五章 ブラコン妹
「今日は見事に晴れたなぁ。」
朝、カーテンを開けると満天の青空が広がっていた。
「おーい!まだかぁ〜日向。」
俺は日向が準備できるのをリビングで待っていた。
「お待たせ!準備できたよ、お兄ちゃ〜ん。」
玄関のドアを開けようとした時、
「あら、もう行くの?」
後ろから母さんの声がした。
「うん、電車混むしね。じゃあ行ってくる!」
日向も「お母さん、行ってきます!」
「いってらっしゃい!二人とも。」
そうして母に見送られ、久しぶりの兄妹二人っきりのお出かけが始まった。
昨日のことがあってか、俺は少し浮かれており、なんか日向の前でふざけた真似をすると、心配されて、ブラコン度が増しかねない。
あと、付き合ったことを日向に言わない理由。それは、「ブラコン」という言葉の意味を考えれば自然に出てくる。
そう、嫉妬だぁ!
嫉妬というものはとても恐ろしい。ラノベとかでよく見るが、そのものに対する愛が重いほど嫉妬深くなる。
だから今の日向なら、ブラコンが悪化するか、性格が変わる。最悪の場合、悲しさのあまり引きこもりになるかも……。
そんなことを想像している以上、認めたくはないが、俺もなかなかのシスコンだな。
電車を乗り継ぎ、隣町の駅に到着した。新しい水族館はここから歩いて5分くらいだったはず。
「わぁ、並んでるなぁ。てか1時間待ちだと!」
「妹よ。申し訳ないが今日は……。」
やっぱりできたばかりの水族館だから混んでいた。
「え〜。ここまで来たのに諦めるの?見たいよお兄ちゃん!」
「わかったよ日向、並ぶぞっ!!」
俺たちは炎天下の中、「1時間並ぶ」という強敵に挑むことになった。
でも、「1時間待ち」と言いながらも、40分くらいで中に入れた。
「綺麗だな。このクラゲ」
そんな中、日向は
「このサメかわいい〜。」
ネコザメに夢中になっていた。
「確かにかわいいなこのサメ」
昔飼ってたトラに似てるな。
「おっと、危ない危ない。」
日向の前でこの話はしない方がいい。
なぜならトラは、小さい頃日向が拾ってきた猫で、とても可愛がっていた。
その頃の日向はトラを1番大切に育てていたので、あんなことになるなんて正直思っていなかっただろう。
そう、トラは3年前に死んでしまった。
それからしばらく、日向は落ち込み、その時に俺が日向を慰めたことにより、日向のブラコンが悪化してまったのだろう。
「お兄ちゃん、もう帰ろう。」
マズいな、俺のバカッ!! なんで余計な一言を言ってしまったんだ。
まあ、でも「わかった、帰るかぁ」
帰りは家に着くまで日向とは一言も会話がなかった。
つづく