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ミネルヴァの雄~冒険者を辞めた俺は何をするべきだろうか?~  作者: ごこち 一
第二章

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67.パック調査隊~誘い~

姓の名乗りを削除 読みやすいように全体修正 内容変更なし

 シャーリーの淹れてくれたお茶で、口を潤す。

 はぁー。やっぱり自分で淹れるのとは香りが違う。美味しい。

 当のシャーリーは、話の邪魔になると言い、既に帰ってしまった。

 居てくれてもいいのに……。

 俺が屋敷の掃除をする話も、うやむやになりそうだ。


「それで、大事な頼みごとって何ですか?」

「近隣の森の調査に、付き合って欲しいんだ」


 随分と率直に頼みごとが飛んできた。

 まぁ、ヘヴィオーガが四体も出現したとなると、調査は必要だし、念のための戦力は必要になるだろう。急場で使うなら暇している俺って訳か。


「いいですよ」

「即答だね。いつもなの?」

「断る理由もないので」


 本当は一つある。

 ドレイク先生に、一日休養命令を出されているのだが……急ぎの用件ならば仕方が無いだろう。御免、ドレイク先生。


「そういえば待ち合わせって言ってましたけど。大所帯で?」

「いや、調査は三人。私と、マルク君と、森に詳しそうな知り合い」


『森に詳しそうな知り合い』って非常にあやふやな人選過ぎないだろうか。

 だが、三人とは意外だ。急ぎで揃えられないにしても、冒険者パーティーぐらい護衛につけるものでは無いのだろうか?


「三人?」

「ああ、その森に詳し――いや、テラさんが大人数は好きじゃないから」

「へー。どんな人なんですか?」


 パック先生が高い鼻に指を当て、何か考え込んでいる。一つ、二つと。


「んー。先入観無しで会った方がいいかな」


 ミュール様に会う前も、アムにそう言われた憶えがある。

 まぁ、会ってから判断する方がいいのは、御尤(ごもっと)もな話だ。


「わかりました。で、目的地はヘヴィオーガ出現地点一帯と。待ち合わせは?」

「門だよ。これを飲んだら行こうか」

「では、先に準備しておきますね」

「ごゆっくりー」


 お茶を飲み干し、自室に戻る。

 今日は、バックパックと剣を忘れずに。

 青色と赤色のポーションの数も確認してと。予備の道具袋と、ムル婆ちゃん特製の毒消しと、必要ないだろうが気付け薬も念のため。

 乾燥肉も少量入れておこう。日を跨ぐ事は無いだろうが、用心のために。




「来ませんね」

「彼女、時間に(ゆる)いからね」


 あぁ、テラさんって女性なのか。

 現在、門から少し離れた場所で、立ったまま待ち(ぼう)け真っ最中である。

 まだ、一時間であるから……いや、駄目だろう。

 これなら屋敷の掃除をしておいた方が、良かったな。


「帰りますか」「駄目だよ」


 俺のちょっとした提案を、パック先生は即座に否定する。


「朝一番で、こうも暇なら情報屋にでも会いに行けばよかったかな」

「マルク君もそういう人、使うんだ」

「知ってるか知らないかで、生き死にが変わりますから」


 もしかしたら、他の地域でも可笑(おか)しな事になっているのかも知れない。ジャイアントクラブの件も、それの直接的な情報ではなかったが、彼から仕入れた話だった。

 冒険者ギルドという、対モンスターの専門組織との縁を切ったのだから、情報源は手放すべきではない。


「もう少し、頻繁に会いに行くかな」

「女の子にも、まめに会いに行くと良いよ」

「パック先生の所にも?」

「ハハハ。冗談では済まなくなる」

「じゃあ、やめときます」


 あー早く来ないかな、テラさんとかいう人。

『先入観無しで』と言われたが、初対面から時間に遅れるって中々の減点要素だよな……俺も気を付けよう。


「やあやあパック、待たせてしまったかのぅ」


 可愛らしい声が聞こえた。声の主に目を向ける。

 少し離れた所から、こちらに手を振りながら近付いてくる少女が一人。

 ふらりと広がった銀の髪。

 そして何より目を惹くのが、そこから飛び出した長い耳だ。

 横に尖っている耳が、個性的で可愛らしい。目鼻立ちも良いが、耳に目が行く。

 とはいえ、変な口調の少女である。

 パック先生に目を向けると、彼女は小さく(うなず)いた。待ち人のようだ。

 

「遅いですよ、テラさん。今日はマルク君も一緒だと、言っておいたはずですよ」

「坊主もすまぬ。猫を追いかけておったら、ついのぅ」

「いいえ、お構いなく。そして、初めまして。マルクです」


 小さく礼をしながら思う。

 パック先生、本当にこの人、大丈夫な人?

 パック先生が不必要な人を呼ぶとは思ってはいないが……遅刻の理由が猫?

 うん。第一印象は、可愛いだけのよく分からない少女だ。

 だが、可愛いはシャーリーやアムで間に合っている。


「知っとる知っとる。お主の母とも旧知じゃった。とはいえ、赤子の坊主しか知らんでのぅ。大きくなったものじゃ」

「は、はぁ」


 パック先生? この人何歳なの?

 パック先生に目線を送るも、返ってきたのは、小さく横に振られた首だけである。


「テラさん。一緒に行動するのだから、自己紹介を」

「そうじゃった。わしの名前はテッラリッカじゃ。マルクなら『テラ』や『テラちゃん』と気軽に呼んでも良いぞ」


 テラさんの顔に笑顔が浮かぶ。だが、それは少女のそれよりも、ムル婆ちゃんの笑顔に近いような……いや、そういう子がいてもいい。

 が、”ちゃん”は呼び(がた)い。ここは慎重策で。


「では、テラさんとお呼びしますね」

「何じゃ堅いのぅ。マリアなら、わしから言わずとも『テラちゃん』と呼んできたのじゃがな。それに踏み込むときにドンッと行かねば、女子(おなご)は落とせぬぞい。なぁパックや」

「その点は同意するけど、”ちゃん”はやめましょうか」

「あのー。時間も遅れているんで、行きません?」

「そうだね。マルク君」「では、行くかのぅ」


 パック先生とテラさんは、スタスタと先を歩き出した。

 何で引っ張り出された俺が、催促しなければならないのか……先行き不安だ。


「マルク。早う来い。迷子になるぞい」


 急かすテラさんの後を追いかける。

 だが何だろう……非常に()に落ちないのは何だろう……。

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