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このたび、乙女ゲームの黒幕と結婚しました、モブの魔法薬学教師です。  作者: 柳葉うら
第十五章 黒幕さんが、いつも以上に過保護です
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01.ユーゴくんとメアリさんの王都の家

大変遅くなってしまい申し訳ございません!

新章スタートです!

 ルドライト王国から帰った翌日の昼下がり。

 私とノエルは馬車に乗り、王都にあるユーゴくんとメアリさんの家に向かっている。

 ルドライト王国で聞いたグウェナエルと女神に関する話を伝えるためだ。


 実は昨夜お屋敷に帰ってすぐにノエルが魔法を使ってユーゴくんに手紙を送り、家を訪ねていいか聞いたところ、すぐに歓迎の言葉を書いた手紙が返ってきたのだ。


「レティ、二人の家が見えてきたよ。あの青色の扉の家だ」


 ノエルが指を差して示してくれたので、私はノエルに身を寄せて彼のそばにある窓から外を見た。

 

 こげ茶色の切妻屋根と白い石壁に青色の扉といった、絵本に出てきそうな可愛らしい家だ。


 私とノエルがを乗せた馬車が家の扉の前で停まる前に扉が開いて、中からユーゴくんが出てきた。


「ノエルさん、レティシアさん、いらっしゃーい! 朝からずっと待っていました!」


 ユーゴくんは満面の笑みを浮かべており、心の底から歓迎してくれている。


「この一週間、ノエルさんに全く会えなくて寂しかったんですよー! 久しぶりに会えて本当に嬉しいです!」


 そう話すユーゴくんはその場で飛び跳ねており、ユーゴくんのやや癖がある金色の髪がふわりと揺れている。


 その様子はさながら、帰ってきた飼い主を歓迎しているゴールデンレトリバーのよう。 


 ノエルはそんなユーゴくんを見て目元を綻ばせた。


「ああ、久しぶりだな。ただいま戻った」

「えへへ、おかえりなさい。……それにしても、ノエルさんから以前よりも強い魔力を感じます。もしかして、ルドライト王国でなにかありましたか?」

「実はそのことについても話したいことがある。あるものを持って帰ったから、後で見てくれ」


 そう言い、ノエルは今日着ている焦げ茶色のジャケットのポケットに手で触れた。


「うわぁ、今からとてもワクワクします。どうぞ、さっそく家の中に入ってください!」


 ユーゴくんの案内で家の中に入ると、素朴で温かな設えのダイニングルームが現れる。


 ぐるりと囲む白壁にくっつけるように並べている家具は木の色をそのまま活かした温かな色合いで、窓にかけられている黄色のカーテンと合っていてほっこりとした気持ちになれる室内だ。


 階段から足音が聞こえて見遣ると、メアリさんが二階部分から降りてきているところだった。 


 メアリさんは私たちを見ると口元を微かに持ち上げて微笑む。


「ようこそ、我が家へ。旅の疲れも取れない間に来ていただいてすみません」

「いいえ、急な訪問だったにもかかわらず時間を空けてくださってありがとうございます」


 ノエルはそう言うと、上着のポケットの中から月の槍を取り出して、魔法で本来の大きさに戻した。


 月の槍はノエルに触れられているからなのか、初めて見た時のような素朴な武器ではなく、装飾的な外観になっている。


 突然現れた神秘的な槍を目の前にして、ユーゴくんとメアリさんはパカリと口を大きく開いたまま月の槍をまじまじと見つめた。


「これは月の槍――かつてルドライト王国を訪ねたグウェナエルと女神が残した聖遺物です。グウェナエルはこの槍を、自分と同じ月の力を持つ者がルドライト王国に来た時に渡してほしいと、当代のルドライト王国の国王に伝えていたそうです」


 ノエルはユーゴくんとメアリさんに、ルドライト王国で聞いた月の槍とグウェナエルと女神の話をした。


 ユーゴくんもメアリさんも、グウェナエルと女神がルドライト王国まで旅をしていたことは知らなかったようで、驚きながらも熱心に耳を傾けていた。


 ノエルが話し終えると、メアリさんは小さく息を吐いた。


「まさか異国の地にも二人の伝承が残されていたとは……ルドライト王国の王族にのみ伝わっていた話であることと、彼の国が長らく鎖国していたからノックス王国にはその話が伝わっていなかったのでしょう。それにしても、悪夢を見ない為のまじないと邪神と女神の関係が気になりますね。先日、エルヴェシウス卿が禁書にされていた歴史書を届けに来てくれたので、まじないについて注意しながら読み解いていきます」


 マルロー公の罪が明るみに出たことで、マルロー公たちが禁書にして隠し持っていた歴史書は全て禁書から除外された。


 おかげでメアリさんの家にそれらの資料が集まり、メアリさんは毎日大量の歴史書に目を通しているらしい。 


「宵闇の棍棒と星の剣もどこかにあるのでしょうね。とはいえ、月の槍のようにその名前で伝わっている聖遺物の話を聞いたことがありません。禁書にされていた歴史書に書かれているといいのですが……おそらく歴史書に書かれていたら、マルロー公たちが強奪していたでしょう。月の力が強くこめられている聖遺物として、実験に使っていた筈です」


 メアリさんの推測に、私もノエルも首を縦に振る。


 ジュリアンに聞いてみたけれど、彼の知る限りではマルロー公たちはそのような聖遺物を手に入れていなかったらしい。


「地道ですが、棍棒や剣の聖遺物がある領地を訪ねて触れてみるしかないでしょう。ちょうど、モーリア領には棍棒があるから調べてみます」


 かくして私とノエルは、モーリア領を治めている一族の令息であるディディエに連絡をとることにした。

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