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六章 兄貴失格

「ザーー(雨の降る音)」

 帰りの途中、急に雨が降ってきた。どんどん強くなる雨の中で水族館から帰宅し、俺はせっかく今日を楽しみにしていた日向の気持ちをぶち壊してしまったことに対して反省していた。

 日向もあれから部屋に閉じこもり、出てこない。 

 そんな俺と日向の異変に母はもう気づいていたのか、

 「修斗、あんた日向となんかあったのかい?」

 そう聞いてきた。まあ、親だから俺たちのことを心配するのは当たり前なのに、俺はすごく申し訳ない気持ちになり、俺自身もまだ子供みたいなものなんだと実感した。

 俺は「水族館のネコザメがあまりにもトラに似てたから、うっかり口に出してしまって、あのことを日向に思い出させちゃったんだ。」と、水族館でのことを正直に伝えた。

 母さんは「修斗も悪いけど、日向も悪い。この件はお互い様!」そう言って、仲直りすることを提案してきた。

 今更どんな顔して日向と話せばいいのかわからないが、とりあえず謝ることにした。

 「コンッコンッ(ノックの音)」

 「日向〜入るぞ!」俺は謝るために日向の部屋に入った。

 ドアを開けた瞬間、日向は俺の腕の中に飛び込んで、こう言った。「お兄ちゃんほんとにごめんなさい!」

 日向だけに言わせるのも兄としてどうなのかと思って、俺も日向に話した。

 「日向、本当にごめん。俺も悪かった。こんな兄は兄貴失格だよな……。」

 でも、日向は「そんなことないよ!お兄ちゃんは世界一最高のお兄ちゃんだよ。」

 その言葉に反応したかのように、雨音がしなくなった。空は晴れ、夕方特有のオレンジ色の空が一面に広がっていた。

 俺たちは無事に仲直りができたのだろう。

 そして俺は日向に提案した。「改めて今度また水族館行かないか?」

 今度こそ日向を楽しませてあげたいと思ってそう言った。

 日向は「今度は夏実さんも誘ったらダメ?」

 「ゲッ!」もし、付き合っていることがバレたら…。

 俺はヤケになって「もう!この際だから言っておくが、実は俺と夏実は付き合ってるんだよ。」

 「そうなの⁉︎」突然、真後ろから母の声がした。全部聞かれていたらしい。

 この時はまだ誰も知らないが、3日後くらいには近所でこの話題を知らない人はいないくらい言いふらされることになる。

 それからの毎日というもの、夏実と学校に登校するところを近所のおじさんに見られるだけで「がんばれ若者!」と、とても恥ずかしいが、声援をもらう。

  

 そんな毎日を過ごしていると、気づいたら数ヶ月の月日が流れ、もう冬になっていた。

 付き合ってから初めてのクリスマスも、もうすぐだった。

 俺のクリスマスの予定はもう埋まっている。午前中は夏実とのクリスマスデート。午後(夜)は「北川家・南家合同クリスマスパーティー兼付き合って5ヶ月おめでとうの会」が開かれる。


                 つづく

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