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目には目を、歯には歯を、能力には、能力を  作者: 妄想お面
凍りついた世界〜新たな伝説の始まり〜

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13/13

招かれざる者

第13話です!

是非楽しんでください!

毎日投稿継続中!

 扉を開いた瞬間、私たちの体をさらに鋭い冷気が包んだ。


 空気は張りつめ、吐息さえ白く凍りつく。


 目の前に広がるのは、何もない「氷の広間」。ただ透明な床と壁が続くだけで、敵も仕掛けも見えない。


「……がらんどう?」


ルシアンが斧を肩に担いだまま、周囲を睨む。


「いや、これは……静かすぎる」


私は背筋を撫でる悪寒に気づき、刀を強く握り直す。


 その時。

 

 声が響いた。


「……どうして来たの?」


「あなたたちに、戦う資格があるの?」


 広間の氷に映る自分の姿が、勝手に動き出していた。


「……また、自分?」


 私は刀を構え直す。


 けれど、先ほど氷壁から現れた氷人形とは違った。


 そこに立つ“分身”は、ただ姿形を模したものではない。


 表情も、立ち居振る舞いも、心を抉るように“本物に近い”。


「私は貴方、貴方は私。私は貴方の心に秘めていることが手に取るようにわかる。貴方は恐れている。仲間に遅れを取ることを。またダークに乗っ取られて暴走する事を。だから無理をして《アクセル》を使う。対した目的もないのにただ命を投げ出す愚か者。」


「俺はお前、お前は俺。俺はお前の心に秘めていることが手に取るようにわかる。お前は力に頼りすぎる。いつか大事な時に運が尽きる。いつまでも過去の失敗を引きずって破滅に進む。」


「私はお前、お前は私、私はお前の心に秘めていることが手に取るようにわかる。お前はお世辞にもコミュニケーションが上手い方ではない。それで一緒にいるものは、彼はお前をその場に居させ続けてくれるのか?その先に人はいるのか?」


 分身たちは口々に語りかける。


 それは誰にも知られぬ“心の奥”をなぞるような言葉だった。


 私は反射的に斬り捨てた。


 ルシアンは斧で粉々にし、バレットは口を結び、ただ黙々とゲシュッツを撃ち込む。だがその眼差しは、いつになく険しい。


 分身の言葉が、まるで自分を見透かしているようで気持ち悪かった。


 そしてユキちゃんの前にも、ひとりの分身が立っていた。


 氷羽を背にしたもうひとりのユキちゃん。


 彼女は静かに告げる。


「ボクは君、君はボク。ボクは君の心に秘めていることが手に取るようにわかる。君は秘宝を継ぎながら、ここに立つのか」


「……」


ユキちゃんの指先が震える。


「ボクは笑ってごまかす。いつも冗談を言う事で本当の自分を見せない。君のその目で、どれほどのものを見ているの? 他人の力を測り、比べ、秘密を胸にしまい込む。仲間に話せないことを抱えて、ボクはずっと独りのまま」


 普段なら軽口を叩いてかわすはずのユキちゃんが、その言葉だけには言い返せなかった。


 ただ無言で氷羽を打ち込み分身を破壊する。


 ユキちゃんはその壊れた氷の分身を見据えて黙り込む。


 唇がわずかに震えた。だが次の瞬間、彼女は大げさに肩を竦め、いつもの調子で笑ってみせる。


 「うわぁ……やだやだ、ボクの分身さん、言葉選びが冷たいね〜。まるで僕のようだ。ちょっと否定してよ〜傷つくよ?」


 ひらりと氷羽を舞わせ、分身を切り裂く。


 笑い声の裏で、その瞳だけが一瞬揺らいだ


 「はい、みなさん。よう壊しはりましたなぁ。

ここではな、扉のそばまで、ああいうふうにずっと囁かれますえ。自分の声に負けへんように、しっかり歩いていきましょな。」


メノウの姐さんは静かに微笑んだ。


 それからの道のりは、言葉通り“自分の心”との戦いだった。


 氷壁に映る自分自身が、延々と耳元で囁き続ける。


「……対した目的もなくヒュベルに挑む愚か者。」「運に見放されたら終わりだ」「誰も私を理解していない」


 耳を塞いでも声は消えない。氷に映る自分の口が動くたび、脳裏に直接突き刺さる。


「しつけぇ……!」


 ルシアンが呻きながら斧で氷壁を叩きヒビを入れる。だが次の瞬間には別の壁に、また自分が映る。


 止まったら何かに飲み込まれそうな気がして足を止めないようにひたすら進んだ。


 脈が早い。胸が苦しい。さっきの分身の言葉が、何度も蘇る。

 

 “対した目的もない愚か者”


 耳を打つたび、心臓が冷たくなる。


「……ふふ」


そんな時、一番前を歩くメノウ姐さんの笑い声が響いた。


「なんでそないに苛立ってはるんやろ。それはな、“あなた自身”の声やよ。聞こえたんやったら、腹立てるんやのうて、自分を見つめ直して、受け入れてあげたらええだけやないの。逃げんと向き合えば、きっと乗り越えられますえ。心の奥にある弱さを知るいうんは、縛られることやのうて、強さへ変わる一歩やさかいなぁ。……そもそも、こんなんで押しつぶされるほど、やわな鍛え方はしてへんはずやと思てるんやけどな?」


 彼女はまるで子どもに言い聞かせるように、優しく微笑んでいた。


 その背中を見ているだけで、不思議と呼吸が整う。


「……姐さん、そうやって簡単に言えるのがすげよ。」


 ルシアンが苦笑し、バレットは無言で歩みを早める。

 

 ユキちゃんは小さく笑ったが、その横顔はやはりどこか陰を帯びていた。


 今は無理でもそのうち乗り越えられるようになりたいな。


 どれくらいだっただろう?長い長い囁きの回廊を抜けると、ようやく目の前に扉が現れた。


 表面は氷で覆われ、中心には複雑な紋章が刻まれている。


「……ここれでここの部屋は終了か。」


 私が呟いたその時、扉の紋章が淡く光り、低い振動が響き渡った。

 

 ゴウン……ゴウン……


 まるで心臓の鼓動のような重低音。


 氷の床が震え、空気がさらに冷え込む。


 「この先の部屋が第二階層、階層ボス・グレイシアの待ってはるところや。

いったん戻って、余分な荷物は置いてから、改めて参りまひょ。」


 メノウの姐さんの提案に私達は一度地上に戻ることにした。


 地上に戻ると、冷気の支配から解放された空気が肺を満たした。


 陽光の下に出た途端、足元からじんわりと温かさが蘇る。


「……ふぅ、やっと息がしやすい。」


ルシアンが頭を振り、白い息を散らす。


 なんだろう?地上に戻っても、心臓の鼓動はまだ速かった。氷の迷宮を抜けても、気が抜けるどころかむしろ胸騒ぎが強くなる。


 その不安は、すぐに現実となった。


 市街地の大通り。


 ローブを纏った集団が現れた。


 ひとりは短剣を逆手に握りしめ、もうひとりは長杖を振りかざす。腕輪を嵌めた者は、そこから小さな光を漏らしながら歩みを進めていた。


 「……ただのチンピラじゃないな」


 ルシアンが低く唸り、斧を肩に担ぐ。


 その瞬間。


 短剣を構えた男が地面に突き立てた。

 

 爆ぜた。


 石畳が大きく裂け、轟音とともに爆風が街を揺らす。


「っぶな……! 市街地でやりやがった!」


 煙と炎が広がり、逃げ遅れた市民の悲鳴が響いた。


 メノウ姐さんが前に出て、爆破を繰り返す男と対峙する。鋭い眼差しを向けて、男を殴る。


 男は吹き飛ばされたが爆破の力を利用して街の外に逃げようとする。


「門の外へ。急いで。狙われてるんは、あんたらの中の誰かやろ。町の人らは守らなあかん。

この爆破のあんさんはうちが引き受ける、せやから振り返らんと行き。」


 私たちはメノウの姐さんの指示を遂行するために路地へ駆け込む。


 背後では、杖を振った女が虚空から氷の槍を放ち、腕輪の男が光を放って視界を奪ってくる。


 別のローブの女はツルを鞭のように振り回し、建物を崩しながら迫ってきた。


「チッ、バラバラに仕掛けてきやがる……!」


 ルシアンが斧でツルを弾き飛ばす。


 バレットは無言でゲシュッツを構え、追撃してくるローブの男に弾を浴びせる。


 だが敵は次々と物陰から現れ、遺物を用いて攻め立ててくる。


 ユキちゃんの氷羽が一斉に射出され、氷槍とぶつかり合った。鋭い破裂音が鳴り響き、破片が吹雪のように舞う。

 その一瞬の隙に私はユキの腕を掴んで引き、路地の出口へと駆け出した。

「まだ街の中だ、早く外に――!」


 石畳を蹴り、建物の影を縫うように走る。だが追撃は止まない。背後から轟音、光弾、ツタの鞭が次々と迫り、逃げ道を削り取る。


「返せぇ! 里のために!」


「秘宝を持つ者を逃がすな!」


 追手たちの声が、耳を刺すように響く。意味は分からない。だが、その言葉を浴びるたび、ユキちゃんの肩が小さく震えていた。


「ユキちゃん!」


「……大丈夫。走って!」


 彼女は短くそう答え、再び氷羽を飛ばして道を切り開く。氷羽は敵の槍を砕き、迫るツタを切り裂いた。


 ルシアンが背後に回り込み、斧を振るう。重い鉄の音と共に石畳が割れ、ツタを操る女を吹き飛ばす。


 だがその直後、彼の足元の石畳が崩れた。爆発の余波で地面が脆くなっていたのだ。


「チッ……ッ!こんな時に!」


 ルシアンは即座に斧を壁に叩き付け、その反動で飛び上がって回避する。


 試練の時に使った代償がもう出て来ている。


 私たちは路地を抜け、王都の外縁へと駆ける。


 けれど敵は容赦なく追ってきた。背後から轟音が響き、石畳が砕ける。


 杖を振りかざした女が、頭上から氷の槍を雨のように降り注ぐ。私は刀を振り抜き、次々と槍を斬り払ったが、数が多すぎる。


「っ……!」


 振り払ったはずの氷の破片が頬を掠め、冷気が皮膚に焼き付く。


 ルシアンは前に出て、ツタを操る女と対峙する。ツタが蛇のように絡みつこうとするのを斧で斬り、回避する。


「オラァッ!」


 渾身の一撃で太いツタを叩き落とすと、敵はよろめきながらも新たなツタを呼び出して再び襲いかかる。


 バレットは冷静に狙撃を繰り返す。光弾を放つ腕輪の男を狙い撃つが、何度も光弾を発射されて相殺される。更にそのたびに眩しく光、視界が奪われる


「視界が……っ!」


 一瞬の隙を突かれ、バレットの肩口に氷の槍が刺さり、血飛沫が舞った。


 「バレット!」


 私が叫んだ時、ユキちゃんが翼を広げる。氷羽が舞い、迫り来る氷槍を一斉に撃ち落とした。


 王都の外縁、城門の前。


 追って来るのは、氷槍を操る女と、光弾を放つ男、そしてツタを操る女。


 そして目の前には巨大な氷の槍が城門を塞いでいる。切っ先は地面に突き刺さり、まるで壁のように私たちの行く手を閉ざしていた。


「……くっ、あれを突破しないと外に出られない!」


 私が歯噛みした瞬間、背後から再び光弾が迫る。眩い閃光が走り、思わず目を細める。


 すかさずユキちゃんが氷羽を広げ、舞い散る刃のような羽根を飛ばして光弾を打ち落とした。


「ミノリちゃん、前へ! ボクが援護する!」


「分かった!」


 私は刀を大剣へと変形させ、一気に踏み込む。


 根元から氷槍を叩き割り、氷の壁に大きな亀裂を走らせた。


「よくやった! 道が開く!」


 ルシアンが雄叫びを上げ、斧を振り下ろす。斧幸のサイズを大きくして、叩きつける。


 ツタの女が前に出るが、斧の一撃で大地ごと叩き裂かれ、ツタが吹き飛んだ。


「バレット!」


「了解」


 バレットが手を突き出し、ゲシュッツから弾丸を連射する。弾は壁に跳ね返り、曲射のように敵の背後を撃ち抜いた。光弾の男が呻き声をあげ、よろめく。


「今だ──!」


 私達4人はこの隙に門から出てついに外に出られた。


 ここなら街の被害は抑えられるから遺物の能力を十分に使える!


 第二ラウンド開始だ。

最後まで読んで頂きありがとうございました!


もしこの作品が気に入りましたら感想や評価をいただけると幸いです。

そうでなくともこの作品が少しでも気に入っていただけたら今後も読んでいただけると幸いです。


改めまして最後まで読んでいただきありがとうございました!

また次回もお楽しみください

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