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このたび、乙女ゲームの黒幕と結婚しました、モブの魔法薬学教師です。  作者: 柳葉うら
第十七章 黒幕さん、恋の応援をしましょう!
209/211

05.青春研究会の作戦会議

更新、遅くなって申し訳ございません。

大変お待たせしました!

 放課後になると、ゼスラとジュリアンが魔法薬学準備室を訪ねてきた。

 しかし、ゼスラの護衛で青春研究会の一員でもある、イセニックの姿がない。 


「あら、ストレイヴさんは?」

「イセニックには、今は護衛の仕事を休んでもらっている。休みは不要だと粘られたが、エルヴェシウス先生がいるから問題ないと説明して、ようやく納得してもらえた。しかし、こちらを追跡している気配を感じ取ったから、エルヴェシウス先生に頼んで追跡阻害魔法をかけてもらった」


 どうやら、イセニックに用事があって来られなかったわけではないらしい。


「そ、そこまでするなんて……いったい、どうして?」


 私の質問に、ゼスラはいつになく神妙な表情になった。


「実は、恋を応援したい人物とは、イセニックのことなのだ」

「なるほどね。……それならストレイヴさんも一緒の方がいいのではないかしら?」


 手助けするのであれば、本人の想いを聞いた方が良いだろう。

 しかし、ゼスラは私の言葉に首を横に振る。


「今までにもイセニックに恋の応援をすると言ったのだが、イセニックは自分が恋をしていることを否定ばかりしている。そのくせ、気づけばルーセル殿を見ていたり、偶発的に彼女の手を触れてしまった時は、獣化してしまうほど、彼女を好いているのだ」

「な、なるほど……思春期の、複雑なお年頃だものね」


 そのような状態なら、密かに応援するためにも不参加にするのは仕方がないだろう。

 とはいえ、イセニックが心配だ。

 護衛を外されてしまったイセニックが、今もどこかで心配していそうな気がする。


(ゲームのゼスラルートでは、エリシャとゼスラが二人きりになる度に、イセニックがゼスラを探しに来ていたわね)

 

 なんせ、イセニックは常にゼスラの隣に居て、ゼスラの護衛を務めているのだ。

 きっと、今頃は落ち着きなく学園内を歩き回っているに違いない。


「イセニックは明らかにルーセル殿に想いを寄せているのに、どうして自分の気持ちに素直にならないのだ。どうにかしてイセニックの恋を成就させたいと思った矢先に、魔法競技大会が開催されるから、それを上手く活用したい。恋愛小説では、こういった行事がきっかけで、恋が成就するからな。……とはいえ、八方塞がりで参っている」


 ゼスラは小さく溜息を吐いた。今まで、この件でのイセニックとのやりとりで、そうとう苦労しているようだ。


「なかなか難しい状況なのね。――ひとまず、座って話しましょう」


 私は二人をテーブルに案内して、紅茶を淹れた。

 今日は話し合いをするから、気分がスッキリするような爽やかな香りのハーブをブレンドした紅茶だ。


 紅茶をひと口飲んだジュリアンが、口を開いた。


「……以前読んだ恋愛小説をもとに推理すると、イセニック・ストレイヴは、リア・ルーセルに遠慮しているのではないだろうか? もしも想いが通じ合ったとして、婚姻することになれば、彼女をルドライト王国に連れていくことになるだろう。故郷から離れたら、彼女は寂しい想いをするに違いないと、心配しているような気がする。だから、自分の想いに気付かないふりをしているのではないだろうか?」


 たしかに、ゼスラの護衛を務めるイセニックは、ゼスラの帰国に合わせてルドライト王国に帰らなければならない。

 そうなると、リアと別れるか、リアを連れて帰るしかないだろう。


 ジュリアンの意見を聞いて、ゼスラは「ふむ」と呟きつつ、相槌を打つ。


「その可能性もあるが……もしかすると、イセニックは自分が両想いになれるはずがないと考えている可能性もあるな。イセニックは幼い頃から私に付き添っているせいで色恋に疎く、その上、私たちは獣人族だから、種族が違うから恋愛対象に見られていないのではと、恐れているかもしれない」


 ゼスラの考えも、一理ある。

 獣人の国であるルドライト王国は長らく鎖国だったため、人間も獣人も、お互いを異種族として意識したままだ。


「どちらの可能性もありそうだけど……ストレイヴさんに尋ねても答えてもらえないのであれば、別の方向から動かした方がいいかもしれないわね」

「別の方向? なにか、手立てがあるのか?」

 

 ゼスラがきょとんと首を傾げる。

 その目は、キラキラと輝いて、私の答えを待っていた。


「ストレイヴさんの不安を無くした状態にすれば、ストレイヴさんも一歩踏み出せるのではないかしら?」

「なるほど、まずはルーセル殿の気持ちを確認してみる、ということか。早速、明日にでもルーセル殿に聞いてみよう」

「ま、待って! 直球に聞いたら、恥ずかしがって、答えられなくなるかもしれないわ!」


 こういった話は、非常にデリケートなのだ。

 直接的に聞くと、その気はなくても、相手の心に土足で踏み込む事になりかねない。


「それなら、どうすればよいのだ?」

「青春研究会の活動の一環として、ルーセルさんに意見を求めるのはどうかしら? 今のストレイヴさんとルーセルさんの関係と近い登場人物が出てくる小説を議題にして意見交換会を開き、女子生徒側の意見を教えてほしいと言って、聞いてみるの」

「なるほど。調査を装った情報収集か!」


 いつもは静かなジュリアンが、やや弾んだ声を上げた。


「そこで、二人にお願いがあるのだけど……その意見交換会に、ミュラーさん――いえ、ブロンデルさんも呼んでもらえないかしら?」


 私はゼスラとジュリアンに、エリシャとバージルが両想いに見えるのに、バージルが告白を踏みとどまっているように見えることを話した。


「たしかに、二人ともよく一緒に居るが、恋人といった雰囲気ではないな」

「バージル・グレゴワール・ノックスはどう見てもエリシャ・ブロンデルを溺愛しているのに、どうしてあと一歩が踏み出せないのだ」

「青春研究会の会長として、見逃せぬ状況だ。この二人も、ぜひ応援しようではないか。魔法競技大会で、この二組の恋を成就させよう!」

 

 ゼスラがティーカップを掲げる。

 私とジュリアンも掲げて、誓いを立てた。

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