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このたび、乙女ゲームの黒幕と結婚しました、モブの魔法薬学教師です。  作者: 柳葉うら
第十一章 黒幕さんが、友情について考えています
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04.どうも、解呪しに来ました

 週末になり、私はノエルとエリシャと一緒に王宮へ行った。


 目的はもちろん、宮廷魔術師団の施設へ行ってジュリアンにかけられている呪いと後遺症の治癒だ。


「ファビウスせんせー! 宮廷魔術師団にようこそ~!」


 宮廷魔術師団の施設に到着すると、サラが笑顔で出迎えてくれた。

 鍛錬の後に来てくれたらしいけれど、少しの疲れも見せないで元気に跳ねている。


 ルーセル師団長から聞いた話によると、サラは体力があり、魔力量も多いらしい。

 スタミナがあるから騎士団の騎士たちからも頼りにされているのだとか。


「エリーちゃんも久しぶり~! 今日もよろしくね~」

「はいっ! よろしくお願いいたします!」

 

 エリーとは誰だと思っていたら、エリシャがしゃんと背筋を伸ばして返事をした。


 宮廷魔術師団での訓練で顔を合わせることになったエリシャは、さっそくサラにあだ名をつけられてしまったようだ。


「ジュリーは団長室にいるから案内しま~す!」

「ジュ、ジュリー?」

「エルヴェシウス副団長のことで~す!」


 まさかとは思ったけれど、上司にまであだ名をつけているのか。

 ジュリアンは気にしないだろうけれど、他の魔術師たちからお咎めがないのが意外だ。 

 

 宮廷魔術師団はお堅い集団だと思っていたけれど、案外気さくな人たちが多いのかもしれない。


 ルーセル師団長もチャーミングなおじいちゃんだものね。

 

「失礼しま~す! ファビウス侯爵夫妻とエリーちゃんを連れてきました~!」


 団長室に案内してもらうと、ジュリアンとソラン団長、そしてルーセル師団長が揃って待ってくれていた。


「久しぶりだな。今日は部下の為に時間を割いてくれて感謝する。ジュリアンの呪いと後遺症の治癒は私にとって長年の悩みでね。ぜひ力と知恵を貸してほしい」


 ソラン団長が真面目な話をしているというのに、私はソラン団長がサラにどのようなあだ名をつけられているのか気になってしまった。


 今から大事な解呪をするのだから、あだ名の事は頭から追い出さないといけないわね。


「こちらこそ、急な提案を受け入れてくださってありがとうございます。それに、先日は一緒にエルヴェシウス卿を説得してくださってありがとうございました」


 ノエルがにこやかにお礼の言葉を返す。


 友だちの為に自分を犠牲にしようとするジュリアンを一人で説得するのは難しいと考えたノエルは、ソラン団長も巻き込んで説得した。


 友人と親代わりの上司という大切な二人から説得させられたジュリアンは、渋々二人の提案を受け入れる事にしたのだった。


「今までにあらゆる手段を使ってジュリアンの解呪と治療を試みたが、どれも上手くいかなかった。実を言うと、リュフィエに光の力を使ってもらったが、それでも治療できなかったのだ」

「リュフィエさんの光の力も試していたんですね」

「ああ、彼女の力が安定した時に試させてもらった」


 う~ん。サラとエリシャが持つ光の力は同じ類のもののはずなのに、サラでは治療できなかったのね。


 ゲームの抑止力が働いているのかもしれないわ。


「とりあえず、始めてみようか。ミュラー殿、歌ってくれるかい?」

「は、はい!」


 エリシャはソラン団長の問いかけに応えると、胸の前で手を組んでジュリアンに向き合う。

 そっと瞼を閉じ、音楽祭で歌っていた歌を口ずさんだ。


 エリシャの歌声に誘われたかのように、エリシャの周りに光の粒子が現れ始めた。


「光の力が発動したな」


 ソラン団長の呟きに、その場にいる全員が固唾を飲んでジュリアンを見守る。


 光の粒子はエリシャの周りを漂うだけで、ジュリアンには近寄りもしない。

 それどころか、徐々に輝きを失って消えてしまった。


 歌っているエリシャの肩を軽く叩いたソラン団長が、エリシャに労いの言葉をかける。


「途中で光の力が消えてしまいましたな。歌に込められている光の力にむらがあるのでしょう。覚醒したばかりだからしかたがないですな」


 ルーセル師団長は長い髭を撫でながら考えに耽っている。


「気になるのは、光の力がエリシャさんの周りから離れなかったことですね。どうにかしてエルヴェシウス卿に誘導しないと、解呪も治癒もできないでしょう」


 同じくエリシャの光の力を分析していたノエルが、顎に手を当てて考え込んでいる。


 確かに、光の力は全くジュリアンに近寄ろうとしなかった。

 今のエリシャは光の力を出現させることはできても、意図してかけることができないのかもしれない。


 みんなで頭を抱えて悩んでいると、外から扉を叩く音が聞こえてきた。


「失礼します。リア様とそのお友達のゼスラ殿下とストレイヴ殿がお見えになりました」

「おや、午後から来ると聞いていたが、早く来たのだな」


 ルーセル師団長は孫が会いに来てくれたことが嬉しいようで、いそいそと扉に駆け寄った。

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