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08.揺らめく影

更新お待たせしました!

 マルロー公の足元に不自然な影が落ちていることに気づいた私は、その影をじっと見つめた。

 それはマルロー公の影の中に隠れており、マルロー公の動きに合わせて移動している。


(もしかして、あの黒い影だったり……するのかしら?)


 不安になった私は、外套の中に一緒に入り込んでいるジルにそっと声をかけた。


「ねぇ、マルロー公の足元に変な影があるの。あれってもしかして黒い影なの?」

「むむっ……もう少し近づいてみないとわからないな。今はあの不吉な気配は感じないが……影に隠れる生き物は総じて厄介だから気をつけるぞ」


 ジルが言うには、強力な魔力を持つ魔物や悪魔の類が姿を影に変え、生き物の影の中に隠れて影の持ち主の命を狙う習性があるらしい。


「じゃあ、マルロー公は命を狙われているってこと?」

「うむ、その可能性が高いな。ああいう魔物や悪魔は魔力が高い者や心が醜い者を糧にする。あの人間はさほど魔力が強くないから、後者の理由で引き寄せたのだろうな」

「魔物や悪魔のような生き物を寄せつけてしまうほどなんて、根っからの悪者なのね……」


 マルロー公は自分勝手だし、サミュエルを害そうとしているから助けたくはないけれど……、それでも命を狙われているかもしれないのなら見過ごすわけにはいかない。


(あの黒い影が魔物なのか悪魔なのかはまだわからないけれど、アロイスが被害を被ってはいけないから、見張っておかないといけないわね)


 なんせこれから向かうのは、推しがいる王宮だ。そこで事件を起こすわけにはいかない。

 推しには平穏な生活を送ってもらいたいから――。


(マルロー公もあの黒い影も、アロイスから遠ざけるわよ!)


 決意を胸に、私はマルロー公の後をつけながら彼の様子を観察した。彼は苛立っているようで、ドスドスと足音を立てながら歩いている。


「あんなに足音を立てて大丈夫なのかしら?」

「この調子だと、外にいる者に気づかれるのも時間の問題でしょうね。ここは隠し通路ですが、遮音まではされていないでしょうし……それにしても、あそこまで隙が多いのに、今までよく悪事を暴かれずにいましたね。よほど心強い味方がいて、証拠をもみ消しているのでしょうか」


 そう言い、ダルシアクさんは小さく溜息をついた。


「もしそうなら、かなり厄介な相手ですね。思い当たる人物はいますか?」

「ええ、おそらく理事長――ぺルグラン公と、以前捕まった前エルヴェシウス伯爵かと」

「ぺルグラン公……国王の叔父ですか。本来なら第一王子派のマルロー公とは敵対する仲なのになぜ味方になるのでしょうか」


 ダルシアクさんは納得いかないようだ。だけど彼らの関係をゲームで予習してきたから、理事長がマルロー公についているのは間違いない。

 少なくともマルロー公に利用価値がある間は、彼を手助けするだろう。


(ゲームに出てきた理事長は、闇の力――あの黒い影を召喚するまではマルロー公を手助けしていた。だけど既に黒い影がいる今、理事長はどうしてマルロー公と一緒にいるのかしら?)


 今は続編とは状況が変わっているから、ゲームにはない新たな理由が生れているのではないかと、不安になる。


 これから起こることを知っているなら防ぐ手立てを考えられるけれど――、予想すらできない事態に直面した時、私は生徒たちを守れるのだろうか。


(……悪い方向に考え過ぎね。きっと何か手立てがあるはずだわ)


 前作の黒幕だったノエルが闇堕ちしなかったように、未来はきっと変えられるはず。


 気を取り直してマルロー公の後をつけていると、目の前に壁が現れた。

 その壁には天井に届くほどの背の高い扉がついている。


「なんだか陰鬱とした扉ね。できることなら中に入りたくないわ」


 扉を見たウンディーネがそう零した。彼女が言う通り、黒色の木材と錆びついた鉄の装飾でできている扉はどこか不気味で近寄りがたい。


「やい、小娘。あの黒い影が先に部屋の中に入っていくぞ」

「ほ、本当だ……」


 ジルに言われて見てみると、黒い影はマルロー公の足元から離れて扉の下にある隙間を通り、中に入ってしまった。


「私たちもあの中に入りましょう」

「ええ、マルロー公が扉を開けた瞬間に入るしかありませんね。上手く入れるといいのですが……」

「そうですね……扉を開けた瞬間に風魔法を発動させて扉を開けたままにするのはどうでしょう?」

「窓がないのに風が吹くと、さすがにマルロー公に怪しまれますよ」

「うっ……たしかに……」


 どうしたものかと悩んでいると、扉の向こう側からガタリと大きな音が聞こえてきた。


「だ、誰かいるのか?!」


 次いで、マルロー公の焦っているような声も聞こえてくる。


「くそっ、どうして返事をしないんだ」


 マルロー公は悪態をつき、扉を大きく開けて中に入っていく。


「助かったわ。扉が開いたままだから、今のうちに入りましょう」


 私たちは足音を忍ばせつつ、扉に駆け寄った。

早くノエルをレティのもとに帰してあげたいです。ごめんねノエル(;;)

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