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このたび、乙女ゲームの黒幕と結婚しました、モブの魔法薬学教師です。  作者: 柳葉うら
第十二章 黒幕さん、一緒に交渉しましょ!
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02.学園祭が今年もやって来た

 音楽祭が終わると、早い事に、もう学園祭の時期になった。


 職員室で今日の仕事を片付けていると、周りの教師たちが今年の出し物について話しているのが聞こえてくる。


 先代の国王が暴れて大変だった昨年とは違い、今年は幾分かは穏やかである事を祈っているわ。


(だけど、またウィザラバの夢を見てしまったから心配ね)


 今朝見た夢を思い出しては、憂鬱になって溜息をつく。


 すると、学級のみんなから宿題を集め終えたサミュエルさんがちょうどやって来て、声をかけてくれた。


「ファビウス先生、大丈夫ですか?」

「あ……ええ。心配してくれてありがとう」

「体調が悪い時は無理をしないでくださいね。学級委員として僕ができる限り力になりますので、遠慮なく休んでください」

「ふふ、頼もしいわ。その時はよろしくね」 


 サミュエルさんは本当に、絵に描いたような優等生だ。


 成績は常に学年トップで、品行方正で、仲間想い。


(それなのに、理事長はどうしてあんな事を言ったのかしら……?)


 ――あまりサミュエルさんの心に近寄り過ぎないように。


 それはまるで、サミュエルさんが危険人物であるかのような言い方で。

 その言葉を思い出す度に混乱する。


 優等生のサミュエルさん。

 サミュエルさんを大切に想う理事長。


 良好な親子関係を築いているように見えて、本当は何かあるのかしら。


「ところで、うちの学級の出し物が決まりました」


 サミュエルさんが一枚の紙を机の上に置く。

 私はそれを手に取り、目を通した。


「早く話がまとまったのね。何をすることにしたのかしら――あら、演劇に決まったのね。いいわねぇ」

「はい、出演者全員が踊りや歌を交える演劇です」


 前世の世界で言う、ミュージカルのようなものをするらしい。

 満場一致で決まったそうだから、みんなの気合が入っていそうね。


「ゼスラ殿下が早速台本を書き始めていますよ」

「えっ?! もう?!」

「はい。物語が頭の中に降りて来たそうで、今日は徹夜して台本を完成させると宣言していました」

「そ、そう……仕事が早いわね」


 ゼスラが書くという事は、恋愛ものになりそうな気がする。

 恋愛小説愛読家、そして青春研究同好会会長。


 物語にこだわりを持って書いていそうだ。


「歌はミュラーさん、曲は私が考えることになりました」

「あら、二人なら素敵な音楽の世界感を作ってくれそうね」

「恐縮です。私はともかく、ミュラーさんならみんなが感激するような歌を作ってくれそうです」

 

 ちなみにダンスはリアとイセニックが担当するらしい。


 この二人、最近何かと一緒にいるからいつか何か起こるだろうと思って見まもっているのに、全く進展がないわね。


(でも、学園祭の魔法が何とかしてくれるのかもしれないわ)


 この世界でも、学園祭は生徒たちにとって恋愛が発展しやすい重要なイベントだ。


 だから私は、文化祭をきっかけにイセニックの想いがリアに伝わるよう祈っている。


(そんな事をしたら、ナルシスに恨まれるかもしれないけれど……)


 悪役令嬢にも幸せになってもらいたいのだから、大目に見てほしいものだわ。


 ゲームのリアはどのエンドを迎えても、悲しい結末に飲み込まれてしまうのだから。


「上手くいくといいわね」

「ええ、そうですね」


 ゲームではお兄さんへの負い目を感じてみんなとは距離をとっていたゼスラだけど、この世界では積極的に行事に参加してくれているようで安心した。


(それにしても、そろそろ解決しなきゃいけないわね)


 ゼスラのお兄さんにかけられている呪いが解呪されると、続編のシナリオから外れて新しい可能性を見出せるはずだ。


 メインキャラクターたちをバッドエンドから守るための、新しい可能性を……。


(だから、まずはアロイスに謁見して許可をもらわないといけないわね)


 文化祭が終わると期末試験の後に夏季休暇がある。

 その時期にルドライト王国へエリシャたちを連れて行くのであれば、もう動き出すべきだろう。


(まずは学園長と理事長に話して、それからアロイスへ送る手紙の作成ね)


 図らずも推しに手紙を送れる機会を得た私は、鼻歌を歌いたい気持ちを堪えて目の前にある仕事を片付けた。

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