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このたび、乙女ゲームの黒幕と結婚しました、モブの魔法薬学教師です。  作者: 柳葉うら
第十一章 黒幕さんが、友情について考えています
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02.呪いはさっさと取り除きましょ

「ノ、ノエル! 今日は早いわね」


 放課後になったばかりの時間に現れるなんて早すぎるわ。定時後に転移魔法でも使ってここに来たのかしら?


 おまけに何故か怖い笑顔を浮かべているものだから心臓に悪い。


「ああ、愛する妻が男と二人きりでいるとジルから聞いたから飛んで来たよ」

「誤解を生むような言い方をしないでくれる?」


 ノエルは未だに、私がジュリアン推しだった過去を根に持っていて、私とジュリアンが二人きりになる事を許してくれない。


(私の最推しはアロイスだし、推しとどうにかなろうなんて思っていないのに……)


 何度もそう説明しているのに、ノエルは「それでも嫉妬を止められない」と言ってわかってくれないのだ。


 前ウンディーネことミラにその事を手紙で相談すると、「愛されていていいわね~」なんて呑気な返事が返ってくるだけで解決策を教えてくれなかった。


「ノエル・ファビウスは妻に献身的で一途だな」

「レティは私にとっての唯一ですからね。だから自分以外の男が近くにいると気が狂いそうになるほど嫉妬してしまうのです」


 ノエルが密かに牽制しているのだけれど、ジュリアンはどこ吹く風といった具合で、牽制されていることに気づいていない。


「ふむ。そのような男が登場する小説をゼスラ殿下から借りて読んだな」

 

 この状況を、読んだ事のある小説に当てはめて感激してしまっている。


 さすがのノエルも、そんなジュリアンのマイペースに調子が狂ったようで、剣呑な空気が和らいだ。


(攻略対象が二人して恋せずに恋愛小説にハマるなんて……、本当にこの世界では何が起こるかわからないわね)


 ジュリアンとゼスラは相変わらず仲がいい。


 良好な関係を築けているのはいいけれど、攻略対象同士で恋愛小説を交換している様子を見ていると、君たちは攻略対象だから恋愛しようよと呼びかけたくなる。


(まぁ、今のエリシャはほぼバージルルートに入っているからこれでいいのかもね)


 音楽祭以降、バージルは以前にも増してエリシャの側を離れようとしない。


 そんな彼の一途さに、エリシャも気づいているように思えるのよね。

 バージルに向ける眼差しに信頼が込められているように見えるから、二人の関係が新たな展開を迎えている気がする。


 だから他の攻略対象が入る隙はないだろう。


(ということで、さっさと呪いを解かないといけないわ!)


 エリシャがジュリアンのイベントを経験する確率がなくなったのだから、私が機会を作らないと呪いと後遺症を癒す機会がないのだもの。


「ねぇ、ノエル」

「なんだい?」


 私はノエルの耳に口を寄せてごによごにょと内緒話をする。


「ジュリアンにかけられている呪いを解かないといけないわ。どうにかしてエリシャの力で治癒できるように会話を誘導してくれない?」

「会話を誘導?」

「私は口下手だからノエルが頼りなのよ。お願いできるかしら?」


 と、効果がないとわかっていながらも上目遣いしてみる。


 ノエルは紫水晶のような瞳を見開いて私を見つめたかと思うと、コホンと小さく咳払いして、蠱惑的に微笑んだ。


「わかった。そのかわり、上手くできたらご褒美をもらうよ?」

「わ、わかったわ」


 等価交換というわけか。

 なんだか悪魔と契約してしまったような気分だわ。


 ノエルの場合、悪魔なんて小物ではなく、魔王と例えた方が適切かもしれないわね。


「ところで、エルヴェシウス伯爵が捕まったことですから、エルヴェシウス卿にかけられた呪いを解呪する方法を探しませんか?」


 よほど予想外の提案だったのか、ジュリアンはパチパチと目を瞬かせた。


「……私は、呪いを解かなくてもいいと思っている」

「ど、どうしてですか?!」


 予想外の返答に、私は思わず食い気味で聞き返してしまった。


 呪いにかかっていても一つもいい事なんてないのに、どうして解かなくてもいいなんて言えるのかしら?


「この呪いがあれば、ノエル・ファビウスの役に立てるかもしれない」


 意外な理由だった。

 私の隣で、ノエルが息を呑む。


「どうしてそこまでしてくれる?」


 その問いかけに、ジュリアンは無表情のまま、人形のようにコテンと首を傾げた。

 それはまるで、ノエルの疑問に疑問を持を覚えたかのような仕草で。


「どうしてと言われても……私たちは友だろう? 友の為にできる事をしたい」


 そう言ってのけたのだ。

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