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新編 L.E.G.I.O.N. Lord of Enlightenment and Ghastly Integration with Overwhelming Nightmare Episode8  作者: 不死鳥ふっちょ
最終部 Un soldat dans la cour de la boîte dort rêvant du monde extérieur.
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間章ⅩⅩⅩⅩⅨ<休息>

 気がつけば、部屋には二人の人影しかなくなっていた。


 九朗とジェシカ、そして二人を照らす青白い写本の光。


 イルリック、リルヴェラルザ、セシリア、ニーナ、フィオラ、クレーメンスの六人は、とうに部屋を去っていた。


「ご苦労だったな」


 九朗の言葉に、写本は光を僅かに落とした。


 戦乱は続く。これは決して終末ではない。


 写本は最早、人の手を介在することなく、同胞を集めるだろう。


 しかし現段階で、散逸している写本の全ては、力ある者の手によって封印、拘束されている。


 彼等と、彼等を取り巻く世界に、災厄は堕ちるだろう。目的を果たすためなら、写本はその力を存分に振るうだろう。


 四つの呪章を滅ぼすことが、果たして人に出来るのだろうか。


 これまで、数多の死を食らってきた、意志ある呪章に。


「彼等は……強いのですね」


「そうだな」


 ジェシカの呟きに、九朗は首肯した。


 強い。


 その言葉に込められた意味は、とてつもなく広く、また大きい。


 今まで、どれだけの人間が強さに憧れてきただろうか。


 力による強さ。


 知識による強さ。


 人脈による強さ。


 呪力による強さ。


 優しさによる強さ。


 意志による強さ。


 人はそれを渇望し、求め、慕い、そして殺しあい奪い合った。


 その中で得られた強さに、どれほどの意味があったのだろうか。


 相対的な意味しか持たぬ強さとは、その実何の役にも立たぬ。何故なら、自分よりも強い者が現れれば、それはたちまち意味を失うからだ。病に倒れ、傷に伏せ、齢に負けたとき、その強さを手離すことになるからだ。


 しかし、ジェシカの感じた強さとは、それらとは根本的に違うものであった。どれだけの時が経とうと、彼等が老いる時が来ようと、強き者としての彼等の栄光は揺るがぬだろう。否、時が経れば、それだけ彼等の威光は増していくだろう。


 彼等は、人でありながら、人を捨てて力を求める者を打ち倒したのだから。


 それを果たした者は、本当に一握りでしかないのだから。


「しかし、これで写本の在り処は全て見破られた……」


 西園寺万葉、セリア、そして九朗。


 残る三つの呪章の、同胞を呼ぶ声は、より暗く、より濃く、より禍々しい戦乱を呼ぶだろう。


 写本がまず狙うものは、一体誰か。


 それは、いまだ分からぬ。


 九朗はコートを翻すと、静止したままの柩に向き直った。


「行くぞ、ジェシカ……次なる戦乱を求めて」


「はい」


 笑顔のままに頷くと、ジェシカは九朗の脇から柩の闇へと飛び込んだ。


 懐で輝く写本を確かめると、九朗は蝙蝠のような裾を広げ、虚空に身を投じた。

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