03.義弟の恋を応援したい
更新お待たせしました!
作戦名を考えるのに悩んでしまいました><
学園へ向かう馬車の中。
私は思わず、欠伸をしてしまった。
「ふわぁ……」
「とても眠そうだね。学園に着くまで、少し眠るかい? 目を閉じるだけでも、休まるかもしれない」
私のことを心配してくれたようで、ノエルが片手を動かして、私の頭を自分の肩へと引き寄せてくる。
ノエルに寄りかかるだけで、安心したのか、睡魔が押し寄せてきた。
「最近、どうも眠いのよね」
「……私が夜、しつこかったのかもしれない……。レティが睡眠時間を確保できるように、気を付けるよ」
ノエルがしょんぼりとした声でそう言うものだから、思わず笑ってしまった。
「きっと、仕事の疲れよ。一年生の担任をしていると、それなりに駆けまわったりするから、そのせいなのかもしれないわね。体力を消耗して疲れたから、眠くなっているのだわ」
入学してから少し時間が経ったとはいえ、一年生はまだ学園に慣れる最中で、なにかと問題が起きるのだ。
そのたびに、私は広い学園内を端から端まで駆け回っている。
「以前のように、バージルに困らされることはないかい?」
「ええ、全くないわ。生徒同士の喧嘩が起きると仲裁に入るし、授業に協力的よ。相変わらず、ツンとしたところがあるけれど、可愛いものよ」
あと、エリシャに言い寄ろうとする男子生徒を睨みつけたり、エリシャ以外の人には塩対応なところが困りものだけど。
「あんなにもエリシャに一途なのに、まだ両想いになれないなんて、バージル……健気で可哀想に……ううっ……」
なぜか、ほろり、と涙が急に零れてしまった。
ノエルが慌てた様子でジャケットのポケットからハンカチを取り出すと、私の目元を優しく拭ってくれる。
「バージルをそんなにも心配しているとは……」
「だって、私の大切な生徒ですもの。それに、ノエルの弟でもあるから、応援したくなるわ。とても一途なところも好感が持てるし、本当にいい子よ」
今朝見た夢――ゲームで理事長との最終決戦前では、ヒロインのエリシャが黒い影に蝕まれた理事長に襲われそうになった時、攻略対象が駆けつけて、助けてくれる。
一番に駆けつけて来てくれる攻略対象は、ルートごとに異なる。
その中でも、バージルルートでは、バージルが体を張ってエリシャを守り、傷だらけになって倒れたので、衝撃的だった。
バージルはエリシャに怪我がないとわかると、微笑んで喜ぶ。
他の攻略対象は魔法を使って自分の身を守りながらもエリシャを守っていたのに、バージルは文字通り身を挺してエリシャを守るのだ。
その様子を見ると、いかにバージルが一途にエリシャを想っているか、思い知らされる。
(今朝見た夢では、攻略対象が出てくる前に目覚めてしまったわね)
この世界のエリシャは、どのルートに入っているのだろうか。
常にバージルがそばにいるから、バージルルートなのかもしれない。
エリシャはバージルの猛攻に初めこそ戸惑っていたけれど、今は頬を赤く染めて微笑んでいるから、両想いの可能性がある。
(だけど、エリシャが実家に戻る準備をしているところだから、バージルは遠慮して、告白していないのかもしれないわね)
もしくは、告白の決心がついていない可能性もある。
「バージルをかなり気に入っているようだね。レティはアロイスを好いていると思っていたのだが、バージルに気が移ったのかい?」
そう言って、ノエルが拗ねた顔で見つめてくる。
もしかして、同担の私が推し変したと思って、拗ねているのだろうか。
「いいえ、推し変したわけではないのよ。推しとノエルの弟だから、応援したいと思っているわ」
言葉だけでは、ノエルにわかってもらえず、勘違いされたままになってしまうかもしれない。
(行動で示して、分かってもらう……? いいえ、ノエルもバージルの健気さを知れば、応援したくなる気持ちが分かるのかもしれないわ。それに、ノエルは前にもバージルの恋を手伝おうとしていたことがあったのだから、それなりにバージルを可愛いと思っているはず)
実践型の、いい作戦を思いついた。
その名も、【ラヴ☆アシストでシンパシーを感じて☆作戦】!
ノエルには、バージルの恋を一緒に手助けしてもらって、私がアロイス推しでありながらバージルを可愛く思う理由をわかってもらおう。
バージルの健気で可愛いところを知れば、わかるはず。
「ねぇ、ノエル。突然だけど……今夜は、朝までじっくりと付き合ってくれる?」
「レ、レティ……?!」
いったいどうしたのか、ノエルは白皙の肌を赤く染めた。
紫水晶のような瞳が微かに潤み、いつも以上に煌めいて見える。
「急に、どうしたんだい?」
「このままではいけないと思ったのよ。ノエルには、もっと私のことを知ってもらいたくて……」
私はノエルの手に自分の手を絡める。
すると、ノエルが小さく固唾を呑んだ。
「レティがそんなにも積極的になるなんて……嬉しいのだが、いったいどうして……?」
「ノエルに、私が推し変したと思ったままにしたくないの。だから、ノエルには手伝ってもらいながら、間近で私を観察してもらいたいわ。一緒に作戦を立てましょう!」
「……」
ノエルは黙りこくった。瞠目しており、息をしている気配を感じられないから、心配になる。
「……そのことか……。私はてっきり、閨のことかと……勘違いしてしまった……」
たっぷりの沈黙の後、ノエルは聞き取れないほどの声で零すと、がくりと項垂れる。
「同担として、絆を深めていきましょう!」
「同担……の、絆……」
ふらりと体の力を抜いたノエルは、座席にもたれかかると、馬車の天井を眺める。
「まだ、同担の域から脱せていなかったか。……まあ、アロイスの次にバージルに夢中になってしまったのかと危惧したが、そうではなくて良かった……」
ノエルはまた小さな声で呟くと、私の肩に頭を持たれかけて、甘えてくるのだった。
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ヒーローのセリウスが前巻からさらにパワーアップしてヒロインのローレルを溺愛する巻となりますので、お楽しみいただけますと嬉しいです…!
よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾




