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星に願いを  作者: にょろ
3/10

心剣

 心剣とは多種多様な形をとる、そしてそれは心を表すために形状だけに留まらず能力すら保有するようになった。

 武器が炎を纏い、氷を生み出し、雷を迸らせる、身体機能を大幅に強化し魔獣を操る、持つものによって在り方を変え個人個人に合わせて異なる異能に目覚めるのが心剣だ。

 この強さが大きな意味を持つ学園においてその能力を明かすというのは大きなリスクとなる。


「今のお前の能力にどれだけどれだけ注目が集まってるのかわかってるのか⁉」 


 文化祭においてあらゆる攻撃を弾きあらゆる防御を切り裂いた彼の心剣に宿った能力は相応の金額を積んでも知りたいと思うものは多いはずだ。

 しかし彼は俺の提案にあっさりと了承を返し、試合準備を始めた霞風に視線を移し俺に背を向ける。


「知られたらそれはそれで良いと思ってるよ、その程度で負けるつもりもないから」


 こちらに今の一瞬雰囲気が変わった、その様子に刈原が積み重ねた経験と知識に裏打ちされた強さの根源を覗かせた気がした。


 いや、まあ冷静に考えれば俺が霞風に勝てる可能性なんてほぼ無いわけでリスクなんてゼロも同然って思考も合ったりするんだろうか。

 霞風に経験を積ませるための当て馬にしたいだけなのかもしれない。


「そんな好条件で戦えるのなら多少の無謀でもやる気は出るってもんだよな」


「無謀って程でもないと思うけどやる気を出してくれたのなら良かった」


 そこで会話を切り上げて俺は霞風の前に立つ。

 距離は公式戦を意識して5メートル程度を開ける、正確な距離は知らないが心剣のなかには弓や銃といった遠距離武器もあることからある程度の距離が設けられる。


「じゃあ開始で」


 刈原があっさりの開戦を告げた。


「はぁ、本当に慎也は……。

 来なさい『凍花いてばな』」


 その透き通るような水色刀身が現れると同時に辺りの温度一気に下がる。

 剣全体が氷の様な水色でありそこに氷の花があしらわれている何度か見たことのある美しい心剣だ。

 彼女の心剣は片手の両刃剣であり保有する能力は名前通り冷気や氷を操る。

 特に特徴はないが、その規模と出力が桁違い。

 強力な能力に異常な出力、シンプル・イズ・ベストここに極まれりって感じだな。


「貴方も出しなさい、私の能力の範囲は知ってるでしょ?」


 彼女の能力の範囲は公式に出されている訳では無いが出した氷を飛ばす事で練習場一つ分程度ならどこにいても攻撃は当てられる。

 俺の心剣じゃあ遠距離戦はまともにやり合っても絶対に勝てない。

 とは言え俺もやるからには負けたい訳では無い。


「なぁ知ってるか?この勝負、俺が勝てたら刈原が自分の能力を教えてくれるらしいぞ」


 そう言いながら俺は心剣を出さずにゆっくりと霞風へと歩き近づく。

 霞風は話の内容に少し驚いた様子を見せるがその剣先を俺へと向け警戒を解くことはない。


「近距離系なのかしら、わざわざそんなことしなくても言ってくれたら貴方の得意な間合いから切り合ってあげる」


 そりゃあ会話に興味なんて無いだろうな、俺如きに負けるなんて万に一つもありはせず、一方的に勝たなければ俺の不必要を刈原に訴えれない。

 だがそれで良い少しずつ近づく、俺の心剣の間合いを悟らせないように少しずつ。


「刈原の能力ってどんなものなんだろうな、試合で鉄すらスパスパ切ってたよなこう……こんな感じか」


 俺は片手を振り上げ何かを握るような手の形にする。

 彼女は俺の両手を重視しながらも足、頭、身体全体を目に捉える。

 全てに劣るであろう俺が彼女に対して唯一有利に立てるのは情報量のみ、学年6位の能力ともなると考察も進み、俺の能力は相手からしてみれば注意するまでもないから知りようもない。

 距離はもう1メートルを切り霞風の間合いに入るぎりぎり。

 彼女の目的は俺が心剣を出し攻撃に移ったところを流すなり受けるなりして反撃に出ること。

 武器を出してない俺を切ったところで刈原に何を訴えることもできないからだ。


 だからそこを利用させてもらう


「どうやってあんな事をやってるんだろうな、こんな感じか?」


 おどけた雰囲気で手を振り下ろす。

 特に何も無い手の一振り。

 それを見て

 霞風は


 全力で後ろへ飛んだ。


「!!……霞風どうした?いきなり逃げるように飛んで」


 内心焦る気持ちを抑えて霞風を煽る、できる限り考える時間も冷静さも与えたくはないがここで焦って近づくのも悪手だろう。


「貴方……いえ、少し虫がいてね」


「虫が苦手とは意外だな」


 俺が既に攻撃に移ったと確信させた時点で後は遠・中距離からの攻撃で俺は終わりだ。

 再び俺は距離を詰める


「少し煩わしかっただけよ」


「……そうか」


 さきと同じ距離になり俺は今度は会話をすることもなく手を振り抜いた。


ギィン!!


 金属同士がぶつかり合うような音はするも、そこにあるのは霞風の剣だけだ。


「貴方の心剣えものはそこにあるのね」


 心の中で俺は盛大な舌打ちをかます。

 一発芸も不発に終わり距離を取りたくなる、というより逃げたくなるが距離を離されないよう相手が下がればすぐ距離を詰めれるように注意を払う。


「銘は『幻妖』俺の目にすら映らない変わり者の心剣だよ」

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