09.頼もしい仲間たちと作戦会議
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戴冠式を目前に控え、戴冠式を成功させるために共に奮闘する「仲間たち」と顔合わせすることになった。
ファビウス邸の客間には、お義父様とお義母様、ルーセル師団長とラングラン侯爵に、カスタニエさんが集まる。
「――昨日、神官の一人が誘拐されそうになり大騒ぎになりました。犯人を拘束しましたが、口を割りません。誓約魔術をかけられているようで、特定の内容を話そうとすると声が出なくなってしまうのです」
カスタニエさんは、神官が誘拐される可能性があるとノエルから聞いて警備を強化してくれていた。
その結果、理事長たちの手下らしき犯人を二人、捕まえたのだ。
「戴冠式の準備で人の出入りが激しい時期ですので、犯人がまた紛れ込んできそうです。引き続き、神官たちを警護しますね。王笏の方はどうですか?」
王笏は、お義父様が宝物庫周辺を警備してくれていて、今のところ不審な人影を見ていないらしい。
「彼らは必ず王笏を狙うだろう。戴冠式でアロイス殿下が手にするまでは、何が何でも守らなければならない」
「もちろん、アロイス殿下の護衛も重要だよ。今回の戴冠式を機に思惑を抱えている人物は他にもいるだろうからねぇ」
ルーセル師団長の言う通り、警戒するべきなのは理事長たちだけではない。
アロイスの即位を阻もうとする者は、他にも居るだろう。
国王が変われば社交界の勢力もまた、変わるのだから。
限られた椅子を勝ち取るために、手段を択ばない者がいるだろう。
「ルーセル師団長、アロイス殿下の護衛をよろしくお願いします。彼が無事に国王になれるよう、守ってあげてください」
「ええ、お任せください」
私はルーセル師団長に改めてアロイスを守ってくれるようお願いをした。
ルーセル師団長は戴冠式の間、アロイスの近くで護衛に集中することになっているのだ。
正装姿のアロイスを間近で見られるなんて羨ましい、と本音が零れそうになったのは秘密だ。
「殿下の安全を陰ながら守りますぞ」
ルーセル師団長の朗らかな声を聞くと安心できる。
年長者らしい落ち着きと、こちらを気にかけてくれる優しさを感じ取れるのだ。
戴冠式当日、アロイスの側にルーセル師団長が居てくれてよかったと思う。
きっと、ルーセル師団長が隣に居れば、不安な気持ちを和らげてくれるだろうから。
「――ところで、ファビウス卿は本当によろしいのですか?」
不意に、ラングラン侯爵がノエルに問いかけた。
「よろしい、とは?」
「王族の身分を破棄しなければ、王位を得られる可能性があるでしょう? それをアロイス殿下にお譲りして、本当に未練が無いのでしょうか?」
一瞬にして、空気が張りつめる。
ラングラン侯爵は鋭い眼光でノエルを見据えており、私が睨まれている訳でもないのに、気圧された。
一方で、隣に居るノエルは微笑みを崩していない。
いつものように、余裕がある笑みを浮かべている。
私なら後ろめたいことがなくても委縮していたに違いない。
「ファビウス卿が王位に関心を持たないのが、どうも気になっているのでね」
「それは心外ですね。私が何か企んでいるとお思いですか?」
はらはらとして見守っていると、ノエルの手が私を引き寄せた。
「あいにく、本当に王位には興味がありません。私は妻の関心を引くのに必死ですから」
「ちょ、ちょっと! 何を言っているのよ!?」
「本当のことなんだけど?」
真剣な話し合いをしている場で、いつもの割り増しで色気を放つ笑顔を向けるのは止めてほしい。
ノエルがいきなりふざけるものだから、ラングラン侯爵が咳払いしてしまった。
「――それに、愛する妻はアロイス殿下が王座に就くのを何よりも楽しみに待っているのです。だから、戴冠式を無事に終わらせる為に尽力しますよ」
ノエルと視線が絡み合う。
紫水晶のような瞳は、誓いを立てるような真摯な眼差しで、見つめてくれる。
「――ねぇ、ノエル」
「ん?」
呼びかけると、すぐに応えてくれる。
顔を近づけ、ノエルにそっと耳打ちした。
「私ね、ノエルが同担で本当によかったと思っているわ」
「どう……たん……」
「ええ。頼もしくて、なんでも一緒に楽しめる、かけがえのない同担よ!」
好きなものを共有する仲間がいるのはありがたいことだ。
一人でももちろん、アロイスを拝むことはできるけど、誰かが一緒ならもっと楽しくなるから。
抑えきれない喜びを伝えたくてノエルを抱きしめると、ノエルの手が背中に回される。
「……同担ではなく、夫としてそう思ってくれないだろうか……」
ノエルがぼそぼそと呟く声が聞こえてきたが、内容は聞き取れなかった。
久しぶりに更新できてホッとしています……!
次話からいよいよ戴冠式がスタートです。
また、実は新作を公開しておりまして、こちらも読んでいただけますと嬉しいです……!
タイトル『伯爵令嬢のユスティーナは「無口で不愛想な氷の貴公子様」の婚約者を続けることにした』
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