05.密かな調査(※ノエル視点)
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ユーゴを連れて魔術省舎の裏庭に行けば、待ち合わせしている人物はすでに来ていた。
「ジラルデ、久しぶりだね。仕事の合間に来てくれてありがとう」
「遅くなってすみません。向こうの警戒心が強いので、ほんのわずかな情報しか掴めませんでした」
マルロー公の周辺を探ってほしいと頼んだところ、ジラルデはカスタニエ卿と協力して情報を集めてくれた。
「いいや、よくやった。手強い相手なのにここまで集められたのだから大したものだ」
探りを入れてみたが、これといった動きはない。
弱みを握って黙らせれば邪神の調査を進めやすいのだが、一筋縄ではいかないようだ。
しかし、思いがけない収穫があった。
ジラルデから受け取った報告書によれば、マルロー公爵家の傘下の家門では急に使用人が解雇されているようで怪しい動きを見せている。
「ノエルさん、マルロー公の家臣の動きも調べてもらっていたんですか?!」
「ああ、最近の彼らはサロンにも夜会にも現れず忙しそうにしていたから気になっていたんだ。使用人が大量に解雇されているが、何故だろうか?」
財政が圧迫されているように見受けられるが、商人が連日訪れては屋敷の中に荷物を運びこんでいるらしい。
「極めつけは、領地内に突如集められた魔術師たち……か。彼らの身元が気になるね」
「領民の話によれば、作法を知らないごろつきのような連中のようです」
「なるほど、それなら魔術省が介入する口実ができて好都合だ」
ここ数日の間に魔術省で極秘に動いている、違法魔術の調査で探していた魔術師の集団が関わっていそうだ。
(所詮はマルロー公に切り捨てられる駒だろうが、奴の戦力を削げるのならまあいい)
一刻も早くマルロー公を片付けたいところだが、大きく動くつもりはない。
少しずつ首を絞めて、確実に弱らせて引きずり降ろしてやる。
(レティが予知している暴動と、魔術省で追っている案件は繋がっている。様々な要素が繋がってきているな)
あまりにも都合よく繋がるものだから不気味さすら感じる。
まるで、この世界がシナリオが成立させるべく動き出しているように思えてならないのだ。
「ひとまずは末端から崩しにかかるとしよう。レティが何かしらの手掛かりを見つける前に片付けないといけないな」
ジラルデが苦笑して、「そうですね」と相槌を打つ。
「先生がこの事を知れば、何をしでかすかわかりませんから」
理由をつけて魔術師たちの本拠地に乗り込むレティの姿が容易に想像できる。
そのような事態は、いかなる手を使ってでも防ぎたい。
「幸いにも、今はリア嬢という口実があるから学園に留めておけるが、いつまでじっとしていてくれることやらわからないよ」
「安全な学園に閉じ込めておいて自分が解決する魂胆ですか。先生がじっとしてくれていたらいいのですが……」
「学園の外に比べたら遥かに安全だが……、それでも不安は尽きないな」
新たな《黒幕》である理事長はもちろんのこと、新しい治癒師は虎視眈々とレティを狙っているようで油断ならないのだ。
「ユーゴ、さっさと終わらせよう。ならず者たちに悪夢を見せてやってくれ」
「はーい! 早く研究に戻りたいので、張り切ってやっちゃいますね!」
今宵の悪夢は、いわば私たちからの警告だ。
それでも運命に踊らされようと前に進み出てくるのであれば容赦しない。
久しぶりのユーゴですが、登場していない間もわんころわんころと活躍しております。




