった。バレット――近く入団予定の新人だ。これまで彼女はラヴェインの下で訓練を積み、一定の成果を既に上げている。技量に不足はない。だが、それだけで通用する部隊ではないことは、君もよく知っているだろう。彼女は、必要と認めた者としか関わらない。無駄を嫌い、効率を優先する。だが、それが本当に強さと言えるのかは――我々が教える必要がある。不滅ノ翼は、ただの戦力集団ではない。他者と共に生き、互いを信じて動く。それこそが、この組織の力の本質だ。だからこそ、彼女には“別の刺激”が要る。配属先をどこにするか悩んでいたが今のお前の発言に私は感動した。アイク、お前の隊に彼女を預ける。お前の隊には、彼女に必要な“答え”があると、私は信じた。安心しろ。ラヴェインには、私から直接伝える。……よろしく頼む。」


「待って、団長、確かに僕はさっき爆弾が一個、二個増えたところで変わらないっていったけど、ラヴェイン君の推薦者しかもずっと訓練をしてきた子を引き受けるって爆弾以上にヤバいものを引き受けることになるじゃん!」


 「アイク隊長、団長がここまで頼んでいるのです。引き受けるのがここは筋というものではないでしょうか?」


 ミレーナさんが大分喜んでいらっしゃる。


 笑みを隠しきれていない。


 「よかったではないか、アイク。自分の立場が持つ言葉の重み、ようやく学べたようじゃな。これに懲りたのなら、これからの発言には少しは気をつけるのじゃぞ?」


 「ミレーナ君もリィナさんも結構さっきからものすごい刺してくるね。仕方ない、バレット・ニール君、ミノリ・テンドウ君、ルシアン君、神凪・ユキ君の4人を1番隊に入れ、育てるよ。」


 そして他の面々も振り分けられていき議題1と3が終了した。


 「続きまして、議題ニ、水天同化に関する案件へと移行いたします。」


 水天同化


 かつて、不滅ノ翼と並び称されるほどの巨大ギルドであり、頂点を競い合った存在。


 その強さの象徴は、トップ層のエリートチームだった。彼らはヒュベル攻略に挑み、いくつかの階層で当時の前人未踏の記録を残したが、ある時、全滅。


 隊の要を失った水天同化は一気に衰退。

残されたのは寄せ集めの中堅と未熟な若手だけで、力の空白を埋めることは叶わなかった。


 やがて、不滅ノ翼がトップギルドと呼ばれるようになる中、水天同化は次第に影を潜めていく。


 今では「犯罪者であろうと、実力さえあれば迎え入れる」そんな噂があるギルドになった。


「水天同化は、今回のミノリ・テンドウとの戦闘映像において犯罪者を匿っている事実が明らかとなりました。ここで問題となるのは、末端構成員に至るまで高品質の遺物を所持していた点です。修羅丸副隊長が交戦した三名の構成員ですら、いずれもB級以上の遺物を使用。そして、ミノリ・テンドウと対峙した個体については、その利便性からA級と判定すべきと考えられます。

 水天同化は既に衰退したギルドであり、いかに遺物の扱いに長けた犯罪者を囲い込んでいようとも、末端にまでB級遺物を行き渡らせるのは不可能と言ってよいでしょう。我々自身が人工遺物を採用しているのも、それが現状では為し得ぬ領域だからです。」


 確かに高いランクの遺物が出るのは運の要素も絡んでくる。


 少しでも確率を上げるのなら更に下の階層に行けばいいがそうするとより危険度が増して命を落とすことになる。


 だから城跡はなるべく浅い階層で遺物を稼ぐことである。


 「この点については、長らく解明されぬままでありました。しかしアイク隊長からの情報提供とリィナ隊長のご協力により、その真相が判明いたしました。」


 「僕の情報で、水天同化関連だとトールに関してかな?鑑定に回していたあのナイフが何か足取りを掴めたものだったのかな?」


 「あのナイフは、どこにでも売っておるただの代物じゃったよ。じゃが、あんなものでアイクの遺物と渡り合える者で、しかも名がトールとなれば……もうあやつしかおるまいの。」


 トールという名で高い実力者って言ったらそれって!?


 「ソーマネクル第七司教、嵐喰らいのトール。彼女を置いて他にはいないね。」


ソーマネクル

 表向きは「救済と祈り」を掲げる宗教団体のように振る舞っているが、その実態は不明。


 確かなのは、彼らの“司教”と呼ばれる十人が、すべて強大な遺物を操る化け物であるということだけ。


 不滅ノ翼の間でも、その存在は 「得体の知れないもの」 として囁かれていた。


 ある者は「死者を蘇らせる秘儀を持つ」と言い、またある者は「人の罪を喰らい尽くす」と噂する。

しかし誰も、その実態を確かめた者はいない。


語られるのは


祈らぬ者は裁かれる



彼らの「愛」は呪いと同義



どんな傷を負わせても、必ず立ち上がる



という、不気味でおぞましい話ばかりだった。

「ソーマネクルと関われば、心を削られる」

それが探索者の間での常識となっている。


「アイクはこのあたりに興味を示さなんだようじゃが、ソーマネクルにおいて嵐喰らいは第二司教、無限のアニマ・フェルマータほどではないにせよ、名の知れた司教なのじゃ。

あやつはただ強者との戦いを求めておるだけでな、国の重要支部や、ヒュベルへ挑もうとするギルドに次々と攻め入っておるのじゃよ。」


 「あぁ〜、ソーマネクルの司教だったのかそりゃ強いわけだ。」


 「アイクの話によれば、確か“ダーク”であったかの?あやつとやり合って、片腕を失うだけで済んだのじゃったな。……いや、これは嵐喰らいが健在というより、ダークが司教級すら圧倒できる域にあると言うべきかの。」


 「以上の事実を総合いたしますと、水天同化が所持する遺物の大半はソーマネクルによって供与されたものと推測できます。」


 僕はソーマネクルの名を胸中で反芻していた。


「奴らの介入は、既に一ギルドの問題に留まりません。ここは国に協力を要請するべきでしょうか?」


 「いや、確たる証拠がなければ国は動けないだろう。」

 

 「仮に証拠が集まって水天同化を潰しにかかったとき、あいつらの信仰上必ずソーマネクルは出張って来る。その時司教レベルが出てきたときそれを相手にできるのは…」


 「俺くらいのもんだろうな☆!」


アレインさんが笑い飛ばす。しかし、誰もその軽口に乗らない。


「……それを軽口で済ませておれるうちは、まだ平穏が保たれておるということじゃろうな。」


 リィナさんの言葉を最後に、会議室にはしばし沈黙が広がった。


 「水天同化は衰退した……はずだった。」


 アイクさんが低く呟いた。


 「だが奴らはまだ、噛みつく牙を隠していた。いや……ソーマネクルが新しい牙を与えた、と見るべきか。」


 「証拠を押さえねばならんのぅ。」


 リィナさんが短く言い切る。その瞳は迷いなく、鋭い光を帯びていた。


「遺物の流れを追い、ソーマネクルと水天同化を繋ぐ線を示す。それなくして国は動かない。」


そして団長が口を開く。


「では、方針を確認しよう。第一に水天同化とソーマネクルを結ぶ“証拠”の確保だ。遺物流通の経路を洗い出し、国を動かせるだけの材料を整える。

 奴らが牙を研いでいる以上、先に抉り出すしかない。

 第二に人材の育成だ。我々がいかに強くとも、司教レベルに対抗できる者は限られている。次代を担う者を早急に鍛え上げねばならない。」


「証拠集めと新人育成、か。」


 アイクさんが肩を竦める。


「まぁ、地味だが必要なことだな☆。」


「地味であろうとなかろうと、それが未来を繋ぐ ぎます。」

 

 ミレーナさんが鋭い視線を放つ。


「不滅ノ翼の名に恥じぬよう、全員が肝に銘じておけ。」


 その言葉で議題は締めくくられ、会議は解散となった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

今回ものすごく新キャラが出ましたが皆様大丈夫だったでしょうか?

私自身覚えられるか不安です。

今回で苗字ありとなしが結構分かれてます。

この世界の一般人は普通苗字がないので苗字がある人は王家、貴族、特殊な家系、もしくは勝手に名乗っている人だけになります。不滅ノ翼は身分など完全に無視しているため例え平民でも貴族より権力を持つ可能性が大いにあります。

ちなみに不滅ノ翼副隊長で男爵の爵位が国から与えられます。


改めて最後まで読んでいただきありかどうございました!


次回なのですが明日が日曜日ということもあり2話連続投稿致します!


第8話 2月22日0時投稿予定

第9話 2月22日13時以降投稿予定


第9話に関しては第1章のラストの回ですのでお楽しみください!

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