表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

エピローグ

君のその手は優しく包まれ

一人のままにはならないだろう

そうして君は多くの人と

繋がり合って生きていく

 いつの間に眠ってしまっていたのか、モモは目が覚めると、ワゴン車の後部座席で横たわっていた。徐々にはっきりしてくる視界には、白い天井と、彼女を覗き込む女の子の姿。それと、知らない男性。


「もも!」


「静かに……。頭を打ったと聞いているので、検査が終わるまでは、出来るだけ安静にしていてください」


 男性が、最初はモモを覗き込む少女に、次いで、モモに話しかける。視界がぼやけていて気づかなかったが、男性は白衣を着ていた。ワゴンに乗せられた器具からも、どうやら自分は救急車に乗っているらしい、と、モモはぼんやりそう考える。


 少しずつはっきりする意識と、記憶。


(そうだ……、私は彼女が倒れそうになるのをかばって、頭を打ったんだ。でも……)


 ブレザー服の少女が少し離れた場所からモモを見つめている。少し離れているように、と声を掛けられたからか、モモが彼女に視線を移すと、身体を浮かして近づこうとして、すぐに元に戻る。

 その様子を見る限り、彼女の方は問題なさそうだ。


「さや、大丈夫?」


 安静に、と言われたので、身体を動かすことなく、モモは彼女に話しかける。


「さっき、様子が変だったから」


「大丈夫だよ、ももが守ってくれたから」


 そうじゃないんだけどな、と、モモは心の中で苦笑いを浮かべる。

 一度ははっきりとしてきたと思った視界が、またぼやけてきてしまった。


「……あとで」


 いっぱい話そうね。

 それははたして言葉になっていただろうか。


 話したいことがあるのだ。子供のころの楽しかった記憶、大事に思っていること、最近、余計なことばかり考えてしまって、話したくても話せなかったこと、それから……、それから……。

 他にも話したかった事があったような気がするのだ。でもそれが何だったのか忘れてしまった。

 でも、代わりに、大切なさやのこの手の温もりを思い出せた。温かくて柔らかで、自分の手の中にすっぽりと包めそうな、少し小さな手の平の温もり。

 それが思い出せたから、きっと大丈夫、そう、思えた。

最後は誰だって一人かもしれない

けれどそれは孤独ではない

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 番外編まで全て読ませて頂きました。 イツキという名前の意味に気付いて、成る程! とすっきり。 全部読み終えて改めてプロローグを読み直すと、また違う視点で読めますね。面白かったです。 不思議…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ