エピローグ
「ねえ、ボーイ」
「なんだ、ガール」
祝福の女神の呼びかけに憎悪の神は彼女のほうを見ました。
祝福の女神が見ているのは、醜悪な心の人間たちが住む世界。
男尊女卑が酷すぎて女性が生まれなくなった世界でも、祝福の女神は神として祀られています。最早、女性がいないというのに、花嫁やら妻やら母やら女性に関する言葉が残る奇妙な世界です。
「永遠の乙女って、どうなったの?」
「ああ。奴らは今まで女たちにした罪を償うまで死なないだけだ。もう、全員、罪を償い終えた」
「そうなの?」
「奴らに心身を壊された女たちの苦痛の念も、あの世界には残っていない」
「じゃあ、すべて・・・」
「もう、お前の存在以外は、あの世界に女の痕跡は何もない」
「男だけの世界になった、ということね。ボーイ」
寛容な祝福の女神ですが、男だけの世界になったことを喜んでいました。
「ガール?」
「もう、この世界を滅ぼさなくてもいいんでしょ。ボーイ」
「俺が滅ぼさなくても、破壊の神の癇癪で滅ぶんじゃないか?」
「そうかもしれないけど・・・」
祝福の女神は躊躇っているようでした。
独善的ではありますが、憎悪の神は空気が読めます。躊躇うような内容から話を変えようと、小さく肩をすくめて、祝福の女神に言いました。
「早く夫の所へ帰ってやれ。あまり放っておくと、あいつ、変なことを考え始めるぞ」
「そうね。あたしたちのお気に入りの所に行くわ」
「気に入っているのは、俺だけだ。お前は愛しているんだ」
「愛着と恋着よ、ボーイ」
それは他の神々は気付かない二柱だけの関係でした。二柱の神は真逆のように見えて、同じものを好み、微妙に違う反応をします。
祝福の女神の夫を憎悪の神は気に入り、祝福の女神は恋に落ちました。
そんな仲良しな二柱の神が見守っていた世界の一つの、お話でした。