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このたび、乙女ゲームの黒幕と結婚しました、モブの魔法薬学教師です。  作者: 柳葉うら
第十四章 黒幕さんは、獣人たちから盛大に歓迎される
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07.月の御方(1)

更新お待たせしました!

 ゼスラは部屋にいた侍従に命令し、第一王子殿下にかかっていた呪いが解けたと国王陛下と王妃殿下に知らせた。


 ほどなくして、国王陛下と王妃殿下が駆けつけてきた。


「ユリオン! 呪いが解けたとは誠か?!」


 国王陛下はベッドから起き上がった第一王子殿下の姿を見るや否や、くしゃりと顔を歪ませると、その大きな体を少し屈めて第一王子殿下を抱きしめた。


「顔色がすっかりよくなった。それに、以前までお前から感じていた呪いの気配が全くない。本当に……よかった」

「ええ、ミュラー殿の歌を聞いていた時に光に包まれてから、すっかり良くなりました」


 国王陛下と第一王子殿下がにこやかに話す様子を、王妃殿下はベッドから少し離れたところで目を潤ませて眺めている。


 そんな彼女に、ゼスラがそっと近づいてハンカチを渡した。


「ゼスラ、ユリオンのために解呪する方法を探し続けてくれてありがとう」


 王妃殿下はハンカチを受け取ると、目元を拭う。


 先ほど謁見した際に見た威厳ある王妃の面影はなく、子を想う親らしい柔らかな表情になっている。


「あの子が自分の力で起き上がる姿を見れるなんて、夢のようだわ。ノックス王国の皆様、息子を助けてくれたこと、誠に感謝いたします」


 王妃殿下はそう言うと、畏れ多くも私たちに礼をとってくれた。


 すると国王陛下も、第一王子殿下から体を離すと、王妃と一緒に礼をとる。


「ど、どうか顔を上げてください! 私たちはゼスラ殿下の担任、そして友人としてゼスラ殿下の兄君である第一王子殿下のお見舞いをしただけですので……!」


 まさか国王夫妻からこのように感謝を示されるとは思ってもみなかった私は盛大に慌てた。


「ルドライト王国の国王として、そしてユリオンとゼスラの父として、私からも礼を言う。この恩は一生忘れない。もしもノックス王国が窮地に立った時は、ルドライト王国はノックス王国への援助を惜しまない」


 国王陛下は誓うようにそう述べると、ノエルを見た。


 竜を彷彿とさせる黄金色の瞳が柔らかに細められる。


「やはり月の御方は我々に救いをもたらしてくれた」


 ノエルはいつもの穏やかな笑顔を浮かべているが、「ルドライト国王陛下、そのお話は……」と窘めるように口を挟む。


 月の力について知らない生徒たちがいるため、これ以上は月の力について言及しないよう国王陛下を止めようとしているようだ。


 すると国王陛下は気まずそうに空咳をした。


「そうだったな。――ゼスラ、君の友人たちに王宮内を案内してやりなさい。ファビウス侯爵夫妻と話がある」 

「かしこまりました。みんな、私について来てくれ。イセニック、お前も一緒に来てくれ」


 ゼスラが呼びかけると、エリシャたちは彼の後に続く。


「月の御方って、どういう意味なのでしょう?」


 エリシャがぽつりと呟いた問いに、バージルとゼスラは顔を見合わせる。


 バージルもゼスラも、王族だから月の力について知っているはずだ。


 しかしバージルは肩を竦め、ゼスラは首を傾げた。


「さあ、知らないな」

「ええ。私もなんのことやらさっぱり」


 二人とも、息を合わせてそう答えるのだった。


 そんな二人の反応に、王族ではないがかつてかけられていた呪いのせいで月の力について知っているジュリアンも同調してこくこくと頷く。


 三人が協力して、月の力について誤魔化してくれた。


 部屋から出たエリシャたちの声が外から聞こえなくなると、国王陛下は使用人たちにも部屋の外に出るよう命じて人払いした。


 そして防音魔法の呪文を唱える徹底ぶりから、なにやら重要な話が始まる気配を察した。


「ファビウス侯爵、我々はあなたから感じるその強力な魔力が月の力であることを知っています。その昔、同じような力を持つ者がここを訪れた記録が我々ルドライト王国の王族に伝わっているから知っているのです」


 国王陛下は私たちに、その伝承を話し始めた。

『このたび、乙女ゲームの黒幕と婚約することになった、モブの魔法薬学教師です。』2巻が11/7(木)に配信いただくことなりました。

※Amazon様など一部書店様では予約開始しております


よろしければご予約いただけますと嬉しいです…!

これからもレティシアとノエルをよろしくお願いいたします。

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