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8.はじめてのまもの

片付けが終わってすこし部屋を見て回れば、タンスの中に服が入っていた。

どうやら、着替えとして使用して良いようだ。大人用だけでなく子供用の服装もあり、急遽3人でファッションショーを開くことに。

といっても、それほど種類はないし、3人の中で1番センスの良いマシロがちゃちゃっと決めてくれた物を着て即終了。


「うーん、やっぱり地球(さっき)の服と比べたら、ちょっとゴワゴワする〜!」

「ん。これから、慣れる」

「慣れるかなぁ」


鏡の前でくるくる回って確認するマシロと、鏡の隣に座ってその様子を見ているクロガネ。

マシロはお洒落さんだけどクロガネは服装にはあまり興味がないようだ。

脱ぎ散らかした服を回収しつつ、2人を観察する。


顔が良ければどんな服装でも似合うというのは事実らしい。

2人は首元がすっきりとしたシャツに、紐で編みこまれている薄茶色の長袖の上着、そしてこげ茶のズボンを履いている。この形はスタンドカラーシャツというんだっけ?

マシロは肩から深緑のスカーフを首に緩く巻き、また腰にはこげ茶の剣ベルトホルダーを付けていた。どうやら、短剣を携帯するようだ。

一方クロガネはというと、首から皮紐のネックレスをかけており、腰には深緑のスカーフを巻いている。基本は同じなのに、小物が違うだけで印象はかなり変わるんだね。

むしろ、顔が良すぎて服装の方が負けてない?お坊ちゃま達のお忍び村人コーデみたいじゃない?


2人に比べると、私はこの服装に負けている気がするけど。

白いレース生地の肩出しワンピースに赤と深緑で染色された花柄のエプロンを組み合わせて、こげ茶のゆるめなコルセットをしている。白いお花がところどころ咲いていて可愛い。

エプロンといっても背中側にも布があるしっかりとした服のようで、まるで中世ヨーロッパの人たちみたいな服装だ。

……いや、わかる。こんな歳にもなって、まさか肩出しワンピースを着ることになるとは思ってもみなかった。


「うん、やっぱりルイはヒラヒラが似合うね!」

「ん。ルイ、似合う。かわいい」

「2人もすっごく似合ってるよ。選んでくれてありがとね」


2人の贔屓目がすごいことはスルーし、とりあえず褒め合って3人でニコニコする。

マシロは屈伸をしたり腕を回したりして、身体が動くか確かめているらしい。クロガネはポケットに手を入れたままピョンピョンと飛んでいるが、それに合わせて髪の毛がふわふわと踊っており目が離せない。


「ひっかかる感じもないし、これならちゃんと動けそうだね」

「俺もいける」

「クロガネ、ルイと手繋いどく?」

「ん~…うん。最初だし…強い魔物、居なそうだけど一応」

「わかった!よろしくね」

「ん」


2人が何かコソコソと話している。猫のときも2人でウナウナと会話していたし、性格は似ていなくても仲が良いようで、そんな様子を見るだけで心がほっこりだ。

口元を緩ませながら森散策用の麻袋を準備をする。

これに入るくらいの魔物が居ればいいな。ウサギとか鳥とか…

その他に必要なものがないか部屋を思考を巡らせていると、マシロから声がかかった。


「ルイ、準備ができたら早速行こう!」

「はーい!」



.



そんなこんなで、やってきました森の中。といっても、小屋から歩いてそんなに離れていない場所だけど。

木々が生い茂る中、私はクロガネと手を繋ぎ、マシロが先頭…というフォーメーションで歩く。

地面には草は生えているが、そこまで高くなくそこそこ歩きやすい。たまに大きな石や木の根っこがあるが、マシロが蹴とばしたりナイフで掃ったりしてくれるおかげでかなり助かっている。

クロガネは前を見てぽてぽてと歩くだけだが、たまに空や木の奥などをじっと見ては、ふくふくの唇をむっと突き出して不機嫌そうにする。森が怖い…とも、ちょっと違うようだ。


本当は皆で手を繋いで森に入った方がいいんじゃないかとマシロにも手を差し出してみたが、「クロガネだけで十分だから大丈夫だよ」とよくわからない断られ方をされた。

クロガネもうんうんと頷いていたのでそういうものか…と思い今の形になったが、もしやマシロが切り込み隊長を担っているのだろうか?

聞こうと口を開いた時、クロガネが「きた」と呟いた。


「正面から右、60度。あと3秒。3、2、1…」


クロガネが私の手を引きながらカウントダウンをする。


「ゼロ」


途端、イノシシのような動物が飛び出してきた。

否、イノシシのようではあるが、イノシシではない。額には角があり、牙もかなり立派なものが2本下顎から上向きに生えている。あの牙は私の腕よりも太いかもしれない…

大きさも2人の身長と同じくらいのサイズで、そんな生物がかなりの速度で飛び出してくるなんてとても心臓に悪い。


イノシシもどきは私たちの進行方向を塞ぎ、こちらに向きなおす。そしてブルル、と低く喉を鳴らすと、一直線に走り出した。


「あ、あぶない!」


思わずマシロの身体を引こうと手を伸ばすが、その前に私はクロガネに横へ引かれ、マシロは消えた。

…ん?消えた?


衝突対象が無くなったイノシシもどきは、そのまま私たちの後ろにあった木にものすごい音を立ててぶつかった。そしてメキメキと音を立てて木が倒れていく。

あ、あんなスピードと大きさでぶつかられたら、私たちなんて一瞬で死んじゃうよね…!?

クロガネと繋いでいる手が、震える。


「ルイ、平気。あれは弱い。マシロ、負けない」


クロガネはそういうと、ギュっと手を強く握り返してくれる。


「こっちこっち、こっちだよ~!」


マシロの声にバッと顔をあげれば、先ほど消えたと思っていたマシロは周辺の木の上に避難していたらしい。

ひらりと軽やかに下りてきたマシロは、敵を挑発するかのように声を出す。

そしてイノシシもどきが突っ込んでくる中、跳び箱のようにピョンピョンと飛び越えては反対側へ逃げるという、なんとも身軽な回避術を披露していた。

流石猫というべきなんだろうか…?それでも危ないことは変わらないので、ハラハラして見ていると、「マシロ」とクロガネが声を掛ける。


「ルイの心臓がもたない」

「ちぇ~。ま、ルイに心配はかけられないね!ちゃちゃっと片付けちゃうよ~!」


そういうとマシロは飛び跳ねることをやめ、イノシシもどきの正面に立ち、向き合う。

そして自身を目掛けて突進してくるタイミングに合わせ、手に持つナイフで切りつけた。

短剣よりも短いナイフで大丈夫かと、より焦ったが、そんな私の心配をよそにイノシシもどきは真っ二つに割れる。

一瞬の出来事に混乱する私とため息をつくクロガネ。

マシロはというと、満面の笑みを浮かべて「とーばつ完了っ!」とピースをこちらへ寄こすのだった。



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