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ミネルヴァの雄~冒険者を辞めた俺は何をするべきだろうか?~  作者: ごこち 一
第二章

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69.パック調査隊~学派長~

読みやすいように全体修正 内容変更なし

 パック先生を引っ張るように、帰路に()く。

 帰りもフォレストタイガーが、先導を務めてくれる。


「マルクも、この虎を魔法で(ぎょ)するとは、やるのぅ」

「そんなことしてませんよ」


 テラさんの首が、ぎちぎちと鈍く動き、こちらを向いた。


「じゃあ、なぜ彼奴(きゃつ)は襲ってこぬ?」

「賢いからかと。今回も前回も利害は一致してますし……何もなく縄張りに入ったら、次はガブリ! だと思いますよ」


 人間と野生動物との関係は、そんなものだろう。

 人間が森のモンスターを掃除すると言っても、同時に狩人が野生動物を狩っている。冒険者が、むやみに野生動物を狙う事は、儲けという意味でも無いだろうが、狩人は別だ。

 肉も皮も骨も、町で有効利用されている。

 野生動物に考えがあるか無いかなんて知らないが、俺たちは、対モンスターの味方であり、己らを狩る敵でもある。ならば、”次”がどうなるかなんて明白だ。

 だが、傲慢であったとしても――


「まぁ、敵対したくはないですけどね」


 先行するフォレストタイガーが振り向き、俺と目が合う。

 ”次”が無いことを祈ろう。




 門を通り、町に入ってもまだ警戒は解かない。

 森の異常が、人為的な事件であるのならば、むしろ町中は警戒を強めるべきだ。

 学派の門も潜り抜け、三人で行く。

 何処(どこ)に向かっているかも、()えて聞かない。

 何処(どこ)に耳があるか、分からないからだ。


「マルクは心配性じゃのぅ」

「私たちの為にですよ。夜もマルク君に守って貰おうかな」

「それは旦那さんに頼んでください」


 研究棟を通り過ぎ、足は、フクロウの瞳の本部の方へと向かっていた。そして、そのまま本部の中へと入っていく。

 学派員達のための受付を通り過ぎ、さらに奥へと進む。

 流石に、もう聞いても大丈夫だろう。


「パック先生。行先は?」

「マルク君は知っているだろうけど、今は学派の人手が足りなくてね。学派長へ直接持っていくのさ。光栄だろう」

「あー。そういえば俺、学派長に会ったこと無いかも」


 いや。かも? ではなく、無いな。姿も名前も浮かんでこない。

 既に、学派長室の前に到着していた。

 パック先生が、重そうな扉を三度叩く。

 すると、木製の重そうな扉が自然と開いた。

 学派長室の中は、思ったほど重々しくは無かった。

 調度品は、飾り細工に質感にと、格式の高そうな物ばかりであるが、室内からは圧迫感を感じなかった。

 執務用の机の奥には、良く手入れのされた立派で長い白髭を貯えたご老人が、座って待っていた。白くとも豊富な髪は、ご老人の生命力の豊かさを表しているようだ。

 俺達三人に笑顔を向けている。

 年齢は、七十かそこらに見える。このご老人が、学派長なのだろう。


「入り(たま)え」

「「失礼します」」「邪魔するぞ」


 俺とパック先生はお辞儀をして入室する。テラさんはお構いなしだ。

 テラさんの行いを気にすることもなく、学派長は笑顔のままだ。


「白くなったのぅ、フィン」

「お主は変わらんな、テッラリッカよ」


 二人の口調は、とても柔らかかった。

 どうやらお二人は旧知の仲のようだ。あれ? テラさんって何歳だ?

 まぁいいか。女性の年齢は、気にするものではないよな……。

 テラさんは、それだけの会話で十分とばかりに笑顔になった。

 学派長の口角も上がっている。


「さて、パックよ。成果は?」

「はい。こちらを」


 パック先生は両手を用い、黒い短剣を学派長の前へ差し出した。

 学派長は、骨ばった手で短剣の柄を掴むと、表、裏と観察し始めた。


「うむ。『変質(へんしつ)(くさび)』だ」

「学派長は、ご存じなのですか?」

「古い物だ。本来、このような禍々しき事に使うものではないが。これが森に?」

「それは、マルク君から説明を」


 いきなりですか、パック先生。

 学派長は、黒い短剣を机の上に静かに置き、俺を見てニコリと皺を増やした。

 説明を促しているのだろう。

 こういった説明は、苦手だ。


「はい。森の奥地にて、ヘヴィオーガとの遭遇地点をさらに奥へ進み、そこで魔力的に不快感を覚える大木を発見しました。目視や魔力の流れでは、原因を感知できなかったため、テラさんの助けを借り、原因となる位置を特定しました。その後、張られていた防衛魔法を魔力で強引に突破した所、その正体が黒い短剣であったという事です」


 伝わったのだろうか? 心配になってくる。

 フォレストタイガーの事は省略したが構わないだろう。

 むしろ話しても、相手が困るだけかもしれない。

 俺の話を聞いた学派長が、小さく頷いた。


「ああ、仔細わかった。パックへの協力ありがとうマルク君。さらにで誠に申し訳ないが、引き続きパックに協力しては貰えないだろうか」

「元より、そのつもりです」

「そうか。ありがとう」


 そう言って、学派長が俺に向かって右手を差し出した。

 なので机の前まで近付き、その手を握りしめる。

 学派長の骨ばった手は、相応に年齢を感じた。


「では、パック。調査の進展を期待している」

「はっ。お任せください、フィンスティング学派長」


 大きく胸を張ったパック先生は、変質の楔を受け取り、再び礼をした。


「下がって良い」

「「失礼します」」「フィン。またのぅ」


 退出時もお辞儀をして、学派長室を後にする。テラさんは、自由だ。

 全員が退出すると、重そうな木の扉は勝手に閉まっていった。


「さてどうするかな? テラさん。マルク君」

「とりあえず遅い昼食だけど、腹を満たしてからかな」

「じゃな。腹が減って倒れては無意味じゃからのぅ」


 腹を押さえる俺に同意するように、テラさんが俺の背中を軽くはたく。

 ヘヴィオーガ出現が人為的なものであるならば、急ぎ行かねばならない所がある。が、腹が減っての強行軍などやってはいけない。それはテラさんに同意だ。


「私は、変質の楔を調べることにするよ。マルク君、テラさんを頼んだよ」

「逆じゃ。わしがマルクの面倒を見るのじゃ」

「ハハハ。頼んだよマルク君」

「はい。わかりました」

「逆じゃ!」


 森では頼れる気がしたのだが、遅刻の件もあるし……駄目だ、不安しかない。

 まぁ今は、鳴る腹に従って、昼食にしよう。

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