表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新編 L.E.G.I.O.N. Lord of Enlightenment and Ghastly Integration with Overwhelming Nightmare Episode8  作者: 不死鳥ふっちょ
第三部  Bien qu'il y ait une méchanceté chaude, le monde continue.
85/184

間章ⅩⅩⅢ<写本統合>

 紫の渦を貫いて屹立する、十二の柱。


 無数の罅が縦横に走っているそれは、中心に収斂する恐るべき力を秘めた渦の只中では、容易に折れ砕けてはしまいかと思われるほどであった。


 かつては宮殿があったのだろうか。柱の台座と床石は既に失われ、そして代わりに出現したのは、空間の秩序を乱すほどの大穴。


 紫の渦とは、すなわち膨大な魔の塊。


 かつて十二の護人が睥睨していたこの地に、今は人影はない。


 


 ――先刻までは。


 


「どうして?」


 身の丈を超える錫を持つ少女は、眉間に皺を寄せ。


「秘教が、力を失わぬだけのものがあるということか?」


 抜き身の剱を携えた黒衣の男は、ただ渦の一点のみを見つめ。


「……異端、という者かの?」


 卵の殻に押し込まれた初老の翁は、両手で宝珠を掲げ持ち。


 三つの人影は、それぞれの柱頭において、渦を見やる。


「L.E.G.I.O.N.の持つ写本<逆しまの湖>は、護人に奪われたそうじゃない?」


「統合は既に終了している」


「まさか」


「オルガ・ペリン……シャトーの十二の護人の力だ」


「これで、三つ?」


 声が、途切れた。


 しばしの沈黙の後、黒衣の男が口を開く。


「<紫の園>、<偽りの光>、そして<逆しまの湖>……恐ろしいのは、写本の相剋たる宝剱すら、彼等は手にしている」


「つまり、暴走はありえないってワケね?」


「だが、だがの」


 口を挟んだのは翁。


「最後の庭園は、いまだ闇の中というわけだ」


「<Cochmaコクマー>、<Binahビナー>、<Chesedケセド>、<Geburahゲブラー>、<Tiphrethティフェレト>、<Netzachネツァク>、<Hodホド>、<Iesodイェソド>……八つの活動可能領域を開拓し、残る庭園は二つ」


「それを追いかけているのは、L.E.G.I.O.N.というわけね」


「然様、然様。 そのどちらに残る写本が眠っているかは、自ずと知れようというもの」


「でも」


「見つけてはいるだろう……これらに、そのカバラの名を冠させた魔術師ならばな」


「残る<Ketherケテル>、しかし他の庭園と同じく、実質的な距離は意味を持たぬ」


「<Kether>に続く回廊は三つ、アレフ、ベス、ギメル……しかしいずれの回廊もいまだ解き明かせてはおらぬ」


「それが、写本だというの?」


「そうでなければ、説明がつかぬ」


 唸るように喘ぐ翁。


「これほどに頑なに身を隠し続けているのは、自らが操られるのを拒んでいるからに他ならぬ」


「最後の写本は、<隻眼の龍>」


 


 少女は錫を中空に放ると、とんと柱頭を蹴った。


 重力を感じさせぬ動きで虚空を舞うと、一人穏やかに呟く。


 


「十二の護人と、眠り続けるシャトー……邪神デグ・オ・ラ・エーダ夢幻王ザ・ミラージュたちに、似ているんじゃなくて?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ