始まりの日
【1997年・夏・某日・埼玉県某所】
「なあ、冨家、自分の限界が何処にあるか知ってるか?」
「古川、いきなり何を言い出すんだよ。」
「いや、俺最近考えることがあって、家が貧乏ってわけでもないしさ、今まで、21年間本当の意味で追い込まれた経験って、お前したことある?ないだろ。」
「・・・・・?」
「人間ってさ、そういう時に自分の限界が分かるような気がするんだよね。だから、今回のバイクの旅はそういうコンセプトで行きたい訳よ。」
俺は古川輝明。話している相手が高校時代からの腐れ縁で続いている冨家だ。今は、お互いそれぞれ違う大学に通っている。去年の夏から、俺たちは毎年、夏休みにバイクで旅に出ることにしている。去年は関東を一周して、今年は去年より遠出したいというのが2人の共通の希望だった。今日は、冨家の家で飲みながら旅の計画を話し合うことになっていた。
「でも、遠くと言ったら、北上した方がいいよな。なにもこんなくそ暑いなか南下したくないだろう。」
俺はビールを一気に流し込んだ。
「俺もそう思う。」
「冨家、北国って言ったら何処よ。やっぱ北海道か。」
「馬鹿かお前。いきなりそんな所まで行ける訳ないだろう。」
「冗談だよ。お前は相変わらずへたれだな。」
「お前のレベルで行ける所と言ったら仙台あたりかな。そう言えば岩手めんこいテレビってあれ仙台だろ。めんこい子がいるかもな。」
「古川、お前知らないの。仙台って日本の三大ブスの一つだよ。」
「あっそうなの。まあ、いいじゃない。今回の旅のコンセプトは自分限界に挑戦ってことでさ。めんこい子は二の次で。行き先は仙台あたりでいいだろ。」
「お前、かってにコンセプト決めてるけど、具体的にどうすんだよ。」
「自分限界を知るってことはさ、自分を追い込むってことだと思う訳よ。だから、持っていく金もギリギリにしてさ、見知らぬ土地で、二人で力を合わせて頑張るのよ。そしたら、今まで知らない自分が見られかもしれないぞ。」
「よく分からないけどお前に任せるよ。」
こんな感じで、今年の旅の行き先は仙台に決まった。コンセプトは自分の限界に挑戦!!富沢はあまり理解してないようだが、しょうがない。あいつには、男のロマンが少し足らないのだ。この後、旅の期間は、4日間位で、旅費は、ガソリン代や食料費など3万として、9月2日に出発することに決定した。




