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児童文学

お父さんのタイムマシン

作者: 結城慎二
掲載日:2016/02/09

 夏《なつ》休《やす》み。今日《きょう》は、お父《とう》さんが買《か》ったタイムマシンで、初《はじ》めてのお出《で》掛《か》け。

 行《い》き先《さき》は、僕《ぼく》の大《だい》好《す》きな恐《きょう》竜《りゅう》時《じ》代《だい》だ。

 まぁ、お父《とう》さんの好《す》きな恐《きょう》竜《りゅう》時《じ》代《だい》でもある。

 お母《かあ》さんは「ヘビやトカゲは大《だい》嫌《きら》い」って言《い》ってお留《る》守《す》番《ばん》。でも、恐《きょう》竜《りゅう》は爬《は》虫《ちゅう》類《るい》じゃないんだけどなぁ…。

 お父《とう》さんの買《か》ったタイムマシンは最《さい》新《しん》型《がた》で、なんと一《いち》時《じ》間《かん》に最《さい》大《だい》六百《ろっぴゃく》万《まん》年《ねん》も移《い》動《どう》出《で》来《き》る優《すぐ》れものだ。

 だから、晩《ばん》御《ご》飯《はん》を食《た》べて歯《は》を磨《みが》いた後《あと》、パジャマに着《き》替《が》えて乗《の》り込《こ》んで、ぐっすり寝《ね》たら朝《あさ》にはもう憧《あこ》れの恐《きょう》竜《りゅう》時《じ》代《だい》だ。

 お父《とう》さんのタイムマシンは、普《ふ》通《つう》のキャンピングカーみたいだけど、お父《とう》さんが子《こ》供《ども》の頃《ころ》は、時《じ》間《かん》移《い》動《どう》装《そう》置《ち》が今《いま》の三《さん》倍《ばい》大《おお》きくて、一《いち》時《じ》間《かん》に十《じゅう》万《まん》年《ねん》くらいしか移《い》動《どう》出《で》来《き》なかったんだって。

 僕《ぼく》は算《さん》数《すう》が得《とく》意《い》だから、0がいっぱいで大《たい》変《へん》だったけど計《けい》算《さん》してみた。

 なんとびっくり! 恐《きょう》竜《りゅう》時《じ》代《だい》に行《い》くのに一《いっ》ヶ(か)月《げつ》もかかるんだ。行《い》くだけで夏《なつ》休《やす》みが終《お》わっちゃうよ。

 あ、今《いま》のタイムマシンってのは、行《い》きと帰《かえ》りの移《い》動《どう》時《じ》間《かん》が同《おな》じになるようになっているんだ。ドラえもんのタイムマシンのように自《じ》由《ゆう》に移《い》動《どう》時《じ》間《かん》を決《き》められない。

 どうしてなのかお父《とう》さんに聞《き》いたら、

 「地《ち》球《きゅう》が自《じ》転《てん》しながら公《こう》転《てん》しているから」

 っていうんだけど、なんの事《こと》だかさっぱり判《わか》らない。しつこく聞《き》いたら最《さい》後《ご》には、

 「時《じ》間《かん》移《い》動《どう》法《ほう》で決《き》まってるからなの!」

 って怒《おこ》られた。

 なんで怒《おこ》られなきゃなんないんだ?


 ウィンウィン。


 お父《とう》さんが起《き》動《どう》スイッチを押《お》すと、タイムマシンが動《うご》きだす。

 僕《ぼく》は、お母《かあ》さんに「おやすみ」と「いってきます」を言《い》って、タイムマシンのドアを閉《し》める。

 いよいよ出《しゅっ》発《ぱつ》だ!

 お父《とう》さんが「もう一《いっ》回《かい》言《い》うよ」って、最《さい》後《ご》の注《ちゅう》意《い》。

 一、お父《とう》さんの言《い》うことを聞《き》く。

 一、危《あぶ》ない所《ところ》には行《い》かない。

 一、ゴミはちゃんと持《も》ち帰《かえ》る。

 一、何《なに》も持《も》ってきちゃいけない。

 「一《ひと》つでも約《やく》束《そく》を守《まも》らないと、もう二《に》度《ど》と連《つ》れて行《い》ってあげないよ」って言《い》われたけど、僕《ぼく》は知《し》っている。

 ゴミを置《お》いてきたり、何《なに》かを取《と》ってくると時《じ》空《くう》警《けい》察《さつ》に捕《つか》まっちゃうんだ。

 「はい」って大《おお》きな声《こえ》で言《い》うと、お父《とう》さんは「昭《しょう》和《わ》」って時《じ》代《だい》のテレビヒーローの真《ま》似《ね》をして「発《はっ》進《しん》」って言《い》いながら、スタートボタンを押《お》した。


 ウィンウィンウィン。


 窓《まど》の安《あん》全《ぜん》シャッターが閉《と》じ、時《じ》空《くう》移《い》動《どう》が始《はじ》まる。動《うご》き出《だ》してしばらくはガタガタ揺《ゆ》れて、おへその下《した》あたりがちょっとくすぐったかった。

 「さ、後《あと》は寝《ね》るだけだ」って、お父《とう》さんは言《い》うけど、興《こう》奮《ふん》してなかなかすぐに眠《ねむ》れるもんじゃない。

 僕《ぼく》は二《に》段《だん》ベッドの上《うえ》の方《ほう》で、何《なん》回《かい》も寝《ね》返《がえ》りして、やっと眠《ねむ》れたと思《おも》ったら、もうお父《とう》さんに起《お》こされた(お父《とう》さんは、ずぅっと寝《ね》てたって言《い》うけど、僕《ぼく》は今《いま》さっき、眠《ねむ》ったばっかりだったんだ! 絶《ぜっ》対《たい》、絶《ぜっ》対《たい》眠《ねむ》ったばっかりだったんだから)。

 お父《とう》さんが連《つ》れて来《き》てくれたのは、七《なな》千《せん》万《まん》年《ねん》前《まえ》の白《はく》亜《あ》紀《き》という恐《きょう》竜《りゅう》時《じ》代《だい》の終《おわ》わり頃《ごろ》。

 本《ほん》当《とう》は、僕《ぼく》の大《だい》好《す》きなステゴサウルスやブラキオサウルスのいるジュラ紀《き》に行《い》きたかったんだけど、ジュラ紀《き》に着《つ》くには一《いち》日《にち》以《い》上《じょう》タイムマシンに乗《の》っていなきゃならないし、お父《とう》さんもそんなに会《かい》社《しゃ》を休《やす》めないから、諦《あき》めた。

 「タイムマシンなら出《しゅっ》発《ぱつ》した時《じ》間《かん》に戻《もど》ってこれるはずなのに、どうしてドラえもんのタイムマシンみたいにそれが出《で》来《き》ないのか?」僕《ぼく》はやっぱりそれが知《し》りたかったからもう一《いっ》回《かい》だけ聞《き》いてみた。そうしたら、

 「それは危《き》険《けん》な事《こと》なの。危《あぶ》ない事《こと》だから、市《し》販《はん》のタイムマシンはそういう事《こと》が出《で》来《き》ないようになっているんだよ」

 と、答《こた》えてくれた。

 どう危《き》険《けん》なのかは、僕《ぼく》にはまだ難《むず》しくて判《わか》らない事《こと》だからって、やっぱり教《おし》えてくれなかったけど、かわりにこんな事《こと》を教《おし》えてくれた。

 昔《むかし》、実《じっ》験《けん》中《ちゅう》に大《だい》事《じ》故《こ》が起《お》きた事《こと》があって、それ以《い》来《らい》研《けん》究《きゅう》用《よう》の大《おお》型《がた》タイムマシンと特《とく》別《べつ》の許《きょ》可《か》がないと、出《しゅっ》発《ぱつ》した時《じ》間《かん》に戻《もど》ってくる事《こと》は時《じ》間《かん》移《い》動《どう》法《ほう》で禁《きん》止《し》になったんだって。

 まぁ、いいんだ。白《はく》亜《あ》紀《き》にもイグアノドンとか、好《す》きな恐《きょう》竜《りゅう》はいっぱいいるから。

 タイムマシンが着《つ》いたのは、芝《しば》刈《か》り機《き》できれいに刈《か》り取《と》られたような湖《みずうみ》の近《ちか》くの草《そう》原《げん》で、あまり遠《とお》くない所《ところ》にすごくいっぱいのトリケラトプスがムシャムシャと草《くさ》を食《た》べている。

 「トリケラトプスばっかりだなぁ、お父《とう》さんの好《す》きなアンキモサウルスいないかなぁ?」

 ……って、それはアンキロサウルス。

 「森《もり》の方《ほう》に行《い》ったら、もっといっぱい恐《きょう》竜《りゅう》がいるんじゃない?」

 僕《ぼく》は、外《そと》に出《で》たくてワクワクしてる。けど、お父《とう》さんは外《そと》に出《で》ちゃダメって言《い》うんだ。

 見《み》たトコ肉《にく》食《しょく》恐《きょう》竜《りゅう》なんて全《ぜん》然《ぜん》いないのに、外《そと》に出《で》るのは危《あぶ》ないって…。

 僕《ぼく》は、森《もり》の外《はず》れで木《き》の葉《は》っぱを食《た》べているパキケファロサウルスに触《さわ》ってみたいのに。

 「ちょっと、移《い》動《どう》してみよう?」

 お父《とう》さんは、タイムマシンをランドクルーザーみたいに運《うん》転《てん》して、森《もり》の方《ほう》へ連《つ》れていってくれた。

 タイムマシンは大《おお》きくて、森《もり》の中《なか》まで入《はい》って行《い》けなかったけれど、望《ぼう》遠《えん》カメラで奥《おく》を覗《のぞ》くとオルトミムスがトカゲみたいのを捕《つか》まえている所《ところ》や、マイアサウラが赤《あか》ちゃんに餌《えさ》をあげているトコが見《み》れた。

 マイアサウラの赤《あか》ちゃんはちっちゃくて、かわいかった。

 うー、触《さわ》ってみたい、抱《だ》っこしてみたい!

 「子《こ》育《そだ》てを邪《じゃ》魔《ま》するとお母《かあ》さんに怒《おこ》られるからな」って、お父《とう》さんはタイムマシンを移《い》動《どう》させる。

 外《そと》は晴《は》れてて気《き》持《も》ち良《よ》さそうだったから、ピクニックみたいに外《そと》でご飯《はん》を食《た》べたかったんだけど、やっぱりお父《とう》さんはダメだって言《い》う。

 なぜ? って聞《き》いたら、

 「人《にん》間《げん》の住《す》んでいる時《じ》代《だい》とは、環《かん》境《きょう》が違《ちが》うからだよ」

 って。外《そと》に出《で》るためには、特《とく》別《べつ》な準《じゅん》備《び》と格《かっ》好《こう》をしないと、知《し》らない病《びょう》気《き》になったりして危《あぶ》ないんだって。

 ちぇ、つまんないな。

 お昼《ひる》ご飯《はん》を食《た》べながら、ボーッと外《そと》を見《み》ていたら、突《とつ》然《ぜん》目《め》の前《まえ》を大《おお》きなトンボが横《よこ》切《ぎ》った。

 「両《りょう》手《て》を拡《ひろ》げたくらい大《おお》きかったよ」って、お父《とう》さんに言《い》ったら「ゴキブリも家《いえ》に出《で》てくるヤツより三《さん》倍《ばい》くらいは大《おお》きいぞ」って、笑《わら》ってた。

 ……それには、会《あ》いたくないぞ…。

 湖《みずうみ》に流《なが》れる大《おお》きな川《かわ》には、プカプカとワニが浮《う》いていて、時《とき》々《どき》大《おお》きなあくびをしている。

 のんびりしてていいなぁ…って思《おも》っていたら、急《きゅう》に恐《きょう》竜《りゅう》たちが走《はし》り出《だ》した。すると、ドドドドッって地《じ》面《めん》が揺《ゆ》れたかと思《おも》ったら、ゴゴォーッって凄《すご》い音《おと》がした。

 反《はん》対《たい》側《がわ》の窓《まど》の外《そと》を見《み》ると、一《いち》番《ばん》近《ちか》くの火《か》山《ざん》が噴《ふん》火《か》している。

 お父《とう》さんは食《た》べかけのおにぎりを口《くち》いっぱいに頬《ほお》張《ば》ると、運《うん》転《てん》席《せき》に座《すわ》って急《きゅう》発《はっ》進《しん》。走《はし》って逃《に》げてくる恐《きょう》竜《りゅう》にぶつからないように運《うん》転《てん》する。

 なんか、とっても格好《カッコ》いい。

 …けど、右《みぎ》に曲《ま》がったり左《ひだり》に曲《ま》がったりして走《はし》るもんだから、僕《ぼく》は気《き》分《ぶん》が悪《わる》くなった。

 安《あん》全《ぜん》そうな所《ところ》まで来《く》ると、そこにはパラサウロロフスがいた。

 やっぱり外《そと》に出《で》てみたい!

 お父《とう》さんにお願《ねが》いしようとしたら、お父《とう》さんが窓《まど》の外《そと》を指《ゆび》差《さ》している。

 見《み》ると、林《はやし》がサワサワと揺《ゆ》れている。大《おお》きな恐《きょう》竜《りゅう》が近《ちか》づいているみたいだ!

 うわっ! もしかして!?

 現《あらわ》れたのは肉《にく》食《しょく》恐《きょう》竜《りゅう》の王《おう》様《さま》、ティラノサウルス=レックスだ!

 ティラノサウルスは、思《おも》っていたよりずっと速《はや》くて、とっても力《ちから》強《づよ》く走《はし》って来《く》る。そして、群《む》れから逃《に》げ遅《おく》れた一《いっ》匹《ぴき》のパラサウロロフスのお尻《しり》に噛《か》み付《つ》いた!

 「まずい!」

 お父《とう》さんは、慌《あわ》ててタイムマシンを動《うご》かした。二《に》匹《ひき》が戦《たた》いながら逃《に》げながら、こっちに向《む》かって来《き》たからだ。


 ウィンウィンウィン。


 二《に》匹《ひき》が倒《たお》れ込《こ》んでくる間《かん》一《いっ》髪《ぱつ》の所《ところ》でタイムマシンは僕《ぼく》らの時《じ》代《だい》に戻《もど》り出《だ》す。

 「一《いち》番《ばん》いいトコだったのになぁ…」

 僕《ぼく》は、そう言《い》いながら大《おお》きなあくびをした。

 時《と》計《けい》を見《み》ると、恐《きょう》竜《りゅう》時《じ》代《だい》に着《つ》いてから十《じゅう》二《に》時《じ》間《かん》くらい過《す》ぎていた。

 それから僕《ぼく》らは晩《ばん》御《ご》飯《はん》を食《た》べながら、今日《きょう》見《み》た恐《きょう》竜《りゅう》たちの話《はなし》を眠《ねむ》くなるまで話《はな》し合《あ》った。

 「でも、イグアノドンが見《み》れなかったのが残《ざん》念《ねん》だよ」

 パジャマに着《き》替《が》えてベッドに入《はい》りながら僕《ぼく》が言《い》うと、お父《とう》さんはニッコリ笑《わら》いながらこう言《い》った。

 「なんだぁ? 恐《きょう》竜《りゅう》博士《はかせ》なんだろ? イグアノドンは、もっと昔《むかし》の恐《きょう》竜《りゅう》だぞ。知《し》らなかったのか? 明日《あした》、お家《うち》に帰《かえ》ったら、もう一《いっ》回《かい》ちゃんと図《ず》鑑《かん》で調《しら》べてみるんだな」

 その時《とき》はもう、眠《ねむ》くてよく覚《おぼ》えていないんだけど、確《たし》かそんなふうに言《い》っていた気《き》がする。

 朝《あさ》起《お》きると、そこは僕《ぼく》ン家《ち》のタイムマシンを置《お》くガレージだった。

 家《うち》に戻《もど》ってお母《かあ》さんに「ただいま」と「おはよう」を言《い》って、急《いそ》いで恐《きょう》竜《りゅう》図《ず》鑑《かん》を調《しら》べたら、イグアノドンは大《だい》体《たい》一《いち》億《おく》年《ねん》くらい前《まえ》の白《はく》亜《あ》紀《き》前《ぜん》期《き》に生《い》きていた恐《きょう》竜《りゅう》だって書《か》いてあった。

 なんだ、イグアノドン見《み》たかったのになぁ。

この物語は、子供が幼い頃に寝物語として考えたものです。

400字詰原稿用紙で10枚ほどの小品で初投稿にちょうど良いかと思い投稿してみました。

過去に「漫描きhttp://mankaki.jp」というサイトで発表してます。

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