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このたび、乙女ゲームの黒幕と結婚しました、モブの魔法薬学教師です。  作者: 柳葉うら
第十七章 黒幕さん、恋の応援をしましょう!
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07.意見交換会(2)

すみません、ゼスラがエリシャとリアを呼ぶ際の呼び方に誤りがありましたので、修正しました。

前話も修正いたします…!

「たとえば、自身の一族が大きな転換期を迎えている時に、自国の王子に見初められた場合、恋に発展することはあり得るだろうか?」

「う~ん……相手が王子となると、なかなか恋する心の余裕がないかもしれないわ。だって、恋愛するにせよ、婚姻するにせよ、政治的な駆け引きが始まるもの」


 先にゼスラの質問に先に答えたのは、またリアだ。

 

(侯爵令嬢――王族との婚姻の話がいつ出てもおかしくない家格のリアからすると、どうしても現実的な考えが出てくるのかもしれないわね)


 それに、現在の王族でバージルにはまだ婚約者がいないため、大人たちは彼の婚姻について囁いているから、自然と彼女の耳にも入ってきているだろう。


 アロイスや処刑された第一王子には婚約者がいたが、バージルには唯一、婚約者がいない。

 ノエルから聞いた話によると、バージルの母親である元第三王妃はバージルが王位に就くために後ろ盾となるような貴族家の令嬢と婚約させようとしていたが、第一王子の母親である元第一王妃やアロイスの母親である元第二王妃が水面下で妨害していたため、相手を決められなかったようだ。


 前王妃たちは、自分の子どもを次期国王にするために争い続けていたのだ。


(エリシャも、ブロンデル侯爵令嬢という立場に戻ったから、相手が王子となると、逆に夢を見られなくなってしまうのかしら?)


 私はエリシャの様子が気になって、盗み見た。

 エリシャは目を伏せて思い悩んでいるような表情を浮かべており、答えることを臆しているようだ。


「なるほど、同じ理由で、恋を諦めたヒロインがいる作品もあったな。――エリシャ殿は、どう思う?」

「わ、わたくしは……」


 話を振られたエリシャは、びくりと肩を揺らした。

 ゆるりと顔を上げた彼女は、眉尻を下げて、困惑している。


 頬は赤く染まっており、その姿はまるで――大切な誰かを思い浮かべている、恋する乙女だ。


(こ、これはまさか……バージルと自分の間柄を重ねて、意見を言おうとしているのでは――!?)


 ふと、ゼスラとジュリアンがいる方向から視線を感じた。

 顔を向けると、二人とも確信めいたような表情で、私に向かって頷いて見せてきた。


 どうやら、ゼスラとジュリアンも、エリシャの反応を見て同じことを思っているようだ。


(ああ、早くエリシャの答えを聞きたい。だけど、急かすのは良くないわ。無理に答えさせるのも良くないけど、答えを聞きたいし……どうすればいいの~!?)


 悶々と悩んでいると、リアがくすくすと笑う声が聞こえてきた。


「エリシャったら、授業で当てられた時のように緊張しているわね。今は授業ではなくて意見交換会なのだから、小説の内容について気軽に思ったことを言う場なのよ」

「そ、そうね。わたくしったら、なぜか緊張してしまったわ」


 エリシャの表情が和らいだ。


(リア! ナイスアシスト!!)


 私は心の中でリアにサムズアップした。


 きっと、私やゼスラが同じことを言っても、エリシャを緊張させてしまっていただろう。

 親友であるリアの言葉だからこそ、エリシャの心を解したはずだ。


(ゲームの中でのエリシャとリアの間には深い溝があったけれど、この世界の二人は親友になれて、本当に良かったわ)


 二人が話す様子を見ていると、心がほのぼのとした。


「わたくしは、王子殿下の為人に惹かれたら、恋をすると思います。惹かれてしまったら、相手のことばかりを、考えてしまう……かもしれません。もしも政治的に婚姻が難しいとわかっていても、その方と一緒に居られる道を、模索するでしょう」

「素晴らしい……! ――コホン、いや、小説の中のヒロインのような意見を聞けて、感激した」


 ゼスラはまた感動して大きな声を上げてしまったが、すぐに平静を装った。

 バージルの恋も上手くいくかもしれないと思い、喜んでいるのだろう。

 その隣で、ジュリアンはまた嬉しそうに口元をによによとさせている。

 

 私も、淑女の仮面の下では喜びでニヤニヤしているところだ。


「あの、ゼスラ殿下に相談があるの。青春研究会の会長として、そして獣人としての意見を聞かせてもらえるかしら?」


 不意に、リアが思い切ったようにゼスラに話しかけた。


「おお! ぜひとも聞こう! できる限り、貴殿の力になる!」


 相談してもらえて嬉しかったようで、ゼスラはいつもの悠然とした表情を崩し、無邪気な笑みを浮かべている。

 ゼスラの頭から、一瞬だけ黒く立派な角が二本、にゅっと出てきたが、すぐに消えてしまった。


(そういえば、獣人は急激な感情の変化が起こると、獣化した時の体の一部が現れると、ゲームの中でゼスラがエリシャに説明していたわね)


 きっと、ゼスラは青春研究会の会長として頼ってもらえたことが嬉しかったのだろう。


「実は私――イセニックのことが、好きで……」

「おおっ! それは誠か!?」

「イセニックの真っ直ぐな性格や、自分の使命を果たすためにひたむきな姿に引惹かれたの」

「そうか、そうか! リア殿の言う通り、イセニックは忠実で責任感の強い、自慢の護衛だ」


 満面の笑みを浮かべるゼスラの頭に、また角が生える。

 よほど嬉しいのか、今度はすぐには消えず、生えたままだ。


 ジュリアンも嬉しかったのか、魔法でクラッカーを取り出して、パーンと鳴らして紙吹雪を散らすなどしている。後でちゃんと、自分で掃除してもらおう。


「だけど、獣人であるイセニックは、人間を恋愛対象には見れないのではないかと、不安で……」

「いや、そのようなことはない! ルドライト王国は鎖国前、人間と婚姻を結ぶものがいた。それに、イセニックは以前、リア殿の指が触れた時にリア殿を意識し過ぎて獣化していた。恋をした獣人は、好いた者を前にするとつい人の形を保てなくなるものだ」

「そ、そうなのかしら……?」


 リアの目に希望の光が灯る。


「ああ、だけどイセニックは恐らく、リア殿に遠慮して、自分の想いを封じている可能性が高い。イセニックは生涯、私の護衛をする誓いを立てているから、もしもリア殿と恋人となり、いずれ婚姻を結ぶことになった時、貴殿を祖国から連れ出すことに負い目を感じているかもしれないのだ」

「……それでは、私がその遠慮を壊せばいいのね?」


 リアは両手を胸の前で握りしめる。

 その表情は、決意に満ちていた。


「私、イセニックに告白します!」

「な、なんと! リア殿からイセニックに伝えてくれるのか!?」

「はい! 砕ける覚悟で当たってみますわ!」

「相分かった。それではすぐに、場を用意しよう。善は急げだ」


 ゼスラは横にいるジュリアンへと視線を移す。


「エルヴェシウス先生、イセニック避けの阻害魔法と防音魔法を解いてもらえるか?」

「わかった」


 ジュリアンは頷くと、パチンと指を鳴らした。どうやら、魔法を解除したようだ。


「私が今からイセニックを召喚する。――覚悟はできているな?」

「――っ、はい!」


 リアの返事を聞いたゼスラは、神妙な顔つきになる。

 獣人なりの、特別な召喚方法があるのかもしれない。

 私は固唾を呑んで、見守った。


 ゼスラは大きく息を吸い込む。そして――。


「イセニィィィィィィィィック!」


 鼓膜が破れそうなほど大きな声で、叫んだ。

 ゼスラの音が振動を生んだのか、窓ガラスやドアが、カタカタと揺れている。


(召喚方法って、まさか……叫ぶだけ!?)


 私が心の中で突っ込みを入れた、その刹那。

 廊下から、ドドドと轟音が聞こえてくる。


(な、何の音……?)


 轟音は瞬く間に近づいてきた。


 呆気に取られている間に、魔法薬学準備室の扉が開く。 

 扉の開いた先に現れたのは、走って髪を乱した状態のイセニックだ。


「ゼスラさまぁぁぁぁっ! ご無事ですか!?」


 イセニックは部屋の中に入ってくるや否や、ゼスラの頭からつま先までを、目にも留まらぬ速さで確認している。


(どんな方法で召喚するのかと思ったら、古典的かつ単純な方法だったわ……)


 期待していた私は、密かに肩を落とした。

電子書籍版黒幕さんの完全版2が配信されましたので、婚約編に配信記念SSを投稿しております!

よろしければお楽しみくださいませ!

そして、改めまして、黒幕さんを長年応援いただきありがとうございます。

本作が少しでも皆様のお楽しみになっておりましたら嬉しいです。

今後も黒幕さんをよろしくお願いいたします…!

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電子書籍版の完全版1が2026年2月5日配信決定です!
-ミーティアノベルス様告知サイトへの移動はこちらの文字をクリック- 挿絵(By みてみん)
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