四章 デート(仮)
俺はデート(仮)の待ち合わせ場所である、駅前の広場で時計を気にして、心の中で「早く来すぎかなぁ?」とか思いながら夏実が来るのを待っていた。
すると、「シュウ!お待たせです。」
後ろから夏実の声がした。
振り返って見たら、そこにいるのは夏実じゃない。知らない誰かだ。
「お、お前 誰?」
なぜなら夏実がこんなオシャレをするわけないし、待ち合わせ時間に間に合うわけがない。「きっとお前、ニセモノだろ!」
そう言うと、夏実は大きく手を振りかぶり「バチンッ!」と、なぜか俺は頬を叩かれた。
「シュウは失礼すぎます!褒めて欲しかったのに………。」
「お前、夏実だったのか。すまんすまん」
「改めて今日の服、可愛いよ!」
「言うのが遅いです!」
※その後、しばらく夏実は機嫌が悪かった。
そうして、波乱の展開から幕を開けたデート(仮)、いったいこの後どうなるのか正直不安だった。
まあ、俺にとっては絶好の機会だった。夏実が遊びに誘ってくるのは珍しいし、これは脈アリの可能性が………。
これで告白して、脈アリだった場合、恥ずかしながらもあの時の王様ゲームの罰ゲームを果たせるし、好きな人と付き合えるから一石二鳥。
まあ、そんな勇気俺にはないけど。
そんな感じで、俺たちは隣町の遊園地に来ていた。
「シュウ!あれに乗りたいです。」
夏実は絶叫系無理なはずなのに、ジェットコースターに乗ろうと言ってきたのだ。
俺は一応確認した。「ほんとに大丈夫なんだろうな?」
「うん!シュウと一緒なら。」
この時、微かに手ごたえを感じていた。
「う、うん。じゃあ乗るか」
俺は少し照れていたが、これは脈アリの予感!
10分後、夏実は死んだ魚の目をして正気を失っていた。
俺は心配して「おーい!夏実、大丈夫かぁ?」と、何度も声をかけ
すると、「ハッ!」
急に夏実は正気に戻った。そして言った。
「シュウ!最後に観覧車に乗りたいです!」
これは!ラノベとかで見た告白イベント発生フラグ。絶対そうだ!
そうして、俺たちは観覧車に乗った。
しかし、てっぺんに上がるまで一言も会話がなかった。
「あのですね!」「あのさ。」お互いの声が同時に重なる。
「先に夏実が言っていいぞ」
夏実は顔を赤らめて、少し恥ずかしそうに言い出した。「実は私、最近シュウが他の女子と話していると、なんか心苦しいんです。これってシュウに対する嫉妬的なものなんでしょうか?まさか、恋ってやつですか?」
この時、観覧車には燃えるように赤い夕陽が差し込んで、ロマンチックな雰囲気となっていた。
「実はさ、俺もそんな風に感じるときがあるし、なんせ俺はずっと前から夏実のことが好きだったんだよ。」
この言葉を聞いた途端、夏実は涙目で「シュウ、私たち付き合いませんか?」
こんな夢にも見た瞬間がやってきた。
「ああ、付き合おう!」
この時、俺の気持ちは幸せでいっぱいになっていた。「この幸せがいつまでも続きますように。」
明日は妹の日向との水族館。夏実と付き合いだしたことはしばらく内緒にしよう。
つづく