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新編 L.E.G.I.O.N. Lord of Enlightenment and Ghastly Integration with Overwhelming Nightmare Episode8  作者: 不死鳥ふっちょ
第一部  Un homme en vêtements noirs a rencontré une fille.
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第二章第三節<Persuit>

 上がった悲鳴は、男の声。


 先刻まで背後でサブマシンガンを撃っていた男が姿を消したことから考えれば、その正体は十中八九、彼であろう。


 声のした方角に視線を向ける。周囲の気配を探る。単純に音声だけを追いかけていては、風の音にかき消されてしまう。


 緩く、細く、呼気を吐く。


 そのときだった。鞘の中に納められたまま、太刀の刀身が強烈な震動を放つ。


 その方向か。ラーシェンは感覚を全方位から太刀の指示した方角に変更し、感度を上げつつも移動を開始する。


 背骨を悪寒が走る感覚と共に、妖魔の気配はすぐに分かった。大きく迫り出した岩を跳躍で越え、半ば滑り降りるようにして足場まで辿り着く。


 確か、この先に妖魔はいたはずだ。


 だが、ラーシェンの眼前にあるのは、平坦な瓦礫の上に広がった、血の跡だけ。


 はっとなり、動きを止めるラーシェン。いつの間にか、気配は綺麗に消え去っていた。柄に手をやると、微かに鳴動を繰り返している。


 気を抜くな、とでも言っているような反応に、ラーシェンは微笑みを零しつつも、ゆっくりと周囲の様子を見渡す。気配を感じてから、ここに来るまでに然程時間はかかっていない。逃げるにしても、それほど距離は稼げないはず。


 ラーシェンはゆっくりと岩に歩み寄ると、岩肌を濡らす血糊を指にとってみた。ざらりとしたのは、風に乗って飛んできた砂埃を大量に含んでいるせいか。


 だが、まだぬめりはある。新しい血の跡だ。それならば、まだ近くにいるはずだ。


 ラーシェンが血糊に背を向けたときであった。すぐ近くに、何かがどさりと落下する音があった。


 迅速に反応するラーシェン。足元に視線を落とすと、それはどうやら人間の躰の一部であるようだった。


 身を屈めて拾っていては、奇襲に備えることはできない。爪先でそれを転がしてみると、どうやら肘から先の部分であるらしい。


 それが、どうして今になって落ちてくるのか。ラーシェンはゆっくりと柄を握りながら気配を読み。


 そして、思いついた。妖魔とは、単に便宜上の分類に過ぎない。怨念がどのように受肉するか、その最低限の法則さえあれど、それ以上の変異は可能。




 つまり。




 咄嗟に身を翻しながら、ラーシェンは横に飛びすざった。一瞬の遅れをもって、ラーシェンが立っていた場所を奇声を上げて急降下した妖魔の爪が切り裂いた。受身を取りつつ起き上がると、ラーシェンはハンドガンの引き金を引いた。


 襲い掛かってきたのは、飛行系の妖魔。種族自体は同様だったが、強靭な前肢があった部分が皮膜を張った翼となり、後肢が鋭利な爪となっている。先刻の悲鳴は、あの爪に首を切り裂かれでもしたのだろう。


 飛行系の妖魔を知らなかったために、奇襲を受けたのであろうか。ラーシェンの放った銃弾は、広い皮膜を的確に打ち抜いていた。


 耳をつんざく悲鳴が上がり、態勢を崩す。皮膜が破れたことで浮力を維持できなくなった妖魔は、完全に混乱していた。


 さらに二発の銃弾が翼を破り、妖魔は地表に叩きつけられるようにしてもんどり打った。


 必要以上の隙は与えない。咄嗟に間合いを詰め、抜き放った太刀で首を刎ねる。苦悶の形相のままの妖魔の首はころころと転がっていく。


 ラーシェンはその方角に視線を向け、そして。




 驚きのあまり、身を強張らせた。


 視界の先には、岩場の影に倒れるようにして臥せっている人影を見つけたからだ。


「メイ……!!」


 駆け寄り、外傷を確かめる。小さな擦りむき傷は無数にあるものの、命の危険となるような傷はない。

 ほっと胸を撫で下ろしつつ、どうしてメイフィルがここまで来ているのかということには、やはり疑問が残る。武器を収納し、両腕でメイフィルを抱き上げたラーシェンは、来た道の途中に見つけておいた、大きな岩が積み重なって出来た空洞まで、メイフィルを運んだ。


 奥のほうに外套を脱いで敷き、メイフィルを横たえると、ラーシェンはその場でVAを再起動。


 今度は戦闘用の聖域ではなく、キャンプ用の恒久的結界として<三神一体トリムールティ>を利用する。


 空隙の入り口に微かな光の幕が生じ、結界が結ばれたことを確認すると、ラーシェンはようやく一息ついて岩肌にもたれた。




 聞きたいことはたくさんあった。だが、それは後回しにすべきだろう。


 今は休息のときなのだ。


 沸き起こる疑問を横へと押し遣り、ラーシェンは肩の力を抜くと、静かに瞼を閉じた。

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