心装
「銘は『幻妖』俺の目にすら映らない変わり者の心剣だよ」
人の目に映らない心剣ね一体どんな能力かしら。
可能性としては幻覚に光の操作、能力関係なく心剣の材質って可能性もある。
私達は普段から武器をむき出しにして実戦形式の戦闘を行う。
危険だと感じるかもしれないが実のところ心剣を展開した瞬間に私達は心剣を作り出す力『心素』を鎧、『心装』として纒う。
これは人によって強度は違うがこれを纏う限りあらゆる攻撃から身を護る。
そしてこの心装の全損、もしくは戦闘続行不可能で試合決着とする。
故に実戦では相手の攻撃は一度は受ける事が出来るし逆を言えば受けられもする。
けれど抜け道もある、だからここで終わらせればどんな能力であれ関係ない。
その場で心剣ごと氷漬けにしようとしたと同時に雲間は後ろに飛び退く。
流石に避けるわよね、いくら即死は無いとはいえ氷漬けにされたり炎で燃やされ続ければ呼吸が出来なくなる。
能力次第では動けなくなった時点で即詰みもありえるから授業でも警戒するよう散々言われるのだ。
さて、ここからどうするかだけれど後退したとはいえそう距離もできていない。
氷を飛ばすには距離が近い、心剣の形状も正確なリーチも分からない状態で凍花のリーチの少し外、氷塊を撃つ間に私は斬られる、と思わせたいのでしょうね。
私はその場で凍花を二度振るい描かれた軌跡は氷の斬撃となり雲間へと飛んでいく。
一太刀目は躱し二太刀目は心剣で砕かれる、そして雲間は小さな舌打ちの後に愚痴のように呟いた。
「マジか……いや、これくらいならやってくるよなぁ」
「ええ、貴方が普段戦っている相手とはレベルが違うの、この程度の事なら時間も意識も割く必要はないの」
今の武器の振り方、持ち方を見るに太刀のようには見えるわね。
今の舌打ちは距離を取らされたことに対してかしら、能力は近距離で真価を発揮するタイプ?
だとしたらさっき使わなかった事に説明がつかない。
心剣は外観から能力を察せられる物は多い、改めて見えないっていうのは厄介ね。
正直なところこのまま能力で撃ち合えば物量で楽に勝てるんだけど、それで勝っても慎也は納得しないでしょうね。
意外と長引いてるわね、せっかく二人きりの時間だったのになんで……
いえ、今はさっさとこいつの能力を限界まで引き出してその上で圧勝する、その事に全力を尽くすのよ。
てかなんなのこいつ、さっきから全然真っ当に攻めてこないじゃない、今も何ぼーっと突っ立ってんのよもう、近距離じゃなきゃ発動できないならこっちから近づいてあげるわ。
周囲に雪を展開しながら同時に距離を詰める。
これは不意の能力使用への牽制、この距離まで詰めて透明な遠距離攻撃手段を持っていましたじゃ笑い話にもならないもの。
雪のお陰で雲間の心剣のリーチもなんとなくだけどわかる、あとは振るってきたタイミングと手元を見れば武器同士が衝突するタイミングも分かる。
そこまで行けば全身冷凍して終わり。
そして私は彼の袈裟斬りと撃ち合うように武器を振るった。
そして私は肩から切られ大幅に『心装』を削られた。