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イレブンスリーにて。

作者: 玉木浜路

いじめという言葉が嫌いだった。


犯罪をやさしく表現して、いったいなにを守っているのかがわからないから。


前置きしておきたいのは僕はいじめられてなかった、と思う。


父親の転職をきっかけに都心から引っ越したのは、僕が中学生になるタイミングも考えての事だったんだろう。


確認してないけど、両親は息子の都合も彼らなりに考えているらしかった。


知らない人間ばかりの入学式で見慣れないブカブカの制服を着た僕は、いつの間にか透明人間になっていた。


用がない限りクラスメートが話しかけてくる事はなかったし、僕はいつも窓の向こうの空ばかり見ていた。


田舎らしくヤンキーとかいう人種もいたのに、僕は彼らと目が合っても殴られる事はおろか絡まれる事もない。


ヤンキーに理不尽な理由をつけて小遣いを巻き上げられたり、皆の前で笑い者にされたりする地味な生徒も僕には話しかけてこなかった。


三年のある日、自習を言い渡された教室でバカ騒ぎが聞こえてきた。


イレブンスリー。


聞いた事のない単語だった。


何故か無性に気になって、帰宅してすぐに調べてみる。


なるほど、彼ららしい行事だ。


改造車が集まって暴走行為をしているようで、近隣住民から苦情もあり、警察も厳戒態勢を採る事になったとヒットしたニュースサイトで報じられている。


派手な塗装とバカでかいマフラーを装備したバイクの写真、適当にスクロールした先には動物愛護団体が怒り狂いそうな鴨がいた。


取り立てて目立たないはずの鴨は、悪趣味な何者かによって一気に皆に知られる存在になった。


そうか、これか。


威力の面も考えてネットショップでボウガンを注文する。


11月3日。


唸るバイク音の合間にクラスメートの金髪を捜す。


狙いを定めて、この日のために練習してきたボウガンを構える。


剥き出しのタイヤ。


制御を失った車体が眼の前に迫る。


(ああ、)


せめて猿みたいなおまえが一発でも僕を殴っていれば、こんな事故は起こらなかったのに。






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