第1章
「でさあ…後ろに手がぬぅ~と伸びてね!」
「ピクッ」
「ゴクリ」
「ウグッ」
晴菜の怖い話に俺達は息を飲む
「振り向いたら…顔の潰れた…」
「うわあああああああ!」
俺の叫び声にみんなが大笑いした、
「横溝、もしかして怖かった?」
「晴菜ぁぁ!ウルセェ!」
俺のリアクションにみんなが口々に馬鹿にしたように笑う…うぐぐ
「確かに少しは怖かったけど、その反応はないと思うよ、怖がりすぎ」
坂上が俺を軽く馬鹿にする…くそぅ…少しホラーを知っているからって
「イヤイヤ、怖いもんは怖いだろ!な!みんな!」
「ああ…まあな、だがありきたりって気もするがな」
国政は仕方なく…という感じでうなずくだけ
「可哀想…怖かったの?」
田波が聞いてきたので、恥ずかしくなり首を横に降った
「だが、このままだと明日の肝試しにお前が行けるか心配だな」
「国政…安心しな、俺もそこまで臆病じゃない」
三滝高校二年の俺達は明日、もうすぐ受験生なので思い出作りという事で肝試しに行く事になっていた
「そうか、お前、そう言いながらも、結構怖がりじゃないか」
「節…男ってのはな日々成長するもんなんだぜ」
「そうか、教室で怪談するの三回目なのに怖がってるじゃないか」
「うるさい!次からは怖がるかっ!」
「大丈夫よ、横溝以外にも怖がりはいるから」
晴菜はそう言って震えている、牧原を指差す
「…や、やだわ…私が怖がるわけないじゃない」
「そのわりには震えてるぞ…牧原が怖がりなのは知ってるから…大丈夫だ」
節が軽くおちょくるが…牧原は必死にいつものような落ち着いた心に戻ろうとしていた
「こ、怖がりじゃないわよ…ええ、少し誰かさんの叫び声でびっくりしただけだわ」
誰かさんって絶対俺の事だよな
「責めたって仕方ないです、クスッ」
「おい魅代!お前何笑ってんだよ…」
「いいえ…笑ってませんよ、全然」
あああ!恥ずかしいったら、ありゃあしない
「横溝…少しは落ち着いたらどうだ…まだ、怪談は終わって無いんだしな」
「国政…、それって、どういう…」
「簡単に言うと、田波と節の二人はまだ、話していないって事だ」
「そういう事だ、覚悟しろよな、横溝!」
「おいおい、マジかよ!?…」
こうして俺は、あと2つ怖い話を聞かされる事になった
 ̄ ̄ ̄ ̄
怖い話はなんとか無事に終わり、俺達は肝試しの話に変わっていった
二年の思い出の中でおそらく一番残るであろう肝試し、だからこそ、楽しめるように念入りに準備をするのだ
「用意するものは、この位で良いだろ、リュックサック、一応塩、サバイバルナイフ、水、食料、懐中電灯、蝋燭、後はお守りとか各自好きなもので良いとおもうが…他に必要なものも無いだろ」
坂上の言うとおりなのだが…少し用意する物が多くないか?
「おいおい水はともかく、食料は入らねぇだろ…ていうか何でサバイバルナイフ!?」
「サバイバルナイフは確か、行くまでに蛇とか出た時に必要だからですよね」
「それだけじゃないわ、行く道に雑草とか多いのよ、これが、だからって訳」
なるほど、つまり病院に行くまでに障害物があるって事か…
「それだけじゃないさ、幽霊が来たときとかにも対象になるような気がするだろ」
「節…やっぱり幽霊出んのかぁぁ!?」
「何よ、やっぱり怖いんじゃない」
「うるせぇ、お前も震えてただろうが」
「まあまあ、二人とも落ち着くの」
田波の言葉ですこし、落ち着く
「全く仲が良いんだか悪いんだか」
国政が、ため息混じりに呟く、まったくもってそうである
「そういえば、肝試しとか言ってたけど…その病院ってどんな怪談があるのかしら」
牧原の疑問には俺も納得だ…どんな内容の病院なのか、別に怖いわけじゃないが気になったのだ…
「確か…福子…っていう名前だったんじゃないか」
「ああ、その通りさ、俺達はその福子がいる病院に行くんだよ、名前は新垣病院…それがまた、結構広い病院なんだ」
坂上がそう得意そうに説明をしだした
「そこではね、苛められて苦しんだ児童の幽霊がでるんだよ…」
「でも…それなら普通学校に出るんじゃあ…」
魅代の言っている事は最もだ、イジメで自殺した生徒なら普通は校舎内なんじゃないのか
「確かに普通なら学校に出ると思うの?」
「田波達よく聞いてくれたね、実は福子が死んだのは、自殺じゃなく、事故死…だったんだ、車に轢かれたらしいよ…酷いもんだよ」
「な、なる程、なんとなく…わかったわ、つまり犯人に復讐するために病院から出られないのに探し回っているって…訳ね」
「おいおい…牧原!ふ、震えすぎだって」
「ふ、震えてなんかいないわ、ま、また叫び声なんてあげないでね」
お互い震えながら会話する…なんとも情けない姿であった
「ハハハッ、まあ幽霊なんているわけないじゃないか、そんなに怯える事ないって」
「あ、ああわかってるって、んな事はよ!」
節は鼻から幽霊なんて信じていないらしい…それは国政も同じらしく、男の中で怯えているのは俺だけのようだった
「大丈夫なのぉ…やっぱり怯えているみたいだけど」
「田波は黙ってろ…お、俺のどこが怖がりだってぇぇ」
「えぇと…全体的にかな…凄く怖がりって感じがするの!」
なんか悔しい…すげぇ悔しい、だが、実際に怖いのは怖いわけで、少ししか反論は出来なかったりする
「そうだ、待ち合わせの時間はいつにするんだ、やっぱり夜中なのか」
「いいや夜中だと親だって心配するし、普通に考えても暗すぎてガラスとかを踏んで怪我をするかもしれない、夕方が丁度不気味でそれでいながら安全で良いんじゃないのか」
「さすがね、異論はないわよ」
「ええ、私もよ、夕方だからって全然怖くないわ」
「ああ、確かにそうだな、俺も賛成だぜ」
皆、口々に賛成の声が出る、どうやらこれで決定らしい、明日夕方に廃病院で集合となった16:05
俺は、早めに用意をすませ、廃病院の前で皆を待っていた
「皆…どこに居やがるんだ…ったく…俺だけかよ…」
しばらく待ってみるが、やはり来ない、なんだか嫌な予感がする、後ろから視線のような物を感じた…おいおいッ まさか…な
「ワタシ…とお友達にナリマショ」
「うわあああああああああ!」
俺は後からの声に驚き…ひっくり返る!
「引っ掛かった!引っ掛かった…うふふ」
「晴菜ああ!またお前かよッ」
「だって、来るの遅いんだもん…みんな既に廃病院の中にいるよ」
「おいおい…マジかよ!?」
「うん、マジマジ!早く行こう」
何故だろう、今になって怯えた訳ではないが…なんだか、ものすごく入るのに抵抗があった…まるで運命の選択のように
「何、ぼっーとしてるわけ」
「あ、いや、何でもない…行くか」
そうだ、まずは皆に会わないと、俺は晴菜と一瞬に廃病院に入っていくのだった
「私も…そんな悪寒はない…です」
近藤も悪寒はないらしい、それ同様に皆にも聞いたがやはり感じないらしい
「きっと気のせいだと思うのですが…風邪かもしれませんし、場所…変えますか?」
普通なら冷静なはずの牧原がこんなにも怯えているのは異常だった…確かに無理やり肝試しをさせる道理はない
「ご、ごめんなさい、お願いできるかしら」
牧原にしては素直な返事だった…どうやらマジらしい
「なら、第二候補の歴史博物館に変更だな…そうと決まれば早くここを出るのが得策のようだ」
国政がそう言って玄関へ向かう、俺達も皆、出入口の玄関へ向かった17:01
俺達はすぐに玄関に向かう、しかし
「うそ?どうして…ドアが…開かないなんて」
「何?ドアが開かない…だと、本当か」
牧原に続いて国政も扉を開けようとするが開かない、いつの間にか牧原の額には汗が出ていた
「う、嘘よ、そんなはず無いわ!無いわよ!早く開いてよ」
牧原の真剣さがもう既にこの扉は開く事が無い事を案じしてくれた
「おい!お前ら離れてろ!俺がこの扉をぶっ飛ばす」
俺は着ていたブレザーを腕に巻き、何度か打撃を繰り返す、別にドアが開かなくてもドアさえ壊れればなんとかなるからだ、しかし何度やっても結果は変わらなかった…ドアはビクともしなかった
「出られないって本当か…つまり…俺達は閉じ込められたって事なのか?」
「どうやらそうらしいな…成る程…幽霊は本当に存在するらしい」
節や俺とは対称的に国政は普段と代わらず落ち着いているのが不気味だった17:07
「くそ…どうして開かないんだよ!」
「どうやら…閉じ込められたらしいな…もしかしたら他に出口があるかもしれない…分担して探した方が得策だな…この病院は狭いようで広いからな」
国政が知らぬ間にリーダーシップを取っていた…やはり冷静な判断ほど助かるものは無い
「じゃあ…俺と晴菜は二階を探索でいいか」
「私?…まあ良いけど」
俺が晴菜を選んだことに少し驚いたみたいだった…こういう時幽霊に詳しい人がいる方が心理的に助かるので、晴菜には来て欲しかった
「確かに男女ペアの方がバランス的には良いかもしれないな、女性達だけではもしもという事があるからな…俺は牧原と田波で行く」
国政は田波と牧原…とペアか…まあ確かに人数が奇数である以上そうなるわな
「じゃあ、俺は近藤と四階にいってみるよ…何か掴めるかもしれないからね…近藤大丈夫かい」
「う、うん…坂上くんよろしくね…怖いけど、幽霊が来たら守って」
「ああ、絶対に守って見せるからね」
「じゃあ、俺は魅代とで決まりだな、俺達は窓と扉を割れそうな道具を探しつつ、出入口を探すよ」
「お前は重要な役割だからがんばるんだぞ節」
坂上が節に元気づけるように言う確かに、一階が一番出入口を見つけれる可能性が高い
「ああ、任せてくれ…きっとすぐに出入口を目指すさ…幽霊なんているわけ無いんだし…きっと扉が壊れたから開かないだけで…簡単に脱出できるに決まっているさ」
確かに節の言うとうりだ…そう考えれば幽霊なんて、やっぱり居なかったんだって事になる
「確かに…その可能性の方が高いと思います…そうと決まれば早く行きましょう節さん」
「ああ、そうだな、魅代…それじゃあ俺達は行ってくるよ」
節達の言葉を合図に、俺達はそれぞれ別れていったのだった17:33
俺達は二階を探索する事になった、二階は病院の中で恐らく一番狭いところだろうと思った…病室も少なく6部屋しかない、しかし、一番不気味でもあった、確かに6部屋しか病室は無いのだが、一番奥には手術室があるのだ
「全然怖くなんかねぇぞ、俺は」
「いや、私何も言ってないから」
「んな事は解ってるよ!…只怖くないって報告だよ!報告!」
「はい、はい…はぁ…本当に横溝って情けなぁい」
「うるせぇ…それじゃあ病室に入るぞ」
俺はすぐにあった、病室を開ける事にした、少し怖かったが晴菜に馬鹿にされたくないので、早速扉を開く
ギィィッ
「う、うわあああ!」
「扉の音で驚かないでよッ怖がり!」
どうやら、今の音は扉が開く音だったらしい、人騒がせな扉だぜ
部屋の中に入ってみるが特には何も無い…おそるおそる、他にも探してみるが何も見つからない、
「何も無いみたいだな…ん、あそこに窓がある…あそこなら簡単に割れそうだぜ」
二階なら少し危ない気がしたが、決して飛び降りれないわけではない、俺は何度か窓ガラスを割ろうとする
「嘘だろ全然割れないぜ、」
「ね、ねぇ横溝」
くそっ、まるで窓のような壁を叩いているみたいに、ビクともしない、どうすれば
「ねぇ横溝ったら、は、早くコレ見てよ」
「晴菜…どうし…なッ!」
俺が晴菜の指を指した方向を見るとそこには赤い文字でなにやら書いてあった
「お、おいおい…またお前のいたずらか?晴菜」
「私がこんな事する分けないでしょう!…ねぇ…これって、字は乱れているけど…助けてって書いてあるよ!」
「助けて…だとぉ?知るか!んな事、きっと誰かがここに来た時にでも書いたんだろ?つ、次だいくぞ」
俺は逃げるように次の病室に行く…次の病室は何も無さそうに見えた、あるのはテレビにベットが2つあるだけだった
「なんだか、前よりもこざっぱりとしてるな」
「怖がり…もしかしたらあの部屋に他の何かがあったかも知れないのに」
「そう…何度も赤い字があるわけ…んっ?」
その時、ほっぺに何か液体が落ちたような気がした…お、おいおい…やめてくれ、やめてくれ!幽霊なんているわけない…俺がおそるおそる、上を見る…マジかよッ
「ああ…ああ…た、助けてくれ晴菜…助けてくれ!」
天井には赤い血のようなもので'呪ってやる'と書いてあった
「き、きゃあああああ!早く逃げるわよッ、横溝!早くぅぅ」
「ああ、分かってるよ!分かってるよ!」
俺達は急いで次の部屋に向かった、とりあえずここから離れたかった
17:53
「ハァハァ…い、いたずらにも…程があるぜ…」
「私は…あんなの、ハァハァ…やってないわよ…」
きっと誰かが俺達の来る前に書いたに違いない…つまり幽霊じゃないって事だ
「ハァハァ、ここには何も無い…よな」
「う、うん、何もないよ…は、早く次に行こう」
「ああ、そ、そうだな、後は手術部屋を入れて四部屋なんだからよッ」
二階から降りる事も考えたが…もしかしたら誰かのいたずらって可能性もあるので…それで逃げたら悔しい気がした
「じ、じゃあ次の部屋に、い、行くぞ」
「だらしない…」
「ウルセェ!ほら、早く行くぞ」
俺は晴菜の手を引っ張り次の部屋へ向かう、少し恥ずかしかったが何よりも怖かった
次の部屋へ行く、今度も何も無さそうだった、どうやら病室は全て同じ構造らしく、ベットは2つ、テレビがあるかないか…という点以外は変わりはないようだった
「ねぇ…また、あるわよ…今度はメモみたいな紙切れが」
「今度はメモか…もう怖がらないぜ、どれ貸してみ」
俺は晴菜からメモを受けとる、
「何々…このメモには…どんな事が」
今度はさすがに驚かない、メモには前に来た人の日誌の用な物が書いてあったからだ
アイツが来る アイツが来る もう逃げられない アイツは1日で二人を生け贄にする…アイツは何をやっても死なない、蘇る何度も何度も…だ…れ…か………
「ちっ、何で全部血で書かれたようなんだ、悪趣味すぎるだろ!二人ずつ生け贄ぇ…つまり死ぬってのか!?ふざけるな!」
俺は怒りに任せてメモをぐちゃぐちゃに破る「つ、次の部屋だ!次の…さっさとこんな部屋出ようぜ」
「はぁ…怖がりね…まあいいわ」
俺達は続いて、次の5部屋目の病室に向かう、やっぱりここも今までの病室同様の設定らしい
「今度は何もありませんように、南無阿弥陀仏、ほう…ほ…ほうれんげきょう」
「下手くそねぇ…こんな適当なお経がなんの役にたつのよ!ほら探すわよ…ここには特に何も無いみたいね」
「いや、あるぜ、文字は無いが血の手跡が…定番すぎるつぅの」
いくら怖がりの俺でも耐性がつく、今さら血の跡ぐらいで驚くものか!
「さすがに慣れてくるもんだな…もう何が来ても平気だな…なっ、晴菜」
「私は…平気じゃないかも…み、見てよ…コレ」
晴菜が指差す方向…そこは窓なのだが…手形がたくさんついていた
「また、手形かよ、んなのすぐに…なッ」
俺も気づいてしまった、最初に入った時には窓には手形等なくしかも、この手形ッ
「う、内側から…なのか…う、うわあああああああああ!あああ!晴菜、出るぞ早く、早く!」
俺達は、すぐに下に降りようと急いだ、しかし、出口が見当たらない、いや、壁が新しく出来ている
「ど、どういう事だよッ…ここ行き止まりだったか!?廊下まで一本道だろ!?なのにッ」
「全部廻れって事よッ!少しは落ち着いて、早く一緒に廻ろう」
まだ…あんなのを見なきゃいけないのか…嫌だ!、嫌だ嫌だ…俺は行きたくない
「少しは冷静になろうよ!横溝の方が女に見えるよ…ほーら」
晴菜は強引に俺を次の病室へと引っ張った
18:07
俺は次の部屋にも何かあると思って身構えたが、あるのはハンマーだけだった
「なあ、晴菜、このハンマー、もしかしたら、入り口を壊すのに役立つかもしれない」
「確かにそうね…一応持って行きましょう」
俺はハンマーを手に取る、幽霊が出たわけじゃないが、明らかにこの病院は異常だという事はもう充分にわかったので武器が欲しかったのだ
でも、その武器でさえも…わざと置かれたようで、嫌な予感がした
「後は手術室だけね…さっさと行くわよ…もしかしたら何かまた、武器とか見つかるかも知れないしね」
「あ、ああ…そうだな」
どちらにしろ俺達にはこの手術室に行くしか道は無いのだ…なら行くしかない
俺達は注意深く、手術室に入って行った
18:12
手術室に入った瞬間、扉がバタンッと音をたてて閉まった
「なんだ…扉の音…か」
なんだか知らないが、ここは嫌な予感がした、吐き気や悪寒が何度も襲って来る
「嘘…だろ、なんだか、吐き気が止まらない…不快だ…早く出ようぜぇ、」
「そ、そうね…はやく…出よう…気分が悪い」
俺はふらふらしながらも扉を開こうとする…だが…開かない…押しても引いても何してもッ!
「嘘だろ!い、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ!出せよ!出せよ」
俺は持っていたハンマーで何度も叩くが何も変化はなかった
俺がしばらく、叩き続けている中、晴菜は何か見つけたらしい
「ね、ねえ…コレって何か手掛かりにならないかな」
晴菜が見つけたのは、誰かのメモのようだった
「誰が書いたんだ、何々、国分仁一(こくぶん・しんいち?)…誰だぁ!?ソイツ…まあ良い…読ませてもらうぜ」
内容はこうだった
今、君達はこの手術室に閉じ込められているかもしれない…だが、それはしばらく経つと…勝手に開く、およそ30分ぐらい…だが、その後、後ろから声をかけられるが振り向くな
「しばらくすれば開くが振り向くな…だとよ、試しに開けてみるぜ」
まるでこのメモを読むのが条件かのように手術室の扉があっさり開く
とその時
「ねぇ、横溝…福子と話してみない」
「えっ」
俺はいきなりの声にびっくりして後ろを振り向いた
そこには、赤い服を着たロングショートの女の子がいた…年齢は10ぐらい…だけど、俺はソイツを見た瞬間、強烈な寒気に襲われた
「な、何よ…あれ…あの子を見ているだけで、体かよくわからなくなる…う…おおえ」
晴菜は見た瞬間、強烈な吐き気に襲われたのか、その場にうずくまる
「ギャハハハハハ…何シテ遊ブ?何シテ遊ブ…ギャハハハハハ」
ヤバい!ここは早く逃げないと…俺は晴菜と急いで一階へ逃げる、さっきまで壁だったはずの通路も既に無かった、俺達は一階へと逃げ切るのだった
一階へ戻ってみると、既に国政達が戻っていた
「どうだった、二階は」
「ハアハア、ゼェゼェ」
「うおええ!ゲホッガハッ」
晴菜は、その場で吐き出す、何度も何度もずっと吐き続けた
「ん?一体何があったんだ…只事では無いようだが」
国政はゆっくりと促すように聞いた、こういう時の国政は実に助かる
「ゼェゼェ…出たんだよッ…幽霊がああ」
「それは、本当か、わかった少し見て来る、みんなはそこで待機してくれ」
国政はそういうと、二階へと向かっていった、俺達は只、国政を待つしかなかったしばらくすると坂上達と一緒に降りてくる、国政の姿があった
「幽霊…なんていなかった…気のせいじゃないのか」
「本当に見たんだって信じろよ」
「ああ、俺は信じるよ、俺も見たんだ、赤い服を着た女の子…いや、あの赤は間違いなく血だったね」
「私も…見たよ、幻覚だと思ってた」
どうやら俺、晴菜、坂上、近藤の四人は見たらしい、見ていないのは国政、田波、牧原だけだ
「本当に幽霊を見たの?嫌だわ、わ、私どうしたら」
「どうしたらも無いだろ、実際に俺や近藤は幽霊を見ているからな、横溝も見たらしいし、なんとか脱出したないと
「脱出?…まずは全員が無事でいるか確かめるべきだな、まだ…二人がまだ節達がいない探した方が良いだろう」
国政の言う事は最もで、一階でこんなに時間がかかる事がおかしいのだ
18:25
俺達七人は無言で歩く、もう幽霊がいる事を五人は疑わない、だがまだ、田波と国政だけが幽霊を見ても感じてもいないので信じてはいないみたいだった
「ん…どうやらここは、トイレを除いて個室が数個あるだけのようだ」
一階の構造は受付室と休憩室とトイレ…後は個室が数個あるだけのようだった
「特に怪しい点は無いが、一つずつ個室を確認してみるか、俺が節達がいるかどうか見てくる…横溝達はどうする」
「俺も行かせてもらうぜ、みんなは残っておいてくれ、坂上、晴菜達を頼む」
「ああ、任せてくれ」
俺と国政が早速個室を一つずつ確認する、一階も二階と同じような構造だった
俺達は一つ目と二つ目の個室を確認し終わり、三つ目の個室に入ろうとした時だった
「待ってくれ、何か聞こえないか」
確かに三つ目の個室だけ、何か聞こえる、肉を引き裂くような、嫌な音、クチャクチャクチャクチャと何かが聞こえる
「なんだかわかんねぇが、嫌な予感がする」
「ああ、同感だ、念のためだが、サバイバルナイフを用意しておこう」
国政の指示で俺はハンマーを、国政はナイフを取り出す
「ハンマーか、持ってきたのか」
「いいや見つけてきた、とりあえず開けるぜ、いいな」
俺はそう言って扉を開いた、病室の中にはまだ、クチャクチャという音が続いていた
「な、なんだ…これが横溝が言っていた幽霊か」
さすがの国政もこれには少し驚いたようだ…だが、俺は言葉すら出せない、目の前では、赤い服の女の子が赤い塊をムシャクシャと食べているのだからッ
「あ…ああ…な、なんだよ…これは」
「見ればわかる、幽霊が…くッ、恐らく節だろう、二人とも死んでいる…これでは、性別すら解らないな」
「あ、ああ、あんな奴、どうしたら良いんだよ」
「さすがにお手上げだ、恐らく、今走っても追い付かれるだろう、とりあえず、扉を閉めるぞ」
国政は、福子が食べ物で夢中になっている隙を見て扉を閉める…福子はその音を敏感に察知すると、もの凄い速さでドアを何度も叩く
「う、うわあ、おい、国政!どうすんだよッ!これから…死ぬぞ!このままじゃあ、殺されちまう…早く逃げねぇと」
俺が必死に逃げようとするが国政がそれを止める
「あの速さを見なかったのか…すぐに追いつかれる、どうやら相手は人間で無いらしいな、ハンマーを貸してくれないか、あと、この扉を抑えるのを手伝ってくれ」
俺は国政の言われる通りに、扉を抑え、ハンマーを貸す、扉を抑えていると、何度も凄い衝撃が走るいかに福子が暴れているかすぐに分かる
「1、2ので、この扉を開けるんだ、いいな」
「扉を開けていいのか」
国政の思わぬ言葉で少し驚くが国政なりの策があるのだと信じ、言う通りにする
「いくぞ、1、2」
「うおおおおおおおおおおお!」
俺は合図と一緒に扉を開く、国政はその瞬間にハンマーを下に降った、それは見事に福子に命中するのだった
福子は倒れそのまま、何処かに消える…ひとまずは安心?、そもそもなんだったんだ、今のは
「おい…あれは一体なんなんだッちくしょう」
「ん…恐らく福子だな、アイツは何度も言うが人間では無いらしい、このハンマーを見てみろ」
国政がハンマーを見せる、そこには只のハンマーの持ち手の部分だげがあった
「こ、これって」
「ああ、奴の頭に当たった瞬間に砕けていったよ…どうやらハンマーですら、この程度しかダメージを与えられないらしいな…一人になるのは危険だな」
国政はこれからについて、淡々と話をするが…それよりも…俺は節達の死体をみんなに、どう報告するか迷っていた
「節達はどうするんだ、幽霊が…幽霊が食っちまった」
「まあ、落ち着け、正直に話す以外に何がある…きついのは分かるが仕方ない」
何故だろう、俺と国政の間にはかなりの温度差を感じたのだった
「お、おい、節…なのか…ど、どっちが節なんだよ…ははっ、嘘…だろ…ぎ、ギヤアアアアアアアアア」
「魅代ちゃん!魅代ちゃん…う、うぅぅ、」
やはり見せたくは無かった、坂上と近藤は、二人でそれぞれ恐怖を表している…俺だって叫びたい
「は、はやく、この病院からでるわよ!さっきも言ったじゃない寒気がするってッ!」
「お、落ち着け牧原!お前だってわかっているだろ!?出られねぇんだ、くそッ」
「じ、じゃあ、私達どうすればいいのよ!私、寒いの凍えそうなの、うぅぅ」
俺達が言い争っているなか、ずっと黙っていた春菜が口を開いた
「恐らく、私の知識だけど、この閉じ込められた空間の核を壊せばなんとかなる気がするの」
「核…か、なるほどつまり春菜は幽霊を倒せと言っているわけだ…出ないと脱出できないと」
「わ、わからないけど、私の知識ならね」
春菜は怪談やオカルトの知識について坂上の次ぐらいに詳しい…だから、こういう時には少し心強かった
「坂上はどうだ…それしか方法は無いのか」
「ああ、俺の知っている限りでも、その霊核を倒さない限り無理だろうな…せめて倒す事はできなくても弱らせれば…それだけで病院から出る事だけなら可能かもしれない」
「おいおい、倒すって、さっき国政がハンマーで倒したんじゃねぇのか」
「あの程度では、幽霊が死ぬわけあるまい、ハンマーよりも何か霊的な物で倒す方が良いだろうな」
「ここにあるか解らないけど、霊具?霊器?があれば、ある程度 太刀打ちできるはずなんだ」
坂上が、なんとか道しるべをしめしてくれる
でも霊具なんて都合よくあるのだろうか…そもそも霊具ってどのような物なのだろう
「霊具って言っても別に刀とかじゃなくても良いんだ…何か人の怨念が籠っていればそれが霊具になる」
「えぇと…ん?つまりどういう事だ」
俺以外にも何人かが理解できていない…いや理解はできているのだが、怨念ってなんだよっという話になる
「要は遺品さ…簡単に言えばだけどね」
「なる程…だが死者なんているのか…いやまあ…病院だから…アリなのか?」
「死体安置所がいいけど…夜は不気味だし…また明日にするべきだな…今日は1日休憩室で休んだ方が良いだろう」
確かにそうだ、ほんの一瞬の間に、色々な事がおこり俺は疲れ過ぎた みんなもそうなのだろう…今日は休憩室で休む事になった
20:00
俺達は只、話す事もなく無言で座っていた…いや放心していたのだ、春菜や近藤は恐怖のあまり、震え 牧原はついに寝込んでしまった…みんな精神的におかしくなっていた
唯一冷静な人物といえば国政で国政は淡々と持ってきた、お菓子を食べていた…だが無神経差はなく、誰かにいるかとも言わず…只、無言で食べていた
「このまま…私達…帰れない…のかな」
「近藤、それを今は言わないでくれ、それが事実で現実だと思うと…頭がおかしくなっちまうからよ」
「ご…ごめんなさい」
「今さら、そんな事を言ったところで何もならない…今は明日に備えて休んだ方がいいだろう」
国政はそう言うと、休憩室から出ていく
「霊具でも探しに行くのか」
「いいや、トイレだ…ついてこなくていい」
国政はそう言うとそのまま休憩室を出ていった
22:00
国政が帰ってきてから、俺達はしばらく何もする事もなく只、明日が来るのを待っていた…闇雲に行動する事の恐怖…俺はそれを知りたくは無かった
「なあ、節…お前が生きてたら、この状況をどう打開してくれるんだ」
節は、いつも俺達のリーダー的な存在だった…いやリーダーではない、リーダーなら国政の方があっている…そうマスコット的な存在だったのだ…誰よりも人に気を使い…そして元気付けてくれた…それがカリスマ性…なのだろうか
「横溝、辛いのはアンタだけじゃないのよ…ここでへこんだら、相手の思うつぼよ」
「春菜…ああ、そうだな…」
俺は元気なく頷く、もういくら悩んでも仕方ないのだ…寝れるか解らないが、早めに寝た方がいいな
俺はみんなに先に寝ると伝え、目を閉じた
8:12
「うぅぅ…」
割れる事の無い窓からの光が、俺を照らす、その光のお陰で俺は目が覚めた、既に国政と近藤は起きているみたいだった
「おはよう、横溝、今日も分担で手掛かりを探した方が良い…念のためにナイフを持っていた方が良いだろう」
国政はそういうと、そろそろ頃合いだろうという事で、みんなを起こし始めた、まだ気分が優れないのか、牧原だけは具合が悪そうだった
「大丈夫か、牧原」
「横溝…ありがとう…もう、大丈夫だわ、行きましょう」
「で、今度は誰とペアを組むんだい、俺的には近藤とまた組みたいんだけど」
「うん…私も坂上君と組みたいかな」
「確かに、それが良いかも知れないが…二人では危険だ…今いるのは七人だから、3:4で別れるべきだろう、俺と牧原と春菜と横溝で分けて行こう」
結局俺達四人は四階を調べ残りの三人は二階を調べる事になった
8:22
俺達は四階を探索していた、四階はおそらく、今までで大規模と言えるぐらい広かった
四階の奥には手術室が3つあり、さらに死体安置室とトイレが2つあった
「…なんか…怖いな」
「やめてよっ…私まだ寒いの止まってないんだから!」
「ああ、すまねぇ」
「怖がらせてどうすんのよ」
俺の失言を春菜が叱る、だが人というのは溜まった負の感情を出さずにはいられない
「手前から確認をするよりも、手術室を調べた方が良いだろう…帰りに他の部屋を調べた方が効率が良い」
「ああ、そうだな…って言っても手術室は調べたくねぇな…閉じ込められたばかりだしよ」
「だが、出られたのなら問題は無いだろう…他には何も俺達にはできないんだ、仕方ない」
「た、確かにそうだけど…なんだか怖いわね」
「牧原は、休んでいても良いが…」
「いやよ!一人にしたら死ぬのは定番じゃない!」
「何の定番なんだよ、それ」
「それじゃあ、入りましょう」
牧原の返事が合図となり、一番奥の手術に入る…すると扉が閉まる…という事はなく何も起きないみたいだった
「二階ではメモ用紙があったが、ここには無い…みたいだな」
「そうね…うん…キャッ」
春菜が軽く悲鳴をあげる、何事かと思い、春菜が見ていた方向を見ると
「マジ…かよ…」
手術室のメス等が置いてあるケースの中に、本来なら、人間の顔についているはずのピンボール状の玉があった…
「人のアレは腐るとこうなるのか…ふぅーん、一応持っていった方がいいな」
国政は、無言でソレをポケットに入れる
「こ、国政!貴方、何やってるのかわかってるの」
牧原が必死の形相で怒鳴るが、この時でさえ、国政は冷静だった
「仕方ない、俺だって辛いが、もしかしたら霊具代わりにはなるだろう」
「確かに怨念が籠ってるって点なら、人の死体とかが効率的だけどでも…」
「効率的なんだろぉ…なぁら、良いだろォ…今は嫌でも人の心を消すしか無いんだ、理解してくれ」
「……ああ、確かに国政の意見が正しいが…だからってもう少しは躊躇ってもいいだろ!」
確かに国政が言う事は正しいが、少しぐらいは躊躇っても良いはずだ、確かにコレも何かのヒントになるかも知れないけど
「ああ、すまないな、だが、俺だって躊躇いたい…だが、躊躇えば感情が全て出てしまう…横溝やみんなとは喧嘩はしたくはない、俺だって辛いという事を分かってくれ」
「国政…そうだったのか、俺が悪かった、お前の気持ちも知らないで」
「いや、良いんだ…それより次の手術室に行こう…まだ、何か掴めるかも知れない」
しばらく歩くと、漸く次の手術室に入る事ができた、
「な、なんだよ…これは…ウッ」
「いやあああああああああああああ!」
「これは……」
牧原が叫ぶのも無理は無い、手術室の中はジャムのような赤い液体だらけで、人の死体が2つあったからだ
「少し、死体を調べておいた方がいいな、横溝…手伝ってくれるか」
「い、嫌だぜ!俺はこんなものを見たくない!!」
「お前はそれで良いのか、男は俺とお前だけだ、いいから手伝え」
国政のいうがままに、俺は死体を調べる事となった、…死体は、白骨化しており…女性か男性かわからなかった
もう1人は、普段なら上半身についているはずの球体が逆方向に曲げられていた、手にはメモが握ってあるが、とても取る気にはならない
「ここに、メモがあるな…何々、どうやらこのメモを書いたのは国分…という名前の人物らしい」
国分…そういえば前の手術室でもメモを残してたっけ…つまりあの後、ここで殺されたって事か
「読んでみよう…くそ赤い染みだらけで所々見えないな」
ついにあれから3日経ってしまった、
妹が××を抜き取られて死んだ…生きていても××を抜き取られたので歩けないだろう
愛子さんはそれを見て、さも楽しそうにくすくすと笑う
だが、頼りになるのは愛子さんしかいない、愛子さんは有名な霊媒師なのだから、愛子さんが言うには…この霊は今までの霊と………
「ここからは、血だらけで読めないな…もうここにいても気分に良くない…次の手術室へ向かおう」
「ああ、賛成だ、ずっとこんなところに行ったら苦しくなるぜ」
愛子…という人が生きているのか気になったが…俺達はそんな事よりもはやくこの部屋から出る事を考えた
9:44
俺達はしばらく深呼吸をし、落ち着いてから次の手術室に入った…
「何よ…ここ…頭が…ウゥゥオエエエ!」
手術室に入った瞬間、牧原が大きく嘔吐する…だがそれは牧原に関してだけではなく、俺も頭が痛くなった
「……体が動かない…クッ」
いつの間にだろうか、金縛りのように体すら動かなくなっていた
「…く…そ…体が…」
「うぅぅ…何よ、動かないわ」
俺達が暫くもがいていると、手術室からいきなり話声が聞こえる
「このご飯、オイシイネ」
「これ…誰が作ったのォ…」
「これはねぇ…福子が作ったの、美味しいでしょう」
「オイシイネ」
「オイシイネ」
「オイシイネ」
「な、何なんだよッ築上!早くここから出してくれよ」
俺が叫ぶと…声がやむ、そして目の前にすぅーと福子が現れた
「福子ねぇ…ステーキ作ってみたの食べてぇぇ」
「何を言ってやがる!誰が悪霊が作ったステーキなんか食うかよ!!いいからさっさと出せよ」
「……食べられないんだね…食べさせてあげようか」
「おい、横溝、落ち着くんだ、素直に従え…そうじゃないと死ぬぞ」
「クッ…わ、わかった」
俺は福子に肉を突き付けられ、首だけ動かし、かぶり付く…口の中に香ばしい味が広がる…中に毒等は無いみたいだった
「次は、あの子にしよう…ギャハハハハハ!」
福子はそう言うと今度は春菜に次に、国政へと続いた
「……これで満足か…そろそろ解放して欲しいんだが」
「イヤよ、貴方達は死ぬまで私のオモチャになるんだから…いろいろと遊ぶの…死んだ友達見たいにステーキの材料にされるとかね」
ステーキの材料…まさか、俺達が食べたのって
「……の肉…なのか、うわあああああああ!」
「いやあああああああ!」
「……」
「そうよ、貴方の想像通りよ…ギャハハハハハ…」
福子はそう言うと牧原に襲いかかる
「ぎゃああああああああああああ わあかたあああはああたまさや!」
「やめてくれッ!やめてくれッ!助けてくれッ!許してくれッ!わかったよ、何でもする…何でもするから…だから、牧原を、そんな事やめてくれえええ!やめろやめろやめろおおお!」
グシャグチョベチャ…ガギッ、ガギッ…グシャ、ゴクリグチャグチャグチャグチャ
「ま、牧原が…牧原…牧原」
牧原が目の前でどんどん変わり果てていく…もう牧原は人ではなく只の赤い塊になっていた…心が悲しみに捕らわれていく
「次は、ずっと無言な君にしょうかな」
「国政!逃げろ!」
俺は国政に向かって叫ぶ、逃げれるはず無いのは解っているでも…叫びたかった、必死でもがけば動くかも知れない、しかし、それは虚しい抵抗だった、このままじゃあ、国政が…
しかし、国政は福子の攻撃を避け、そのまま蹴飛ばす、そして国政は゛白い何か゛を福子が倒れている隙に刺した、何度も…福子にその度に悲鳴をあげる
「ギャアアアアア!コロシテヤル…コロシテ…ギャアアアアア」
「不思議だなァ、幽霊なのに感触までしっかりあるなんて、ハハハッ…アハハハ」
何度も国政はその行為を繰り返したが…次第に福子は笑みを取り戻していた
「フフフ、貴方…気に入ったワ…ゼッタイニコロス」
福子はそう言うと手がにゅうーと延びだし、国政に掴みかかろうとする
「なッ…仕方ない!…逃げるぞ」
国政はそう言って動けない、俺達を引っ張る
「待ってくれ!ま、牧原がッ牧原があああ…牧原!う、うわああああああああ」
俺は叫んだ、そうじゃないと牧原が消えてしまいそうで…牧原の姿があの悲惨な姿しか浮かばないような気がして…只叫んだ
8:22
私は坂上くんと幸枝ちゃんと二階を探索する事になった…少し怖かったけど坂上くんと居れば怖くないような気がして、落ち着く
「ここは前に、横溝達が探索した場所だ、だから今回は見落としがあるかをチェックするだけで良い…」
「わかったわ、坂上…くん…どこから探索したら良いのかしら」
「そうだな、病室は狭いから、何かあったら横溝達が見つけているはずだ…だから、ここは手術室を見て早めに帰ろう」
坂上くんの指示通りに私達は手術室へ向かった
手術室は綺麗に片付けられていて…特に何か探す物は無いように見えた…だけど
「ん?これは…札?いやメモ帳か」
坂上くんはメモ帳を…見つけたのか、それを食い入るように見る
「どうやら、これは生存者の日記らしいな、名前は、池上愛子ってなっているなぁ」
内容は不気味なものだった
今日から、日記をつける事にした…私は霊関係についてかなり詳しい知識を持っているけど、あんな霊を見たのは初めて…そもそも…彼女の名前は福子ではない
「ここからは、わざと破られているな…本人が破ったのか分からないなぁ」
「でも…結局霊具は見つからないみたいだけど」
「みたいだな…違う場所を探してみるか」
坂上がそういって、手術室を開けようとするが
「あれ…開かない、はは、ま、まさかな」
坂上は必死で扉を開けようとするが、その素振りから、手術室に閉じ込められたと想像するのは容易だった
「くっ…どうして開かないんだ、くそっ」
私達が混乱しているなか、幸枝ちゃんの顔は真っ青になっていた
「幸枝ちゃん?どうしたの…やっぱり怖いの」
幸枝ちゃんは私の言葉にコクりと頷いて下を見た…下に何かあるのだろうか
私もつられて下を見ると、幸枝の指が全て無くなっていた…いいや、それどころか…血が血が
「い、いやああああああああ!」
私の叫び声も虚しく幸枝ちゃんは、言葉にならない言葉をパクパクと話していく
「あ……ああ…あがッ…ガガガ…ぐぐギ」
幸枝ちゃんは口をパクパク動かしながら、徐々に首が曲がっている…う、嘘でしょ…そんな…幸枝ちゃんは目はカッと見開き私達を見つめる
「い、いやああああ!幸枝ちゃん!幸枝ちゃん…うわあああああああ」
「おい、近藤、扉が開いたぞ、近藤…どうし…う、嘘だろ、幸枝が…首が」
坂上君もようやく気づいたのか、叫びをあげる、ついに幸枝ちゃんの首は回転しすぎて、ドスッという音と一緒に転がって来た
「ゃ、ゃだよぉ…もう」
「近藤!逃げるぞ、お前には死なれたくない!、早くッ」
「で、でも体が…怖くて、動けないよぉ」
「安心しろ、近藤は俺が守る」
坂上君はそう言うと私の腕を引っ張り駆け出した
10:05
俺達は必死に出ようと何度も何度も扉や窓を叩いていた…もう限界だったのだ
「い、嫌だ!俺はこんな所もう!早く帰らせてくれよッ」
ドンドン、バンバンッ、俺と春菜が何度も何度も叩くが全く割れる気配が無い
「家族が待ってるのよ!早く帰らせてよ!いやああああ」
バンッバンッ
何度も何度も叩く…無駄だと思っていても繰り返す
「おい、坂上達が戻ってきたみたいだ…ん、幸枝の姿が見えないようだが」
「幸枝なら死んだ…何にやられたのかも分からない…只、いきなりッ!首が…曲がって…う、うわああああああああ」
坂上の様子に皆は異常な事が起こったという事だけは分かる
「首がってなんだよ…まさか幸枝までも、死んだって言うのか…ああ…あ、やめてくれ、やめてくれ…うぅぅ」
10:20
あの後、しばらく混乱しながらも、状況を説明し合った
今日、牧原と幸枝が死んだ…そして生き残っているのは
坂上、春菜、近藤、国政、俺の五人になってしまった、つまり…半分は死んだという事になる
「そうか、牧原も死んだのか…残念だったな、横溝」
「…うるせぇ…もう、どうでもいい…節も死んだ、牧原も…死んだ、このまま、みんな死ぬんだ、うわあああああ」
「落ち着けよ!俺だって目の前で田辺が…」
「だからってなんだよッ!まだ、近藤が生きてただけいいだろッ!……すまねぇ」
俺はつい、内に秘めていた黒い感情を吐き出してしまった…自然と空気はさらに冷たくなる
「いや、いいよ…多分、俺も逆の立場ならそう言うさ…無神経な事を言ってすまない」
「いや…俺が悪かったんだ…放っといてくれ」
「ここ…で諦めたら、駄目よ…死んでいったみんなの為にも、頑張らないと」
「ああ、近藤の言うとうりだ、これからは、俺達五人で行動しよう」
「そうだな…愛子って奴が気になるし、まだ四階の死体安置室には行ってないからな、それに、まだ、一階も調べていない…あの後節に任せきりだったからな、まだ、明るい方が良いし…一時間休憩したら行こうぜ」
俺の意見にみんなが賛成する…いや、みんなは薄々気づいているのだ、それしか選択肢が無い事に
11:01
俺達はみんなで、まずは一階を探索をする…
個室を一つずつ入念に調べる、もしかしたら、他にここに閉じ込められた人がいるかもしれないからだ
俺達は最初に手前の個室に入る、やはり、何も無いのか只、シーンとしていた…
「何も無い…みたいだな」
「待って、これって…何か道具にならないかしら」
そう言って、春菜は古惚けた鏡を手に取る
「確かに鏡ってのは、怨念が籠っていたりするが、それが事実かどうか、俺もまだ分からないんだ、でも一応何かの魔除けになるかも知れないな、気休めになるかも知れないし持っておこう」
11:05
俺達は次の個室に入ってみる、ベットやテレビ、それはあたかも普通の個室なのだが、あからさまにと言わんばかりに木箱が置いてあり、その横に花瓶が置かれていた
「木箱はとりあえず、後回しにしてみないか、どう見たって嫌な予感しかないんだが」
「そうか、ん、まあ、どちらにしても開けなければならないのだろう、それなら早く開けた方が賛成だと思うが」
「国政の言い分もそうだが、俺も横溝と同じ予感がする、先に花瓶を調べるべきだろう」
「あ、ああ、それじゃあ調べるぜ」
俺は花瓶を調べてみる、中には四つ折りの手紙が入ってあった
「おっ…手掛かり発見か、なんて書いてあるんだ」
助けて、愛子さん…私の叫びは届かず…愛子さんは笑っていた
「なんだよッ…このメモは…さっきから出てくる愛子って誰だ」
「別にメモが必ず重要な事を書いているとは限らないだろう…被害者が残した可能性が高い訳だし」
「そうね、今回分かったのは愛子さんは簡単には味方になってくれないって事ぐらい…ね」
「そうね、近藤の言うとおりだわ、人が死にかけているのに、笑うなんて、そんな人と協力するなんて無理よ」
「ああ、同感だぜ、俺達は俺達でここから脱出する方法を探し出したらいい話だろ」
「確かに道徳上ではそうかも知れないな、だが、愛子さんがどんな女なのかを分かってから結論に至れば良いんじゃないのか」
確かに国政の言うとおりだが、やはりなんだか腹立たしい、いや、国政が言っているからって訳ではないが…愛子とは出会ったとしても、ろくな事にならない気がしたのだ
「それよりも、あの木箱を開けてみようじゃないか」
何故だろう、国政はまるで木箱の中身を見るのが楽しみで仕方ないとでもいうかのように、目をギラギラさせている
「みんなは目の毒になるかもしれないから、見たくないのなら見なくていい、いや、その方が懸命だ、見るのは俺一人で十分だ」
国政はそう言うと木箱を開けた、そこには、想像を裏切らないとばかりに、赤い塊が入ってあった、少し時間がたっているのか、所々黄色かったり、緑色になっていたりしていた
そしてこの臭いが一番苦しかった
「なあァ、坂上」
「んッ…な、なんだ」
「これは、霊具にはならないのか」
「何を言ってるんだ!お前は、こんなもの霊具になるわけないだろ、せめて武器のような形じゃないと」
国政の思わぬ言葉に、坂上が怒りながらも否定をする、例え霊具になったとしても、こんな物持ちたくもない
「そうか…それは少し残念だな、もうここには何も無いだろう、次へ行こう」
国政は、そう言うと節達の部屋を飛ばし次の病室に入る…次の病室は特に何かが置いてある…という事は無かった
「…ここには、何も…無いか」
「ああ、何も無くて安心したぜ…これ以上死体を見たらおかしくなっちまう」
「ああ、全くだ、死体を見るのは勘弁してほしい」
国政まで賛成してくれて助かる…どうやら、別に死体が好きとかそういう奴じゃないらしい、危なく国政を変な奴と思っちまう所だった
「でも、これからどうしたら…いいの」
「近藤の言うとうりだな、もう一階はあらかた調べたし…不快な物を除いて何もなかった…まあ、霊具なんてそう簡単に見つかる訳ないのは、当たり前だけど」
「一階には何もないか…くそっ」
「いいや、もう一ヵ所ある、節達の部屋だ、そこに、もしかしたらヒントがあるかも知れない」
国政の意見にさすがの俺も反論する
「また、死体のある部屋に行くのか、嫌だっ!もう勘弁してくれぇぇ…節達が死んだんだ!節達は死なれた姿なんか見て欲しい訳がないだろ」
「確かにそうだが、節達が何かヒントを持っているから殺されたかも知れない、調べる必要はあるはずだ…みんなが嫌だと言うなら俺だけでも見て調べる」
「そういう問題じゃないだろ!国政!お前は何を言っているのか自分で分かってんだろうな」
「ああ、分かってるさ、だから一人でも良いから見せろと言っているんだ、俺達は節達や死んでいった者達の為にも、ここへ逃げ出さないとならない、その為には見落としがあったらいけないんだよ、わかるだろ、横溝!」
「な…くっ、何が命のバトンだ、ふざけるなよッ…節の部屋に行くのは反対だし、行かせるのも反対だ!」
すると国政はしばらく考えた後、深いため息を吐き、了承してくれた
「そうだな、今はお前の言う事の方が正しい、少し焦り過ぎた、少し互いに頭を冷やすべきだろうな」
「そ、そうね、一旦休憩室に戻りましょう、ほら、横溝!国政行くわよ!」
晴菜はなんとか場の空気を和ませながら、俺達を休憩室に連れていった
15:04
俺達は休憩室に入ると目を見開く、そこに居たのだ、福子が怨みを詰め込んだような酷い顔で
「ようやく、みつケた…キャハハハハハハ」
福子が来た瞬間、俺の体が動かなくなる、恐怖で動けないのだ…それはみんな同じようだった…いや、国政は何か様子がおかしかった、
「ちくしょおお!福子ォ!貴様ァァ!」
「くっ…国政、どうしたんだ」
「キャハハハハハハ、死ねェェ!死ねェェ」
体が動かないから、国政がどうなっているのか分からない…一体何が、起こっているんだ
「足がァァ!うおおおおおお!どうなっていやがるんだアアアア!゛あ゛あああ゛ぐ」
メキメキメキッ、嫌な音がして、国政の声が途絶える、一体何が起こっているんだ!
そしてしばらくした後、福子は満足したのか姿を消す…一体何が…起こったんだ
俺は国政の方を見る
「こ、国政…な、う、うああああああッ」
そこには体中がミイラになったような姿で倒れている、国政の姿があったからだ
「お、おいおいマジかよッ!…ちくしょおお!どうなってんだ」
「近藤!お前は見るな!、横溝に晴菜、早くここから離れよう」
「あ、ああ」
俺達はもう幽霊がいない事を分かっていながらも、この部屋から出ていく
「畜生!なんなんだよ…あんな幽霊…かなうわけ無いだろ!」
「くっ…ついに残ったのは、俺達四人だけになったみたいだね…これからどうすれば良いんだ」
「う…ううう」
近藤は、もう打ちのめされたのか、わんわんと泣きじゃくっていた…晴菜もパニックで泣きそうになっていた
くそ…こういう時だからこそ、俺がしっかりしなくちゃならないんだ
「とりあえず、このまま、止まっていても仕方ない、もうこの部屋は使えないのだから、せめて、今日1日でもしのげるような部屋を探さないか」
「それなら、病室を適当に借りて過ごすしかないだろ、もともと、病室は人が住みやすいように出来ているからね…今日は、そこで過ごすしかないな…男女別々に別れて個室で休もう
「それなら、二階の個室でも使おうぜ、二階の個室なら、まだマシだしな」
二階の個室なら、手術室以外なら安全なはずだ…いや、この病院にいる限り安全等は無いかも知れないが
「とりあえず、向かうしかないのよね…それならいきましょう…もう、人が死ぬのは嫌なの」
「ああ、晴菜の言うとうりだ…行こう」
俺達は逃げるように、急いで二階の病室に逃げた
20:01
俺達四人はずっと放心状態のままだった、とはいえ決して離ればなれという事ではないだけマシなのだろうか…近藤はずっと震えていて、それを坂上がずっと看病していた
「大丈夫か、近藤…吐きたくなったら吐いてもいいんだぞ」
「う、うん…ありがとう坂上くん」
「それにしても、困ったな…、食料はさっき持ってきたから、問題はないが…どう脱出すれば良いんだ…くそッ」
「幽霊を倒すしか方法が無いなんて、私も信じたくは無いけど、それ以外に方法は無いし…どうしたら」
そういえば国政は、白い何かを福子に刺していたような…あの時は福子はとりあえずダメージを受けていたはず
「なぁ、国政が持っていた…白い物があったろ…あれって霊具にはならないのか」
「ん?、そんなのがあったのか」
「ああ、それを国政はひたすら福子に刺していたけど、かなりダメージを受けてたみたいだぜ」
「そういえば、そうだったわ、あれって霊具かどうか知らないけど、幽霊にダメージを与えれるものだったわ!…ねぇ…今すぐにでも探しましょう」
「ああ、国政の鞄にあるはずだ…一人になっては危ないから、俺と坂上で行く」
「ああ、それが良いな…近藤、お前はここで待っとくんだぞ、いいな」
「う、うん…」
俺達はみんなの確認をとった後、休憩室に向かった
21:55
俺達は休憩室に着くと、何か物音が聞こえた、
グチャグチャ、グチュグチュ
「な、なんの音なんだよ、坂上!」
「俺に聞かないでくれ、どちらにしろ開けるしか無いだろ、せぇーので開けるぞ」
「ああ、せぇーの!」
俺達は勇気を振り絞り、扉を開いた…そして急いで電気をつける
不思議…だよな、廃病院なのに電気がつくなんて
俺はそう思いながら、明るくなった部屋を見渡す…鞄はあった…国政の死体の横に
「国政の死体…誰かに食べられた様な痕跡があるぞ!」
「さっきの音はこれだったのか…こんな死体は見たくないな、急いで鞄を取るぞ」
「わかった」
俺は鞄を持ち、晴菜達が待っている病室に向かった
6:21
俺達はあの恐怖が忘れられ無かったのか、一時間後にうなされ叫びをあげたりと、ろくに眠れなかった…それだけ俺達は疲労していたのだ
「もう…眠れないんだろ、みんな」
「うん…目蓋を閉じると…また見えちゃうのよ…みんなの……ううッ!」
「ああ、分かってるさ…晴菜、俺だってそうなんだからよ、み、節が…そして牧原も、みんな死んじまったッ!本の2日前は…みんなで笑って明日もみんな無事で…それが決まってると思ってた…なのに、畜生!」
「仕方ないさ…何もしなければこのまま死んでいくんだ…とりあえず国政の鞄を開けてみよう」
坂上は俺達をなだめると、ゆっくりと息を飲むように鞄を開けた
「な、なんなんだ…これって血か…血がついていやがる、気味悪りぃな」
「だけど…この白い物はなんなんだ、尖った形状をしているが」
鞄の中には赤い液体まみれの白い何かが、沢山入っていた、それらは全部先端が尖っていて…凶器としても使える物だった
「もしかして…コレって人の…」
「晴菜、そんな訳無いだろ…アハハ…あの国政が、いくらなんでも」
遺品…つまり人の怨念が籠っていれば霊具になる…つまり国政が持っていたアレは、死者が'身につけている物'なはずなんだ
「なんにあれ、背に腹は変えられない、このまま、止まっていても仕方がない…こっちから勝負を仕掛けよう」
坂上の言葉に思わず聞き返す
「お前…それって正気かよッ」
「ああ、…これ以上こんな所にいたら、頭がおかしくなる…まだまともなうちに、ヤルしかない」
「だが…アイツに罠をかけるって無理だろ…出会ったら、まるで金縛りにあったかのようになってしまうし」
「でも、国政くんは動けたよね、どうしてなんだろ」
近藤の言う通りだ、国政はどんな時でも時間はかかったとはいえ、動けた、そこに何かカラクリでもあるのか
「心よ…幽霊が人を動けなくする時はね…人の心の恐怖を増幅させるのよ…それで足が震えて動けなくなるわけ」
恐怖を増幅させる…どういう事なんだ、訳がわからねぇ
「ええっと、つまりどういう事だ」
「要は動けないのは気のせいって事さ、恐怖心さえ克服すれば、動けるんだ」
「つまり、福子を恐れる心があったから動けなかったって事なのか」
「ええ、そうよ…幽霊ってのはね、元々は人を怖がらす事しかできない物なのよ」「だとすればその役目は充分果たせてるぜ、今でも凄い怖いからな」
「だから、今回は罠をかけようと思うんだ、俺達は今四人いるんだ…絶対に勝てるに決まってる」
何の根拠も無いかもしれない…でも坂上がそう言うと本当にそんな気がしたのだ
「フッ…そうだな、坂上、お前がそんなキャラだったとは思わなかったぜ」
「ああ、俺も思わなかったさ…こっちの人数は四人、向こうはたった1人だ…何も怖がる事はないさ、武器だってあるんだ…絶対にこの四人で生き残るんだ!
「ああ、俺達だけでも生き残るんだ、牧原達だってソレを望んでいるはずだ」
「ええ、そうよ!私達で幽霊の仇を取るのよ」
俺達は手と手、心と心を合わせる倒すんだ福子を
10:02
俺達はみんなで、少しでも逃げ回れる場所を探していた
「隠し通路とか、あればいいんだけどな」
「そんなの、あったとしても見つけられるわけ無いだろ」
「そうね、坂上くんの言う通りね、隠し通路は見つからないから隠し通路でいられるものね」
「成る程な、そういうものか」
俺達はそれぞれに霊具を持ち慎重に二階の部屋を確認する…一つ一つ細かく、一個ずつ病室を調べていった
「やっぱり、広い病室ってものは無いみたいだな」
「ああ、そうだな…となると広さ的に考えて手術室しか無いか」
「そうだな、手術室に入ってみるか」
「ああ」
結局手術室がこの病院の中では、一番広いという事になり、手術室で福子が来るのを待つ事になった
ちなみに、作戦の内容は俺が囮で福子を引き付け、その間に坂上達が後ろから狙うという方法だった
まず、この作戦を成功するには、俺が動けるようになっていないといけないのだ
でも、今なら動ける気がした、俺には仲間がいる、そして死んでいった仲間達の思いも託されているのだ、動けないはずがない
「なあ、晴菜…幽霊を倒したら…一緒にどこか食べに行こうな」
「うん…これが終わったら、また、みんなで楽しく過ごそう」
と、その時だった
影がぬぅーと現われ福子が姿を表す、顔はとても機嫌がよさそうな顔をしており、実に愉快そうだった
「こんな所にイタノネ…待ってくれたノ」
福子の手にはサバイバルナイフが握られていた、ダメだここで怖がるな!挑発するんだ…手を休めるな!怯えるな俺達には仲間!武器!知能!全てが揃っている…負けてたまるかああああ
「ああ、待ってたぜ、てめぇを殺したくてうずうずしてたんだ」
俺の言葉を聞き、福子は明らかに不機嫌な顔をして睨み付けた、力が強くても精神は子供のようだ…なら勝てる
「なんだオマエ!コロサレタイノカ!」
「それは、こっちの台詞だぜ!さっさと掛かって来いってんだ…意気地無しめ」
怯えるな俺…大丈夫だ俺!動けるぞ俺!
福子は、俺の言葉に怒り狂ったのか、サバイバルナイフを持って突進してくる
「動きが単純なんだよ…見え見えだぜ」
わずかな虚勢で良い…今はソレを振り絞らない限り勝てないのだから
俺はなんとか福子の攻撃を避け、隙をついて横腹に霊具を刺し込む
見事な軌跡を描いたが、俺の攻撃を福子は左手に隠し持っていた、鉈で防いだ
「チッ…へへッやるじゃねぇか」
「ウウゥゥ…コロス!コロス!シネェェ!」
福子はそういうとものすごいスピードでこちらに向かっていく…築上!坂上達は動けないのか
「もう、どうにでもなりやがれ」
俺は叫ぶ…叫ぶと幽霊から逃げられる気がしたからだ、福子のナイフをなんとか霊具で防ぐ…でも左手の鉈はどうすれば…避けきれずに左肩にドスッと落ちる
強烈な痛みが左肩を襲う…
「う、うわああああああああああ!坂上、は、早く助けてくれ…坂上ぃぃ」
「痛い?、イタイヨネ!ギャハハハハハハハハ!」
福子は愉快に笑うも、俺にそれ以上は何もしない…どういう事なのだろう…
「や、やめてよ!お願いだからもう!」
晴菜の声が聞こえる、晴菜は動けるようになったのか、福子に向かって霊具を刺そうとする…が、簡単に避けられた
「坂上!早く動いてくれ!…もう持たねぇ」
俺は必死に叫ぶが、聞いていないみたいだった…聞いていない?…いや、おかしくないか…いくら何でも、嫌な予感がした…恐る恐る、坂上達を見る…そこには坂上達の姿はなく代わりに…肉の塊が2つ置いてあった
「囮作戦で引っ掛かると思ったのかしラ クスクス」
「てめぇがヤったのか!オイ!!くそッ!畜生」
俺は霊具を持って突進するが易々と避けられる…福子のさっきまでの行動は演技だったのだろう…おそらく俺と戦っている時に既に二人共死んでいたんだ
「私、貴方を気に入ったワ、今日は殺さないであげる…ギャハハハハハハハハ」
福子はそう言うと愉快そうに消えていくのだった
「畜生!…大丈夫か晴菜」
「う、うん、でも坂上や近藤が…みんなが…う…い、いやああああああ」
「落ち着くんだ、晴菜!…こうなったらダメ元でも、他の方法を探そう、他の逃げる方法を…あんな奴、かなわねぇよ」
俺は泣いていた、男なら泣くものかと思って耐えていた、でも…もう無理だ…もう疲れた
「そうだね…きっと見つかるよ、今日は福子も殺さないって言ってるし、大丈夫だよ…ほらそれなら行かないと」
「ああ、ありがとう…まだ、一回も行ってない…死体安置室へ行ってみよう…手掛かりがあるとしたらそこしかないからな」
「そうだね」
どうしてだろう、この時の晴菜は自分も危機的な状態なのに…俺を支えてくれるなんて
16:02
俺達は死体安置室の前にいた…だが、扉は固定されており、開く事は叶わなかった
「くそ…おい!このドアを開けろ!!」
何度も力任せに扉を叩く…だが…それは全くの無駄骨になっていた
「もう、無理よ…諦めようよ…仕方ないんだから」
「…だからって俺は死にたくない!生きていたいんだ」
別に死体安置室に行った所で無駄な気がしていた…そしてわかってはいた…もう手詰まりだという事が
「もう…疲れたぜ」
俺が諦めている中、晴菜は何か見つけたらしい
「ね、ねぇ…これって愛子さんの日記の続きじゃないかしら…部分部分は破れているけど…途中までは読めるよ」
日記…愛子ってあの霊媒師の…少しだけ希望が見え…俺達は早速日記の中身を見た
福子は只の霊ではない…福子を倒す方法は実に厄介だ、そもそも福子の招待とは××絶××し×という名前なのだろう
そんな事はどうでもいい…問題はどうやって倒すかだ
まずは…霊を封じ込める石を取らなければならないだろう…二階手術室に2つ…一階トイレに1つ…この3つの石を彼女に食べさせれば…後は勝手に自滅してくれるはずだ
それが一般の××における対処法だ
「ここからは破れてやがる…だが何をやれば良いかはハッキリしたな」
防がれた希望…それが開かれた気がした、この石を見つければ良いのだから
「それじゃあ、探しにいくわよ…坂上君達の仇を討つの」
「おう!」
俺達は急ぎ二階の手術室へと向かった
19:01
俺達はようやく、手術室にたどり着く…よく見るが、石らしき姿はどこにも無い
「一体どこにあるんだ…チクショウ!」
「簡単には見つからないわよ…でもきっとどこかにあるのは、間違いないわね」
「取られてなけりゃ、いいけどな」
俺はとりあえず辺りを見回す…しかしどこにも無い、右奥には…変わり果てた赤い塊が2つあった
「坂上…力を…貸してくれ、ようやく手掛かりを見つけたんだ…どうやらソレはここにあるらしい、なぁ、どこにあるんだ」
俺は問いかけるそうしたら、幽霊になった坂上が場所を教えてくれるかもしれないと思えたからだ
すると、その願いが叶ったのか赤い塊の中に光る黄色の石があった
「坂上…お前が見つけてくれたのか!ありがたく受け取るぜ」
俺はそう言うと赤い肉の中をまざくり黄色の石を取り出す…はっきり言って気持ち悪かったが…これでここから出られると思えば…どうという事は無いような気もした
「あったぞ!一個目だッ」
俺は血まみれの手を服で拭き取りながら言った、晴菜もすぐに駆け寄る
「横溝!どうしたの、その血は…」
「これは俺の血じゃない…坂上の下に埋まってたんだ…おそらく…もう1つは…近藤の下にある」
俺は我慢して手を突っ込む、ヒンヤリと生温い…まるで生ゴミを漁るような感覚が俺に伝わる
そして何度かまさぐり出すと手にコツリと固い感触があった…もう1つの石だった
もう1つの石は緑色の輝きを放っていた…とても綺麗だったが…それ以上に吐き気に襲われ、思わず吐いてしまう
「う、うおええええ!ゲホッ、ガハッ」
「だ、大丈夫なの!横溝!」
「あ、ああ…ちょっとまいっちまっただけだ…それより、もう一個も見つけたぜ…早く、ここから出るぞ」
「そうね…早く出たいわ…もう死体なんて見たくは無い!」
俺達は互いに死という恐怖から逃げるために…急いで手術室を出た
「次はトイレだったか」
「ええ…そう書いてあったわ」
俺達は急いで一階へ行く、今思えばトイレはノーマークだった…病室に何かあるだろうという先入観に支配されていた
「入るぞ」
俺達は最初に男性トイレに入っていった…男性トイレにはゴボッゴボゴボ…と嫌な音を鳴らしていた
「だ、男子トイレって入ると照れるわね」
「へ、変な事言うなよ!それよりもどこにあるんだ…うわああああ」
ふと鏡を見て驚く、鏡にはずっとこちらを睨んでいる女の姿があったからだ、うらめしそうに…殺してやると言わんばかりに
「助けを求めているみたい…」
「マジで言ってんの…ソレ」
晴菜には助けを求めているように見えても、俺にはそうは見えない…
「ああ…あがあ…うあ」
「うわッ、喋った」
幽霊とはいえ、顔は傷だらけて喋る度に…ダラダラと赤い液体が垂れてくる…それがまた、痛々しかった
「出ら……ああ…れ…な…い…あガガ」
「出ら…れ…ない」
出られない!だと!ふざけんな!!俺達は出るんだ、絶対に…この二人で!!
「ふざけるな、出れるさ!あの幽霊を倒せば出れるんだああ」
「ああ…出ら…れない…誰も助け…て…くれ…ない」
「横溝…彼女に何を言っても無駄よ…彼女は死ぬ前の気持ちを只…繰り返しているだけよ」
「繰り返してる…どういう意味だ」
「彼女はね…多分だけど…地縛霊だと思うの…ここで…この出られないっていう感情だけが残ったのよ」
「地縛霊って事はコイツは自殺したって事なのか」
「ううん、違うのよ…自分が死んだ事を理解できていない霊の事を地縛霊って呼ぶの…彼女はここで殺されたんだわ」
鏡の霊が話す…会話出はなく只…話す…その度に痛々しい傷から…赤い液体が吹き出す…黄色い何かわからないものまで…出ている
「…お、俺達も死んだら…ああ、なっちまうのかよ…嫌だぜ…そんなのはよ…う、うおおおおお!」
「落ち着いて!横溝…深呼吸よ…私達は死なない為に…石を探すんじゃない」
確かにそうだ…何を勘違いしていたのだろう…俺達は死なないのだ…絶対に生きる
23:45
俺は晴菜に元気づけられてから…ずっと探していたが見つからなかった
「男性トイレには無いのか…晴菜…女性トイレに行ってきてくれ」
「わかった」
こんなにも探して無かったのなら…もうここには無い…という事は女性トイレにあるって事になる…さすがに俺では入れないので心配ではあるが…晴菜一人で行かせる事にした
0:00
「いやあああああああああああああああ」
女性トイレから叫び声が聞こえる…何事かと思い、女性トイレという事も忘れ、急いで女性トイレに向かった
「お、おい晴菜!晴菜大丈夫か!!」
「み、見てよ…わ、私嫌よ…あそこから取るの」
どうやら晴菜は無事のようだったがガクガクと震えていた…どうやら個室の中にソレはあるようだった
「何だよ…見せてみろ」
俺は個室の中を覗く…叫びなんて出なかった…このさっきから異臭がしていたが、別にトイレの異臭って訳じゃ無かったんだ…誰なんだ、コイツは…そこには赤いチェリーパイを食い散らかした用になった無惨な物体が転がっていた…よくよく見るとチェリーパイの中に紙と一緒に…赤い石が埋まっている…
「い、嫌だぜ、俺だって…」
「私だって無理よ」
「わ、分かった」
俺は嫌々ながらも頑張って取る赤い石と紙を取る
とりあえず紙を読んで見る、内容は酷いものだった、幽霊に騙され、もしくは唆されて幽霊の道具になった人や…狂いだし…人に襲い掛かる…それらの様子が書かれていた
「なあ…俺達は…絶対に!俺達だけでも、生き残るぞ」
「うん…生き残るよ…私達は…絶対に」
その時だった、まるでソレを邪魔するかのように、福子が…最後の個室から姿を表す
「ニガサナイ…コロス!コロスゥゥ!」
「と、とりあえず、ここは狭い…に、逃げるぞ晴菜」
「う、うん」
俺達はとりあえずここから離れ、玄関に逃げ込む
「オニゴッコ…イイヨ…キャハハハハハハヒハハハヒヒヒヒハハ」
福子は可愛い容姿とは裏腹に凄まじいスピードで追いかけて来た
「くっ…やっぱ出口は開かないか…やるしかないな…行くぞ…晴菜」
「う、うん」
「イキドマリ…ドウスルノ…キャハハハハハハヒハハハヒヒヒヒハハ」
コイツの口を開かせるなんてできるのか…もう、破れかぶれだ、やるしかねぇぇ!
「私が行くね」
「おう!」
俺と晴菜は同時に霊具を福子に向けて刺そうとする…ソレを福子は避けられずに…そのまま刺さる
「グハッ…ウガガガガ」
「苦しんでるぜ…しかも息ができなくなって口が開いてやがる…今しかねぇ!」
俺達は集めた石を一気に入れ込む
福子がソレを飲み込み苦しがる……はずだった
「はい、お遊びは終わりネ」
「それって…嘘」
福子は今までのがまるで演技と言わないばかりにケタケタと笑い出す…いや演技だったのだ…今まで向こうは遊んでいるつもりだったんだ…畜生!!
「嘘…だろ…う、うわああああ…嫌だ…死にたくない…頼むから許してくれ!お願いだよ、うわあああああ」
「フフフ…どうしようカナ…そうネ…いいワよ…二人で殺しあって生き残れた方をここから出してあげる…二人共、よく頑張ったから
「殺し合いだとぉぉ!んな事できるかよ!」
仲間を殺せ、んな事するわけないだろ、俺が反論している間に晴菜がこちらに来る…無表情で…まるで邪魔者を見るかのように
「ごめん…私、生きたいの!家族が心配してるのよッ!!うわああいああ」
嘘だろ…こんなのって、俺が余りの事に信じられず…動けなかった、晴菜はその隙を見逃さず、俺に襲い掛かる…が、途中で崩れ落ちた…それは本当に崩れ落ちたのだ…体が…まるでブロックが壊れるかのように粉々に
「あああ…な、何が起こったんだ…う、嘘だろ…ああ…あ」
「殺し合いだから…今のは一方的…ダカラ…反則負けね…フフフ」
「じ、じゃあ…俺は出してくれるのか…な、なあ」
「ええー、ダッテ、殺し合いシテナカッタンダモン…イヤよ!…でも…」
そう言うと福子はこちらに迫ってきた…不思議と恐怖心は無い
「ワタシとキスをしてうまかったら出してあげるネ…最近キスってものをシテナイノ…誰でも良いからシテミタカッタノ」
そう言って福子は俺を抱きしめて来た…反抗はしない…むしろ受け入れたかった…あんな事があった後なのにドキドキする…
「それじゃあ、いくわヨ」
そう言って福子は軽く唇と唇を触れあうようにキスをする
それだけなのに体全身が痺れるような快楽が走った
「あっ……」
「ウソでしょう?福子マダマダダヨ」
そう言うと今度は舌を絡めてきた…ねっとりと唾液が送られる
「はぁ…ヌチュヌチュヌチャリ…レロレロ」
福子のキスは激しくつーと糸を引いていた
「次は、横溝のバンヨ…早くしましょう」
俺はもう止められずに福子に自分からキスをする何度も濃厚に深く
「れろっれろっ…ん…いいワ…ソノママヨ」
「はぁ…ん…ハァハァ…くそっ」
しばらく何度も舌を絡ませた、その時だった突然、液体が口の中に溢れ出す…その液体で俺は息ができなかった
「ぐ…がハッ…い…は…ひふ…ひ」
声を出そうとしても声が出ない……ドンドン液体が口から溢れる
「ナカナカ、キスはうまくて福子びっくりしちゃった、だからつい横溝の'タン'を噛みきっちゃった、ギャハハハハハハ」
意識が遠くなる、目の前が真っ黒になるのを、俺は確認した