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このたび、乙女ゲームの黒幕と結婚しました、モブの魔法薬学教師です。  作者: 柳葉うら
第十二章 黒幕さん、一緒に交渉しましょ!
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08.学園祭を迎えて

更新お待たせしました!

 理事長からの助言を聞いてから、生徒たちの演技に変化が見られた。


 ぎこちないながらも、以前よりも役に入り込もうとしていているのよね。


(これなら、当日までにはなんとかなりそうね)


 気まぐれなのかわからないけど、生徒たちに助言してくれた理事長に感謝する。


 そうして慌ただしく準備や練習をしている生徒たちを見守っている間に、学園祭当日を迎えた。


「着付け終わったよー!」

「わかったわ! 次は化粧ね」

「おい、小道具はこれで全部だったか?」


 控室として割り当てられた部屋で、生徒たちが忙しなく行ったり来たりしている。

 演劇の準備は朝から始まっており、みんな休む間もなく動いている。


 朝一番のリハーサルから始まり、メイクや着替えに、大道具と小道具の確認に追われている。


 団結して分刻みで予定をこなしている彼らは、入学した頃よりも打ち解けていて。

 そんな変化を実感して、内心感激していた。


(よし、私もできる事をしよう!)


 私は準備を手伝いつつ、人間の姿になってもらったジルと一緒に、みんなの昼食を手配する。


「みんな! 昼食を持ってきたわよー!」


 今日のお昼は、食堂の料理人たちに作ってもらった具だくさんのパンとコーンポタージュにリンゴのジュース。


 パンは切り込みを入れた中に、レタスやぶ厚く切ったハムや卵を入れており、片手で作業しながらでも食べられるようにしてもらった。


 朝から動き回ってお腹を空かせていた生徒たちは喜んで食べてくれた。

 後で料理人たちにお礼を言いに行こう。


 やがて役者たちは着替えとメイクを終わらせた。


「あら、ルーセルさん、とても可愛らしいわ」

「あ、ありがとうございます」


 ほんのりと頬を染めてはにかむリアは、可愛らしい魔女の姿をしている。


 若草色のローブの内側には白いブラウスとチョコレート色のワンピースを着ており、いつもより落ち着いた雰囲気を醸し出している。


 赤い髪はゆったりとした三つ編みに結わえており、ところどころに小さな白い花を散りばめていて、森に住む妖精のようだ。


「イセニック、王子の姿が様になっているぞ! 故郷のご両親に見せられないのが悔やまれるな」


 ゼスラが嬉しそうにイセニックに話しかける声が聞こえて振り向くと、メインキャラクターに引けを取らないほどのオーラを放つ王子姿のイセニックがいた。


 前髪を流したイセニックはいつも以上に精悍で、視線を奪われてしまう。


「お、俺には過分な評価です」

「いやはや、本当に似合っている――そう思うだろう、リア殿?」

「は、はいっ……カッコいい……です」

「……っ!」


 リアに褒めてもらったイセニックは、さっと顔をリアから背けた。


(あらあら、とっても嬉しそうね)


 イセニック本人は喜びを隠しているようだけれど、尻尾がパタパタと揺れていて、気持ちを隠しきれていないところが可愛らしい。


(可愛い……あの尻尾をもふりたいわ)


 ジルを抱きしめることでもふりたい衝動を抑えつつ見守っていると、控室に生徒会の腕章をつけた生徒が訪ねてきた。


 もうすぐ演劇の順番が回ってくるから、会場に移動するよう報せに来てくれたのだ。

  

 生徒たちは最終確認を済ませると、会場へ向かう。


 会場は音楽祭と同じく音楽堂で、今日は魔法で演劇用に舞台のつくりを変えている。


 舞台袖に辿り着いた私は、そっと客席に視線を走らせた。

 

 もしもアロイスが着てくれた時に備えて用意された貴賓席に座っている人影はなく、内心寂しく思う。


(アロイスは忙しいのだから、しかたがないわよね)


 実は、数日前に王宮から使者が訪ねて来て、手紙の返事を受け取ったのだ。


 返事には、ぜひ行きたいけれど急務の政務が入ると行けないかもしれないと書いてあったのよね。


(みんなが団結しているところを見てもらえたらルドライト王国行きを説得しやすいかもしれないと思っていたけれど……、こうなったからには、私がもっと説得材料を用意するしかないわね)


 意気込んでいると、ついにみんなが舞台に立つ時となった。


 大道具や小道具び終えた生徒たちは、再び舞台袖に戻ってくる。


 いよいよ始まるのかと思うと、とてつもなく緊張してきたわ。


「み、みみみみみんなっ! いっ、いつも通り演じたら大丈夫よ! 緊張をほぐして頑張って!」

「おい、マナバイソンが一番緊張しているじゃねぇか!」


 バージルがすかさず突っ込みをいれると、他の生徒たちが笑い声を上げた。


「マナバイソンのおかげで緊張が解れたわ」

「緊張し過ぎて倒れないでくださいね?」

「私たちの活躍をしっかり目に焼きつけてください」


 なぜか生徒たちにハイタッチを求められ、私はハイタッチをしつつ、舞台上へ向かうみんなを見送る。


「みんなならきっと、最高の演技ができるわ」


 胸の前で両手を組んで見守っていると、不意に背後から足音が聞こえてきた。


 振り返ると、そこにはラングラン侯爵がいて。 


「ラングラン侯爵! どうしてここに?」

「陛下から言伝を預かっておりますので」


 驚く私に、ラングラン侯爵はにっこりと微笑む。


「よろしければ演劇の後、お茶をしませんかと仰っておりますが、いかがですか?」

「えっ?!」


 まさかと思い客席を見てみると、空いていた貴賓席にアロイスが座っている。


(アロイス! 来てくれたのね……!)


 不意打ちで現れた推しの尊さに中てられたけれど、その場で倒れてしまわなかった私を褒めてほしい。

 

大寒波で寒い日が続きますのでお体にお気をつけてお過ごしくださいませ…!

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