表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミネルヴァの雄~冒険者を辞めた俺は何をするべきだろうか?~  作者: ごこち 一
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/1014

50.拾い物は届け出を

読みやすいように全体修正 内容変更なし

ゴブリンを相手して、なんて言っておきながら、マルクの奴は、八体の白いゴブリンを突破していった。もののついでで、内二体を魔石に変えながら。


「援護は?」

「いらん」


 それだけ返事をすると、俺は白いゴブリンに向かって接近する。

 カエデに目を向けさせない為に。

 白いゴブリンの十の瞳が、俺を睨みつけた。

 残り一体は足を切断され、それどころではない様だ。

 早速一体飛び込んできた。ぬるい。

 一歩横に動き、白いゴブリンの剣を避ける。と同時に首に剣を通し、抜く。

 噴き出た青い液体が、白いゴブリンと雪を青く変色させる。

 気付けば既に二体の白いゴブリンの頭に、二本ずつナイフが突き刺さっていた。

 仕事の早い奴だ。

 間、髪入れず二体の白いゴブリンが、俺の懐を刺しに近付いてくる。

 マルクとばかり稽古していたせいか、こいつらの動きが遅く感じる。


『未来の線を意識すれば、体は自然と動く』


 師匠の教えを、ゆっくりと噛みしめる時間があった。

 白いゴブリンの剣が描く線は、俺には届かない。もう、未来は見えている。

 二体同時に両断する未来が。

 自然と体は動いた。

 真横に切り払った銀の線が、白いゴブリンの胴を通過した。

 一体を除き、白いゴブリンは全て、消えてしまった。

 さて、最後に、マルクに足を斬られた白いゴブリンでも倒そうか。と、思っていたが、既にカエデが動いていた。

 カエデは、奴の真上からナイフを投げ、一撃で絶命させる。

 その時、轟音が響いた。

 見ればスノーゴーレムが倒れている。あれは、マルクが足を切断したのか。

 だが、もう一体のスノーゴーレムが、マルクに襲い掛かる。


「カエデ。援護に行くぞ」

「その必要はございません」


 カエデの言う通り、あっけなく方が付いた。




 ガル兄達が、戦闘を終えているのを確認し、もう一体のスノーゴーレムを処理する。二人には、援護は必要なかったみたいだ。


「ガル兄。カエデさん。お疲れ様」

「倒すのが早いんだよお前」

「マルク様、流石にお見事な仕事ぶりです。普段のガランサ様にも、少しは見習って欲しいものですね。フフフ」


 カエデさん。ガル兄をからかうのに俺を利用しないで下さいよ。

 言葉を飲み込み、周囲を警戒する……うん、大丈夫だな。

 カエデさんは、戦闘に使ったであろう投げナイフと、白ゴブリンの魔石を回収している。

 ガル兄は、スノーゴーレムの魔石を回収しながら、その鮮度? を確認しているようだ。

 さて俺もやることがある。たぶんアレがあるはずだ。

 スノーゴーレムが鎮座していた場所の中間地点。そこの雪を掘り進める。

 あぁ、手が冷たい。


「温かく、≪(いや)しの(みず)≫で」


 両手に癒しの水を張り付かせる。指先に血の巡りが戻ってくるのを感じた。

 魔力を込め続ければ、温かさも維持可能だ。

 そのまま、続きを掘り進める。


「何やってるんだ?」

「宝箱を探しているんだよ」

「独り占めなさる気ですか……マルク様」


 カエデさん。突然、迫ってこないでくれますか。心臓に悪い。

 おっ! あった。

 周囲も丁寧に、そして慎重に、雪をかく。

 そこには、横の長さが腕程の宝箱が置かれていた。

 横長の四角形で、上部のふたが山型になっている。黒い縁取りが全体を強調していた。この箱だと、大きな武器は期待できないだろう。


「手は出さないでね、カエデさん」

「ウフフ。わたくしも、そこまで強欲ではありませんよ」

「罠の話だろ?」


 ガル兄の言葉に頷き、俺は、周囲を見渡す。

 箱の周囲を、天井を、左右の壁を、奥の壁を、その反対側を。

 不自然な穴は無いか? 凹みは? 糸は? 魔力は? 臭いは?

 問題無いようなので、箱を同様に観察する……異常なし。

 二人に下がってもらい、ふたを開ける……何も出てこない。

 中には、指輪が入っていた。一つだけ、ちょこんと。

 念には念を入れ、箱の内部も罠が無いか調べる……うん、罠は無いな。

 癒しの水を解除し、俺は、指輪を取り出した。

 箱は、すっーと溶けるように消えていった。

 ダンジョンで発見される宝箱は、何故か中身を取ると消えてしまう。

 理屈は不明だ。

 そもそも、何故(なぜ)こんなものが出現するのかも分かっていない。

 ある者は罠だと言い、ある者は褒美だと言う。

 実際の所は不明だ。

 考えても仕方がないし、今は、指輪を見よう。

 それは、材質は銀だと思われ、青い宝石をあしらったシンプルな指輪であった。

 内径が大きいのは、これが魔道具であるからだろう。

 この手の魔道具は、初めにはめた指に合うように、小さくなるものだ。

 内側に何か彫られているが、内容はわからない。魔力を通してみたくなるが、それは俺の仕事ではないだろう。専門家に任せよう。

 振り返ると、カエデさんが左手を差し出して、何か催促をしている。

 カエデさん……。


「呪いの指輪でも知りませんよ」


 俺が手を取ろうした瞬間、カエデさんは、雪上を滑るように後ろに下がって行った。相変わらず器用な人だ。


「プロポーズの練習は、まだマルク様には早かったですわね。ウフフ」

「アイツの戯言(ざれごと)は、聞かんでいいからな」

「俺は、面白くて好きだよ」


 ガル兄や。俺を、珍妙なモノを発見したような目で見ないでおくれ。




 転移陣の光が消えていく。

 無事、第一階層に戻ってきて(ひと)安心だ。

 帰り道は、赤目の集団に出くわしただけで、特に危険もない道中であった。

 落ち着いた場所に戻ってきたので、ようやく聞ける。


「ガル兄。一つ聞きたいんだけど」

「ん? 何だ?」

「魔石の鮮度ってなにさ?」


 ガル兄が『ん? 何言ってんだマルク?』と言いたげな、困惑した顔をしている。

 朝から困惑してたのは、俺なんだけどね。


「見て分からないのか?」

「全然。同じじゃないの?」


 スノーゴーレムを討伐した後、魔石の確認はした。普段と同じだったと思う。


「いやいや、全然違うだろうが。この内に残る生命力の若々しさも、込める魔力の浸透性も、表面の(つや)も……全然違うだろう」

「ごめん。まったくわからん」


 ガル兄は、愕然としている。

 ガル兄がそう言うなら、そうなのだろうが……うん、俺にはわからない。

 隣では、カエデさんが静かに首を横に振っていた。




「礼はまた今度」

「それでは失礼いたします」


 そう言ってガル兄とカエデさんは帰っていった。

 急ぎで必要だったと言っていたし、忙しいのだな。

 現在、遺跡入口。ゴンさんと、名を知らぬ番兵の前である。


「よう。マル坊。今日は工房の兄ちゃんか?」

「ちょっと二十七まで。あっ、ゴンさん。今日ってクライス爺ちゃん来てる?」

「ん? 事務所にいるぜ。何か拾ったのかよ」


 魔石以外の、ダンジョンで拾ったものは、教会に届け出なければならない。

 遺跡は、教会の管轄下であるからだ。

 教会に必要でない物であれば、そのまま手に入れた人の物になる。が、教会が欲するものであれば、金で解決されて、それまでだ。

 それを嫌って、手に入れたことを隠す冒険者も多い。

 俺は、教会自体はあまり好きではないが、仲良くしたい相手が幾人かいるので、届け出は守っている。

 だが、他人のあれこれまで口出すつもりはない。

 クライス爺ちゃんは、その拾い物の鑑定士である。


「指輪を一つ」

「いつも通り申請書も頼む」

「当然。ありがとう、ゴンさん。それと、お疲れ様です」


 二人に別れを告げ、遺跡管理事務所に向かう。といっても歩いてすぐだ。

 中に入ると、カウンターの奥から受付の職員が顔を出した。

 緑髪の眼鏡な女性だ。


「あらマルクさん。遺跡の調査ですか? 魔石の調達ですか? 拾得物の鑑定ですか? 入信ですか?」

「拾得物です」

「では、こちらの申請書にご記入をお願いします」


 彼女は初めから持っていた紙を、俺に手渡す。確かに拾得物の申請書だ。

 気にしても仕方がない事か。まぁ、いつものように書いてしまおう。

 えっと……名前に、性別に、年齢と。

 いつもの情報を書き進める。そして俺の羽ペンが止まった。職業の欄で。

 記入しないと駄目か…………震える手で……書く。


『名前:マルク・バンディウス 性別:男 年齢:18 職業:無職』


 気にせず続きを書こう……発見階層に、状況に、日時に……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点]  読点が多くて読みにくく感じます。  内容は面白いのですが、読点が多くて息が詰まると言うか何と言うか…。  高説を垂れるわけではないのですが、文章を口に出して読んで見て、読点の所で半…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ