表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミネルヴァの雄~冒険者を辞めた俺は何をするべきだろうか?~  作者: ごこち 一
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/1014

68.パック調査隊~森へ~

誤字修正 読みやすいように全体修正 内容変更なし 誤字報告感謝

 昨日と違い、ゴブリン等も倒しながら森の奥へと進む。

 とはいえ、昨日ムル婆ちゃん達が倒しているので、それほど数はいない。

 パック先生とテラさんの足取りも軽かったので、進みは速い。

 パック先生は実地調査であちこち行っているので、分かる。

 テラさんも、森に慣れているのだろうか?


「テラさんも、よく森に?」

「森は、わしの庭みたいなものじゃからのぅ」


 なるほど。俺も森の事を聞くなら、ムル婆ちゃんの世話になるだろうし、パック先生にとって、森の案内役がテラさんなのだろうな。

 遠くに、あの大きいフォレストタイガーがいる事に気が付いた。

 森の奥から木々を揺らしながら、こちらに近付いてきている。


「テラさんなら、あれ、どうします?」

「ん? あ、あれは!」


 俺が『あれ』を手で指し示す前に、テラさんの体がぶるりと震えた。

 そして、テラさんは、その小さな体をパック先生の後ろに隠した。

 パック先生は、まだフォレストタイガーに気が付いていないのか、テラさんの様子を不思議そうに見ている。

 ガサッと斜め上から音がする。予想通り、木の太い枝にその長い体躯をのせたフォレストタイガーの姿があった。

 パック先生が固まっている。

 まぁ、二人とも、無駄に攻撃的でないから助かる。


「昨日はリリーをありがとう。助かったよ」


 伝わるか分からないが、礼の言葉と共に頭を下げる。

 フォレストタイガーは、グルルと喉を鳴らすと、森の奥へと戻っていく。かと思ったら、一定距離進んだ所で、止まった。

 昨日と同じで、フォレストタイガーを追ってみる。


「だ、大丈夫なのかい? マルク君」

「大丈夫な訳なかろうが、この(たわ)けが」

「大丈夫ですよ。たぶん」


 俺は、フォレストタイガーを追って先へ進む。

 警戒してもモンスターはいないし、怯える二人より前に出ることにした。

 少し速足で、フォレストタイガーを追いかける。

 フォレストタイガーは、進んでは止まり、進んでは止まりと、こちらを誘っているようだ。連れていきたい場所があるのだろう。

 さて、そこが危険地帯か否かが問題だが……万が一の時に逃げやすいよう、二人は後ろにいてもらった方が良い。


「パック先生たちは念のため、もう少し離れて付いてきて下さい」

「わかったよ」「どうなっても知らんぞ」


 仮にパック先生達がモンスターに襲われても、通常森に出てくるモンスター程度ならば、パック先生一人でも軽く片が付く。

 そういう意味での心配は、必要ない。

 とはいえ、警戒は切らさない。

 進む先と、フォレストタイガーと、周囲と、パック先生達と。

 意識を向ける場所が多くて困る。

 森の異常の調査は、後ろの二人に任せっきりになるな、これは。


「テラさん。この森に変な所ってあります?」

「今、マルクが追いかけている虎ぐらいじゃ」


 後ろから、二人の声が聞こえてくる。異常なしと。

 木々が不自然に折れたり抉れたりしている地点にたどり着いた。憶えがある。

 フォレストタイガーは、まだ先を進む。


「ここが、昨日ヘヴィオーガと戦った場所です」

(しば)し待て。調べる」


 テラさんの言葉に従い、足を止める。

 フォレストタイガーも待ってくれているようだ。

 テラさんは、土を見て、幹を見て、枝葉を見て、流れる空気を感じている。

 同時に魔力の流れも調べているのだろう。


「うむ。何も問題ないのがむしろ不思議じゃ。先を急ごうぞ」

「はい」「わかったわ」


 俺たちが再び歩き出すと、先導も進みだす。

 一面の木々がなぎ倒された場所。俺がヘヴィオーガと戦った場所もテラさんが調べたが、何も問題ない、との判断であった。

 大人しく、フォレストタイガーの導きに従うしかないようだ。

 フォレストタイガーの先導に従い進むと、一本の大木が目に入った。

 大の大人三人が手を繋げば、(みき)を囲めそうである。

 だが、何だろう? 見ているだけで気分が悪くなる。

 淀んだ魔力を感じるのは確かなのだが……。

 フォレストタイガーも、大木には近寄らないように足を止めた。

 そして、警戒するように牙を見せ、唸り声を上げていた。

 パック先生達も辿り着いた瞬間、眉を顰めた。


「何なのじゃこれは!」

「気持ち悪いね」

「こんなものに近付くまで気が付かないなんて。パック先生、テラさん。これ、何かわかりますか?」


「わからん」とテラさん。首を横に振るパック先生。俺も分からない。

 とはいえ、見ているだけでは来た意味がない。

 二人に目配せし、俺一人で近付いてみる。

 鬼が出ようが蛇が出ようが、俺だけなら被害は少なくて済む。

 近付いてみたが、大木には特に反応は無い。

 見た目としても、問題のありそうな個所は見当たらない。

 モンスターの擬態も疑ったが……大木自体は、普通の木だ。

 触れてみる。予想に反して何も起きない。


「異常なしです」

「即座に反応する仕掛けはないようじゃな。よし。わしが調べようぞ。パック、離れて観察を頼む。マルクは逆からじゃ」

「了解、テラさん」「逆からですね」


 テラさんが、大木に近付き、下から上へと舐めるように見る。

 そして大木をゆっくりと一周した。

 そして、彼女は大きな幹に両手を付けた。

 大木に、彼女の魔力が流れていくのが見て取れた。生命が湧き上がるような温かな魔力だ。枝も葉も根も、大木の隅々まで温かな魔力が満ち満ちていく。


「何かあったかのぅ」


 おっと。見惚れている場合ではない。異常は……即座に見つかった。

 木の根元に、黒い影が見えた。

 その影は揺らめきながらも、どこか短剣のような形であった。


「ありました。パック先生、こっちです」


 パック先生が、走って俺の方へと回り込んだ。

 パック先生の目にも、俺と同じ光景が見えているのだろう。

 彼女は、黒い影を(しば)し観察し、口を開いた。


「マルク君。魔力でガシッと取っちゃっていいよ」

「木はわしが守っとるから、ドカンとやれ、マルク」


 確保の注文と破壊の注文が、同時に入る。

 破壊が簡単ではあるが、調査の為には確保をしたいよな……確保しよう。


「出来れば確保で。無理なら壊す。≪魔力(まりょく)≫よ」


 俺は呪文を唱え、右手に魔力をまとわせる。

 そして、大木の前で膝を曲げ、右手を影に伸ばした。

 右手を近づけるごとに、バチリ、バチリと弾ける音がする。

 隠匿の魔法以外にも、攻撃的な防衛魔法が掛けられている様だ。

 だがこの程度ならば、魔力だけで押し通せる。

 徐々に右手を進めていくと、揺らめいていた影が、明確な短剣の形に変わる。

 それは、十字鍔から波型の刀身が伸びた、黒い短剣だった。

 柄に手を伸ばし、無理矢理、掴む。

 俺は、呪いの魔道具でないことを祈りながら――木から抜き取った。

 途端、気持ち悪い魔力も、その禍々しさも消え去っていく。

 俺の右手には、黒い短剣が握られていた。


「大丈夫かい? マルク君」

「ええ」


 パック先生の言葉は、俺を心配しているようであるが、その目は俺の右手の黒い短剣に注がれている。興味津々のご様子だ。

 俺も、短剣を観察してみる。

 波のように曲がっている刀身には、何やら紋様が刻まれている。赤い宝石が柄の端に施されているが、それ以外は、鍔も柄も仕掛けは無いようだ。

 パック先生に渡しても問題ないだろう。

 パック先生は、俺から黒い短剣を受け取ると、目を輝かせて調べ始めた。


「おぉお。これはまた変な物が。赤い宝石は、単純な魔力の入れ物かな? それとも、ここにも何かしらの魔法が仕込んであるのかな? うーん、これは何かに突き刺してみたくなるねぇ。そう思わないかいマルク君」

「思いませんし、帰ってからにしてくださいね」

「ふぅ。木は無事じゃぞ。なかなかマルクもやるではないか」


 木から手を放し、こちらに来たテラさんが、銀の髪をふわふわさせながら、笑顔を浮かべていた。大木が無事なのが嬉しいようだ。


「テラさんの魔力も凄かったです」


 俺がいくら魔力を込めても、ああはならない。

 無理矢理込めても魔力に包まれるだけだ。

 知識だろうか? 経験だろうか?

 何にせよパック先生が助っ人に呼ぶのも納得である。


「年の功というやつじゃよ」


 そういってテラさんは、ハハハと笑う。

 髪からはみ出した耳が、ちょこんと上下に揺れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ