第2話 理守隊
「凄いじゃないダイチ!」
ハナは怪物を倒したダイチを褒めた。
「あんなサイズ早々いないわよ!それを一振りだなんて!」
「い、いやぁ〜それほどでもぉ…」
照れるダイチ。人に褒められたのはいつ振りだろう。確か、隣のおばあちゃんがーーーーーーーー
「そうだダイチ、ちょっと時間、いいかな?」
「ん?ああ」
「じゃあ、あそこにあるデカイ船、あそこまで行くわよ」
「そういえばあれ、何なんだ?陸に船って可笑しいだろ、ここ埼玉だぞ?バカにしてんのか」
「あれはねぇ、陸用戦艦カムイ。私たちの、希望の船よ。」
「希望?てか、今更だけどよぉ、お前何もんだよ」
「もぉ〜うるさいなぁ、黙ってついてらっしゃい!」
「へいへい」
ダイチは黙って、ハナについていった。ハナはセーラー服のような紺色の服を着ていて、髪は茶髪のツインテールだ。ちょっとムカつくが、顔はなかなか整っていた。あと尻がでかい。
「着いたわよ」
2人は船底から伸びている階段から戦艦カムイの中に入った。中はダイチの高校の廊下のようになっていて、軍服を着た大人たちが行き来していた。
しばらく進むと、大きな空間に出た。たくさんのモニターが前面に広がり、数十人もの軍人たちがパソコンを操作している。まるで映画のようなテンプレの司令室だ。
「す、すげぇ…」
「あなたがダイチ君ね。」
ダイチはびっくりして振り返ると、そこにはスーツ姿の女性がいた。
「この人は艦長さん!挨拶しときなさい!」
「こ、こんにちは…」
「こんにちは。私は黄金麗華。陸用戦艦カムイの艦長で、理守隊大将よ。」
「理守隊?何じゃそりゃぁ?」
「文字通り理を守り、世界を救う隊よ。」
「いや意味わかんねーよ、お前らが救わなくても世界をは十分間に合ってるよ。ばーか」
「ちょっとダイチ、隊長に謝りなさいよ!」
「ハナ、いいのよ。」
隊長はそう言うと、近くの丸窓から外を見た。外は先程の戦闘など知らん、と言いたいのかというくらい気持ちよく晴れていた。
「ダイチ君、宝玉の伝説って知ってる?」
「ああ、なんか赤と青を二つ揃えると願いが叶うっていう…」
「そう、青い宝玉を持つものが赤い宝玉に辿り着いたとき、世界の理を一つだけ変えられる、という伝説よ。」
「所詮伝説だろ?それがどうしたんだよ」
「いちいちうるさいわねぇ、黙って聞きなさいよ!」
突っかかるハナ。お前の方がうるさい。
「それがね、世界中で青の宝玉が見つかったのよ。」
驚くダイチ。
「マジでか!?」
「ええ。ここからが本題よ。青い宝玉を手にした国々がね、世界を支配するために宝玉を使って理を変えようとしているのよ」
「は?どういうことだ?」
「例えば、アメリカの大統領が二つの宝玉を手にして、『アメリカがこの世界を支配する』ようにこの世の理を変えてしまったらどうなるか、と言ったらわかるかしら」
「なるほど…」
「だからね、宝玉が悪いヤツらの手に入る前に、私たちの手で奪っちゃいましょ、ってことよ!」
ハナが付け足した。まあ言わんとすることは分かった。
「現在青の宝玉を持っているのは、アメリカ、ソ連、欧州連合、韓国、トルコ。そして、私たち日本の理守隊よ。」
「え、お前らも持ってんのか?」
「そうよ。私たちが二つの宝玉を手にして、現在の理を変えないことを願えばいいのよ。」
「なるほど。それでこんなデカイ船で宝玉を探してんのか。」
艦長はそこにあった高そうな椅子に座った。金髪のロングヘアーで、日本人とは思えないほど欧米風の綺麗な顔立ちだ。あと身体がめっちゃエロい。
「だけどね、そう簡単にはいかないのよ。あなたもさっき戦ったでしょ、怪物。あれがなんだか知ってる?」
「もちろん。」
「『近年現れた謎の生命体で、巨大な獣の体にお面のような顔が付いている、人を襲うことはなく、とても温和な生き物である。』学校じゃあこう習うはずよ。でもね、実は違うのよ。」
エスコルタはね、赤い宝玉の守護神でね、青い宝玉を持つ人間を赤い宝玉に近づけないように守っているのよ。」
「だからさっきアンタが戦ったエスコルタは、宝玉を持つ私たちの船を襲ってたってわけね!初めて見たでしょ、エスコルタが人襲ってんの」
ハナの問いかけに、ダイチは答えない。
「そこでねダイチ君。貴方にも理守隊に加わって欲しいのよ。」
「え?」
「先程の戦闘、見させてもらったけど、貴方の“神力”はとてつもなく強いわ。貴方の力があれば、私たちの目的達成に一歩近づくわ。
「いやでも、急にそんな…」
「でもダイチ君、貴方家もお金もないんでしょ?」
「っ!?」
ダイチは驚いた。なんで俺が宿無しだって知ってんだよ!そういえばこいつら、俺の名前も知ってたよな…
「ワシからも頼むよ、少年」
ダイチは振り返った。老人が一人、立っていた。老人は、白髪で顔もしわくちゃだったが、姿勢だけは、ピンと、新品の電柱のようにまっすぐだった。
「そ、総隊長!」
ハナは頭を下げる。
「ワシは理守隊総隊長の大曽根源蔵じゃ。少年よ、ワシらと一緒に、世界を救ってはくれんかの。」
「なあ爺さん、」
ダイチは老人に近づいた。近くで見ると、やはり威厳がある。流石は総隊長だ。
「なんじゃ」
「俺がこの隊に入ったら、エスコルタをいくら殺してもいいのか?」
「ああ、いいぞ」
「分かった。その話、乗ってやる。」
「そうか。感謝する。」
「そうと決まれば!私の仲間を紹介するわ!付いて来なさいダイチ!」
急にダイチの手を引っ張るハナ。
「痛って、何すんだよ、てめえ!」
「いいからいいから、ほら行くよ!」
「ああああああああああ!!!!!!」
引きずられて司令室から出るダイチ。司令室の職員達からは笑い声が漏れた。
「総隊長、本当にこの子なんですね?」
「ああ。これで我々の希望は妄想から現実へと変わった。」
二人の影が、窓から差し込む光に照らされ長く伸びていた。
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