第一部 レンアイキンシレイ
はじめましての方はこんにちは伏見ねきつです
第一部はリポグラムをするためだけに書き上げた恋愛小説?です。
僕本来の文章で気合を入れて書きました。
例えば、僕は。
君が好きになってしまったとすれば、君はどうする? そう僕が彼女に質問したら彼女はきっとこう答えるだろう。
「嘘つきはいけないよ?」
と。
彼女は僕を軽く叱咤するだろう。どんなにその事が本当でも彼女はそう言うしかないのだから。彼女には、彼氏などはいないが、恋をしている人物がいる。
その人は―――数年前に死んだ。
彼女にこの言葉を残して。
『君はこれから誰も愛してはいけない。誰も好きになってはいけない。なぜなら君が好きになってしまった人物は皆、不幸になってしまうからね』
彼女はこの言葉を信じて、好きだった彼が死んだことを償いながら生きている。
―――――なんて滑稽なんだろうか。
そんな、生きてもいない彼の言葉を信じて信じて、束縛され続けるなんて。
だから。……だから僕は今、彼女を救おうと思う。
■■
「ねえ、君」
僕は、教室の窓際に座っている彼女に声をかける。教室は放課後ならではの喧騒に包まれていて、少しばかり煩い。
「……」
彼女は、僕を見てぎょっとしたような目をする。
「僕の事……覚えてる?隣のクラスなんだけど」
「え………えぇ、覚えてるよ。でも―――」
「そっか、覚えていてくれたんだ。嬉しい」
「うん………」
彼女は戸惑ったようなしかしながら少しだけ頬を赤らめ頷いた。少しも変わってなくて安心する。
僕は左手で彼女の席の前の椅子を引き、座る。
「久しぶり……か」
「そう…だね………」
「ねえ、最近は好きな人とか出来た?」
早速本題に入るのは少し勿体ないような、直接すぎて彼女に反対されると思ったので、曲がり回り、遠回しに切り出すことにした。
「好きな人って。私には……」
「約束があるんだっけ?」
「だっけって……」
「ごめん」
「え?」
彼女は疑問そうに小首を傾げる。長い髪が彼女の肩から滑り落ちる。
「なにが、ごめんなのかな? 寧ろ、私はありがとうを言いたい」
「僕こそありがとうって言いたいよ」
「どうして、今さらそんなことを…………?」
今さらとは、彼女はもうこの学校を卒業する。だから今更。今更は今更だろう。しかし、僕は彼女が卒業する前に彼がかけた呪縛を解きたい。
だから僕は今、ここにいる。
「僕は、あの台詞はもう忘れていいと思う」
「わっ忘れるなんて……」
「アレは彼が死ぬことについて、この世への未練を君に無理矢理残したんだよ。きっと……ね」
「そんなことないよ、私が好きになってしまったから……」
「引かれ者の小唄もいいとこだよ。本当に。死んだ人の事なんて気にしないで君は真っ直ぐに進みなよ」
「真っ直ぐに進む……」
「それに彼は君に好かれたことを迷惑なんてしてなかった、寧ろ、彼は君が好きだった」
今更ながらに、僕は彼の気持ちを彼女に伝える。
「……嘘つきはいけないよ」
彼女は、目を伏せて悲しそうに呟く。
僕はそんな彼女がとてもじゃないけど見ていられなかった。見たくなかった。
「嘘なんかついてない。誰よりも僕が彼の事を知っている。間違えるはずがない。……君が好きだ。彼は君がずっと好きだった」
「………」
「今でも君が好きだ。だから僕は後悔している。どうして、彼はあんな台詞を吐いたのか。どうして、僕はあんな台詞を吐いたのか」
「うっ嘘は……」
「嘘なんかじゃない。嘘だったらワザワザこんなところまで来ないよ。僕は」
僕は一息ついて彼女の顔を見る。
「ごめん。本当にごめん。許してくれなんて言わない。君の大切な学校生活を束縛してしまって……ごめん。なさい。」
「そんな、謝らないでよ……ね?」
「君は、あんなレンアイキンシレイを無視して普通に暮らしてほしいんだ。死んでしまった僕にはもう出来ないから」
「………」
「レンアイヲシテクダサイ」
大好きでした。君の事が。
■■
叶うことがない恋は無駄だと、僕は思っていた。僕は君を好きになりたくなかった。僕は君を誰よりも嫌っていた。だけど、それと同じぐらい君が好きだった。
僕は死ぬ運命だった。
生まれたときから、そう言われていた。だから君を諦めようとしたのに、君は僕に好意を向け続けた。
だから僕は彼女に皮肉を残していった。
『君はこれから誰も愛してはいけない。誰も好きになってはいけない。なぜなら君が好きになってしまった人物は皆、不幸になってしまうからね。―――レンアイキンシレイ』
そんなことしても後悔しか残らなかった。
僕はただ、彼女に謝りたかった。偶然、僕はチャンスを得たんだと思う。もう一度彼女に会えるように願い続けたら彼女に、僕は会えた。
懺悔のチャンスをくれた。
彼女はこれからレンアイヲしてほしい。僕なんか忘れて。
僕は君に出会えて幸せだったんだよ。