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目には目を、歯には歯を、能力には、能力を  作者: 妄想お面
冒険の始まり

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5/12

GO!ヒュベル!

第5話です!

お楽しみくださいませ!

 筆記試験が終わった。


 唐突に試験が始まっていることに驚くかもしれない。しかしこれは私にとっても急なことなので気にしないで欲しい。


 私は団子を食べてるとき修羅丸さんに明日が試験であることを伝えられた。


 不滅ノ翼入団試験は一年に一回というペースでやっているそうだ。


 本来の予定では今回の試験には王都にまだ着いていない予定だったので来年の試験に向けて準備する予定だった。


 しかしカエルムさんの登場で全てが変わった。


 カエルムさんの転移により王都に予定よりも早くというより試験の前日についてしまった。


 これをアイクは幸いだと思いそのまま私とルシアンを試験に応募してきたそうだ。


 あのとき団子屋から去ったのはこれが理由か!!


 それからは団子屋から切り上げられてひたすら修羅丸さんから座学の勉強を受けて今に至る。


 途中アイクが修羅丸さんに詰められていた気がするが気のせいだろう。


 そして今、筆記試験が終わった。


 この終わったは試験時間が終わったのか試験結果が終わったのか、解釈の仕方は任せる。


 ただ私は涙を流した。


 私は次の実技試験に向けて気持ちを切り替える。


 そうすると先程まで試験をしていた会場に1人の長身の女性が入ってきた。


 「諸君、これから実技試験を行う。なお、この実技試験は命を保証しないものとする。そのためこの同意書にサインをして欲しい。」


 女はいきなりそんなことを言い、紙を渡して来る。何かの冗談だろうか?


 「なお、同意書にサインをしない時点で筆記の結果がいかに良くても失格とする。」


 Wow〜まじそうだ!


 「そんなこと納得できるわけないじゃないですか!試験に命をかけろなんて!」


 1人の少々が叫ぶ

 

 おっ,まともなこと言ってるじゃん!


 名前は知らないがこの少々は私の言いたかったことを代弁してくれた。


 長身の女性はため息混じりに答える。


 「君、ひいては諸君らはここをどこだと心得ている?ここは全ギルドのトップに君臨する不滅ノ翼だぞ?そしてこのギルドの目標はヒュベルの攻略である。よって常に命懸けの挑戦となる。金や権威が欲しいだけのものは別のギルドに行け。不滅ノ翼は命がけで挑戦できるイカレタものしか要らん!諸君らの中に命をかけられるもののみ、この同意書をとり名をかけ。」


 瞬間、私の身体は前へと進んでいた。


 抗議した女の子に同調していた私は今死んだ。


 私は本能的にこのギルドを逃したら私の夢は叶わないと判断したのだろう。


 あるいはヒュベルに対する好奇心にただ反応しただけかもしれない。


 どちらにしてもヒュベルへの挑戦の切符が手に入るなら私は全てを投げ打ってもよい。



 後にこの光景を見た男は語る。


 あのとき、あの場所は狂っていた。


 同意書を書かせるのは実力に自信を持てないものなどを振り落とすことも目的となっている。


 多少力があっても自分の力を信じることができなければヒュベルでは死ぬ。


 他のギルドなら安定して狩れるところで遺物を稼ぐ。


 しかし不滅ノ翼では求められるものがはなから違う。


 我々は全ギルドで1位である。その分、国からの援助なども多い。


 そのため遺物を稼ぐのは当然のこと、そこに加えて未開の地に飛び込んでそこを探索することが求められる。


 例え試験だとしても命をかけられないものに不滅ノ翼の任務が務まるとは到底思えない。


 今まではここで実技試験を辞退するものが75%の割合を占めていた。


 普通、どんなに自分の力に自信があってもすぐに同意書を書く決断はできない。


 そのため1時間考える時間をとるはずだった。


 しかし1人の少女が隊長の言葉を聞いてすぐに同意書に名前を書きに走ってきた。


 あのときの少女の顔を見ただろうか?あの顔を、口元は耳元まで裂けんばかりに引きつり、笑みとも言えぬその顔を


 俺は長く不滅ノ翼に在籍しているがあれは完全に狂っているやつの顔だ。


 彼女の狂気に場は完全にのまれた。


 俺が制限時間を伝える前に我先にと同意書を提出しにきた。


 あの中には自分の考えではなく、その場のノリと勢いで提出したものもいただろう。


 無理もない、もし俺が彼らの立場なら同じことになっていただろう。


 それほどまでに彼女の行動はあの場で提出しなければならないと突き動かす力があった。


 そして不滅ノ翼の試験では異例の全員が実技試験に参加する意思を示した。


 そのときの彼女は知らないことだが不滅ノ翼史上最も死人がでた試験となった。



 試験を受ける選択をした私たちは隣の部屋に連れてこられた。


 「今から諸君にはヒュベルでの実技試験をしてもらう。個人の戦闘センスを確認したいため諸君の遺物はこちらで預かる。その代わに人工遺物を支給する。」


 いきなりヒュベルへいける!


 私は小躍りしたい自分の気持ちを抑えつつ話に出てきた人工遺物について思考する。


 人工遺物。それは、通常の遺物とは異なる、ただ一人の探索者によって作り出された遺物である。


 遺物が未知の力を内包し、使用者との適合によってその真価を発揮するのに対し、人工遺物は誰が使っても50%の適合率が保証されている。


 使用者の素質に依存せず、安定した運用が可能であるという点は、人工遺物の最大の特徴と言える。


 しかし、人工遺物は通常の遺物よりは攻撃力、応用力が劣るとされている。


 それでも人工遺物には、遺物にはない決定的な利点があった。


 すなわち、同一性能のものを量産できるという性質である。これにより、一定の性能を持つ装備を部隊単位で配備することが可能となり、個体差のない均質な戦力を構築できるようになった。


 ただし、人工遺物の製造技術は極めて特異であり、その工程を知る者は世界にただ一人しか存在しない。


 その人物がいかにして遺物を再現しているのか、またその技術が再現可能かどうかについても、いまだ明らかではない。


 人工遺物は、誰にでも扱える力という夢を叶えた存在でありながら、同時に、その存続が一人の人間に強く依存しているという、不安定な希望でもあるのだ。


 これはアイクに渡された本に書かれていた内容の話だ。


 これは今回の試験問題にもでてきたので記憶に深く残っている。


 「今回はシルト,ブレッシャー,ゲシュッツの3種類から好きな組み合わせで選んで欲しい。なお、遺物ではない武器が欲しい場合は申請を出せば可能な限り準備しよう。」


 

 この3種類は高ランクのギルドではよく使われる人工遺物である。


 シルトが手をかざしたところに半透明の壁を展開する人工遺物


 ブレッシャーが剣を振った方向に斬撃を飛ばす人工遺物である。


 ゲシュッツは手の平からエネルギー弾を発射する人工遺物である。


 この人工遺物はカセット状の形をしており、それを専用のスロットに入れればその人工遺物の能力を使える。

 

 なおこのスロットには3つまで入れることができる。


 この時同じ能力のカセットを入れればその分その能力の力が向上する。


 つまり人工遺物を3種類ずつセットしてバランスをとるのもいいが、同じカセットを入れてその能力を底上げする特化形の手段もあるということだ。


 今回の場合だと防御を必要ないと思えばシルトを抜いてブレッシャーもしくはゲシュッツのどちらかをもう一つ入れればその人工遺物の威力が上がる。


 そういった自分の戦闘スタイルに合わせて組み合わせを変えていくことが探索していくには重要である。


 受験者は各々人工遺物と武器を選び、実技試験の試験会場に向かう。


 ヒュベル第一階層


 ヒュベルの第一階層は階層ボスがいる部屋に繋がる扉の他にいくつも扉がある。


 その扉を通るとそこはダンジョンに繋がっており、このダンジョンを攻略することにより遺物が手に入る。


 階層ボスがいる部屋に近いほど難易度が上がる。


 クリアしたダンジョンの扉は10分後にまた開く。

 

 今回の実技試験の会場はこの第一階層の入り口付近のダンジョンである。


 「諸君、ここから直接的に試験監督をするのは私ではない。実技試験の詳しい内容は自己紹介も兼ねてリリお前から言え。」

 

 「イエス・マム!私は不滅ノ翼第七番隊副隊長のリリだ。これからお前たちの実技試験監督を務める。よろしく頼む。」


 結構大物が来ましたね。


 一応、アイクは隊長ですが今までの積み重ねというのか?


 偉い人って感じはしないんですよね〜。


 口調のせいでしょうか?


 まぁ、試験に関係ないことは考えないようにしましょう。


 「これより、実技試験を開始する。諸君にはヒュベル第一階層に存在するダンジョン、そのうち入口から1番目から3番目までの区域へと単独で挑んでもらう。試験の採点は、クリアまでの所要時間および選択したダンジョンの難易度を基準として行われる。

なお、当試験は本日ここにおられる第七番隊隊長・クルス殿をはじめとする全隊長並びに団長殿が視察される。諸君の戦術・判断力・遺物運用等に応じて追加点を加算する場合がある。

ルールを把握したものから、くれぐれも油断せず、全力で臨むこと。以上!」


 やっぱりあの長身の女性はアイクと同じ隊長でしたか。


 いゃ〜あれこそ私が思うThe隊長って感じです。


 そして実技試験の点数配分が張り出される


クリアまでの所要時間(地上時間):25点満点

 1〜10分:25点

 11〜20分:20点

 21〜30分:15点

 31〜40分:10点

 41〜50分:5点

 51分以上またはクリア失敗:0点


ダンジョンの難易度:25点満点

入り口から3番目:25点

入り口から2番目:15点

入り口から1番目:5点

60分以上で帰って来れなければクリア失敗として0点とする

60分たったら知らせるためその時は別のものがクリアするまでそこに待機すること。


全隊長と団長による採点:50点満点

試験終了後に重視して見ていたところを発表


筆記試験の点数を含めて150点以上あるいは実技試験満点のものは無条件で合格とする。

また、150点未満でも全隊長と団長の評価によっては合格する可能性がある。


 とのことだ。


 私の場合は筆記試験に自信がないため選ぶダンジョンは入り口から3番目である。


 クリアすることを前提として気をつけるべきはクリアタイムと全隊長と団長による採点だ。


 後者に関しては何が評価されるかわからないためクリアタイムに重点を置いて作戦を立てよう。


 幸いこんだけ人がいるから考える時間はありそっ


 ウォー!!


 周りから観声が上がる。


 声の方を向くと入り口から3番目のダンジョンの扉からルシアンが出てきていた。


 はっ?!


 説明終了から1分もたっていないはず…


 え?この短時間でクリアしたの?


 強い、強い、とは思ってたけどここまでとは


 「静粛に。ルシアン、クリアタイム3.14秒!おめでとう!これは不滅ノ翼採用試験で歴代最速タイムだ。諸君に伝えるのを忘れていたがこのダンジョンで手に入れた遺物は自由にして構わない。」


 「なるほど、しかし感覚的ではあるがこの遺物は俺には合わない。だからこれはそちらが受け取ってくれると助かる。」


 再び歓声が上がる。


 不滅ノ翼では所有者がいない遺物を新人が一通り調べる。その後適合率が高ければそのままそれを調べていた新人が所有することができることもある。


 この歓声は入団後に自分が手に入れられるかもしれない遺物が増えたことに関する喜びの声だろう。


 「いゃ〜、あれを見せられると僕も頑張ってみようかな?って気持ちになるね。」


 彼女はまるで冬の精霊だった。


 白銀の髪に水色の光を宿し、深い蒼の瞳は凍てつく空を映している。


 耳元に揺れる金の羽飾りと赤い実のリボン、ただならぬ気配を漂わせていた。


 白と青の衣装は雪景色に溶け込み、舞い落ちる結晶の中で、彼女は静かに微笑んでいた。


 そして彼女はルシアンとは反対側にある入り口から3番目のダンジョンに入りすぐに出てきた。


 「神凪(カンナギ)ユキ、クリアタイム5秒ジャストだ。」 


 「おっと、抜けれなかった? まあいいや、50点は確保したし、ボクものんびり楽しもうかな。ねえ、リリさん、遺物っていつ返してもらえるのかな?」


 「試験が終わったらすぐに返却する。ルシアンも取りに来てくれ。」


 あの神凪って人もルシアンと同じように10秒もかからずにクリアしている。


 このダンジョンってそこまで難しくないのかな?


 「おいおい、神凪ってあの神凪一族か!?」「確かにあの蒼い瞳と白い肌はあの一族の特徴だけど?」「でも神凪ならこんな試験を受けなくてもお抱えになれそうだから違うんじゃない?」「でも神凪一族ならあのクリアタイムにも納得ができる。」「けどそうするとあのルシアンって人は何ものなの?」「あの娘が神凪一族ではなくてもダンジョンを5秒もかからずにクリアとか化け物じゃん!」


 口々に2人のタイムひいては凄さを言い合っている。


 しかしこれらを聞いているとやはりあの2人は別格のクリアタイムのようだ。

 

 ルシアンに至っては過去最速タイムなのだから当然といえば当然だろう。


 しかし神凪一族とはなんなのだろう?


 あとで修羅丸さんかルシアンに聞くとしよう。


 2人が自分の遺物を返してもらった瞬間、ルシアンの頭上にタライが落ちる。


 何故タライ?かは置いといて結構な威力があったようでルシアンはその場でうずくまる。


 「あのルシアンってやつそんな対したことないんじゃないか?」「なんか最速って言ってた割にはダサいっていうか?」「歴代最速つってもそこまで対したものじゃないんじゃないか?」「けど、俺らが普段やっているときは入り口から1番目でも30分はかかってないか?」「それは不滅ノ翼が使っている人工遺物だから俺らが使っているものよりもいいのじゃないのか?」「なら!俺たちでも行けるんじゃないか?」「この実技テストは同意書を書く勇気が試されていて試験自体は簡単なのかも!」「そもそもあの神凪は本物か?」「てかよく考えたらあのお高く止まっている神凪一族がわざわざここまで降りてくるわけないか。」「確かに例え本物だとしても里を追い出された落ちこぼれかもな。」


 口々にこの試験は簡単ではないかという意見が飛び交う。


 確かに先程のルシアンを見ていると実力者には見えない。


 しかしそれだけでこの試験を簡単と思うのは短絡的ではないだろうか?


 2人がクリアして10分がたち、われ先にと入り口から3番目の扉の前で列ができる。


 たが、60分経っても入り口から3番目の扉から出てくるものはいなかった。


 左右どちらも10人ずつ出てくるものがいなくなったときリリさんが部下に入り口から3番目のダンジョンをクリアさせた。


 ダンジョンは誰かがクリアすればそのダンジョンにいる全ての人間が入り口に戻される。


 しかし扉から出てきたのはリリさんの部下1人だけであった。


 これはこのダンジョンに挑んだ10人が死亡しているということを意味する。

 

 場の空気が重くなる。


 先程までのように楽観的な考えのものはいないだろう。


 反対側の扉のダンジョンもクリアされたが出てきたのはリリさんの部下1人だけである。


 「いいか、諸君。もう一度確認する。この試験は命を落とす可能性がある。気を抜けば、それまでだ。常に警戒を怠るな。以上だ。」


 リリさんの言葉は重く私たちにのしかかる。


 その後は入り口から1番目と2番目も挑戦するものが増えてきたが死亡者は多く出た。


 周りが挑戦するのを眺めていると肩を叩かれる。


 振り返ればそこにはルシアンがいた。


 「ミノリはまだ挑戦しないのか?」


 「今は様子見かな?まだ速いタイムを出すための方法も思いつかないのとそもそもどのダンジョンをクリアするか悩んでいる段階かな。そういえばルシアンって過去最速タイム出したじゃん?あれってどうやったの?」


 「ん?早くダンジョンをクリアできるやり方?一概にこれというものはないが俺はシルトを足場にして全力疾走した。」


 「どうゆうこと?」


 「ダンジョンには罠があることと最奥にボスがいるのは知っているよな?」


 「うん、それを倒したら遺物が手に入るんでしょ?」


 「そうだ、そしてボスはその遺物の能力に強く影響を受ける。それは罠も同じだ。だから踏んだだけでもしかしたら死ぬかもしれないものがある。それを回避するために一つ一つ罠があるか確認しながら行く。これによって安全に行ける。」


 「けどそうするとタイムが遅くなるからルシアンはダメージ覚悟で突っ込んだってこと?」


 「そうだな、多少のダメージは覚悟で突っ込んだがそれを最小限に知るためにシルトを足場にするんだ。」


 「そのシルトを足場にってのがよくわからないんだけど?」


 「あぁ〜、確かに余りメジャーじゃないか。シルトはバリアを出すというよりは半透明な壁を作る感じだ。ここまではいいな?」


 「うん、確かに斬った感じはそんなこと感じた気がする。」


 私はアイクと私の遺物ダークに付いて調べる中でシルトを斬るように言われたことを思い出す。


 「斬った!?シルトって刀で斬れるのか…。っと、話を戻そうここでシルトを壁というイメージから硬い板というイメージに変える。板を建てると壁という認識になる。だけど横にしたら床という認識になる。」


 「どうゆうこと?」


 「だから…」


 「ふふ、その人のアイデア、ボクにはバッチリ見えてるよ。シルトを足元に展開して足場にするって話だよね?」


 「なるほど、地面に少し浮かせてシルトを展開してその上を走って途切れそうになったら貼りなおすってことであってる?」


 「そう!それ!やっと伝わった!さらに前にゲシュッツを撃ちながら行くと壁や天井にある罠を破壊もしくは誤作動させる。」


 「へえ、そういう方法だったんだ。ボクはさ、シルトを天井と壁に貼って、トンネルみたいにしてみたよ。ふふ、結構楽しいやり方だったんだよね。」


 「なるほど、そんなのもあるのか。ってあなた誰ですか!?」


 私は先程から会話に参加している人物に目を向ける。


 「ん? ボクのこと? ふふ、クリア時に名前呼ばれたけど、一回じゃ覚えられないよね。ボクはユキ、ユキちゃんでいいよ。ねえ、君の名前、ちゃんと教えてよ?」


 「ユキさんですね。なんで会話に自然と混ざってるんですか!ちょっと怖かったです!」


 「……」


神凪ユキさんは笑顔のまま無言でこちらを見つめてくる。


 何!怖いんだけど!


 私はこの謎の空気をなんとかしようと頭をフル回転させる。


 そういえば,


 「ユキちゃん…」


 「そう、ボクはユキちゃんだよ。さっきの質問? ふふ♪2人の会話が面白そうだったから、つい首突っ込んじゃった。敬語なんて面倒くさいのはナシでいいよね? だって、合格したら君とボク、同期だよ。タメ口で、もっと面白い話しようよ!」


 「よく気づきましたね。じゃなくて気づいたね。こんなに人がいるのに。そこまで大きな声じゃなかったと思うけど。」


 「ふふ、そこのお兄さん、ルシアンだっけ? 歴代最速でクリアしたスゴい奴だよね。みんなの視線、ガッツリ集めてるよ。そんな彼がわざわざ話しかけて何か面白いこと話してるんだから、ボク、めっちゃ気になっちゃうね。君も覗きたくない?」


 おっしゃる通りです。


 いくら声を抑えようともルシアンは今や注目の的。


 これを気にしないという方が無理な話だ。


 「ふふ、ボクがその場に飛び込んだら、みんなの注目がさらにヒートアップしたよ。これからどんな面白いことになるかな? ねえ、君も一緒に楽しむ?」


 「聞いた!」「なるほど、シルトってそんな使い方もできたのか。」「ルシアンって奴と神凪の方法だったら神凪の方が安全そうだな。」「どうしよ!シルト選んでない!」「私も!」「ゲシュッツを床を含めて撃ちながら行けばいいんじゃないか?」「確かにそれなら多少タイムは遅くなるがクリアはできるかも!」


 はい!


 私たちの会話は筒抜けでした!


 どうしよ、みんな高得点取り出したら総合得点で負けちゃうかも。


 「“フロスト・ドーム”」


 瞬間、私たちの周りを氷が包んだ。


 「これはボクの遺物の力で作った部屋だよ。薄い氷の壁、めっちゃクールでしょ? 外からは見えないし、音もバッチリ遮断してくれる。ボクたちの話、誰にも漏れないよ。君が気にしてる総合得点の差? これで追い抜かれる心配はなくなるよね。」


 こんな便利なものがあるなんて。


 初めから使えよ!とは言わないでおこう。


 「ありがとう。でももう早くクリアする方法はもうバレちゃってるから意味ないのでは?」


 「一番面白い話はまだ隠してあるから、大丈夫だよ。ねえ、そろそろ君の名前、教えてよ。ボク、めっちゃ気になるんだよね。」


 おっとまだ名乗ってなかった。


 なんかスムーズに会話していたからもう名乗ったものだと思っていた。


 「私の名前はミノリ・テンドウ。それで1番大事なことって。」


 「簡単な話だよ。ボクとその人が話した方法だと普通の人ならボス戦で人工遺物が使えなくなるくらい。運が悪いと、罠の途中でパッタリ止まっちゃうよ。ねえ、君ならどうやって切り抜ける?」


 人工遺物が使えなくなる?


 どいうことだ?


 

 「人工遺物、結構面白いよね。威力は攻撃系の遺物に負けるけど、誰でも50%の適合率で戦力になれる。でもさ、ずっと使えると思う? ふふ、甘いよ。人工遺物って、人の“あるもの”をガンガン消費するんだよね。気付いてた?」


 あるもの、あるものとはいったいなんなのか?


 「漫画でよく見る“オーラ”ってあるじゃん。あれ実際にみんなが勝手に垂れ流してるものなの。それが遺物の力の源なんだ。これを闘気って私たちは呼んでるんだけど、適合率が高いほど消費が少なくなる。でもね、人工遺物は別だよ。適合率なんて関係なく、闘気をバカみたいに使うの。尽きたら? ふふ、ガス欠で終わりだよ。さっきの方法だと、そうなるよね。」


 「じゃあ、どうするの?」


 「解決法? 超簡単だよ。ちょっと休憩すればいいだけ。闘気なんて、1時間くらい休めば回復するからね。ねえ、君、休むの得意?」


 「でもそうするとタイムが」


 「ミノリ、思い出せ。この試験のタイムは地上時間だ。ダンジョンと地上の時間が違うのはわかっているだろ。」


 そうだった


 ヒュベルの外と中では時間の流れが違う。


 そのため外の時間のことを地上時間,ヒュベルの時間をヒュベル時間と表している。


 ヒュベル時間も階層によって流れる時間は早くなる。


 更にはダンジョンによっても流れる時間が変わる。難易度が高くなるほど時間の流れが速くなる。


 そのためこの試験では地上の時間とダンジョンの時間を確認する必要がある。


 「おっと、その顔、気付いたみたいだね。ふふ、この時差を解決する面白い道具、ボクが教えてあげるよ。ほら、これだ!」


 そう言ってユキちゃんが出したのは腕時計だった。腕時計は2つ時間を示していた。更にその2つの中心に何か書いてあった。


 「この腕時計、めっちゃ面白いアイテムだよ。高ランクのギルドでしか手に入らない、地上時間とヒュベル時間を比べられるやつ。見方は簡単。左が地上時間、右がヒュベルやダンジョンの時間、中心の数字がその差。表記は、君のいる時間の流れに勝手に合わせてくれるんだ。ふふ、これ使って休憩のタイミングを見極めれば、ダンジョンなんてすぐクリアだよ。ねえ、ミノリちゃん、これ、ボクからのプレゼント。気に入った?」


 「いいの!こんな便利なもの!」


 「ふふ、いいよ、いいよ。ボク、ミノリちゃんと一緒にヒュベル攻略したいから、絶対面白そうだもん。」


 ありがとう!ユキちゃん!


 このご恩は絶対返すよ!


 いいものをもらってしまった!


 これで合格できるかも!


 「ミノリちゃんの闘気量なら、シルトを一日中展開しても平気そうだけどね。」


 「何か言った?」


 「いや、何も?」


 「ならいいや。」


 入り口から1番目,2番目はちらほらクリアするものが出てきているが3番目に関してはルシアンとユキちゃん以降クリア者は出てきていない。


 人もだいぶ減ってきているためそろそろ私も挑戦しよう。


 「おっと、ミノリちゃん、挑戦するんだ? ふふ、どんな面白いこと見せてくれるのか、ボク、めっちゃ楽しみだよ!」


 「ミノリが考えていた戦術はどれも有効だ。その場に合わせた戦術を取ればクリアは確実だろう。」


 私は2人の激励を受けてダンジョンに挑む。


 もちろん受けるのは3番目のダンジョンだ。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

前回ついにヒュベル!

と煽ってましたが実際にはミノリはまだ挑戦していないのでこれ詐欺になるのではと悩みましたが話しと字数がキリが良かったのでこのままにしました!

本当に次回はヒュベルに挑戦するので是非!ご覧ください!

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