先輩と俺とホテルと初デート⁉ (2)
「先輩、まだ下りないんですか?」
反応は、コクリ。
「先輩、まだ下りないんですか?」
コクリ。
「先輩…………寝てますよね?」
コクリ。
(あ、認めちゃったよ?)
ブンブン。
首を横に振る。
「マジか…………」
どんな技術だよ‼
さっきの質問は愚問。明らかに寝ている、と思っていたら、
「私は、キスでしか目覚めないわ」
は?
「私は、キスでしか目覚めないわ」
だから、意味が分からないんですけど……
「私は………」
「もう、いいですから‼ そんなイベント期待していないですから‼ 起きているんなら答えてくださいよ?」
そういうと、先輩のほうから、こっちは望んていたのだけれど、と聞こえた気がした。
そういうと、まさかの言葉が帰ってきた。
「ねえ、いつ降りるの?」
え?
「ねえ、いつ降りるの」
は?
「ねえ、私はいつ、この電車を降りればいいの?」
「先輩の言葉は聞こえています‼ でも……すみません、プラン、ないんですか?」
そう訊くと、先輩は「え?」といいながらきょとんとした目でこっちを見てくる。
(待ってください、先輩。プランもないのに買い物に行くんですか⁉)
そもそも『目的のない買い物』というものに行ったことのない、引きこもり……じゃなくて合理主義者な俺はそんなものに行ったことがない。何か用があるから、あれが欲しいこれが欲しい、といったようでしか買い物に行かない。だから先輩の行動はおかしく思える。
(そもそも、目的がないにしても何処に行くのかくらいは決めるんじゃないの?)
そんな疑問を感じていると、
「え、私が同行させてあげているのにも関わらず、私に考えろといえるのかしら?」
あれ? 俺って荷物持ちのために(半ば強制的に)来ているんだよね?
間違ってないよね?
そう思いつつ、
「先輩………買い物、用があったんじゃないんですか⁉」
そうすると、少し首を傾け、
「ないわ」
(え! マジで⁉)
「冗談よ。そんなに焦らなくてもいいわ。そろそろ降りるわよ」
そういいながら、先輩が立つ。そして………と言いながら、
「せっかくのデートだし、先輩はなくていいわ」
俺がうろたえる。
先輩?
そして俺は頭を整理しながら、
「……上井草……さん?」
そうすると、答えない。
あれ? 不合格?
そして追試。
「上井草真咲さん?」
これも不合格?
「真咲……さん」
今度のは一瞬、合格点をもらいかけたが、はあ~とため息をつき、「やっぱりヘタレはヘタレのままね」と口にしながら、
「かろうじで合格」
そう口にされた。
なんでぎりぎり?
どうして「かろうじ」と言われたのか、そんな疑問を感じながら、先輩に促されるままに降りる準備をしたのだった。