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苦手な方はご注意ください。

襲撃機の襲撃記

作者: 航空母艦

「いいか、用心してかかれ、相手はソヴィーツィだと思って侮るなよ、さぁぶちかましていこう!!!」


この時から、

俺の死神伝説が始まった、

俺は大尉だ、

この飛行隊を任されている、

一昔前まで飛行中隊と呼ばれた規模のこの編隊を、

俺は戦前から育ててた、

しかし、

あの時を境に、

俺の飛行隊は臨時編成が主となった、


ー第六襲撃飛行隊 飛行隊長 桑村二郎大尉ー


ー1942年 3月7日ー


「長谷川ぁ!!!いつまで言ったら分かるんだ!!!ここをこうしてこうだろ!?」

「は、はぁ………」


俺が手を使って空中機動を教える、

しかしそれを未だにやったことがない彼女だ、

教育飛行隊からわざわざ後部座席にも操縦桿がついてるやつを拝借して小改造、

実戦使用に耐えられるように仕上げたが、

それでも彼女は頑固だった、

臨時編成された飛行隊は再び実戦へ駆り出された、

何しろ日本は限られた戦力で戦争している、

引っ張りだされるのはおそらく時間の問題だったと思う、

むしろこれだけ訓練できたのだから感謝しなければならない、

そう、今までで一番長い最終訓練だった、


「お前本当にわかってるのか!?」

「わかってます!学校で習いました!」

「だから学校で習った事は忘れろ!ここは実戦の戦場だ!生き残りたければ俺の言う通りにしろ!」

「でも!」

「でももへももない!実戦だ!」

「………」

「はぁ………あとで出撃前の号令がある、ちゃんと来るように」

「了解しました」


そう言って俺は格納庫の奥へ消えた、

そもそもなぜ女子が軍隊にいるのか?

その理由は簡単だ、

家は男が生まれると長男坊を残し全てどこかへ売ってしまう、

そこから送られてくる収入で家庭を成り立たせている、

その最も収入率が高いのが軍隊である、

手当がでて、戦死したら名誉ももらえる、

もちろん多額の名誉金も送られてくる、

男は力仕事に使えるので家に残すが、

女だと嫁ぐしか方法がない、

力仕事は到底苦痛でしかない、

だから手当欲しさに軍隊へ送るのだ、

そのため軍内の女子兵の差別は尋常ではない、

正直こんな時に差別してても仕方が無いと思う人は少数だろう、

軍の上層部は改善しようともしない、


何もかもが、

腐ってたあの時代だった、

国民皆兵が出てから女子兵が増える一方だ、

そのうち男子兵が消えるとも噂されたくらいの増加傾向である、


「今回の初出撃だが」


みんな頭おかしい、


「軍内では有名かもしれんが」


みんな狂っている、


「一応言っておく、」


だけど俺は、


「俺がかの悪名高い」


止まれない


「死神だ!!!」


飛行隊をいくつも潰し、

挙句の果てに自分だけ生き残っている、

そして、俺は死神の名をもらった



真新しい機体と隊員を乗せて、

今日も大陸の空を九九式襲撃機が飛ぶ、


「飛行隊長、私知ってます貴方が死神だってこと、」

「はは、そりゃあ有名だからな、自分だけ生きて帰ってくる飛行隊長だってな」

「なら、貴方の執務室の引き出しの名簿は何ですか」

「お前執務室勝手に!」

「わかってます、でも、」

「じゃあ一つ言うけどな、お前は今死神の乗る機体に乗っているんだぞ」

「いいじゃないですか、貴方は帰れたんですよね?ならこの機体とともに私も帰れる筈です」

「そんなためし一度もない、」

「やってみないとわかりませんよ、案外助かったりして」

「………帰ったら上官へのタメ口で始末書書かせてやる」

「えぇ!?」

「あーあー、聞こえるかこちら飛行隊長だ、目標までもうちょい、全員心してかかれよ、慢心が戦場での一番の敵だ、わかったな?よしトツレ!」


それぞれの目標へかかろうとしたその時、

空が一瞬光った、


「!、敵の戦闘機!?いつの間に!?」


上空から坂落としで水冷独特の伸びた機首の戦闘機が発砲しながら向かってくる、

おそらくはミグの戦闘機だろうか、

飛行隊の中でも最も消耗率が高いのが爆撃隊などである、

その上に君臨するのが、

襲撃飛行隊だ、

敵への強襲爆撃なのでどうしても消耗率が上がってしまう、

飛行隊で最も華が無く入りたくない部門一位である、


「慌てるな!相手は水冷だ!九九式の機動力を見せてやれ!」


無線から了解の返事が聞こえる、

機内の伝声管からも声が聞こえた、

今度こそ、飛行隊全員で帰るんだと誓った俺の願いは、


















「飛行隊長大丈夫ですか!」

「なんとかな………お前は無事よのうだな、」

「え、えぇ、」

「はは、今回も、俺は」



蒼空へ儚く散った



「死神だったんだな………」

「そんなこと、」

「世の中辛いな、次男坊だから軍に送られてさ、今度こそって思ったら初戦で飛行隊壊滅でさ、病院には誰も来なかったしさ、本当に俺生きてていいのかな」


気付けば泣いていた、

通信機器は弾で所々こわれ、

血しぶきがこびりついていた、


毎回そうだ、

毎回助かるんだ、

毎回絶望してても生きてるんだ、


「死にたい、家族に認められたいよ」

「………隊長にとって、家族にとってみれば名誉の戦死ですが、私からしてみればただの無駄死にです、経験のあるものが後世へその技術を引き継がなければいけないと思うんです、だから、生きてください」

「………生きてください、だと?」


この子だけは、


「はい?」


この子だけは、


「俺を誰だと思ってる?」


この子だけはせめて、


「え?」


帰らせなければ


「俺は死神だぞ」













その後、

この飛行隊は臨時編成が主なまま大戦を戦い抜いた、

しかし、

その飛行隊には二人の死神が居たと言う、


敵からはカモの航空隊、

味方からは死神と罵られた二人の運命は残酷を極めただろうか、


ここで語られるのはここまでである、

その二人のその後は誰も知らないであろうか?

はたまた身近にいたりするのだろうか?












おしまい



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