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新編 L.E.G.I.O.N. Lord of Enlightenment and Ghastly Integration with Overwhelming Nightmare Episode8  作者: 不死鳥ふっちょ
最終部 Un soldat dans la cour de la boîte dort rêvant du monde extérieur.
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間章ⅩⅩⅩⅩⅣ<夢幻の書斎>

「……これが、用意された結末、なのでしょうか」


 深く憂いを帯びた少女の声が、長衣の奥から囁かれる。


 紫の長衣は、少女の全身をすっぽりと覆っていた。辺りは暗く、ただ周囲に宿る淡い光だけを光源としているため、フードの中までを覗くことはできぬ。少し長い袖口から覗く指は、しっかりと胸元を握り締めている。


 深い悲しみと、激しい慟哭を、その身で感じているのだろうか。





 少女の傍らに立つのは、老齢の魔術師。


 彼の伸ばした指の先には、背の高い書架に古びた書物が載せられていた。


 見れば、書架は一つだけではなかった。それが部屋なのか広間なのか、屋内なのか野外なのか、それは判別しない。それほどに、周囲に凝る闇は深く、濃い。


 床には巨大な魔法陣が描かれ、その文字一つ一つが紫の光を放っている。その魔法陣の中心を同じくして、無数の書架が円形を描くように並んでいるのだ。


「そうだ」


 魔術師の声は低く、重い。そこには真理のみを語る者だけが背負う、大きな責務が感じられた。枯れ枝のような指が書物をめくり、既に色褪せたインクで綴られた文字を、黄色く変色した爪が辿る。


「辛いかね?」


「……はい」


 押し殺した少女の声は震えていた。


「どうして、彼が、このような運命に……」


「では」


 魔術師は顔を上げ、そして俯く少女に振り向いた。


「お前に、死すべき運命を抱く者を決める裁定の権利を与えよう」


 はっとなり、フードの陰から驚愕に凍りついた唇が現れた。


「選ぶがいい。死を与えられるのは誰なのだ」


 しばしの沈黙があった。苦悩する少女に魔術師は歩み寄り、そして頭に優しく手を置いた。


「誰もが死なず、苦しまず、泰平に暮らす世界などというのは存在しないのだ」


 つう、と指先で文字列をなぞると、魔法陣の光が一際増したように思われた。


「……ラウローシャス様?」


「見るがいい」


 魔法陣の中央がぐんと陥没し、そしてその中央に闇色の柩が現れる。


「客人が現れたようだ…… しばらく下がっておきなさい、愛美」


 ラウローシャスは柩に向き直り、そして少女――神楽愛美を下がらせ、ぱたんと書物を閉じた。

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