恋に落ちる音
昔に書いた短編です。
更新間に合わなかったため載せます。
「明日会おう」
会えるかはわからないけど、昨日君と約束した。
今日は高校合格発表日。私は1人で高校まで行ってみたいと家を出た。初めての1人での電車は、いつもより長く感じた。
試験の手応えはあった。しかし、今までの過去問、合格最低点を1度も超えたことがない。きっとどこかミスしてる。
落ちたら家出しようかな、なんてことも考えてた。
「あなたが受かったらあの子も受かる
あなたが落ちてたらあの子も落ちる」
塾の先生に言われた言葉。
でも、私が落ちてても、私より僅かに賢い君はきっと受かっている。
私もあの学校行きたかったな…。
落ちてもないのにそんなことを思いながら高校へ向かった。
駅につき、バス停を探す。駅から学校までは距離があるので、通学には自転車やバスを使う人が多いという。
しかし私は方向音痴だった。焦っていたのもあり、何回か行ったはずのバス停が見つからなかった。
私は仕方なく走って高校へ向かった。スマホのマップを見ながら、ただひたすら走った。結果が気になるのと、君に会いたいから。ただひたすらに走った。
20分ほど走ってようやく高校に着いた。
まず、君の受験番号を探した。自分の番号は、落ちているのを分かって見るのは気が引けたのだ
しかし…
君の受験番号はどこにも見つからなかった。
涙が溢れた。せめて君だけは受かっていて欲しかった。
辺りを見渡しても君はいない。
仕方ない、帰ろう。と思ったが、折角だし自分の受験番号ないのを写真撮って帰ろう。
そう思って自分の受験番号を探した。
「え…」
そこには、自分の受験番号が書かれていた。見間違いかとなんども目をこすったが番号は変わらない。
何かの間違いだ、きっとそうだ。
でも、合格した人が貰える書類には、きちんと私の名前が書いてある。自分の点数も載っている。合格最低点をほんの少しだけ超えていた。
合格した人がみんな笑って帰る中、私は1人大泣きしながら帰った。
人目なんか気にしない。君と同じ高校行けないのが、全く想像しない結果になったのがとても悲しかった。
君と一緒にやった過去問、ずっと君に負けていた。今までずっと、全部負けていた。なのに、大事なところで勝ってしまった。
溢れる涙が駅に戻っても止まならなかった。
家に帰り、合格したとだけ親に伝え、自分の部屋にこもった。泣いて泣いて泣きまくった。
泣き止んだ頃にはもう2時間も経っていた。それ程までに悲しかった。
「今日塾あるけど、どうする?」
下に降りると親は言った。
気まづくてとても行けない。でも君に会いたい。なにか声をかけてあげたい。
でも、私がかけたところで君をイラつかせるだけだろう。
考えて考えて、でも答えは出なかった
「塾行ったら?」
「気まづすぎて行けない。それと、絶対泣いてしまう」
「泣いたらいいやん、気持ち伝わるって」
その言葉で行くと決めた。もうどうなってもいい。なるようになれだ。
そういって支度をして家を出た。
塾についたら、先生やクラスメイトに、おめでとうと言われた。すごく心が傷んだ。
受かったところでちっとも嬉しくないのに。
教室に入ったが、君はまだ来ていなかった。生徒が入ってくる度ドキドキして、なんて言おうか考えていた。
「どしたの?」
君に話しかけられた。全然悲しそうな素振りもなく、いつも通りに。
「えっだって・・・気まずい・・・」
「え、何が?」
君の意外な雰囲気に考えていたことが飛びそうになったが、頑張って飛ばないようにして早口に話した。
「ごめん・・・ごめんね・・・めっちゃ自習室誘って、もしかしたら自分のペースでやった方が勉強できたかもしれないし」
「家だともっと酷いことなってるから笑」
「自習室行っても雑談ばっかやったし」
「それは俺がおしゃべりなせいで笑」
「あのね、君のおかげなの、こんなに頑張れたの」
「こんな俺が役に立てたならよかったよかった」
「もし君がよければこれからも仲良くして欲しい」
「こんなことで崩れる関係だと思ってたの?」
心の中で、何かがピキっと割れた音がした。
もう仲良くできないと思ってた。でも違った。我慢してた涙が溢れた。
「どしたの?」
「だって、だって、君が優しすぎて・・・」
「俺優しい?」
「優しいよ…ほんとに…」
ほんとに優しい。こんな人普通いない。少なくとも私の周りにはいなかった。
「あ、そうだ、約束してたとこ、俺の受験終わったらまで引き伸ばしてくれる?」
「約束…?」
「あれ、忘れたの?アニメイト行くって」
「あ、うん。全然。一緒に行ってくれるなら」
いくらでも待つ。私が初めて友達だって、親友だって思った人。
そして
ーー初めて恋した人のお願いだからーー
ほぼ実話だったりします