真実
何もかもを放棄しているつゆだくです。
前作品の投稿をしていないのに新作始めてすいません・・・
前の作品、なんとなく書き方が気に食わないのでいつかまた設定とかも見直して書き直そうと思ってます。なので放棄します。
というわけで、新作を月1ペースくらいで書いていこうかなと思ってます。
あ、言い忘れてましたが、今回初めてスマホの方で書いてます。変なところとかあったら申し訳ないです。言ってくれたら絶対直しますので、コメントよろしくです。
「きれいな空・・・」
私は窓から見える景色を眺めながら、そう呟いた。
あの空を飛べたら。なんて、もう16歳にもなるのに、そんな子どもっぽいこと考えながら。
「この部屋からも、出たことないのにね・・・」
私は独り言を続けながらこの真っ白な部屋を見渡す。
真っ白なクローゼット。真っ白なソファ。真っ白なタンス・・・
真っ白なベッドに腰掛けたまま、私はまたあの青色に視線を移す。そこには私にも見慣れた白も点々と浮かんでる。
「ねぇ、王子さま?私はいつになったらあなたに連れ出してもらえるの・・・?」
私は空に浮かぶ白を見つめながらベットの傍にいつも置いてある本を手に取り、抱きしめる。
おとぎ話・・・私もいつかこの中のお姫さまみたいに王子さまに–––
コンコンッ
不意にノックの音がする。いつもと同じ、聞き慣れた硬い音。
「あ、瞬くん。また来てくれたんだね」
「うん。元気にしてた?」
振り返ると、そこには1人の男の子が立ってた。いつも私に会いに来てくれる、優しい人。
髪の毛はいつもボサボサで、目はちょっと細め。背は私よりだいぶ高くて、しゃべらなかったら正直ちょっと怖い・・・
優しく微笑む瞬くん。私もそれにつられるように微笑んでみる。
「ところで瞬くん。元気にしてた、なんて聞くのおかしいよ。いつも会いに来てくれてるのに・・・それに、私はいつも元気だもん」
「え?あ、いや・・・これは挨拶というか・・・」
「ごめんね」と首元を掻きながら謝る瞬くん。
「ふふっ。冗談だよ、冗談」私はぷくっと怒ったように膨らませた頬を緩めて、イタズラに笑う。
「そういえば、今日はどんなことがあったの?」
「あ、えぇ〜っと。今日はね・・・あ!今日、学校で事件があったんだよ」
私の突拍子もない問いに対して、瞬くんは少し右斜め上を見上げて、そして何か面白いことを思い出したのか、笑顔で話を切り出す。
「今日、ケンゴが・・・あ、昨日話に出たヤツね?あいつが授業中『教科書盗まれた!』なんて騒ぐもんだからもう教室中大騒ぎで–––」
いつもみたいに手振りそぶり使ってどんなことがあったのかを、終始笑顔で話してくれる瞬くん。
私もいつもみたいに「へー!そうなんだ!」とか笑ってみたりとか、いろんなことして相槌を打つ。
いつもと変わらない、飽きてしまいそうでなかなか飽きることない会話。
そんな日々は何日も続いて。これからも・・・
「・・・・・・」
「あれ?どうかしたの?」
一通り話し終わった瞬くんが、ベッドの近くの椅子に座り、俯いた私の顔を覗き込むように話しかける。私が作った沈黙は、私が思っていた以上に重いものだった。心配そうにしてる瞬くんを見れば、すぐにわかる。
「え?あ、その・・・なんでもないよ。ちょっと考え事してただけだから」
「そう、なんだ」
「うん・・・」
再び訪れた沈黙。
別にこれといって長いものでもなく、これといった意味を持ったものでもない。けど、さっきの飽きてしまいそうな会話も、こんな時間が来るとわかっていたらもっと愛おしいと思えると、そう感じさせる時間だった。
コンコンッ
そしてその息が詰まるような、そんないつもと違う時間を切り裂いたのは、いつもと同じ、聞き慣れた硬い音だった。
「永久ちゃん。血圧とか計るから・・・あ、もしかしてお取り込み中だった?」
ノック音の後に入ってきた、ナース服を着た顔立ちのいいお姉さんは、入って早々申し訳なさそうに、と言うより茶化すように悪びれる。
絶対わざとだ。顔がそう言ってる。まったく、この人はこういうところがなければ容姿端麗って感じでモテそうなのに・・・
「あのねぇ、那須さん・・・何度も言うけど、私たちそんな関係じゃないって!そもそも!最近たまたま知り合ったばかりなのにそんなこと・・・」
「そ、そうですよ。僕らはそんな・・・えっと、検査するんですよね。それじゃ、僕はこれで」
「あれ?もう帰っちゃうの?」
「はい。用事ついでに彼女の顔を見ていこうと思って寄っただけなんで。それでは」
わざとらしく寂しそうな表情を見せる那須さんを背に、立ち上がった瞬くんはそのままドアの向こうへと行ってしまった。
「せっかく盛り上がってたのに・・・永久ちゃんの彼氏さん、ちょっと素っ気ないね」
瞬くんが出て行って数秒後、静まり返った部屋に那須さんの冗談だけが響く。
「いや、だから––––––」
「ところで永久ちゃん。瞬くんにはあの事、話したの?」
「・・・え」
いつもみたいに那須さんの冗談に対して弁解しようとした、その瞬間だった。那須さんは今までにないくらい、真剣な顔をして私の目を見つめる。私の何もかもを見透かしてるような、そんな目で。
「結局話せなかったんだね、今日も・・・」
そしてその目はなんとも言えない、悲しい目に変わり、声はズンと重いものになった。
那須さんが何を言っているのか、わかってる。瞬くんに伝えなきゃいけないことも、わかってる。でも・・・
「・・・確かに瞬くんとは最近知り合ったばかりで、永久ちゃんの病気のことなんて話したくはないと思う・・・けど、あそこまで永久ちゃんの事大切にしてくれてるんだよ?少しは話してみても・・・」
「うん、わかってる・・・瞬くん優しいから、私の病気のこと話しても、今まで通り接してくれると思う。・・・でも、優しいから、優しすぎるから・・・!私の病気のこと知ったら、私以上に思い詰めてしまうんじゃないかって、そんなことばっか考えちゃって・・・」
那須さんに、今まで募らせていた思いをぶつける。ぶつける相手が違うのはわかってるけど、それでも優しい那須さんに甘えて、そのままぶつけ続ける。
口から出てくるそれをぶつければぶつけるほどに声と目頭に熱がこもって、一つは音として、もう一つは雫として、ポロポロと想いが流れ出てくる。
抑えようとしたけど、一度溢れたものはなかなか止められそうにもなくて。
泣きじゃくる私を優しく抱きしめてくれる那須さん。
泣いたって、叫んでみたって、何も変わらない。そんなことはわかってる。
でも今だけは。今だけは泣いてもいいよね。
ごめんね、瞬くん。私、あなたに一つだけ隠してることがあるの。
私、
あと1年しか、生きられないの。
♠︎
僕はまた、ウソをついた。
病院の廊下を歩きながら、その事をずっと悔やむ。
何がウソだったのか?学校でのこと?用事ついでに会いに来たこと?それとも–––
いや、全てがウソだ。僕は、この世界は、すべてウソでてきてる。
歩き続けて、着いたのは病院の出口。
真っ白い壁。物静かなロビー。
窓の外にはいくつもの建物が建ち並び、青い空には白い雲がいくつも浮かんでいる。
小鳥はさえずり、そよ風が近くの草むらを心地よさそうに揺らしている。
僕はその景色を見渡しながら自動ドアの前に立つ。
一見、真新しそうなそれは、ギシギシと音を上げながらゆっくりと動き始める。
ゴオォゥ・・・
窓から見えていた感じとは程遠い、少し強めの風がロビー目掛けて吹き抜ける。
僕はその風に押されながら一歩、足を踏み入れる。
ウソがすべて消えた、本当の世界に。
僕の目の前に広がるのは荒廃したビルの数々、薄灰色の空には小鳥一匹飛ぶことはなく、緑も枯れ果て、生命の音一つ感じさせない、破滅した世界。
もうこの世界に学校なんて存在しない。
用事なんてできるわけない。
だって、
この世界に生き残っている生物は、永久ちゃんと僕しかいないのだから。
今回『ウソ』というところに着目して書いていこうと思ってます。
ということで、ウソをつくときのクセなどについて、あとがきで説明できたらと思います。
さっそくですが、『視線が右上を向く』というのは『今まで見たことがない光景を想像している』ということらしいです。
視線は脳内の思考状況を表し、今まで見たことがない光景を想像しているときは右上、過去の経験を思い出すときは左上を見るらしいです。