表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミネルヴァの雄~冒険者を辞めた俺は何をするべきだろうか?~  作者: ごこち 一
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/1014

12.森の奥で~戦い~

読みやすいように全体修正 内容変更なし 誤字報告感謝

 ヘヴィオーガ。

 岩山や自然洞窟奥深くで出現するモンスター。

 オーガよりも数段強く、ダンジョンでの発見報告は四十層付近が多い。

 赤みがかった肌と、額から飛び出る捻じれた一本の角が特徴的で、ヘヴィオーガは通常のオーガと違い、簡素ながら、胴に鎧をまとっている。

 モンスターとしては、そう大きな体ではない。

 成人男性より顔三つ分ほど高いだけだ。

 しかし、腕が、足が、その隆起した全身の筋肉と対峙したならば、その圧を感じずにはいられない。

 以前に遭遇した個体は、大鉈ではなく槌を持っていた。

 投げつけてきた記憶もない。

 その時は、Bランク冒険者達の助っ人依頼で参加し、五人で倒した。

 一人で戦う相手ではない。ましてや、森の中でなんて。

 火の魔法が使えるならば、敵の飛ばす武器に注意しながら、焼き続ければいい。

 角が弱点ではあるが、焼き殺せば関係ない。

 が、それが出来ないなら、角を狙うのが一番だが……。


「≪(かぜ)(やいば)≫」


 角を狙った一刃は、大鉈に薙ぎ払われた。

 そうだよな……そもそも風の刃では、角を折れる気がしない。 

 ヘヴィオーガが叫び声を上げながら、こちらへ突進してきた。

 俺に向かって振り回される大鉈が、空振り、近くの幹を両断する。

 当たれば、俺も同様になるだろう。

 大鉈の間合いに出来るだけ入らぬように後退しながら――「≪(かぜ)(やいば)≫」――相手の足に一刃放つ。

 切断を狙った一撃だが、右太ももの肉を切り裂くだけで終わる。

 ヘヴィオーガの動きは、鈍ることはない。

 大鉈を避けながら、角に、顔に、腕に、足に次々と風の刃を放つが、有効打にはならなかった。鎧に当たった風の刃に至っては、傷一つ付けることができない。

 使える魔法が制限されただけで、選択肢が極端に減ってしまう。

 もっと多くの魔法を習得しておくべきだった。

 振るわれる大鉈と打ち合えるほど、力を鍛えていれば。

 と考えても、今は変えられない。

 火や雷が使えれば……もう、森ごと燃やしてしまいたくなる。

 ヘヴィオーガが、青い液体を流しながら暴風のように大鉈を振り回す。

 森の中に平原が出来るのではないかと思うほど、辺りは切り株と倒れた木だらけだ。動きにくい。

 動きが単調なおかげで避け続けていられるが、一撃でも当たれば死につながる。

 突如、一つの声が森に響いた。


「な! 先輩! 大丈夫っすか!」


 ヘヴィオーガからの攻撃を回避することに集中していて、声がするまで、全く気が付かなかった。

 キオの声だ。

 左奥、ヘヴィオーガ越しにキオの姿が見える。


「何で来た! 早く逃げろ!」


 俺の声に、先に反応したのは、キオではなく敵であった。

 怒りに満ちて見えていたヘヴィオーガの顔が、いやらしく笑った気がした。

 ヘヴィオーガが俺から距離を取るように、後ろへ大きく跳躍する。

 奴の大鉈を下がりながら回避をし続けていた俺は、その動きにたいして、反応が遅れる。

 ヘヴィオーガから大きな魔力の流れを感じる、大鉈を投擲するつもりだ。

 どちらに?

 考えるまでもない。俺がやるべき事は一つだ。

 キオとヘヴィオーガの間を割るように、壁を作らねば。

 遠くに、強く、硬く、狭く――


「≪風精霊(かぜせいれい)封壁(ふうへき)≫」


 ヘヴィオーガの動きを、もっと見ておくべきだった。

 何故(なぜ)、手持ちの大鉈を投げるだけなのに、魔力が必要なのか?

 目の前に答えがある。

 二本の大鉈を持ったヘヴィオーガの姿が見えた。一本投げて、大鉈を手元に作るのではなく、先に一本作ってから投げていたのか。

 キオへの防御を張ったことは、正解だったと確信した。

 どちらに? 奴の選んだ答えは――両方だ。

 俺は、膝を少し曲げ、奴の動きに備えた。

 跳んで逃げる姿勢だ。

 狙いを定めたヘヴィオーガが、咆哮と共に二本の大鉈を放つ。

 荒々しく、こちらを襲い掛かるは一本。

 目の前に迫る大鉈に対し、俺は――地に伏せた。

 頭の上を、轟音上げた大鉈が通りすぎる。

 外れた大鉈が、森を破壊する音が聞こえた。

 勢いよく地面に口付けたせいで、土が口に入り……気持ち悪い。

 避け方に、恥も外聞も関係ない。それよりも――


「キオ! 無事か」


 俺は起き上がりながら、大声でキオに問う。

 自らの作り出した魔法に自信はあるが、確かめずにはいられない。


「大丈夫っす……何か……壁に……」


 何かじゃない。魔法だよ。

 半分放心状態のキオに、愚痴っても仕方ない。

 キオへと投げられた大鉈は、彼から大きく離れた地面に突き刺さっていた。

 あれ? 一つの事実に気付き、ヘヴィオーガを見る。やっぱりだ。

 今、ヘヴィオーガは武器を持っていなかった。

 当然だ。二本とも投げた後、奴はまだ大鉈を作り出していない。

 好機だ。

 あの振り回す大鉈のせいで、接近できなかったのだから。

 俺はヘヴィオーガへ向け、走る。走る。

 新しく生み出される前に、捻じれた角に一撃を。

 前へ進み、考えるは一つ。奴の捻じれた角を破壊できるイメージ。

 しかし、俺の頭に浮かぶのは炎のイメージのみ。

 いや、大鉈の脅威がない今ならば、やれることがある。

 嗚呼、もうどうとでも成れ。


()原初(げんしょ)(ひかり)(たけ)(なんじ)()れるは(だれ)ぞ――」


 俺は、奴の顔へと右手の剣を投げる。足は止めない。

 ヘヴィオーガは剛腕を振るい、剣を跳ねのけた。


(いま)ここに(ちり)()(もの)()を、(われ)に、(しめ)せ――」


 防御されようが関係ない。狙うは角、ただ一点。

 俺は、地を強く蹴り、跳んだ。


「≪炎帝竜(えんていりゅう)大剣(たいけん)≫」 

 

 空の手で振り上げた両手の中から、溶けるように赤く揺らめく炎の剣が現れる。

 身の丈ほどに伸びた炎の大剣を、俺は、振り下ろした。

 角を守るヘヴィオーガの両腕を、角を、顔を、喉を、胴を、鎧を、そして股を溶かし、炎の大剣は触れた地面をも溶かす。

 真っ二つに分かたれた体が、瞬時に発火し、塵となって消える。

 角だけ破壊するつもりが、勢い余って、地面まで斬り付けてしまった。


「あっ、やばい」


 地面を溶かす炎の大剣を咄嗟(とっさ)に消すも、焼け溶けた地面から、草々にどんどん燃え移る。


「ちょっとまった。≪(みず)≫よ。≪(みず)≫よ。≪(みず)≫、≪(みず)≫、≪(みず)≫」


 次々燃え移る火に、俺は、魔力で生み出した水をかけて回る。

 森が焼けたら一大事だ。

 消火だ消火。(くすぶ)る火種一つ残してはいけない。


「大丈夫っすか先輩! というよりこの惨状……やばいっすね」


 駆け寄ってきたキオが、暢気(のんき)なことをいう。

 改めて周囲を見ると、確かに惨状と呼ぶべき状態であった。

 まるで、竜巻でも通り過ぎたかのように、倒木だらけである。

 足元の焦げ跡以外は、俺のせいじゃないよな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ